女性アイドルグループ/ソロ(2000年代~2010年代~2020年代)

PS4U|Tomato n’Pine 

2012/8/1 SMR

1. Train Scatting
2. ワナダンス!
3. なないろ☆ナミダ
4. 渚にまつわるエトセトラ
5. 10月のインディアン
6. キャプテンは君だ!
7. POP SONG 2 U
8. 踊れカルナヴァル
9. 旅立ちトランスファー
10. ジングルガール上位時代
11. ためいきはピンク
12. そして寝る間もなくソリチュード(SNS)
13. 大事なラブレター
14. 夢ノカケラ・・・
15. ワナダンス! -strike the pose remix-

ミュージック・マガジンで2012年J-POP部門年間ベストアルバムに選出されるなど音楽マニアからの評価が非常に高く、楽曲派アイドルの先駆的な存在であった「Tomato n’Pine」の名作アルバム。ディスコやハウスからロックまで様々な音楽要素を綺麗にまとめ上げた最高品質のアイドルポップである。プロデュースは音楽クリエイター集団agehaspringsとそのメンバーで今では有名なジェーン・スー。

冒頭①から意表をつくスキャットナンバーに驚かせるが、上質なガールズポップとして違和感なく聴かせてくれる。
代表曲である③や⑨などのノスタルジックな美メロ&ハーモニーの煌びやかな楽曲は、1990年代に活躍した同じ3人組アイドルグループの「Qlair」にも通じるものがあり。切なさと力強さの両方を兼ね備えた耳当たりの良い楽曲は自然と聴き入ってしまう魅力がある。
このグループの代名詞といえるディスコポップの名曲②、ポジティブな力強さに満ちている⑥、キャッチーでキュートなダンスポップ⑦は、クラブ向けアイドルポップの傑作で、今でも多くの人に愛されている。
クリスマスソングとして歴史に残る⑩は、ドキドキやわくわく感を詰め込んだガールズポップの大傑作。メリハリの効いたラフなロックサウンドとフックのあるメロディーライン、これは日本産パワーポップの名曲といえる。他にも激烈なロックサウンドの⑫などバラエティにも富んでおり良質な楽曲揃いである。

アイドルという先入観抜きに音楽好きなら上質なポップソング集として誰もが楽しめる1枚だ。

鼓動の秘密|東京女子流 

2011/5/4 avex trax

1. Intro~鼓動の秘密
2. Love like candy floss -TGS ver.-
3. ヒマワリと星屑
4. 頑張って いつだって 信じてる
5. サヨナラ、ありがとう。
6. Attack Hyper Beat POP
7. おんなじキモチ
8. ゆうやけハナビ
9. きっと 忘れない、、、
10. 孤独の果て~月が泣いている~
11. キラリ☆ -Album Mix- ~Outro

エイベックスが手掛けるガールズグループとして2010年に結成された「東京女子流」の1stフルアルバム。系統としてはアイドルグループではあるが、卓越したダンススキルと安定したボーカルワーク、ファンクやAORなどのシティポップといえる都会的な洗練された楽曲は刺激に満ちており、アイドルという枠を越えた存在感がある。

冒頭を飾る①は「ClariS」への楽曲提供や後に「CYNHN」のソングライターを務める渡辺翔が作曲を手掛けたアイドルポップ史上に残る名曲。記憶に残るクールなサウンドと洗練されたメロディー&ボーカルは、派手さよりもじっくりと聴かせることを重視した通好みの職人芸である。   
②は同じエイベックスでかつて活動していたアイドルグループ「SweetS」の名曲のカバーで、東京女子流版ではアレンジがシティポップやフュージョンのような洒落たサウンドとなっており、原曲とはまた違った魅力がある。
③は凄まじくカッコいいサウンドとリズムのアイドルファンクの大傑作。⑥もスピード感あるファンクで、10代特有の勢いと熱量に胸が突き動かされる。当時中学生であったメンバーの大人びた魅力が感じられるダンスポップは爽快感抜群だ。               
⑦はNHKのTVアニメ『はなかっぱ』にタイアップされて、東京女子流の名を世間に知らしめた代表曲のひとつ。子供から大人まで踊り出してしまうようなキャッチーなリズムとダンス、可愛らしさとカッコよさが同居する絶妙なバランスの楽曲は、アイドルポップアンセムとなり多くの人に愛されている。
⑪はデビュー曲のアルバムヴァージョンで、イノセンスに溢れた旋律が真っ直ぐと心に響いてくる。

シティポップ的なサウンドのカッコよさ、音楽好きを唸らせるコード進行やメロディー、メンバーのボーカルスキルの高さと三拍子揃ったアルバムで、まさに楽曲派アイドルというにふさわしい名盤である。

ノクターナル|東京女子流

2022/8/3  avex trax

1. Intro
2. Viva La 恋心
3. ストロベリーフロート
4. この雨が上がっても
5. コーナーカット・メモリーズ
6. 夢の中に連れてって
7. Hello, Goodbye
8. Dear mama
9. ガールズトーク
10. フライデーナイト
11. 僕は嘘つき
12. days ~キミだけがいない街~
13. ワ.ガ.マ.マ. – MURO’s KG Remix album ver.

ディスコやファンクなどの都会的なダンスポップを聴かせるガールズグループ「東京女子流」の6枚目となるアルバム。なんと7年ぶりのオリジナルアルバムということであった。
シティポップ要素があるダンサブルな楽曲と成熟したボーカルワークは洗練された魅力があり、文句なしの貫禄ある内容である。ロック系の縦ノリが多い2010年代以降のアイドルポップの中では横ノリのダンスビートへのこだわりと愛を感じさせる。

②は実に東京女子流らしいエモーショナルな熱が伝わるダンスポップ。ラテン調のリズムが印象的なダイナミックなビートや聴き心地が良いハーモニーなど、ポップミュージックの快楽原則に沿った高揚感が得られるキラーチューンである。③はスタイリッシュなダンスビートと懐かしさもあるキャッチ―な歌が甘い気分を届けてくれる。オシャレかつスィートな極上のポップチューンはこのグループの真骨頂。
④は歌声や歌詞など、可愛らしい魅力が全開のセンチメタルな1曲。とにかくメロディーやボーカルの聴き心地が良くて、切ない余韻を残すのも良い。⑤は1980年代感覚のレトロなポップスで、清涼感溢れるフュージョン系サウンドとポップなメロディー&疾走感という王道的な爽快感をもつナンバー。⑦はメロディーと歌声の良さが光る美しいバラードで、J-POPとしてクオリティが高い。
⑨は都会の女子のイメージが浮かぶクール&キュートな必殺ナンバー。複雑な女心を捉えた歌詞や楽曲の良さを上手く引き出しているイケてる雰囲気のボーカルなど聴きどころは多い。
⑫は失恋の喪失感に切なくなると同時に前向きなメッセージに元気が貰える。サビのメロディーや上質なハーモニーが耳を捉えて離さないパーフェクトなポップソング。⑬はテンポ良く聴かせるメロウなビートとキャッチ―なリズムが心地良い。

サウンドは低音の録音が良いので、ずっしりとした安定感があり聴いていて気持ちが良い。都会的なポップスとして非の打ち所がない傑作アルバムである。すでに長いキャリアを誇る東京女子流であるが、フレッシュな空気を保ちながら、ガールズグループとしての成長が感じられる刺激的な内容で素晴らしい。2020年代のアイドルポップの中でも屈指の1枚だ。

BedHead|BELLRING少女ハート 

2013/8/10 クリムゾン印刷

1.World World World
2.the Edge of Goodbye
3.D.S.P ~だいすぴッ~
4.ボクらのWednesday
5.Shout!!!
6.ライスとチューニング
7.夏のアッチェレランド
8.Pleasure ~秘密の言葉~
9.サーカス&恋愛相談
10.yOUらり
11.BedHead
12.ダーリン
13.アイスクリーム
14.Teck Teck Walk
15.WIDE MIND

「BELLRING少女ハート」は、黒いセーラー服に黒い羽の衣装でステージを縦横無尽に駆け回るパフォーマンスで、地下アイドルシーンでは『東京最狂』と呼ばれたアイドルグループである。
60年代ガレージロックやサイケデリックロックからプログレとニッチな音楽要素を取り込んだ異質なアイドルポップは当時音楽シーンに衝撃を与えた。本作はそんなBELLRING少女ハートの2013年にリリースされた1stアルバム。メインソングライターはタニヤマヒロアキや田中紘治など。

完成度が高い刺激的な楽曲とは裏腹に、メンバーのボーカルはお世辞にも上手いとは言えなかったが、少女達のヘロヘロなボーカルにはサイケ感があり、サウンドとの相乗効果で何回も聴いてしまう中毒性がある。                 マニアックなこだわりを感じる音作りがとにかく面白くて、1960年代ガレージロックサウンドでぶち上げる②はロックンロールの初期衝動に満ちており、問答無用のアイドルロックの名曲と言えるだろう。歌謡曲っぽい④は懐かしさを感じるメロディーと可愛らしいボーカルがクセになる。
⑥は無気力ラップが逆にインパクトを残し、音楽の未体験ゾーンに突入するような新鮮さがある。幻覚が見えてきそうな⑩や⑪はまさにサイケデリックロックとしか言いようがない。ボーカルは素人の下手くそな歌といえばそれまでだが、サイケデリックサウンドとの組み合わせは音楽的化学反応を起こし、新鮮な魅力がある。
⑬はゴシックでプログレな退廃的世界観に飲み込まれるダークな歌謡ロック。終盤の演奏もカオティックで良い。
他にも⑦のような意外な王道アイドルポップもあり良いアクセントになっている。

BELLRING少女ハートは聴く物に得体の知れない世界に引っ張り取り込んでくれる希有なアイドルグループであり、本作は地下アイドル史上に残る名盤である。

YOUTOPIA|ゆるめるモ! 

2017/11/29  YOU’LL RECORDS

1. 歩くの遅い犬
2. 逃げない!!
3. ミュージック 3、4 分で終わっちまうよね
4. モイモイ
5. しんぼりくむ れすぽんす する
6. You とピアザ
7. サマーボカン(Remastered)
8. やる
9. うんめー
10. あ! 世界は広いすごい
11. ごろごろ物思い
12. ナイトハイキング(Remastered)
13. 永遠の瞬間
14. must 正
15. 天竺

2012年に結成されて以来、プログレッシヴ・チェンバー・ポップ・バンド「箱庭の室内楽」やアンダーグラウンドノイズの帝王「非常階段」といった先鋭的なグループともコラボしてきたニューウェーブアイドルグループ「ゆるめるモ!」の3rdアルバム。
『君だけの楽園』をテーマに、独自の脱力的な雰囲気とキャッチ―なニューウェーブサウンド、キレのある日本語詩のメッセージが聴く物に突き刺さる1枚。

本作ではお馴染みの作家陣に加えて、大森靖子、後藤まりこ、ハヤシヒロユキ(POLYSICS)などが楽曲提供しバラエティに富んだ内容だが、全体通してこのグループの特徴である「ゆるさ」が大きな魅力となっている。
大森靖子節炸裂の⑨や刹那感爆発の後藤まりこによる⑬など聴き所は多いが、注目したいのは本作で11曲の作詞を担当し、このグループの作詞を多く手掛ける「小林愛」の存在である。彼女の作詞は素晴らしく、代表曲のひとつとなった②やメッセージソングの③、脱力感が楽しい④など、彼女独特の日本語詩が楽曲に大きなうねりをもたらし、聴く物に元気を与えてくれる。

日本独自のアイドルロックを確立したと言ってもいい個性的な内容である。親しみやすい脱力的な雰囲気な楽曲と耳に引っかかりを残す歌詞の切れ味は特筆するものがある。

GUSTO|Especia 

2014/5/28 つばさレコーズ

1.Intro
2.BayBlues
3.FOOLISH
4.アバンチュールは銀色に(GUSTO Ver)
5.Mount Up
6.BEHIND YOU
7.嘘つきなアネラ
8.Intermission
9.No1 Sweeper
10.L’elisir d’amore
11.海辺のサティ(PellyColo Remix)
12.ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)
13.くるかな
14.アビス
15.YA・ME・TE!(GUSTO Ver)
16.Outro

2012年~2017年に活動していた大阪/堀江系ガールズグループ「Especia」。本作は2014年にインディーズからリリースされた1stフルアルバムである。期間限定の合体ユニットを結成するなどの交流があった新潟の「Negicco」と同じくローカルアイドルのアーバンポップ路線を代表する存在であり、シティポップやファンクを取り込んだ懐かしくも新しいアイドルポップは、当時の音楽シーンに少なからず衝撃を与えている。またMVの演出やメンバーのファッションも含め2010年代初頭に生まれた音楽ジャンル【ヴェイパーウェイヴ】からの影響を強く感じさせる。サウンドプロデューサーは「BIS」の『Nerve』を編曲したSchtein & Longer。

MVも特徴的だった本作のリードトラックとなるアイドルファンクの大名曲⑨は特に素晴らしい。踊りたくなるような気分をアゲアゲにしてくれるアッパーな曲だが、アイドル特有のどこか儚さや刹那感が漂う質感はまさに唯一無二だ。個人的にはアイドルポップの長い歴史の中でも至高の1曲である。
1980年代テイスト全開の④は、最初から最後までキャッチ―に聴かせるレトロ感覚溢れる曲で、特に終盤の大サビのメロディーラインは一度聴けば忘れられなくなるほど印象的。
⑤はフュージョン系の軽快なサウンドに葛藤を素直に歌い上げるボーカルがばっちりとハマっており聴き心地が良い。これは心に迫る素晴らしい曲だ。⑦はいかにもEspeciaらしい洒落たムードのメロウな歌にまったりと浸れる。
⑪はシングルに収録された名曲のインストバージョンで、細部にまでこだわりを感じる爽やかなサウンドが楽しめる。
1980年代UKニューウェーブバンド「Tears For Fears」からの影響を感じさせるシンセサウンドの⑬は、初めて聴いても昔から知っているような懐かしさがあり、メロディーラインと初々しいボーカルに夢見心地になってしまう中毒性がある。洗練された楽曲とアイドルの未完成な魅力が上手く結びついた希有な曲である。
他にもSAWAが提供した洋楽テイストのセンスが光るガールズポップのユーロビートアレンジである⑫、ikkubaru作曲のジャジーで切ない雰囲気抜群の⑭、松隅ケンタが提供したやさぐれた感じが良い⑮など、とにかく捨て曲なし。

シティポップを取り入れたアイドルグループの先駆者であるのはもちろん凄いが、個性的な魅力があるのが大きなポイントである。後にシティポップを軸にしたアイドルが多く現れて、サウンドは似たものを作っていたが、どれもEspeciaを再現できてはいない。洗練された楽曲とアイドルの素質やコンセプトなど様々な要素が絡み合って、この唯一無二の独創性が発揮されたのだろう。2010年代のアイドルポップを代表する永遠の名盤である。

CARTA|Especia

2016/2/24 ビクターエンタテインメント

1. Clover
2. Over Time
3. Sunshower
4. Interstellar
5. Saga
6. Saudade
7. Rittenhouse Square
8. Mistake
9. Fader
10. サタデー・ナイト
11. Boogie Aroma (CARTA Ver.)
12. Aviator (CARTA Edit)

大阪の堀江系ガールズグループ「Especia」のメジャー初となるフルアルバム。シティポップやファンクを主体とした音楽性は時代先取りとしたもので、後の音楽シーンに影響を与えた偉大なグループである。本作はアメリカの音楽メディア【Pitchfork】で、日本のアイドルポップアルバムとしては初めてレビューされたことでも知られている。メジャー作品ということもあり、大衆性も獲得できそうな良質なダンスポップがふんだんに収録されており、ディスコやソウルからジャズ/フュージョンまで様々な要素を取り込んだ本格的なアーバンポップが楽しめる。

冒頭①はEspeciaの中では異色の楽曲と言えるハードロックっぽいナンバーで驚かされる。作詞が山根康広で作曲が藤井尚之という豪華作家陣によるEspeciaの新たな一面が垣間見える興味深い曲である。②は爽やかなシティポップで本領発揮とったところ。上質なサウンドや清涼感あるボーカルワークなど、すべてが最高の聴き心地である。
③はダンサブルなサウンドや洒落た雰囲気がスタイリッシュでカッコいい。歌声も含めガールズグループと呼ぶのが相応しい質感で、洗練されたポップスは完成度が高い。④はドラムンベースとラップが織りなすクラブポップといった感じで、本作の中では意表をつく切れ味が鋭い一風変わったナンバーである。⑤は透明感あるサウンドや親しみやすい歌メロが甘い気分に浸らせてくれる。⑧はブラックミュージック色の強いナンバーで、この時期のEspecia最高のグルーヴとフィーリングが胸を熱くするキラーチューン。
⑪と⑫はシングルとしてリリースした楽曲のアルバムバージョン。⑪はこちらの方か細部にまでこだわりを感じるサウンドの響きが良く、ファンク系のダンスポップとして一聴で耳を捉える魅力がある。⑫は強度を感じるキャッチ―なサウンド構築が素晴らしくて、メンバーの爽やかなボーカルワークも含めフュージョン系の女性ボーカルの名曲と言えるだろう。

アイドル的な未完成な魅力があったインディーズ時代に比べると実力派ガールズグループのカラーを強くだしている作品である。基本的にはシティポップを軸にしているが、④や⑧など音楽性の幅は広い。楽曲が良いのはもちろんのこと、ソロになってからアーティスト性を開花させている冨永悠香(HALLCA)や脇田もなりが在籍していたことからも分かるように、この時のメンバー5人だからこそ作り出せた意欲的な作品である。

WORLD’S END|lyrical school 

2018/6/19 BootRock

1. -PRIVATE SPACE-
2. つれてってよ
3. 消える惑星
4. High5
5. 夏休みのBABY
6. 常夏(ナッツ)リターン
7. オレンジ
8. CALL ME TIGHT
9. Play It Cool
10. DANCE WITH YOU
11. Hey!Adamski!
12. WORLD’S END

ヒップホップアイドルグループ「lyrical school」が5人体制となってから初となるフルアルバム。前身の「tengal6」も含め10年以上のキャリアを誇り、時期によりメンバーが異なるが、本作は代表的なアルバムのひとつといっていいだろう。
音楽的にはよくある男勝りの女子ラップや文科系女子ラップとは異なり、純然たるアイドルラップを確立しており、ラップはすごくキュートかつテクニカルである。メロディアスな旋律とセンスの良いトラックも聴いていて心地良い。

非常に完成度が高いアルバムだが、アイドルラップの金字塔と言っていいのが、名曲②である。切れ味抜群の耳に引っかかるリリックとスキルある女の子達のフロウは素晴らしくて、ほぼパーフェクトな出来であると思う。青春の煌めきと儚さを見事に表現しており、聴けばいつでもセンチメンタルな気持ちになれる魔法のような1曲。③もキャッチーで親しみやすいとてもいい曲。特にサビの力強いメロディーをユニゾンするのが良い。④は軽やかに流れるようなフロウが気持ち良い。
⑤とスチャダラパー提供の⑥は、夏がテーマのオシャレで爽やかな曲で胸がドキドキさせられる。夏という同じテーマながらも勢いのある⑤とメロウな雰囲気の⑥でしっかりと個性分けがされており優れている。⑧は躍動感あるラップに元気が貰える実にlyrical schoolらしいナンバー。⑩はキュートなダンスポップで、リズミカルに歌うメンバーのボーカルが素晴らしい。アルバムタイトル曲⑫は、アルバムの最後を飾るに相応しい力作で感動的だ。

メンバーの卓越したラップスキルとセンスの塊のような楽曲は、まさに楽曲派アイドルポップというに相応しい。陽気だがチャラくはなく、真っ直ぐな感じもして好感が持てるのがポイント。アイドル好き以外も必聴の傑作アルバムだ。

「             」|・・・・・・・・・

2018/1/12  TRASH-UP!! RECORDS

1. ねぇ
2. きみにおちるよる
3. トリニティダイブ
4. ソーダフロート気分
5. 文学少女
6. 星屑フィードバック
7. サイダー
8. サテライト
9. スライド
10. 1998-

「・・・・・・・・・」は2016年に結成されたシューゲイザーアイドルグループ。
グループ名は様々な呼び方がありdotstokyoという呼称が有名か。
顔は全員バイザーで隠し、名前は全メンバー「・」。アイドルを記号的に表現しようとしたグループで、これは1stフルアルバムとなる。楽曲プロデュースはみきれちゃん。
音楽性はそれまでアイドルではあまり取り上げられることがなかったシューゲイザーやエモコアからの影響が強いギターロックで、インディーロックのアイドル版と言えるだろう。日本的な叙情性をもつ曲の質感は1980年代の初期NAV KATZEにも通じるものがある。
本作の良さはサウンドの抜けの良さとポップセンス溢れる楽曲に尽きるだろう。ノイジーなロックサウンドだが、フックのあるメロディーと明確な歌詞を真っ直ぐに歌うメンバーのボーカルはアイドルポップとして優れていると言える.

冒頭を飾る①はドラマチックに刹那感と儚さが押し寄せる圧巻の曲で、アイドルポップとシューゲイザーが見事に融合した名曲である。情景が浮かんでくる歌詞やセンチメンタルな叙情性は奥深い味わいがあり、女性ボーカルのギターロックとしても完成度が高い。②はメロディックなビートで疾走する王道アイドルポップで、キレのあるサウンドや切迫感に駆られるような雰囲気が良い。③はダンサブルなリズムとノイジーなギターが絶妙に調和しておりカッコいい。⑥は実にアイドルらしい魅力に満ちた清涼感溢れるナンバーで、シンガロングできそうな歌メロやチャーミングなボーカルと問答無用の説得力があるアイドルチューン。
疾走感ある青春ロック⑧は、サウンドプロダクションが素晴らしくて、力強いメロディーラインや思春期の葛藤が刺さる歌詞などすべてが印象に残るもので良い。アイドル系のギターロックでは最高品質の出来である。
⑨はFor Tracy Hydeの管梓(夏bot)が提供しており、繊細なギターの音色や切ないメロディーが印象的な名曲。爽やかな風のように耳にすっと馴染む旋律は、何度も聴いても新鮮な輝きがある。⑩はタイトル通り、1990年代のオルタナティブロックのアイドル的解釈といった感じだ。

曲の良さはもちろんのこと、サウンドのバランスや録音が素晴らしくて、音に力強さとメリハリがある。2010年代地下アイドルの中でも屈指の名盤と言っていいだろう。

Points|・・・・・・・・・

2019/4/4 TRASH-UP!! RECORDS

1. しづかの海
2. Can You Feel The Change Of Seasons?
3. ふたりのダイアリー
4. サイン
5. YOLO no taki
6. クリームソーダのゆううつ
7. いくつかの夜、いくつかのさよなら(Until You Awake From The Dream MIX)

シューゲイザーアイドルグループ「・・・・・・・・・」のラストアルバム。
メンバー全員がバイザーで素顔を隠していたりと、謎に包まれた存在感が魅力であった。
音楽的にはシューゲイザーやエモロック等のインディーロックをアイドルでやってみたという感じだ。アイドルとしては一風変わったコンセプトはユニークなもので、インディーズバンド系の才能ある作家陣が提供した楽曲の完成度は非常に高い。

冒頭①は管梓(For Tracy Hyde)が提供したシューゲイザー+アイドルを独創的に表現した名曲。My Bloody Valentineを彷彿とさせるトリップ感が強い轟音ギターやセンチメンタルなメロディーを歌う透明感ある歌声が、深海を彷徨うような雰囲気を作り出しており秀逸。特に後半のポエトリーパートの詩的な響きが繊細な美しさを感じるもので素晴らしい。
②は青春のイノセントを感じるオルタナティブロックで、キラキラしたメロディーや清潔感あるボーカルに胸がキュンとなる。
③はハタユウスケ(cruyff in the bedroom)が手掛けた切ないギターロックのキラーチューン。炭酸水が弾けるようなノスタルジックな旋律がとにかく良い。
④は細部にまでこだわりを感じる上質なエレクトロポップ。ダンサブルなビートと透き通った青さが心地良い文句なしの1曲。
⑤はアイドル関係ないほぼインスト曲で、次々と展開が変わるアヴァンギャルドなサウンドが面白い。暴力的なグラインドコアとプログレッシブなリズムが嵐のように吹き荒れる激烈な音である。アンダーグラウンドで様々なバンドで活動しているOHTAKEKOHHANが提供している。⑥はtipToe.の楽曲をカバーしており、このグループのカラーを強く打ち出したエモーショナルな出来となっている。

④のようなアイドルポップとして楽しめる曲がある一方で、過激さに全振りした⑤などの挑戦的な方向性の曲も印象に残る。
アイドルとしては奇妙なコンセプトであった「・・・・・・・・・」ならではのアイドルミュージックの可能性を追求した意欲的な内容となっている。

cocoon ep|sora tob sakana 

2017/4/11 FUJIYAMA PROJECT JAPAN

1. ribbon
2. タイムマシンにさよなら
3. 夢の盗賊
4. tokyo sinewave
5. 透明な怪物
6. 夜間飛行

ポストロック系バンド「ハイスイノナサ」の照井順政が音楽プロデュースするアイドルグーループ「sora tob sakana」の2017年リリース6曲入りのEP。

1stアルバム収録の『広告の街』のようにDon Caballero~ Battlesに代表される幾何学的な変拍子を用いるマスロックやエレクトロニカからの影響が強いサウンド構築だが、そこにメンバーの瑞々しい無垢なボーカルが乗り、儚さやセンチメンタルな躍動感を感じる仕上がりとなっている。音楽オタクに向けたようなニッチな音楽性だが、基本はアイドルポップなので楽曲はキャッチ―で敷居は高くない。

冒頭を飾る①はテンポが速くトリッキーなプログレ要素も含む名曲。ドラムとベースの暴れっぷりが印象に残るが、変則的な構成でもメロディーがキャッチ―なのはさすが。
シンセサイザーでぐいぐい盛り上げるスピード間溢れる②はニューウェーブエレポップ感もある傑作。
③はラフなオルタナティブロックサウンドと美しいハーモニー&メロディーが見事に調和しておりノスタルジックな気持ちにさせてくれる。
ラスト⑥はデビューシングル『夜空を全部』にも通じる疾走感溢れる楽曲で、ピュアな歌声がいつまでも心に残る。

幼さを残す歌声は好き嫌いもあると思うが、楽曲の完成度は非常にハイレベルで、アイドルポップの進化系としてひとつの形を示した重要グループであった。

BPM15Q all songs|BPM15Q 

2016/11/23 イチゴスタイル

1. BPM15Q!
2.ドキドキパリラルラ
3.すれ違い僕と君の通信
4.はくちゅーむ
5.HANNARI
6.カタオモイワズライ
7.コクハクワープ
8.GOOD LUCK
9.ごーしゅー!

元BISの『苺りなはむ』と自撮り美少女で有名な『にかもきゅ』からなるアイドルユニット「BPM15Q」の2016年リリースのフルアルバム。

楽曲提供はトラックメイカーとして有名なYunomiが行っており、EDMやFuture Bassを基調としたキュートなエレクトロアイドルポップが楽しめる。メリハリのある力強い打ち込みサウンドは爽快感があり、ボーカロイド風のボーカル処理やメンバーによる個性的な詩の世界観も含めてトリップ感が強い内容だ。

和風のリズムやメロディーと舌足らずなボーカルが、日本独自の文化である【Kawaii(カワイイ)】を見事に体現している名曲④を筆頭に粒ぞろいの曲が収録されている。
何度を聴いてしまう魅力があるキッチュなエレクトロサウンドの①、ゆるい可愛らしさに心が和みほっこりする②、ロマンティックなSF感が可愛い③、相対性理論のミスパラレルワールドに並ぶ?パラレルソングの⑦、切なさが溢れる⑧などなど。

Yunomiの楽曲の素晴らしさはもちろんのこと、二人の作詞やボーカルも優秀である。アルバムトータルとしてひとつの物語を奏でている傑作アルバムだ。

Negative|EMOE 

2020/9/8 

1. Victim (Intro)
2. Victim (Re-rec. Vocal Version)
3. 予防接種のすゝめ
4. レラリンルンリンラン (Intro)
5. レラリンルンリンラン
6. 季節を背に
7. Scar (Intro)
8 .Scar
9. 燃える夜
10. To Be Free

「エモ」と「萌え」の化学反応をコンセプトにしているアイドルグループ「EMOE」の1stアルバム。楽曲派をキャッチコピーにしており、ヒップホップやシティポップを取り入れたエモーショナルなアイドルポップである。本作はそれまでに発表してきたシングルがすべて収録されており(再録含む)、この時点でのベスト盤的内容で聴きごたえたっぷり。

イントロ①から繋がる②は、嵐の前の静けさという感じのメランコリーな雰囲気で徐々に盛り上がり、サビで力強く切ないエモーショナルが爆発するドラマチックなエレクトロポップ。メリハリの効いたサウンドとポップセンスが光る。③は暗い雰囲気の中で、葛藤を吐き出すボーカルや歌詞が印象的である。ラップパートは独特の味わいがあり面白い。
イントロ④から続く⑤は、切ないメロディーとポエトリーが心に響く、都会的な質感の名曲である。ポエトリーパートは可愛らしさと切なさ全開。またサビのメロディーやサウンドが非常に鮮やかで映画のような鮮烈な印象を残してくれる。⑥はシティポップ系の穏やかなサウンドが心地良くて、シンプルな美しいメロディーはポップソングとして優れている。⑨はクールなカッコ良さを放つスタイリッシュなナンバー。⑩はピアノのイントロから始まる美しいバラード曲で、疲れた心を癒してくれる。

自ら楽曲派を名乗るだけあって、とにかく曲が良い。地下アイドルの魅力は現場に会いに行ってこそだという風潮があるが、本作は音楽を聴くのみでも充分に満足感が得られることを示した傑作アルバムである。

Herz uber Kopf|Hauptharmonie 

2016/7/12 箱レコォズ

1.BUDDY
2.Kidnapper Blues~人攫いの憂鬱~
3.パラレルワープ
4.LAST CHANCE(幸福の妨げ)
5.Alice in Abyss
6.yearning(erneutes)
7.トゥー・スウィート・トゥー・リブ
8.きらり
9.シャンパンゴールド・トワイライト・ラグゼ(erneutes)
10.Old Gaffer’s Confession
11.almsgiving
12.assuage his disappointment
13.レディ・ファーイースト(極東淑女)(erneutes)
14.ソプラノ・オーバードライブ
15.春夏秋冬
16.国王

「Hauptharmonie」は2014年から2017年まで活動していた地下アイドルグループで、本作は2枚目となるフルアルバム。楽曲プロデュースはあーりーしゃん(O-ant)。UKロック、ギターポップ、ジャズ、ポストロックなどを取り込んだ、粗削りなアイドルロックは生々しい魅力があり独自の存在感を放っている。

冒頭①はやさぐれ感が凄いロックで、ボーカルも自由自在というかやけっぱちな感じだ。続く凄まじい勢いのジャズロック②は、力強いサックスがうなりを上げる名曲。この曲は地下アイドル(インディーズ)にしか表現できないものが詰まっていて最高である。
③はタイトル通りSF世界観の曲で、煌びやかなメロディーが心に沁みる。④は昭和歌謡な歌メロとサックスでレトロな気分が味わえる。⑩は疾走感溢れるスカナンバー。
⑫はポストロック/エモコアな質感のドラマチックで切ないナンバー。これも素晴らしい曲で、有り体に言えばアイドルの枠を越えている。
⑭は煌びやかなサウンドが心地良い1980年代っぽい爽快なポップナンバーで良い出来だ。

ニッチな音楽要素を上手く取り込み、個性のあるアイドルポップとして完成している。また独自のアングラ感覚も面白さがありクセになる魅力がある。2010年代の地下アイドルグループの中でも音楽性はトップクラスのクオリティであった。

It’s A SAKA-SAMA World|SAKA-SAMA 

2018/11/14 TRASH-UP!! RECORDS

1. 終わりから
2. 寿司でぃ・ないと・ふぃーばー!!
3. デジタルリレーション
4. 光と陽炎(Bye Bye Bye)
5. RISE
6. 物語はいつも
7. 可能性
8. パルピテーション・パルプフィクション
9. マサカサカサマ
10. 聴こえる
11. tetsubou
12. 世界
13. 朝日のようにさわやかに

2016年に結成されたLo-Fiドリームポップアイドル「SAKA-SAMA」の1stフルアルバム。

キャッチコピー通リドリームポップ/シューゲイザーな楽曲もあるが、シティポップやヒップホップなど多彩な音楽要素を取り込んでおり、バラエティに富んだアイドルポップを聴かせてくれる。
プロデュースはTRASH-UP!! RECORDSで同レーベルからリリースされた「・・・・・・・・・」(dotstokyo)の「 」と並んでアンダーグラウンドなアイドルロックを象徴するアルバムと言えるだろう。

冒頭を飾るアイドルドリームポップの金字塔といえる名曲①は、シングル盤では繊細なギターの音色が印象的な儚さや刹那感を感じる出来だったが、本作ではメンバー増員により再録されており、ギターが力強い音色で、始まりを告げるような爽快感溢れるサウンドとなっている。同じくドリームポップ/シューゲイザー路線の⑦や⑩はギターロックとして優秀なエモーショナルな楽曲だ。②はユーモラスなヒップホップダンスチューンで、意外性があるが、楽曲の完成度は非常に高い。
渋谷系っぽいオシャレポップの③は中毒性が強い楽曲で、メンバーのカラオケ的な上手さではない、素人っぽい等身大の可愛らしい歌声が楽しめる。他にもみんなのうたのような⑪やグループアンセムいえそうなデジタルサウンドの⑬などとにかく佳曲揃い。

音楽的に何でもありとなった2010年代のアイドルポップシーンを象徴する充実した内容の1枚だ。

magic hour|tipToe. 

2018/3/28 6jomaproject

1. 特別じゃない私の物語
2. ひとりごと
3. ハッピーフレーバー
4. ビギナー
5. 僕たちは息をする
6. クリームソーダのゆううつ
7. ハートビート
8. かすみ草の花束を
9. 夢日和

tipToe. (ティップトウ)は「みんなで青春しませんか?」をコンセプトに2016年に活動を始めたアイドルグループで、本作は2018年にリリースした1stフルアルバムとなる。

メンバーは3年任期となっており、必ず入れ替えが行われるというルールがあり、アイドルの瞬間の煌めきや儚さに胸がキュンとなる青春ポップだ。メインソングライターはボカロPとして有名な瀬名航。

Capsuleなどの渋谷系ポップからの影響も感じさせ、初々しさ溢れるボーカルなど、青春のキラキラ感が存分楽しめる1枚となっている。
シンセサイザーの音色が印象的なタイトルも秀逸な①は、王道的なアイドルギターポップで、清涼感と等身大の真っ直ぐさが胸に刺さる1曲。
渋谷系サウンドのキャッチ―な⑨はキュートな歌に胸躍るアイドルポップの名曲だ。
他にもエレクトロポップの⑥やアンセムといえそうなエモーショナルな⑧など捨て曲なしで素晴らしい。

①のタイトル通り普通の女の子がアイドルとして踏み出す決意や勇気といった未完成な魅力が良質な楽曲とシンクロしているのが魅力的で、多くの人に聴いて欲しい傑作アルバムである。

CLARITY|PassCode 

2019/4/3 Universal Music =music=

1. PROJECTION
2. DIVE INTO THE LIGHT
3. Ray
4. 4
5. Taking you out
6. THE DAY WITH NOTHING
7. horoscope
8. It’s you
9. In the Rain
10. TRICKSTER
11. Tonight
12. WILL
13. 一か八か -Bonus Track-

ラウドロック系アイドルグループ「PassCode」のメジャーデビュー後2枚目となるフルアルバム。

音楽プロデューサーの平地孝次が手掛けるラウドロックとEDMを掛け合わせたエレクトロニコア/ピコリーモはアイドルシーンに新しい旋風を巻き起こした。完全にロックバンド+アイドルといった質感で、メンバーの今田夢菜が繰り出す激烈なデスボイスとシャウトが大きな魅力のひとつとなっている。

冒頭①からヘビィなギターが唸りを上げて疾走し爽快感抜群。曲調はメロコア風でウルトラキャッチーだ。②も同様に凄まじい勢いで爆走し、エレクトロサウンドのリズムがクセになる。
⑤はPassCode真骨頂といえるキャッチーなリズムのヘビィサウンドと、デスボイスとクリーンボイスが交差する怒涛の突進が圧巻である。
③はPassCodeを代表する名曲のひとつで、とにかくメロディーが良い。このグループは問答無用に重厚なサウンドで圧力をかける楽曲を得意としているが、これはポップソングとしても優れており、メッセージ性の強い歌詞も含めて白眉のナンバーである。
⑦はミドルテンポの聴かせるナンバーで、サビの切ないメロディーの歌唱は王道アイドルポップで意外性がありとても良い。⑩はストレートなぶち上げ電子ロックで高揚感が得られるこれまたいい曲だ。

ハイテンションでキャッチーなリズムのロックが満載のアルバムで、聴けば爽快感が得られるだろう。サウンドは細部にこだわりを感じるアレンジがあり、音楽作品としての完成度は非常に高い1枚だ。

Brand-new idol SHiT|BiSH 

2015/5/27 Sub Trax

1. スパーク
2. BiSH-星が瞬く夜に
3. MONSTERS
4. Is this call??
5. サラバかな
6. SCHOOL GIRLS,BANG BANG
7. DA DANCE!!
8. TOUMIN SHOJO
9. ぴらぴろ
10. Lonely girl
11. HUG ME
12. カラダ・イデオロギー
13. Story Brighter

BiS(第一期)解散後にプロデューサーであった渡辺淳之介が「BiSをもう一度始める」宣言し、活動をスタートしたBiSHのデビューアルバム。
「楽器を持たないパンクバンド」というキャッチーコピー通り、サウンドプロデューサーの松隈ケンタが手掛けるラフなロックサウンドのパンキッシュな楽曲が特徴的である。

BiSHの始まりを告げた①はロックバンドeastern youthからの影響を感じさせる、熱いロックスピリットに溢れるナンバー。この曲独自のエモーショナルさは心地良さとクセになる中毒性がある。代表曲のひとつ②はメロディアスなギターとシンガロングスタイルの歌が心を震わせるアイドルロックアンセム。③は重厚なサウンドのハードな曲だが、しっかりとキャッチーさもあり。④はミドルテンポの切なさが爆発するエモロック。
⑤は切実に心に響くメロディーとメンバーの歌唱が素晴らしい、アイドルポップ史上に残る名曲である。人生で心が折れそうになったときにそっと傍に寄り添ってくれるような優しさがある。
⑥はBiSHのチャーミングな一面が垣間見れる可愛らしいナンバー。ラストを飾る⑬はギミックなしのストレートなメッセージロックで清々しい。

後に大ブレイクするBiSHだが、脱退したメンバーも含むこの作品はまさに原点といえる内容で、荒削りな初期衝動を感じる傑作アルバムである。

ユモレスキ|ヤなことそっとミュート 

2019/10/23 クリムゾン印刷

1.Pstureland
2.uronos
3.BLUE
4.Nostalgia
5.Stain
6.Westminster Chime
7.Whirlpool swirls
8.ワンダーゲート
9.ぼくらのちいさな地図

「ヤなことそっとミュート」はオルタナティブロックを歌う4人組のアイドルグループで、本作は配信限定で発売した3部作EPをすべて収録した編集盤である。

作曲家のタニヤマヒロアキを含むチームDCG ENTERTAINMENTがプロデュースを行っている。グランジ、シューゲイザー、エモなどの1990年代に全盛を誇ったオルタナティブロックサウンドと切ないメロディーに感情を込めて歌い上げるメンバーのボーカルがエモーショナルな波を起こす楽曲は、アイドルの枠に留まらずロック好きにも支持が得られそうだ。

①は歪んだギターが唸りを上げて爽快感があり、センチメンタルなメロディーと透明感ある歌声が心に沁みる。④は印象的なギターリフとサビの美しいメロディーを力強く歌い上げるボーカルに心揺らされる。
⑤は切なさ爆発のスローなギターロックで、まさに【エモ】を体現している。⑥はシンフォニックなサウンドと熱唱するボーカルが絶妙に絡みあう感動的なナンバー。
⑨は憂鬱や葛藤を受け入れて前を向くポジティブなメッセージにパワーを貰える名曲。展開は難解さもあるがキャッチーにまとまっているのが素晴らしい。

ロック系アイドルグループの中でもこれだけ切ない系の楽曲で押すタイプはあまりおらず、感情を乗せたメンバーの熱い歌唱も大きな魅力となっている。アイドルの儚さが切ないロックと上手くリンクしている1枚だ。

タブラチュア|CYNHN 

2019/6/26 テイチクエンタテイント

1. ラルゴ
2. FINALegend
3. トゥインクルスター
4. 絶交郷愁
5, 甘党センセーション
6. リンク to アクセス
7. 雨色ホログラム
8. アンフィグラフィティ
9. 空気とインク
10. wire
11. タキサイキア
12. So Young
13. はりぼて
14. Pray for Blue

2017年にデビューしたディアステージ所属のアイドルグループ「CYNHN」(スウィーニー)の1stアルバム。
「CYNHN」は青色という意味でビジュアルや曲の世界観は青をテーマにしたものが多い。
メインソングライターは「ClariS」や「LiSA」などのアニメタイアップ曲を手掛けている渡辺翔。「でんぱ組.inc」や「バンドじゃないもん!」などで知られるディアステージのアイドルグループとしては異色の路線で、メンバーの真っ直ぐな歌声とサウンドの輪郭がはっきりとした力強い楽曲は洗練された硬派なアイドルロックである。

アルバムリードトラックの①は、葛藤しながらも一歩踏み出そうとする力強いメッセージに勇気づけられる曲で、メンバーひとりひとりのボーカルがエモーショナルに響く名曲である。間奏ではクラシック音楽からの引用もあり、ドラマチックな盛り上がりが非常に熱い。
②はチャーミングにはっちゃけるアイドルらしい楽しいナンバー。可愛くてリズミカルなので中毒性が高い。⑤はステップ踏むような胸躍らせるキュートな曲で、これぞアイドルソングという感じの王道感が心地良い。⑦は優しさに満ちたエレクトロポップで、切ないメロディーと歌声に涙腺が刺激される。⑨はJ-POPとしても優秀なホロっとくる切ないナンバーで、メロディーラインの良さが光っている。
⑪は気分をアゲてくれるカッコいいガールズロック。こういった曲調とも相性が良いボーカルがこのグループの強みである。
⑬は①同様に葛藤や憂鬱を吹き飛ばして前に進もうとするポジティブな姿勢が伝わるCYNHNのアンセムと言えそうな傑作。こういった曲調や歌詞はグループのカラーにベストマッチしている。⑭はしっとりとした歌モノで、切々と歌い上げるボーカルをじっくりと聴くことができる。

アイドルという枠には囚われない楽曲の良さがあり、聴き手を限定していない傑作アルバムである。アルバム曲との並びに違和感はなく、トータルで良く出来ている好盤。

ALICE|MIGMA SHELTER

2020/8/26 AqbiRec

1. In Wonderland
2. Rabiddo
3. Drops
4. Egg Head
5. Y
6. It doesn’t matter
7. Unbirthday
8. Road
9. QUEEN
10. My Wonderland

音楽事務所AqbiRecが「BELLRING少女ハート」に続いて送り出したアイドルグループ「MIGMA SHELTER」の初となるフルアルバム。

サウンドプロデューサーはヤなことそっとミュートの仕事で知られるタニヤマヒロアキ。
グループのキャッチコピー通り重厚なサイケデリックトランスで踊れる高揚感が得られる曲が特徴的である。また基本はトランステクノであるが、ラテンなど様々な音楽要素があり、プログレッシブな曲展開やロック的な衝動性や攻撃性が感じられるものも多い。本作はタイトルから分かるように不思議の国のアリスをコンセプトにしており、幻想的な物語性が強い内容となっている。

冒頭①は透明感あるサウンドや綺麗なボーカルが幻想的な雰囲気を演出する。曲構成が非常に鮮やかで刺激的。②は目まぐるしく展開されるプログレッシブな曲展開が、未知の快感に到達する傑作。エキゾチックな濁流を浴びるような気持ち良さがある。ジャズとトランスが交差するクールで刺激的な③は、これぞ楽曲派アイドルポップという感じだ。とにかく細部にまでこだわりを感じるサウンドが凄い。
陽気な雰囲気が逆に怖い④、軽快だが変則的なリズムの⑤、異国情緒溢れる壮大な⑦など、かなりプログレッシブな仕上がりである。
ドラマチックかつシンフォニックな盛り上がりを見せる⑧⑨は、アルバムの核となる重要ナンバー。⑧は哀愁を帯びたテクノサウンドや切迫感ある歌声が一体となり、エモーショナルな激流に飲みこまれる。⑨はアイドルとは思えないほどの張りつめた緊張感に耳が奪われ、サウンドやボーカルの得も言われぬ美しさには溜息が出るほどの芸術性がある。この2曲の切なさ爆発するメロディー&ボーカルと怒涛のように押し寄せるトランスサウンドは圧巻の一言。

アイドルポップによくあるデジタルサウンドものとは一線を画している内容で、MIGMA SHELTERの問答無用のかっこよさと奇妙な世界観が楽しめる。ライブ映えするサウンド作りを前提にしていると思うが、アイドルグループのアルバムで、ここまで独創的なこだわりを突き詰めたものはほとんどない。『アンダーグラウンドアイドルミュージック』の名盤と言っていい力作である。

Pink|RAY

2020/5/22 Distorted Records

1.Fading Lights
2.バタフライエフェクト
3.世界の終わりは君とふたりで
4.Blue Monday
5.ネモフィラ
6.Meteor
7.尊しあなたのすべてを
8.星に願いを
9.no title
10.GENERATION
11.シルエット
12.オールニードイズラブ
13.スライド
14.サテライト

シューゲイザーとアイドルポップを融合させた先鋭性で注目を集めたアイドルグループ「・・・・・・・・・」解散後、その運営チームと元メンバーが2019年に始動させた「RAY」の1stアルバム。

「・・・・・・・・・」の流れを組んでいるシューゲイザーを基調としたギターロックで、For Tracy Hydeの菅梓、cruyff in the bedroomのハタユウスケ、Ringo DeathstarrのElliott Frazierなど日本とアメリカのシューゲイザーバンドのメンバーが楽曲を提供している。「・・・・・・・・・」の楽曲も収録されており、プロデュースは同じみきれちゃん。アイドルシューゲイザーとしては最高峰の1枚だ。

For Tracy Hydeの菅梓による①は王道シューゲイザーナンバーで、光が射しこむような透明感あるギターの轟音とイノセンスを感じるボーカル&メロディーが素晴らしい。
②はMy Bloody Valentine直系の轟音ギターとフックのあるメロディーが絶妙な味わいで、まさにシューゲイザーとアイドルポップが組み合わさったといえる名曲。
③はサビでのメロディーの切なさが記憶に残るエモーショナルなナンバー。このメロディーラインはポップソングとしても優秀である。
⑥はRingo DeathstarrのElliott Frazierが作編曲しており、ほぼ彼らのいつものシューゲイザー楽曲をRAYメンバーが歌唱している感じだが、サウンドや曲調は文句なしにカッコいい。
cruyff in the bedroomのハタユウスケが提供した⑦は幽玄な雰囲気と浮遊感に引き込まれるナンバー。
⑬と⑭は「・・・・・・・・・」の名曲を「RAY」で新たにリメイクしたもの。サウンドも新録なので原曲とは違った新鮮な魅力がある。

シューゲイザー×アイドルという音楽好きに向けたある意味ニッチなジャンルではあるが、本格的に良いものをつくろうとする制作陣の熱量が伝わってくる傑作アルバムだ。

ファルセット|RYUTist 

2020/7/14 PENGUIN DISC

1. GIRLS
2. ALIVE
3. きっと、はじまりの季節
4. ナイスポーズ
5. 好きだよ・・・
6. センシティブサイン
7. 絶対に絶対に絶対にGO!
8. 青空シグナル
9. 時間だよ
10. 無重力ファンタジア
11. 春にゆびきり
12. 黄昏のダイアリー

新潟のローカルアイドルグループ「RYUTist」の4枚目となるフルアルバム。沖井礼二(元Cymbals) 、北川勝利(ROUND TABLE)、柴田聡子、蓮沼執太、ikkubaruなどの豪華作家陣による良質な楽曲とメンバーの美しいハーモニーは、アイドルポップの枠に留まらない普遍的な輝きを持っており、J-POPの名盤と言っていい出来だ。

蓮沼執太が提供した②は管楽器等を用いた現代音楽的なサウンドと複雑な曲構成に驚かされるが、その挑戦的なサウンドと美しいメロディー、ハーモニーが絶妙に調和している名曲である。ここまでスッと心に入ってくるアイドル曲も珍しい。
柴田聡子による④はウキウキな気分になれるキュートなナンバー。シンリズムが提供した⑥は王道青春アイドルポップに胸キュンという感じで、センスのあるメロディーラインと真っ直ぐな歌声は心に響く。
⑧は沖井礼二節炸裂の渋谷系ガールズポップの傑作ナンバーで、疾走感ある力強いバンドサウンドは圧巻の一言。⑩はikkubaruによる雰囲気抜群のオシャレで幻想的なシティポップナンバー。
ラストを飾る⑫はRYUTistのメンバーと楽曲を手掛けた清浦夏実、沖井礼二、北川勝利の多彩な才能がひとつに結び付いたアイドルポップ史上に残る名曲だ。

とにかく曲の良さは特筆すべきものがあり、サウンドやボーカルもほぼパーフェクトな出来といえる希有なアルバムである。渋谷系やシティポップなどが好きなら必聴の1枚だ。

むだい|代代代 

2018/10/24 DEMON TAPES

1. クラウスイハ
2. 凶ぺ
3. ZZアリン
4. TENPENCHii!!
5. インター流動
6. 血湧き肉DANCE
7. 歪んだ歪み、歪んだ歪み
8. ワールドワイドハピネス

2016年に大阪で結成されたアイドルグループ「代代代」の2枚目となるミニアルバム。ブレイクコア、ハードコアテクノ、インダストリアルなどをごちゃ混ぜにしたようなソリッドでカオティックな異質なアイドルポップである。Nine Inch Nailsからの影響も大きいサウンド構築はかなり意欲的。

6分を越える疾走感溢れる重厚なテクノサウンドの①、実験的な曲構成と激烈なエレクトロサウンドの②、アイドルの曲とは思えないバキバキで切れ味抜群のインダストリアル曲③など、基本的に売れることが目標とされるアイドルポップではあまり例がないメーターの振り切り方だ。
注目はこのグループにしてはストレートなサウンドとキャッチーなメロディーの名曲⑧の存在だ。明るくアッパーな曲調とは裏腹に哲学的な歌詞が印象的で、究極の自己完結というか、マイノリティなオタク心に沁みるアンセムといった感じだ。

説明なしに一聴するとアイドルとは思わない人も多いかも知れない、本格派楽曲派アイドルポップであり、音楽的に刺激的なものを作っていると思う。

BRICKS|There There Theres 

2018/12/12 AqbiRec 

1. Primitive Drain
2. ペリカン
3. NYLON FLAMINGO
4. dignity
5. IKENIE
6. スナッキー
7. There’s something behind
8. SOIL
9. JUKAI
10. 白昼夢
11. STOP
12. RadicalHead
13. Upstairs down
14. Burnable Garbage
15.クロノメサイア
16. Sunrise=Sunset
17. メタリクス

黒いセーラー服に黒い羽をつけた衣装で、サイケデリックロックなど興味深い楽曲をパフォーマンスしていた「BELLRING少女ハート」の2016年『崩壊』後に結成された後継グループ「There There Theres」。本作はそんな彼女達の2018年にリリースされた1stアルバムである。

田中紘治やタニヤマヒロアキといったお馴染み作家陣による二ューウェーブ/ポストパンクからテクノまで幅広いジャンルを取り込んだ音楽性はアイドルの枠を超えており非常に聴き応えがある。

バウハウスなどのゴシックロック/ポジティブパンクかと思えるようなサウンドの②は名曲で、歪んだベースとサビのペリカンという言葉の連呼が頭にこびりついて離れない。
チェンバーロックのような音作りとダークな世界観が圧巻の⑦、ジョイディヴィジョンを思わせるポストパンク系の実験的なロックサウンドでヒリヒリとした切迫感が凄い⑧など、これらをアイドルの音楽作品として出してくることは中々挑戦的。他にはギターがかっこいいストレートなロック⑥や4つ打ちのテクノポップ⑮やアンダーワールドからの影響を感じる⑯などの聴きやすい良曲もありバラエティに富んでいる。

楽曲派アイドルという言葉があるが、まさに本作に相応しい呼称であり、2010年代のアイドルグループ戦国時代の隠れた名盤のひとつである。

WWDD|でんぱ組.inc 

2015/2/18 トイズファクトリー

1. でんぱな世界 ~It’s a dempa world~
2. でんぱーりーナイト
3. ダンス ダンス ダンス
4. NEO JAPONISM
5. FD2 ~レゾンデートル大冒険~
6. ちゅるりちゅるりら
7. まもなく、でんぱ組.incが離陸致します□
8. Dear☆Stageへようこそ□
9. バリ3共和国
10. ファンシーほっぺ□ウ・フ・フ
11. 檸檬色
12. ブランニューワールド
13. イロドリセカイ
14. サクラあっぱれーしょん

2010年代のアイドルポップシーンを代表する「でんぱ組.inc」が絶頂期にリリースした3枚目となるフルアルバム。【大冒険】を全体のテーマとしており、でんぱ組の真骨頂である電波ソングのアイドルポップ解釈といえる頭のネジが飛んだようなダンサブルなナンバーに加えて、これまではなかった聴かせる切ない楽曲も収録しており、音楽的な振り幅が広くなり充実した内容の傑作アルバムだ。

でんぱ組の魅力を最大限に引き出す玉屋2060%が手掛けた楽曲はインパクトがあり、おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドが楽しい①や、アイドルポップ史上に残るダンスナンバー⑭など理性を溶かす問答無用の旋律は圧巻の一言。
前山田健一によるぶっ飛んだ電波ソング⑥や清竜人によるキュートな⑧など豪華作家陣によるバラエティに富んだ楽曲は聴き手を飽きさせない。
またBISの『primal.』にも通じる松隅ケンタによるエモーショナルなロック⑫やアイドルポップバラードのお手本のような⑬などはでんぱ組の新しい魅力を感じさせる楽曲だが、違和感なくでんぱ組の曲として聴けるのはさすがか。

楽曲の質の高さがでんぱ組メンバーのアイドル力というか熱量とシンクロしており、絵に描いたようなアイドルポップの名盤である。

CHECK-IN|ぱすぽ☆ 

2011/12/7 ユニバーサルJ

1. Boarding
2. 少女飛行
3. キス=スキ
4. Hello
5. Street Fighter
6. Turn Round
7. マテリアルGirl
8. ウハエ!
9. Starting Over
10. ViVi夏
11. じゃあね…
12. ハカナ
13. Rock Da Week
14. See You Again
15. 晴れるよ

本作は2009年に結成されたアイドルグループ「ぱすぽ☆」(2013年からはpasspo☆に改名)のメジャー1stアルバムである。

グループのコンセプトは『空』と『旅』で、モチーフはキャビンアテンダント。ペンネとアラビアータ(阿久津健太郎)などの作家陣が手掛ける楽曲は、西海岸がイメージできるアメリカンロック系の爽やかなガールズロックで爽快感抜群。当時チャートを席巻していたAKB48グループとはまったく違う魅力があり、2010年代アイドル戦国時代の中でも良質な楽曲を多数生み出していたグループである。

まず注目はペンネとアラビアータが提供した傑作ガールズロック②③⑦である。メジャーデビューシングル②は女性グループデビューシングル史上初の初登場オリコン1位を獲得したことで知られている。洋楽エッセンスを上手くJ-POPに取り込んだ西海岸を思わせるメロディックなビートは清涼感に溢れており、歌詞やメンバーのハーモニーも素晴らしい名曲。ギターのイントロを聴いただけでいい曲だと分かる③は、パワフルなロックサウンドとキャッチーなリズムが高揚感を与えてくれるパワーポップっぽいロックナンバー。⑦はこれぞガールズロックンロール!と言いたくなるような王道のカッコ良さ。
⑨は大人びた雰囲気の歌唱に引き込まれる傑作。当時チャートでのAKB48との対決も話題になった⑩は、ギターリフが印象的なご機嫌なサマーナンバーで、夏にぴったりの爽快な気分を運んでくれる。⑪はこれもギターが耳に残り、サビでは王道アイドルポップなメロディー&ボーカルに胸が熱くなる。

録音も含めてすべてに非の打ち所がないガールズロックアルバムである。楽曲は完成度はもちろん、メンバーのハーモニーが耳に馴染みやすい声質なのがポイント。今も色褪せない1枚だ。

WORLD WIDE 2010 | SAORI@DESTINY 

2010/04/14  D-topia Entertainment

1.Re:revolution
2.WORLD WILD 2010
3.エスニック・プラネット・サバイバル
4.I can’t
5.Lonely Lonely Lonely
6.Play
7.BABY tell me
8.ファニー・パレード
9.グロテスク
10.プリズム
11.シンパ
12.Lonely Lonely Lonely (FUNKOT.JP remix)

2007年にデビューしたテクノポップアイドル「SAORI@DESTINY」の2枚目となるフルアルバム。Perfumeブレイク以降に大量に登場したテクノサウンドを基調したアイドルの1人だが、単なるフォロワーには留まらず、本作ではエスニック・トランス感溢れる独自のエレクトロポップを確立している。

先行シングルとなった③によく表れているように、サウンドはPerfumeのようなテクノポップとは一味違うものになっており、よりクラブ志向が強いフロア仕様のエレクトロサウンドに病んだ悲観的な歌詞が組み合わさり刺激的なものになっている。彼女のボーカルはクセがなく聴きやすいので、すんなりとこのクレイジーな世界に取り込んでくれる。
サウンドの切迫感が凄い、援助交際をテーマにした歌詞も強烈な⑥は、一度聴けば忘れられなくなる強烈なインパクトを残す。当時のエレクトロポップの中でもかなり異色な作風である。
他にも怪しげな異国情緒ある②、悲しみのバラードというに相応しいエモーショナルな⑤、ピアノが印象的なやるせない⑨など聴きどころは多くあり、特に疾走感溢れるアゲアゲのクラブポップ④は、エレクトロアイドルポップの中でも屈指の大名曲。切なげな表情を見せながらも葛藤を突き抜けようとする力強いビートは最高である。

先悦的な音楽性とSAORI@DESTINYのキャラクターが見事に調和して唯一無二の内容である。この時代だからこそとも言えるが、登場するのが早すぎた存在ではなかっただろうか。埋もれるにはあまりにも惜しい名盤である。

Prism|amU 

2009/12/15 amU Planet

1. prism
2. love the candy stream
3.「「chat」」
4. 0’00”
5. NEO TRAVERAL
6. キティニッシュ・キッチン
7. DIVER
8. moco
9. LiNK U
10. U&Me The カラフル メリーゴーランド ハッピーエンド!

2008年に大阪で結成された2人組のテクノポップアイドルamUの唯一のフルアルバム。
Perfumeブレイク以降に大量に登場したエレクトロサウンドアイドルのひとつだが、楽曲の出来が非常に素晴らしくて、ただのフォロワーでは終わらない、自分たちのオリジナリティが確立されている傑作アルバムである。

冒頭①はエレクトロサウンド主体のダンスポップで、後半のメロウな音色が印象に残る。
②や⑤はいかにも当時流行っていた中田ヤスタカ系のエレクトロガールズポップだが、緻密なサウンド、フックのあるメロディーと期待を裏切らず気持ちよく聴ける。特に⑤のキラキラした疾走感は近未来的なインパクトがあり鮮烈な印象を残すだろう。⑥はシティポップライクなクールなポップスで、大人びた雰囲気が素敵。
⑦はメロウな疾走がとにかく気持ち良く、何度もリピートしてしまう魅力がある。
可愛らしい旋律で胸がときめき、切ない余韻も残す⑧はこのユニットの真骨頂といえる名曲。2人のツインボーカルも魅力的で、可愛らしいボイスと真っ直ぐな歌声という対比がカラフルな楽曲を盛り上げてくれる。
⑨は時間、地球、宇宙などの壮大なテーマを君と僕の物語として表現した儚いアイドルポップの大名曲。この刹那的な美しさは理屈を超えた音楽の輝きがあり、心を突き動かす『何か』を感じることができる。
収録曲の中でも特にこの⑧⑨は埋もれるにはあまりにも惜しい魅力的な楽曲だ。

『なぜこれが売れなかったのか?』という疑問が沸き上がるほどに内容は素晴らしい。登場するのが早すぎたのではないだろうか。デジタルサウンドであるが楽曲が伝える情感には地下アイドル的な生々しさがあり、心にいつまでも残る優れたアイドルポップだ。

Perfume 〜Complete Best〜|Perfume 

2006/8/2 徳間ジャパンコミュニケーションズ

1. パーフェクトスター・パーフェクトスタイル
2. リニアモーターガール
3. コンピューターシティ
4. エレクトロ・ワールド
5. 引力
6. モノクロームエフェクト
7. ビタミンドロップ
8. スウィートドーナッツ
9. ファンデーション
10. コンピューター ドライビング
11. Perfume
12. wonder2

中田ヤスタカ(CAPSULE)のプロデュースで大ブレイクし、日本の音楽シーンに多大な影響を与えた3人組テクノポップアイドルユニット「Perfume」のメジャー初となるフルアルバム。
それまで発表してきたシングル等を収録したこの時点でのベスト盤的な内容で、初期のPerfume独特の刹那感や儚さを含んだ透明感あるエレクトロポップが心に響く傑作アルバムだ。

メジャーデビュー後に発表してきたシングルの近未来三部作②③④はSF世界観が印象的な当時のPerfumeを象徴するナンバーであろう。
②は中田ヤスタカお得意の渋谷系フューチャーポップな可愛らしいナンバー、③はSF小説のような機械文明と人間性というテーマが面白い曲、④は仮想現実が崩壊する終末世界観がやるせない気持ちにさせる名曲。
他には⑥⑦⑧のようなストレートな可愛らしいアイドルポップもあり。
本作で唯一新曲の①はエモーショナルな旋律が心を叩く、アイドル史上に残る大名曲で、当時のPerfumeの名刺代わりといっていいほどの素晴らしい曲だ。

今ではPerfumeブレイク前のアルバムといった位置付けだが、当時はベスト盤ということもあり、この先グループが続いていくのかも不確定で、その刹那的な空気感が魅力といえる作品である。

うりゃおい!!!|BIS

 2014/7/2  avex trax

1. Give me your love 全部
2. BiS
3. 太陽のじゅもん
4. nerve
5. レリビ
6. My Ixxx
7. primal.
8. IDOL
9. PPCC
10. BiSimulation
11. DiE
12. Fly
13. STUPiG
14. primal.2
15. FiNAL DANCE
16.ただ泣いて(FiNAL ver.)

ソロ・シンガーとして活動していたプールイを中心に2010年に結成され、既存のアイドルのイメージを覆す過激なMVやライブパフォーマンスで伝説となった「BIS 新生アイドル研究会」(第1期)のラストアルバムとなった再録中心のベストアルバム。

破天荒なイメージとは裏腹に楽曲クオリティは高く、サウンドプロデューサー松隈ケンタの才能とBISメンバーの力強いボーカルワークが楽しめる。音楽的にはメロコアやエモコアといったパンクシーンからの影響が強い面があり、初期の名曲の再録である⑥や⑦は叙情的なエモロックで、これをアイドルの楽曲としてリリースしていたことは当時かなり新しいことだった。
BISのテーマ曲である傑作②やアンセムとなったダンスポップ④、上田剛士(THE MAD CAPSULE MARKETS)が手掛けたインダストリアル色が強い⑬など良曲揃い。
ラストシングルとなった⑮は、爽快なメロコア風だがどこか切なさを残すアイドルロックの名曲といえるだろう。BISメンバーが書いた詩はアイドルの作詞のひとつの到達点ともいえ、松隅ケンタの楽曲の中でも屈指の曲のひとつである。

音楽性としてはまさにロックサウンド+アイドルといった感じで、メインボーカルであるプールイとファーストサマーウイカのパワフルな歌唱がぴったり合うガールズロックアルバムである。

MEME TOKYO.|ミームトーキョー

2023/2/8 トイズファクトリー

1.メランコリックサーカス
2.レトロフューチャー
3.モラトリアムアクアリウム
4.リアリティ・ウォー
5.スーサイド ボーダレス
6.アンチサジェスト
7.THE STRUGGLE IS REAL
8.ROAR
9.ニュー・ポスト
10.アニモア
11.OVERNIGHT
12.Sweet Dream
13.リバーズ・エンド
14.メテオ蜃気楼
15.ブルーレター

でんぱ組.incのジュニアユニットとして2019年に結成されたアイドルグループ「ミームトーキョー」の1stフルアルバム。デビューから発表してきた全曲と新録2曲からなるこの時点のベスト盤的な内容である。MVやメンバーのファッションなどのビジュアル面も含め非常にスタイリッシュでキャッチーなガールズポップで、ヒップホップとK-POPと王道アイドルポップを掛け合わせたような曲は一度聴いたら忘れられないインパクトがある。

デビューシングル①によく表れているようにラップリズムはキャッチーで、サビでは王道アイドルポップなフックのあるメロディーを決めてくれるので、音楽的な情報量に関係なく軽快なポップソングとして楽しめるのが魅力的だ。
浅野尚志が作曲/編曲したサビの転調が素晴らしい②はこのグループを代表する名曲。これを聴くとでんぱ組というよりEspeciaのようなヴェイパーウェイヴ系のアイドルポップに近いものがあるように思える。③も①と同路線の佳曲でとにかくアゲアゲである。
アルバム前半にある初期の曲に比べて後半の最近の曲はアイドルっぽい可愛い部分は薄くなり、⑨や⑬などより洗練されたかっこいいガールズ系の曲が多くあり。⑩は白眉な出来の不思議系電子ポップで面白い。

楽曲はどれも覚えやすく完成度も高くかっこいい。爆音で流せばテンションアゲアゲで気持ちよくなれるアイドルとしては正義といえる内容のアルバムである。

王国(静岡盤)|fishbowl 

2023/3/24 payayaam records

1. 開幕
2. 熱波
3. 白線
4. 完食
5. 茶切cute side
6. 半分
7. 茶切dope side
8. 湖月
9. 尻尾
10. 平均
11. 風花
12. 五五 demo track (ボーナストラック)

静岡県のローカルアイドルグループ「fishbowl」の2枚目となるフルアルバム。サウンドプロデューサーは元ふぇのたすのヤマモトショウが手掛けており、シティポップからヒップホップまで取り込んだ、オシャレ感ある楽曲はガールズポップとして非常に完成度高くて聴きごたえあり。前作に続き曲のタイトルはすべて漢字二文字で、静岡県をテーマにした楽曲が収録されている。

②はラップパートありのダンスポップで、スタイリッシュで爽快感抜群の名曲である。これは夏のガールズポップとして印象に残る本当に良い曲だ。④はすべてに非の打ち所がないポップナンバーで、特に細部にこだわったサウンドとメロディーセンスが素晴らしい。
⑥はサッカーのハーフタイムをイメージした曲だそうで、リズムと歌詞がばっちりハマっていてノリノリな気分になれる。⑧は幻想的でロマンティックな曲で、メンバーのボーカルの表現力も素晴らしい。

とにかくヤマモトショウの楽曲センスが良くて、どの曲も普遍的なポップミュージックとして良く出来てきている。またfishbowlのボーカルも好感が持てる雰囲気があり、ハモリの聴き心地がとても良い。

リビングデッド|きのホ。

2023/5/24 古都レコード

1.ゲイン
2.魂リリース
3.リビングデッド
4.片鱗
5.泣きのPOWER
6.反面教師
7.渋滞
8.あなたはそうだろう
9.昔の話
10.DANGER!

京都を拠点として活動するローカルアイドルグループ「きのホ。」の2枚目となるフルアルバム。楽曲は同じ京都発のシンガーソングライター「ハンサムケンヤ」が手掛けており、インディーバンドのような粗削りなラフなロックサウンドと劣等感などネガティブな感情を昇華するキャッチ―な曲はライブ感があり、問答無用に元気が貰えるアイドルロックだ。

冒頭を飾る①はギターの音色がカッコよくて、パワフルに歌い上げるメンバーのボーカルが爽快な気分を運んでくれるロックンロール。
②はシングルでリリースされた曲を現体制メンバーで再録したもの。更にラフな生々しいロックに進化しておりカッコいい。
⑦はリズム、リリックともに切れ味抜群のヒップホップナンバー。終盤のメロディアスなパートで大団円という感じになるのも面白い。
⑧は一緒に歌えそうなメロディーと意味深な哲学的な歌詞が突き刺さる名曲である。こういったマイノリティを肯定するアイドル楽曲は良い。
⑩は王道のガールズポップで、キラキラした魅力に元気が貰えるだろう。

ハンサムケンヤの楽曲はユーモアセンスたっぷりで、とにかく聴いていて面白さがある。またそれを全身全霊で歌い上げるきのホ。のボーカルが上手くマッチしており、唯一無二のアイドルロックとなっている。

NUSEUM|NUANCE 

2022/7/13  Lonesome record

1. ミライサーカス
2. セツナシンドローム
3. sekisyo
4.サーカスの来ない街
5. I know power
6. sky balloon
7. タイムマジックロンリー
8. highlight
9. FlatRat
10. 雨粒
11. きみのてのひら

神奈川県横浜市の商店街の企画イベントから2017年に誕生したアイドルグループ「NUANCE」の1stフルアルバム。新メンバー加入により新体制となり、過去に発表してきたミニアルバムから代表的な10曲を現メンバーで再録して、そこに新曲を加えたベスト盤的な内容のアルバムである。

サウンドディレクターはシンガーソングライターの佐藤嘉風。テクノポップからヒップホップまで取り込んだ多種多様なサウンドと王道アイドルポップから歌謡曲を思わせる歌メロが特徴的で、シティポップ的な要素もあり。ローカルアイドルらしい親しみやすい雰囲気のキュートな歌声も魅力がある。

①は曲名通り近未来のサーカスをイメージしたテクノポップで、その独自の世界観は可愛らしいが、歌詞も含めて狂気を感じるイカレっぷりが最高。聴いていると横浜の情景が浮かんでくる②は、刹那的なメロディーとヒップホップパートがカッコいい名曲である。
④は横浜のシンガーソングライターkaoruのカバー曲で、原曲の泥臭さとは違うアンニュイでアイドルらしい可愛らしい仕上がりとなっている。
⑤は歌謡テイストとラップを駆使したユニークな作風でNUANCEの自己紹介的ソングという感じか。⑥は清涼感溢れる青春アイドルポップで、サビの王道メロディーが胸をキュンとさせてくれる。⑦はタイムトラベルを題材にしたSF作風のダンスナンバーで、歌謡曲っぽい歌メロが良い。ナレーションや演劇的なセリフが映画的な世界観を盛り上げてくれる。新曲の⑪はストレートなキュートさに元気が貰える。

メロディーの覚えやすさ、歌いやすさが魅力の大きなポイントで、テクノ歌謡などの古き良き歌謡曲へのリスペクト精神が感じられる作風である。NUANCE独自の毒がある世界観は個性的な魅力があり、本作はそれらが存分に楽しめる1枚だ。

AN ALIEN’S PORTRAIT|Broken By The Scream 

2018/8/22 DAWN DEAD / グラウンド・ベース

1. 恋は乙女の泣きどころ
2. ジャッジメント!!
3. Looking for
4. 繋いだ星座のラブレター
5. 裸の太陽
6. I wish…
7. Do・Do・N・Pa!!
8. oh!my!ME・GA・MIに恋してる!
9. 泣いて泣いて泣きまくれ
10. Message
11. サヨナラバースデー
12. 空駆ける風のように

本作は2017年にデビューしたメタル系スクリーミングアイドル「Broken By The Scream」の1stフルアルバムである。PassCodeなどに代表されるラウドロック系のアイドルグループのひとつに数えられる。メタルコア、ヘビィロックといったラウドなバンドサウンドと、アイドルと思えない強烈なデスボイスとアイドルらしい甘いクリーンボイスが同居する楽曲は、凄まじいエネルギーに満ちておりインパクトは絶大だ。

ラウドロック系アイドルポップの名曲⑪を聴けば分かるが、激烈なヘビィロックサウンドとツインデスボイスで問答無用に畳みかけて、サビである意味ベタともいえる王道アイドルポップなメロディーとクリーンボーカルに鮮やかに場面転換するのは、聴いていて新鮮で高揚感が得られる。①や②も同様路線の傑作で、超ハードかつ超ポップな楽曲構成は唯一無二。単純に聴いているとカタルシスが得られる。
⑥は1990年代J-POP風の曲にデスボイスやブラストビートが割り込んでカオスに突入する。⑦になるとデスボイスのみでもはや完全にメタルコアである。

楽曲には得体の知れないカオティックな爆発力があり、何より聴いていて楽しさや面白さがある。今では数多くいるラウドロック系アイドルの中でも傑作アルバムのひとつである。

Synchronism|Ringwanderung 

2021/8/4  Lonesome Record

1. overture
2. memories
3. es
4. ハロー ハロー
5. FlashBack
6. fall into sky
7. 君のいない街
8. KIRAIDA
9. 夜彩
10. ユレ↑ル↓ナ→
11. 燃える火曜日
12. ササル
13. La La

2019年に結成されたアイドルグループ「Ringwanderung」の1stフルアルバム。
トータルプロデューサーはIMATETSU。ピアノやキーボードを主体とした畳みかけるようなロックサウンド、独特のキャッチーさを持つメロディー、メンバーの歌唱力あるハーモニーなど、聴けばRingwanderungの曲だとはっきりと分かる個性的な魅力があるアイドルポップである。

インスト①から続く②はスピード感溢れるキーボードサウンドと力強いメロディーを歌うメンバーのボーカルが聴き心地が良くて耳に残る。③はピアノとキャッチーなリズムで引っ張る中毒性が高い曲で、やはり歌声が良い味をだしている。④はゲーム音楽かと思うようなインパクトあるイントロからメロディックに疾走するナンバー。⑦は王道アイドルポップなエレクトロポップナンバー。⑩はキーボードのキャッチーなフレーズが素晴らしくて、メロディーの良さも含めて優れたダンスポップの名曲と言えるだろう。代表曲である⑪は歌謡曲的な歌メロが親しみやすく、耳にすんなりと馴染む。

ピアノやキーボードを効果的に使ったサウンド構成は刺激的で面白さがあり、メンバーの安定感あるボーカルも含めて完成度の高い1枚だ。

chronicle|クロスノエシス 

2019/9/30  ekoms

1. cross
2. 残夜
3. in the Dark
4. ペトリコール
5. skit
6. 薄明
7. seed
8. インカーネイション
9. previously

「HAMIDASYSTEM」の元メンバー3人がekomsに移籍して結成された「クロスノエシス」の1stミニアルバム。アイドルグループにはあまりないダークな雰囲気のエレクトロポップで、ビジュアル系バンドに通じるような部分もあり面白い。

冒頭①から攻撃的な電子サウンドの洪水が炸裂し、反復するフレーズが印象的な名曲である。インストパート主体の楽曲構築だが、後半はメンバーのシンフォニックな歌唱も聴ける。
続く②は一転変わってエモーショナルな歌モノで、ボーカルとギターの音色が良い。④は切なく儚い情感がしっかりと伝わる傑作バラード。⑦はしっとりとした中にも力強い意志を感じる曲で、じわじわと心に沁みるメロディー&ボーカルが良い。⑧はアルバムの中でも随一のキャッチーなメロディーのポップナンバーで耳に残る。⑨は近未来的なエレクトロサウンドと浮遊感あるメロディーがトリップ感を与えてくれる。

クロスノエシス独自の耽美感を随所に感じることができる内容で、オリジナリティ溢れる世界観を確立している傑作アルバムである。

Ghost Cat|校庭カメラガール 

2015/6/3  tapestok records

1. Nua
2. Wedge Sole Eskimo
3. Dance with Mr.loneliness
4. Puppet Rapper
5. Swallow Maze Paraguay
6. Tyranno
7. Where the Wild Things
8. Her L Bo She
9. Unchanging end Roll

エレクトロサウンドとラップが特徴的なアイドルグループ「校庭カメラガール」の1stアルバム。グループは略称で「コウテカ」といい、プロデュースはALYT-。ヒップホップ色もあるが、楽曲は感傷的でメロウな旋律で、ボーカルや歌詞も含め刹那感やノスタルジーが押し寄せるような独特の魅力があるアイドルポップである。

佳曲揃いであるが、③⑤⑨は校庭カメラガールの特色がよくでたオリジナリティある傑作である。孤独と音楽の刹那的瞬間を切り取ったような、疾走感溢れるダンスポップ③はアイドルポップ史上に残る名曲。音楽好きなら共感できそうな歌詞やメロディーから感じられる煌めきと高揚感が素晴らしく、音楽への愛情が感じられる1曲だ。⑤は王道的なエレクトロポップナンバーだが、放たれる切迫感や焦燥感は唯一無二。⑨はノスタルジックという言葉がぴったり合うラップ&メロディーのエモーショナルな曲で、延々とずっと聴いていられるような心地良さがある。他にもキュートかつスタイリッシュなご機嫌なポップナンバー④やストレートなエレクトロポップ⑤など楽曲の出来は文句なし。

このアルバム以降、校庭カメラガールは改名後の校庭カメラガールツヴァイも含めて意欲的な作品を多くリリースしている。本作は若い時期でしか表現できないような初期衝動や刹那感に心が突き動かされる傑作アルバムである。

工業製品|テンテンコ 

2016/12/14 トイズファクトリー

1.くるま
2.放課後シンパシー
3.次郎
4.星の電車
5.くるま~助手席 school~
6. Good bye, Good girl.
7.流氷のこども

BIS(第1期)解散後にソロアーティストとして活動を始めた「テンテンコ」の1stミニアルバム。全曲作詞は自身が手掛けており、アレンジではボアダムスの山塚アイやllicit Tsuboiなどが参加している刺激的な音像は聴きごたえたっぷり。YMOや戸川純といったニューウェーブ系を好んで聴いていたという彼女らしいキャッチーでアバンギャルドなエレクトロポップが楽しめる1枚。

①は山塚アイの攻撃的な電子サウンドが炸裂するが、テンテンコのボーカルが可愛らしい声質なので意外にポップな印象を残す。タイトルからして期待してしまう②はillicit tsuboiによる低音を強調したアレンジが印象的なニューウェーブなテクノポップの傑作。③は童謡やみんなのうたっぽい歌モノで、何度もリピートしてしまう中毒性がある。⑥は東電OL殺人事件をテーマにした曲で、レベッカを彷彿とさせる1980年代ポップサウンドとメロディー、テンテンコのキュートな歌唱、意味深な歌詞とすべて素晴らしい名曲。⑦は七尾旅人作曲のエレメンタルを感じるしっとりとした癒されるナンバー。

バラエティに富んだエレクトロサウンドにテンテンコの不思議系キャラクターがばっちりとハマった楽曲は独特の可愛らしい魅力がある。

さくら学院 2010年度 ~message~|さくら学院  

2011/4/27  トイズファクトリー

1. FLY AWAY
2. Hello ! IVY
3. チャイム
4. ハッピーバースデー
5. プリンセス☆アラモード
6. Brand New Day
7. Dear Mr.Socrates
8. めだかの兄妹
9. ド・キ・ド・キ☆モーニング
10. 夢に向かって
11. message

アミューズから2010年にデビューしたアイドルグループ「さくら学院」の1stアルバム。義務教育を終えると同時にグループ卒業となるルールがあり、サイドプロジェクトとして「BABYMETAL」を生んだことでも有名である。音楽的には明るく元気を貰える王道アイドルポップで理屈抜きに楽しめる内容である。

ビジュアル系バンドdefspiralのRYOが作編曲した冒頭①からパワフルなロックサウンドの煌びやかなアイドルポップで爽快感と高揚感が得られ、続く②も疾走感あるキャッチーな曲に胸躍る。⑪はキラキラしたメロディー&ボーカルの、青春の直向きさに心が明るくなる曲。④~⑨は部活動という派生ユニットの楽曲群で、それぞれテーマに沿った音楽性は興味深く面白さがある。クッキング部(ミニパティ)の⑤はキュートなデジタルポップ。新聞部(SCOOPERS)の⑥はハードロック調のご機嫌なガールズロック。
バトン部(Twinklestars)の⑦は元Cymbalsの沖井礼二が提供した楽曲で、古代哲学者ソクラテスをテーマにした胸キュンアイドルポップの名曲。ソクラテスを題材にした楽曲を女子小中学生が歌うのが最高である。重音部(BABYMETAL)の⑨は切れ味あるギターリフの本格派ヘビィメタルサウンドと可愛らしいアイドルポップが見事に同居しており、この独自の楽曲センスは当時の音楽シーンで先鋭的であった。

ハロー!プロジェクトのようなアイドルグループ内派生ユニットには楽しさと魅力があり、楽曲も粒ぞろいである。アイドルポップとして文句なしの傑作アルバムだ。

3776を聴かない理由があるとすれば|3776 

2015/10/28 Natural Make

1. [Introduction]
2. 登らない理由があるとすれば
3. [IntervalA]
4. 水でできている
5. [IntervalB]
6. 洞窟探検
7. 避難計画と防災グッズ
8. 日本全国どこでも富士山
9. [IntervalC]
10. 春がきた
11. 湧玉池便り
12. 生徒の本業
13. [IntervalD]
14. 旅ふぉとセレクション
15. [IntervalE]
16. 八合目にゃまだ早い
17. [IntervalF]
18. 春は巡る
19. 3.11
20. [Ending]

富士山のローカルアイドル「3776」が2015年にリリースした1stフルアルバム。
元々は前身の「TEAM MII」からの流れを組むアイドルグループであったが、メンバー卒業などに伴い、「井出ちよの」のソロユニットとして活動している。プロデュースしている石田彰の楽曲センスや世界観に面白さがあり、天真爛漫な井出ちよのの魅力に上手くマッチしている。

スペーシーなイントロダクション①に続いて始まる②は戸川純のような歌唱法のボーカルと鋭利なギターリフが印象的なニューウェーヴ色の強い曲。④は疾走する透明感あるギターロックだが、インディーロック的な生々しい魅力がある。
⑦は皮肉が効いた歌詞が痛快な軽快なロックナンバー。⑪はTEAM MII時代の楽曲で、幻想的というかサイケデリックなトリップ感があり、中毒性が高い1曲。⑯はふんわりとしたアバンギャルドな作風のポップソング。震災復興応援ソング⑲は今この瞬間を大切にというメッセージに心が揺さぶられる名曲。アルバム収録曲の中では意外性があるストレートなギターポップで、記憶に残る優れた楽曲である。

富士山をテーマにしながらも一般的なアイドルというイメージからはかけ離れた挑戦的な作風のアルバムである。例えるならポストパンクのような刺激的な音楽を作っていると言えるだろう。2010年代のローカルアイドル勢の中でも特に個性的な1枚だ。

Discovery|amiinA 

2018/12/5   SHIBUYA GIRLS POP

1. zion
2. Jubilee
3. sign
4. Caravan
5. allow
6. nana
7. Unicorn
8. magic
9. eve
10. Rising
11. Discovery

2人組の女性アイドルユニット「amiinA」のセカンドアルバム。音楽性はアイドルポップでは珍しいエレクトロニカ、ポストロックやフォーク/トラッドなどの影響を感じさせるもので、透明感ある歌声と美しいメロディーはザバダック、遊佐未森、坂本真綾らに通じるものがあり。

GOING UNDER GROUNDの松本素生作曲の②は爽快感抜群の青春パワーポップナンバーで、力強さを感じるメロディーとメリハリのあるロックサウンドは聴いていて気持ちが良い。③はアイドルらしいイノセンスを感じる旋律に胸躍るエレクトロガールズポップ。
アイリッシュパンクバンドTHE CHERRY COKE$が作曲、演奏を手掛けた④は、意表をつくコラボに驚かされるが、ワールドミュージック色ある楽曲は意外にアイドルポップと相性がいいのか違和感なく楽しめる。the band apart作曲、演奏の⑤は目まぐるしい展開のバンド演奏とキャッチーなメロディーが気分をアゲてくれる。⑥は可愛らしい歌声と暖かいアコースティックサウンドに心がほっこりする。
⑨はスペーシーな雰囲気のヒーリングポップで、終盤のスティーヴライヒを彷彿とさせるサウンドとフレーズがエモーショナルに耳に響く。タイトル曲⑪は大地や地球を感じさせる壮大なスケールの楽曲で、あらかじめ決められた恋人たちへの池永正二による身体に沁み渡るメロディー、切々と歌い上げる2人のボーカルに心揺らされる名曲である。

豪華作家陣が提供した多彩な楽曲がamiinA独自の世界観に上手くはまっており、真っ直ぐな歌声がストレートに胸に刺さる傑作アルバムだ。

I am ONLY|脇田もなり

2017/7/26 VIVID SOUND

1. IN THE CITY
2. IRONY
3. 泣き虫レボリューション
4. ディッピン
5. Cloudless Night
6. 祈りの言葉
7. Boy Friend
8. I’m with you
9. EST! EST!! EST!!!
10. 赤いスカート
11. あのね、、、
12. 夜明けのVIEW

シティポップやAORなどアーバンな音楽性でアイドル音楽シーンに多大な影響をもたらしたガールズグループ「Especia」から脱退した「脇田もなり」の1stフルアルバム。グループ時代から魅力があった個性的な歌声と豪華作家陣によるシティポップやディスコなどのグルーヴィーな楽曲は聴きごたえたっぷりだ。

冒頭を飾る、はせはじむが手掛けた①は都会での戸惑いと期待をオシャレなサウンドで包み込んだ洗練されたシティポップナンバー。脇田もなりの雰囲気にぴったりとハマっている名曲である。
ノーナリーヴスの西寺郷太が提供した③は、胸躍る小気味よいダンスロックで、チャーミングでキュートな脇田もなりの歌声がとにかく良い。
⑤は手掛けたikkubaruお得意の大人な雰囲気のジャジーな楽曲で、曲の良さを最大限に引き出すクールなボーカルがカッコいい。
マイクロスター提供の⑦はキラキラした1980年代ユーロビートサウンドと元気に弾ける歌声に胸がキュンとなる。矢舟テツローによる⑧はジャジーなムード歌謡で、脇田もなりはこういったタイプの楽曲と相性がとても良い。⑩は可愛らしいボーカルが映えるアイドルっぽい爽快なシンセポップで、提供したマイクロスターの楽曲センスの良さが感じられる。

各作家陣の多彩な楽曲をソロシンガー脇田もなりの世界として表現できる歌声は素晴らしいの一言。存在感ある独自の歌声が存分に楽しめる1枚である。

GREENPOP|加納エミリ 

2019/11/20 なりすコンパクト・ディスク/Hayabusa Landings

1. 恋せよ乙女
2. ごめんね
3. NextTown
4. ハートブレイク
5. 恋愛クレーマー
6. Just a feeling
7. フライデーナイト
8. 1988
9. 二人のフィロソフィー
10. Moonlight
11. ごめんね(Extended Ver.)

作詞/作曲/編曲まですべて自身で手掛ける完全セルフプロデュースのアイドル/シンガーソングライター「加納エミリ」の1stフルアルバム。1980年代エレポップサウンドを基調としたサウンドと胸をキュンとさせるメロディーは、懐かしくも新鮮な魅力があり、そのレトロな世界観は2010年代に登場した音楽ジャンル『ヴェイパーウェイヴ』と親和性があるものである。

冒頭①は加納エミリのコンセプトや楽曲の方向性がわかりやすく聴き手に伝わる名曲である。とにかくレトロ&キュートなセンスが全開で、サウンドはもちろんのこと歌詞の言葉選びにも才能が感じられる。代表曲②は1980年代後半のユーロビートをオマージュしたようなキラキラしたサウンドと切ないメロディーが、波のように押し寄せる傑作ナンバー。
③はクールでアーバンなカッコよさを詰め込んだニューウェーヴ色が強いナンバー。
⑥は本作の中でも白眉な煌びやかなダンスポップで、彼女の日本人離れしたフィーリングに驚かされる。⑨は1980年代のアイドルポップっぽい楽曲で、伸びやかなボーカルと歌詞の可愛らしさが印象に残る。

楽曲が良いのはもちろんのこと、自分がやりたいことがはっきりしており、それがシンプルに伝わるのが良い。デビューアルバムとは思えないほど完成度が高い1枚である。

青春群像|タイトル未定

2023/9/5 ‎TSUIMA Inc.

1. 踏切
2. いつか
3. 主題歌
4. 薄明光線
5. ガンバレワタシ
6. 鼓動
7. 綺麗事
8. 溺れる
9. 道標
10. 青春群像
11. にたものどうし

北海道札幌市を拠点に活動するアイドルグループ「タイトル未定」が、数量限定で2021年にリリースした1stアルバムを新体制メンバーで再録したものに新音源1曲をプラスしたアルバム。ローカルアイドルは楽曲に力を入れたグループが多くあるが、同時代のfishbowl(静岡)やきのホ。(京都)などのユニークな音楽性とは違い王道アイドル感が溢れたもので、イノセンスを感じるピュアな歌声と青春をテーマにした美しい楽曲が心を揺さぶる1枚。

①は青春の葛藤や戸惑いを受け入れながら前に進もうとするメッセージが胸に刺さる、真っ直ぐなポップナンバー。③は「リリィさよなら。」が手掛けた耳に残るメロディーと音楽愛が伝わる歌詞が秀逸な曲。④はやるせない葛藤や焦燥感が心に迫る傑作バラード。
⑤は洗練されたポップセンスとストレートな歌詞が光る1曲。⑥はシンガロングできそうな美しく力強い楽曲で、アイドルポップアンセムと言っていいだろう。⑦は清涼感ある前向きな歌に元気を貰える。アルバムタイトル曲⑩は「リリィさよなら。」提供の青春ソングの決定版と言えるような瑞々しい魅力に溢れており胸がキュンとなる。

好感の持てる真面目さが印象に残るアルバムである。様々な葛藤や憂鬱を音楽として昇華する前向きなメッセージは聴く人を勇気づけること間違いなしだ。

ヨモスガラ|yosugala

2023/5/20 WEXS

1. prologue
2. indigo
3. 会心の一撃
4. 僕のわがまま
5. バカばかC
6. オヒメサマ?
7. スペードのエース
8. エスカレート
9. ひとりごと
10. オトギバナシ
11. となりどうし
12. canvas
13. 四葉のクローバー
14. 夜明けの唄

2022年に結成された4人組のアイドルグループ「yosugala」の配信でリリースされた1stアルバム。前向きなメッセージ迸るストレートなロックで、楽曲の良質さと歌唱スキルの高さは特筆すべきものがある2020年代の最新型アイドルロックである。

デビュー曲①はyosugalaの始まりを告げる決意表明のような熱い曲で、力強いメロディーと歌詞が心に響く。②は疾走感溢れるサウンド&メロディー、メンバーの熱いボーカルが素晴らしいアイドルロックの名曲である。特に歌声の良さは特筆すべきものがあり本作の中でも目玉の1曲と言えるだろう。③はRingwanderungに通じるようなリズミカルなダンスロックナンバーで、聴く物に勇気を与えてくれるエネルギーに満ち溢れている。
心地良いリズムが中毒性を生む⑤はシンセの音色や歌詞の語感などセンスの良さが光る。⑦は王道的なストレートなポップロックで、アニメなど映像作品にタイアップできそうなメジャー感がある。J-POPとしても非常に良く出来ている⑨はエモーショナルなメロディーとハーモニーが優しく心を包み込む。⑬はノスタルジックな旋律が波のように押し寄せる壮大な楽曲。
⑭はyosugalaの代名詞と言えるナンバーで、センチメンタルなメロディーやメッセージ性などこのグループらしさが詰まった秀逸な1曲。

楽曲の良さやボーカルの魅力はもちろんのこと、ブレイク必須の空気感が随所に感じられる。2023年を代表するアイドルポップの傑作アルバムである。

さとりパイオニア|さとりモンスター

2020/6/27  ‎NTKCREATiON

1. さとりパイオニア
2. トワイライト
3. HIKIGANE
4. といととい
5. 春が踊る
6. はじめの季節
7. さとりパイオニア(Instrumental)

下北沢を拠点に活動しているアイドルグループ「さとりモンスター」の1stミニアルバム。
cinema staffが所属するTHISTIME RECORDSが手掛けるアイドルであり、楽曲もcinema staffの三島想平が提供しているものが多くある。直球のエモロックから王道アイドルポップまで良質な楽曲が揃っており親しみやすい雰囲気が魅力である。

①は三島想平提供のPerfumeタイプのエレクトロポップで、キャッチーなリズムとユニークな歌詞が印象に残る。②は真っ直ぐと心に響く青春エモロックで、さとりモンスターの中でも屈指の名曲と言っていいだろう。クセのないストレートなロックだが、リッチー鎗ヶ崎が手掛けた切ないメロディーラインがメンバーのボーカルとぴったりマッチしており素晴らしい。④は個性的なメロディーと意味深な歌詞が光る一風変わったアイドルポップである。⑤は②と同タイプの熱く切ないロックナンバー。⑥はシンガロングできそうな清涼感ある王道アイドルソングで文句なしに良い曲だ。

②を筆頭にとにかく曲が良く、アイドル好きだけでなくロック好きにアピールできるような魅力がある傑作アルバムである。

天秤|INUWASI

2022/3/29 ロックフィールド

1. ストリングスウォーズ
2. Planetes
3. Altair
4. Soaring
5. memento
6. 別れ道

犬と鷲の融合『ハイブリッドラプター』をイメージしたアイドルグループ「INUWASI」の3枚目となるミニアルバム。初期はポストハードコア路線であったが徐々に音楽性は変化していき、ロックからエレクトロサウンドまで幅広く取り込んだ2020年代最新型のアイドルポップである。

佳曲揃いのミニアルバムであるが、特に辻久カオルが手掛けた、タイトル通りストリングスの洪水に飲まれる①は聴きごたえある力作である。壮大でエモーショナルだが複雑な展開はなく、メンバーの飾らないボーカル含めストレートに魅力が伝わるのが良い。②は疾走感溢れるエレクトロポップで、切れ味あるサウンドは気分をあげてくれる。③も②と同路線だがよりピコピコした電子サウンドに胸躍らされる傑作ナンバー。④は大人びたクールでハードなエレクトロポップでカッコいい。ラスト⑥はINUWASIには珍しいキュートな王道アイドルポップで切ない余韻を残す。

インパクト大の①を筆頭に楽曲は粒ぞろい。アイドルの枠にはとどまらない優れた内容のミニアルバムで多くの人が楽しめそうな1枚だ。

BESIDE U|The Idol Formerly Known As LADYBABY

2018/6/1 PLAST

1. Pelo
2. Me! Me! Me!
3. Sanpai! Gosyuin Girl
4. Easter Bunny
5. Generation Hard Knocks
6. Onigiric Riviver
7. Shibuya Crossing
8. Shan Shan Shantan
9. Pinky! Pinky!
10. Lady Baby Blue

メンバーに女装外国人を含むユニークなパフォーマンスで世界的な知名度も獲得したアイドルグループ「LADYBABY」。2016年からは金子理江と黒宮れいの2人組となりグループ名も「The Idol Formerly Known As LADYBABY」に改名。本作は2016年~2017年に発表したシングルすべて収録したコレクションアルバムである。音楽性はBABYMETALと同様にヘビィメタルとアイドルポップを掛け合わせたもので、スピード感あるキャッチーなガールズロックがたっぷりと楽しめる1枚。

①や⑨などの疾走感溢れるメロディックな楽曲はヘビーなギターサウンドと可愛らしいボーカルの掛け合いが上手くマッチしており、熱量あるアイドルロックとして優れていると言えるだろう。②も同路線だがよりキュートさが強調されており親しみやすい。③はエレクトロサウンドとロックを掛け合わせた近年のアイドルポップではお馴染みの曲展開が楽しめる。④はアイドル楽曲を多く手掛けている浅野尚志が作曲・編曲した会心の傑作。メタルサウンドのパワフルさと一緒に歌いたくなるメロディーが絶妙に組み合わさっており秀逸である。ラスト⑩は大森靖子が提供した2人にぴったりの世界観の歌詞とエモーショナルなメロディーが光る名曲。オルタナティヴギターロックなアレンジもセンスが良く、アイドルという枠には留まらない良質な楽曲である。

名曲⑩を筆頭に聴きごたえたっぷりの充実した内容のアルバムである。気軽に聴いて高揚感が得られるが、楽曲はそれぞれ良く作り込んである印象で、メタル系のアイドルロックの中でも必聴の1枚だ。

exFallen|ゆくえしれずつれづれ

2018/8/1 コドモメンタルINC.

1. Phantom Kiss (feat.Fronz from Attila)
2. 行方不知ズ徒然
3. 我我
4. Ways to Die
5. Exodus
6. Paradise Lost
7. MISS SINS
8. JUDAS
9. Helpless
10. Primal Three
11. 白と黒と嘘
12. Loud Asymmetry
13. Hue
14. Call my name Miss Felis
15. Existence Metaphysical
16. 黒白夜

『だつりょく系げきじょう系』をコンセプトとして2015年に結成されたアイドルグループ「ゆくえしれずつれづれ」の2枚目となるフルアルバム。PassCodeに代表されるラウドロック系のアイドルグループのひとつだが、ポストハードコアやスクリーモからビジュアル系まで取り込んだ激烈な音楽性は個性的なもので、異質な存在感を放ちながらもキャッチーなアイドルポップとして親しみやすい魅力がある優れたアルバムである。

アメリカのメタルコアバンドAttilaのボーカルFronzがゲスト参加した冒頭①から凄まじい勢いの激情ヘヴィロックが炸裂し圧倒されるが、可愛らしい歌声の叙情的なメロディアスなパートと激情迸るシャウト/スクリームのパートを上手く組み合わせており、ストレスが解消されるようなカタルシスが得られる。②も①の流れをくみ激烈&メロディックに疾走する。ハードコアなサウンドの洪水とシャウト/スクリームはアイドルの枠を越えており感動的ですらある。③はギターリフが印象的な爽快なアイドルロックで、絶妙なキャッチーなリズムが中毒性を生み出す。⑥は切ないメロディーがドラマチックな曲調にぴったりとハマっている。⑦は疾走する泣きのメロディーにインパクトがあり、メタルや同人音楽などへの親和性が感じられる。カオス渦巻く⑫はこの手のラウドロック系アイドル楽曲の中でも屈指の出来と言える名曲。まさにアイドルポップ+激情ハードコアの完成形で、スピリットを感じるほどの激烈なシャウト/スクリームと最高にメロディアスな旋律の融合は必聴である。本作の初回限定盤にはボーナストラックとして⑬~⑯にメンバーのソロ曲が収録されており、英艶奴の⑭や◎屋しだれの⑯などハードかつメロウな佳曲が楽しめる内容となっている。

メンバーの尋常ではないテンションの高さがハイクオリティな楽曲と上手く結びついた希有な作品である。2010年代後半のアイドルロックの名盤と言っていい1枚だ。

アイライフスターターパック(TypeA 集合盤)|iLiFE!

2023/1/10 CROSS SIDE MUSIC

1. 会いにKiTE!
2. アイドルライフスターターパック
3. 初恋リバイバル
4. ヒラリラリア
5. むげんだいすき
6. Hands up!
7. ころころガール

『私(i)と貴方(!)で作るアイドル(i)ライフ(LiFE)』というキャッチコピーをコンセプトに2020年に結成されたアイドルグループ「iLiFE!」の初CDアルバム。配信では全16曲だが、CDでは8種類の形態があり、7曲目が異なる仕様となっている。底抜けな明るさと可愛らしさに元気を貰えるアルバムで、理屈抜きに楽しめる王道アイドルポップで好感が持てる内容である。

まず注目はiLiFE!のブレイク曲となった②のユニークさだ。アイドル現場では定番のオタクによるコールを取り込んだ楽曲で、TikTokなど動画で幅広い層にアイドル現場の面白さを伝えることに成功している。楽曲提供したMedansyの着眼点が素晴らしく、アイデアの勝利とも言えるが、単純にアイドル曲としても誰もが楽しめる良い曲である。同じく①もコールを使った自己紹介ソングで、アイドル文化をテイストに元気に弾けるキュートな魅力が楽しめる。他にも切なさ滲むメロディーがとてもアイドルらしい青春ポップ③、可愛さ全開の⑤、チャーミングなポップセンス溢れる⑦などストレートな王道アイドルポップがふんだんに収録されている。

テーマとしてアイドルとオタクの関係性を表現した曲が多くあり、親しみやすいノリやキャッチ―なリズムと上手くリンクしていると感じる。マニアックでコアなアイドル文化というものをポップミュージックとして解りやすく伝えている傑作アルバムである。

9nine|9nine

2012/3/7  SME Records

1. Fly
2. 少女トラベラー
3. チクタク☆2NITE
4. 夏 wanna say love U
5. koizora
6. オレンジ days
7. Cross Over
8. too blue
9. Love me?
10. ダーリン、ダーリン
11. #girls
12. SHINING☆STAR
13. 9nine o’clock (Bonus Track)

2005年に結成されたアイドルグループ「9nine」の3枚目となるアルバム。2010年に新体制に移行した後の初となるアルバムで、プロデュースはagehaspringsが担当している。

Perfumeなどのアーティスト寄りのアイドルグループを意識したのか音楽的にはいかにもなアイドルっぽさはあまりなく、ガールズグループという感じの作風で、ポップミュージックとして非常に完成度の高い楽曲が多く収録されている。

①は力強いビートと歌声がダイレクトに響くエレクトロポップで気持ち良い高揚感が得られる。②は気分アゲアゲのトランステクノサウンドとフックのあるメロディー&歌詞が刺さるスタイリッシュなナンバー。③は1980年代っぽいロマンティックでキュートな旋律に胸がキュンとなる。④は清涼感ある爽快なサマーチューンで清々しい気分を運んでくれる。
⑦はハートフルなメロディー、コーラスや楽曲構成など全てが素晴らしい名曲。1度聴けば延々とリピートしてしまう魅力があるパーフェクトなポップソングである。⑫はノスタルジックに疾走し、煌びやかなメロディーと瑞々しいボーカルが胸に迫る。ボーナストラック⑬は9nineメンバーの自己紹介ソング。ファンキーなグルーヴやメンバーの洗練されたボーカルワークなどクールなカッコ良さが全開で、グループのテーマ曲に相応しい秀逸な曲である。

楽曲の完成度はさすがagehaspringsという感じでメンバーのボーカルは表現力含め安定感抜群で文句なしの出来。誰もが楽しむことができるアイドルポップの名盤である。

StartingOver|我儘ラキア

2019/7/9 ロックフィールド

1. Beginning of the story
2. Zettai Kakumei
3. PreciousTime
4. My life is only once
5. Sing with you
6. Be light for you
7. In the end
8. To be continued
9. But, not alone
10. There is surely tomorrow
11. Reboot with… 「 」
12. Days
13. Declaration of war
14. Trash?
15. I’ll never forget 「 」
16. The Reason
17. Prayer
18. We’ll keep raising the flag
19. Leaving
20. Melody

2016年に結成されたアイドルグループ「我儘ラキア」。本作はそれまでに発表された楽曲を再レコーディングして2019年にリリースされた1stアルバムである。アイドルグループというよりガールズバンドに近いカッコ良さがあり、メンバーのカリスマ性あるボーカルの存在感を生かした切れ味鋭いポップロックである。

インスト①から続く②は直球の熱いロックナンバーで、我儘ラキアの魅力がわかりやすく伝わる。③もメリハリのついた力強いサウンドとメロディアスな旋律で高揚感が得られる。④は力強い意志を感じさせる歌詞が良い。⑧は温かいメロディーとボーカルが聴く物を優しく勇気づけてくれる。⑩は切ないメロディーの洪水とクールなラップパートが印象的。
⑫は2ビートでメロディアスに疾走し、後半はエモーショナルな展開で感動的なフィナーレを迎える。メロコアやエモコアへのリスペクトを感じる優れた楽曲だ。⑲はメロディーの良さが光る英詩のスタイリッシュなナンバー。⑳は懐かしさを感じるような王道ガールズポップで、ハートフルなメロディーと前向きなメッセージが清々しく心に響く。

20曲と大ボリュームのアルバムであるが、メンバーのボーカルのカッコ良さも含め中毒性を生みだす楽曲が多くあり。全体の流れや雰囲気も個性的な傑作アルバムだ。

Do The Right Thing|O’CHAWANZ

2021/4/6 SECOND FACTORY

1. Rest of the Girls
2. Rolling Hill
3. MARCH FORCE 2020
4. DADA
5.. SPARK!!
6.. EARTH
7. LINE
8. Party Online
9. TWILIGHT

文化系アイドルヒップホップユニット「O’CHAWANZ」の3枚目となるアルバム。アイドルらしいキュートなラップを軸にした、ポップネスが弾けるダンサブルなヒップホップである。可愛らしさと楽曲のカッコ良さが絶妙なバランスで調和しており、チャーミングな歌声とグルーヴィーな旋律に心がほっこりする1枚。

①はキャッチ―なリズムのゆるふわなラップが気持ち良いダンスポップ。冒頭から親しみやすい雰囲気が全開で好感が持てる。②はクールなグルーヴ感あるサウンド&ラップがひたすらカッコいい。⑤は高速ラップを畳みかける軽快なナンバーで、リリックもユーモアセンスがあり面白い。⑥はファンキーなトラックと可愛らしい陽気なラップと元気が貰える。口ずさみたくなるキラキラした歌メロなどアイドルラップとして秀逸だ。⑧はノリノリなリズムで押しまくるパーティーラップで、リリックも含めポップネスが光る1曲。⑨はノスタルジックで温かい感動的な曲で、メロウな雰囲気の耳に残るバラードである。

アイドルポップ×ヒップホップを聴かせてくれるグループは未だにそう数は多くなくマニアックな音楽性だと思うが、ストレートに良いものを追求している印象で、大衆性も兼ね備えた超ポップなアイドルヒップホップがふんだんに楽しめる。

歪んだ鉛筆は誰かに折られないために|HAMIDASYSTEM

2018/9/5 DASHI RECORDS

1. 歪んだ鉛筆
2. 夜の箱庭
3. インビジブル・ムービー
4. 水槽標本
5. 舞台に溶かされて
6. 行方

『メロディック・エレクトロニカ』をコンセプトに活動していたアイドルグループ「HAMIDASYSTEM」。本作は3枚目となるミニアルバムである。音楽性としてはエレクトロニカを軸にポストロックやエモコアなどの要素も含み、インディーロックやヴィジュアル系に距離が近いものをグループ独自のカラーとして打ち出している。楽曲の個性や陰鬱な空気感は特筆すべきものがあり、異質な存在感を放つアンダーグラウンドな世界観に圧倒される1枚。

インスト①に続く②は重厚なポストロック/エレクトロサウンドと叙情的なメロディーが洪水ように押し寄せ、儚く刹那的な世界観にどっぷりと浸ることができる。やるせない感情を伝えるシリアスなボーカルやシューゲイザーのような浮遊感も素晴らしい。③は印象に残るギターの音色と切なくメロディアスな旋律が絶妙に絡み合う。④はエレクトロポップとギターロックを組み合わせたという感じのエモーショナルなナンバー。エレクトロとロックの絶妙な調和が中毒性を生み出している。⑥は本作の中でも特に繊細なメロディーやメンバーの透明感ある歌声が耳を捕らえて離さない魅力があり、文学的な歌詞のメッセージ性も優れている。

地下アイドルの中でも珍しいアンダーグラウンドな感覚の音楽性がじっくりと楽しめる内容で、その独創性に満ちた世界観は特筆すべきものがある。

きみわずらい|まねきケチャ

2018/4/18 日本コロムビア

1. きみわずらい
2. タイムマシン
3. 青息吐息
4. ありきたりな言葉で
5. 奇跡
6. キミに届け
7. 僕が僕を
8. カクカクシカジカ
9. 一刀両断
10. 妄想日記
11. キミが笑えば
12. SEVENTH HEAVEN
13. 冗談じゃないね

日本ツインテール協会のプロデュースで2015年に結成されたアイドルグループ「まねきケチャ」の1stアルバム。日本ツインテール協会が手掛けたということもあってメンバーの美少女ぶりに注目が集まったが、本作にも収録の『きみわずらい』が2010年代のアイドルポップを代表する曲のひとつとなり音楽的にも高評価を獲得した。作曲・編曲はアニメやゲームの楽曲を数多く手掛ける音楽制作集団Elements Gardenが担当しており、直球のエモロックから王道アイドル曲まで、真っ直ぐと心に響く良質なアイドルポップが楽しめる1枚。

注目は藤永龍太郎が作曲・編曲を手掛けている①~④で、ストレートな作風ながらもよく作り込んであり、メロディーの良さや音作りなどその卓越したセンスが味わえる楽曲は聴きごたえたっぷり。前述のアイドル史上に残る名曲①は、ストリングスやギターの音色などシンフォニックなサウンドアレンジや大きなうねりを生み出すメロディーラインは記憶に残る旋律で、未完成な魅力に溢れるボーカルとドラマチックなサウンドの絶妙な調和が素晴らしい。②はストレートな青春エモロックで、切ないメロディーを歌い上げる飾らない歌声が印象的。
③はsupercellにも通じるスタイリシュなギターロックで、青春の葛藤をロックで昇華した熱いビートが高揚感を与えてくれる。メンバーのハーモニーも美しさを感じるもので、優れたアイドルロックだ。④はアイドルらしい清涼感あるセンチメンタルな情感が胸に刺さる。他にはチャーミングな魅力がある⑤、ピコピコしたテクノポップ⑧、はっちゃけたアゲアゲな⑬など底抜けな明るさに元気を貰える曲もあり、アイドルポップとしては申し分ない内容である。

①の存在感はやはり別格で、まねきケチャのイメージにもあっている。シリアスで切ないキラーチューンが連発される前半と元気なアイドルロックを聴かせる後半まで、気持ち良く聴けるアルバムである。

Melian|じゅじゅ

2018/10/2 箱レコォズ

1. 祈り
2. 蜘蛛の糸
3. 煉獄
4. ゆらりゆらり
5. コノ世界・闇
6. 月光ピエロ
7. 零
8. 呪呪
9. イトシスギテ
10. 黒糸
11. 僻心
12. アンシェント・ファーメンティング・イービル
13. 35席
14. イケニエ
15. 怨返し
16. idoll
17. 君が産声を上げたのは
18. Melian
19. 食

『呪い』をコンセプトにしたアイドルグループ「じゅじゅ」が2018年にリリースしたフルアルバム。4人体制となってからの初のフルアルバムで、過去に発表した曲の再録なども含むベスト盤的な内容となっている。音楽性はアイドルの中でも珍しいゴシックロック路線であり、アニメ/ゲーム系のゴシック系女性ボーカルに距離が近い方向性である。アイドルらしい可愛らしい歌声とダークでメロディアスな楽曲はゴスロリ系アイドルとして完成度が高いもので、Asrielや電気式華憐音楽集団などに通じるようなシンフォニックなゴシックメタルが楽しめる。

美しいコーラスが聴ける短曲①に続く②は、ヘヴィなギターサウンドやおどろおどろしい雰囲気を盛り上げる歌声が、まさに『呪い』といった感じで暗黒の世界に引き込まれる。③も陰鬱なムード全開のヘヴィロックで歌詞の世界観も面白い。⑤はファンタジック感あるシンフォニックなアレンジやアニメにタイアップできそうなメロディーの王道感が良い。幻想的なイントロが印象的な⑧はメロディックに疾走するナンバーで、アイドル版メロスピという感じの質感が新鮮である。⑩は歪んだベースのイントロが強烈で、キャッチ―なテンポのボーカルなど中毒性が高い。⑬は青春ホラーという感じで、現世とあの世をテーマにした世界観も凄いが、特にサビの哀愁漂うメロディーラインが耳に残るもので優れている。⑯は音圧を感じる力強いサウンドのアイドルメタル。リズムやメロディーはアイドル的なもので、可愛らしさがある旋律が印象に残る。⑱はドラマチックに奏でられる幻想的なバラード。西洋的なサウンドとメンバーの歌声が美しく響き、じっくりと退廃的な世界観に浸らせてくれる。

大ボリュームのアルバムでたっぷりと「じゅじゅ」独特のホラー色が強い世界観が楽しめる。陰鬱だがキュートなボーカルのおかげかそこまで重苦しくはないので、ゴシック色が強いアイドル曲が聴きたいならマストな1枚だ。

殺人事件|少女閣下のインターナショナル

2016/7/1  TRASH-UP!! RECORDS

1. 真夜中に餌を与えてはならない
2. mug
3. グランギニョルのフラミンゴ
4. ATARI SHOCK LOVE
5. 乙女みたいな季節
6. 少女閣下のPKウルトラ計画
7. ecole
8. ショートクタイシ・イズ・デッド
9. みなごろしフライデー(naked)
10. HAL451
11. 怨み節/マカロンウエスタン
12. No where on-do
13. 僕らの心電図
14. 万国お化け博覧会
15. アイドルに恋をしてはならない

2014年から2016年まで活動していた地下アイドルグループ「少女閣下のインターナショナル」の1stアルバム。本作リリース直後に活動休止したので、唯一のフルアルバムとなっている。メンバーにはシンガーソングライターとして活動している里咲りさも在籍。B級ホラー映画や昭和特撮のようなユニークな世界観を、ヒップホップやロックなど色々な音楽要素をごちゃ混ぜにした変態アヴァンギャルドサウンドで表現しており、尋常じゃないテンションのボーカルも含めメーターを振り切ったプログレッシブなアイドルポップが聴くことができる。

冒頭①からねじれた電子サウンドとはっちゃけたラップの怪奇な世界観に驚かされる。②は疾走するハードなジャズロックで、勢いあるボーカルのやさぐれた感じもグッド。サウンドはかなり凝っておりアイドルと思えないアグレッシブな演奏のアングラ感が良い。③はホラーな歌詞と怪談のようなボーカルの語りにぴったりの緊張感ある電子音がインパクト大で、殷の踏み方などラップとしても面白い。④はスペーシーな近未来的な美しい旋律にユーモラスな可愛らしい歌が乗るというもので、アイドルらしいプラスのエネルギーに憂鬱も吹っ飛び陽気な気分になれる。
8分に渡る大曲⑥はこのグループを象徴するぶっ飛んだ曲で、アイドルとプログレを強引に融合させて先悦化したようなカオティックな曲展開に圧倒される。⑦は西洋的な世界観の歌自体は綺麗なバラードだが、凝ったサウンドや怖い歌詞は聴いていて不安になってくる。⑪はタイトル通りマカロニウェスタンのパロディで、踊りだしてしまいそうな軽快なリズムに胸躍る。⑬は哀愁漂うメロディーと切なさ爆発のハーモニーが壮大な感動を呼ぶ。奇妙な楽曲が多い本作の中では逆に異色な魅力がある王道アイドルポップ路線である。

実験的な作風ではあるが、聴く物に元気を与えるというアイドルの基本姿勢に沿った、エンターテイメント性ある楽しさも忘れていないところが良い。一度聴けば記憶にいつまでも残るであろう鮮烈な1枚だ。

テル・ディスコ|MAGI(C)PEPA

2017/4/12 GOTOWN RECORDS

1. 備長炭
2. メイク真似
3. なんだかわからんフラッシュモブ
4. 功夫ガール
5. LOVE-KISS-HUG-HUG
6. 浪人ボーイ
7. テンセイリンネ ~GONG! GONG! GONG!~ 2017
8. 君に、いんすぴれいしょん!
9. 不条理コズミック
10. TELL DISCO

NONA REEVESの西寺郷太や村田シゲなどの凄腕ミュージシャン達が、ラップなどで有名なアイドル「吉田凜音」をボーカルにフューチャーした7人組のバンド「MAGI(C)PEPA」(マジぺパ)の1stアルバム。メンバー全員が作曲を手掛けており、『2020年代のフリートウッド・ マックを目指す』がコンセプトとなっている。
吉田凜音の躍動感溢れるキュートな歌声の魅力を最大限に引き出した、オシャレかつ少しひねくれたセンスが刺さるポップソングの数々は中毒性が高いもの。バンドという形態ではあるが、非常に上質なアイドルポップを楽しむことができる。

①は自分自身の信念を曲げないというメッセージ性の強い歌詞をポップなサウンド&メロディーで包んでおり、活力に満ちた吉田凛音のパワフルなボーカルがぴったりハマっている。
②はニューウェーブ色が強いポップソング。爽快でキレのある歌声が痛快で、間奏のピコピコしたシンセやサビのメロディーの浮遊感など印象に残るもので秀逸。⑤はシティポップ度数が高い都会的な洗練されたポップスで、ちょっと大人っぽいラブソングをクールに決めておりカッコ良い。⑥は吉田凜音がラジオ放送風に語るユニークな電子ポップ。⑦は吉田凜音お得意のラップとスペーシーな浮遊感が良い。
ラスト⑩は壮大なノスタルジックな旋律が切ない余韻を残すディスコポップ。わくわくする楽しさがありながらもセンチメンタルな情感にどっぷり浸ることができる優れた曲だ。

実力派ミュージシャン達が、吉田凜音の声にジャストフィットする楽曲を提供しており、聴きごたえたっぷりの内容である。とにかく歌声に魅力があり、器用に様々な曲を自分のものにして歌いこなせるところが吉田凜音の強みである。

プラトニック プラネット|KOTO

2015/7/15  SPIRAL MUSIC

1. パステルパスポート
2. くえすちょん くえすと
3. 推定スウィーティ 
4. エンジェルがエンドレス
5. バレンタインズバレリーナ
6. SixteenSick 
7. プラトニックプラネット
8. シンデレラ症候群

2014年にデビューしたソロアイドル「KOTO」の1stアルバム。
KOTOの元気いっぱいの歌声を全面にだした、レトロな感覚溢れるピコピコした可愛らしいテクノポップで、近年の一般的なアイドルのイメージとは一味違うサブカルっぽい女子ポップは独自の魅力がある。佐々木喫茶がプロデュースを手掛けており、テクノポップ好きのツボをピンポイントで突く楽曲センスはさすがの一言。

話題になったアルバムタイトル曲⑦を筆頭にキッチュでキュートなテクノポップがたっぷりと楽しめる内容である。その⑦はピコピコした電子サウンドと1980年代のエレポップっぽいキラキラしたメロディーや歌詞が胸をキュンとさせる名曲。KOTOの勢いある歌いっぷりも良い。
①はチップチューン要素を含むチープで可愛いエレクトロサウンドで疾走し、ワクワクが止まらないといった感じだが、どこか切なさを感じるメロディーなど味わい深く秀逸である。②はどこかオリエンタルなムード漂うダンスポップでカッコいい。③は渋谷系っぽいオシャレなセンスが光る乙女チックなエレクトロポップ。
⑤はキャッチ―なリズムで不思議な歌世界に引き込まれる。⑧は魔法をかけるようなキュートでロマンティックなきらめきが眩しい1曲。可愛さの塊のようなKOTOのフィーリングは最高である。

全編に渡り、胸がドキドキしてしまう瑞々しいテクノポップがこれでもかと堪能できる。どの曲も同じ方向性なので、まるで金太郎飴のような魅力があり、キュートなテクノポップの虜になってしまうこと間違いなしだ。

ココデパ!|クマリデパート 

2019/5/28 MUSIC@NOTE

1. 開店アナウンス
2. おいでよクマリデパート
3. 愛Phone 渋谷
4. あいろにー
5. ウダガワ・ヨッキュー
6. ピアノ
7. 迷子のお知らせ
8. セカイケイ
9. あれ?ロマンチック
10. 二十四時間四六時中
11. アンサー
12. シャダーイクン
13. サマーニッポン夏サマー
14. いくじなし
15. 閉店アナウンス

「クマリデパート」は、いずこねこやMaison book girlを手掛けたサクライケンタのプロデュースで、彼の音楽事務所ekomsより2016年にデビューしたアイドルグループ。本作は2019年にリリースした1stフルアルバムである。
『世界のこころのデパート』をコンセプトに王道アイドルポップからダンサブルな楽曲までバラエティに富んだガールズポップを聴かせてくれる。サクライケンタのサウンドの特徴であるスティーブ・ライヒなどの現代音楽サウンドとアイドルポップを掛け合わせた楽曲もありユニークな魅力がある。

冒頭①~②ではクマリデパートのコンセプトに沿った『おもてなし』をキュートに表現しており、正統派アイドルのキラキラした魅力に元気が貰える。③はイケイケの電子サウンドと1980年アイドル歌謡を彷彿とさせる懐かしい感じの切ない歌メロが気分を盛り上げてくれる。
⑥は渋谷系女性ボーカルポップに通じるオシャレで可愛らしいナンバー。サクライケンタによるウキウキとスキップするようなアレンジやメンバーのキュートな歌声などすべてが輝いている。⑧はアニソン風の熱く切ない曲で、王道的な気持ちの良い高揚感が得られる。
⑫はアイドルポップを多く手掛けている玉屋2060%とサクライケンタが共作したキラーチューン。現代音楽とアイドルポップを組み合わせた異色の曲で、サウンドはライヒっぽいが曲調がパワーポップという2人の個性をそのまま融合させた独創的なポップソングに仕上がっている。特に終盤の展開はアヴァンポップのような刺激的なもので痺れる。⑬は爽やかな夏のアイドルソングで、チャーミングな魅力が全開。⑭は清涼感100%の王道アイドルポップに胸がキュンとなる。

⑫や⑥など音楽的には凝っている部分があり一筋縄ではいかない感じだが、可愛らしいボーカルやフックのあるメロディーなど基本的には正統派アイドルポップなので誰もが楽しめる内容となっている。

airattic|airattic

2023/3/15 Lonesome Record

1. #343
2. invisible
3. crawl syndrome
4. plastic dada
5. mixjuice
6. フィルムリールを回して
7. appetizer
8. 閃光
9. 環状線チルドレン
10. 屋根裏から愛を込めて
11. 灰色の街について

2022年に結成されたアイドルグループ「airattic」の1stアルバム。tipToe.を手掛けている本間翔太がプロデュースを担当しており、多彩な作家陣が楽曲提供を行っている。ギターロックからエレクトロポップまで幅広くこなし、インディーロック路線から王道アイドルポップまで様々な魅力を楽しむことができる。

冒頭①は女性シンガーソングライターのaoi Kanata(彼方あおい)による淡く美しい曲で、サビの目まぐるしく畳み掛ける展開や儚い歌声は非常にエモーショナルだ。内省的な世界観がアイドルと上手くマッチした好例である。
②は疾走するメロディックなビートとハードなギターで畳みかける直球アイドルロックで爽快感抜群。
⑥は管梓(エイプリルブルー、For Tracy Hyde)が手掛けた必殺のギターロックチューン。管梓節炸裂!という感じで、ドリーミーなサウンドやポップセンスが発揮されたメロディーは清涼感に満ちており、何度もリピートしてしまう魅力がある。こういった一聴して耳を惹きつける曲が作れるのはさすがといったところだ。
⑧は人気のシンガーソングライターぼっちぼろまるが提供した、2020年代のアイドルポップ人気楽曲スタイルのひとつといえる高速リズミカルに展開するエレクトロポップ。⑨はクセのあるメロディーが頭の中に残ってぐるぐる回るほど印象的。手掛けたのは、アイドルに楽曲提供を多く行っている林直大で、独自のセンスが光っている。⑪はドラマチックに盛り上がる美しいロックバラードで、メンバーの切ない歌声が胸に迫る。

楽曲はバラエティに富んでおりどれも作家陣の力量が存分に発揮された力作揃いである。またそれを歌いこなすメンバーの歌声も耳当たりの良さや安定感を感じるもので、曲の良さを絶妙に引き出していると言える。

 impure|TOKYOてふてふ

2021/4/28 コドモメンタルINC.

1. innocence soar
2. effect pain spiral
3. cry more again
4. merry-go-round
5. rainy milk
6. phantom pain
7. for something
8. cross
9. double

『翔び堕ちル、夢と現実の狭間ノ街並みト』というコンセプトで2020年に結成されたアイドルグループ「TOKYOてふてふ」の1stアルバム。
音楽性は「ぜんぶ君のせいだ。」などが所属するコドモメンタルお得意のメロディックなビートでぐいぐいと押す爽快感ある女子ロック。ダイナミックな快感が得られると同時にアイドルらしい儚さやメンヘラチックな繊細さがじわじわと心にくる内容である。

冒頭①は最初から最後までキャッチ―な歌メロで押しまくるアイドルロックのキラーチューン。メロディーに中毒性があり、歌詞の無常観はグループの世界観にぴったり。メンバーの生々しい歌声も魅力がある。②はドラムのカッコ良さが際立つエモロック。切ないメロディーを熱く歌い上げるボーカルとドラマチックなサウンドが絶妙なバランスで成り立っており、気持ち良い高揚感が得られる。③はシンフォニックなサウンド&メロディーで疾走し、独自の耽美な世界観に引き込まれる。⑤は勢いのある曲が多く収録されている本作の中でも異色のまったりとした曲調に癒されるナンバー。キュートでほんわかした雰囲気は好感が持てるもので新鮮な味わいがある。
ラスト⑨はエモいとしか言いようがない感動的な旋律が胸に迫る。やるせない世界観をこれでもかと盛り上げるサウンドが良いのはもちろんのこと、自然体の歌声はリアリティを感じるもので、寂寥感や刹那感をしっかりと伝えてくれる。

独自の美意識を感じる楽曲の良さはさすがコドモメンタルといったところ。随所に女の子っぽさにこだわりを感じる部分があり、良い意味で未完成な魅力溢れるボーカルも良い味を出している。

MASTER PLAN|ユレルランドスケープ

2024/1/17 最南端トラックス

1. The regoto
2. How to Be loved
3. トワイライト
4. unity
5. Still Alone
6. つがい
7. 生きている
8. バッドティック
9. Second me
10. 東京

『エモーショナルシティポップ』をコンセプトにしたアイドルグループ「ユレルランドスケープ」の2024年リリースのフルアルバム。
ロックからヒップホップまで取り込んだ都会的な洗練された雰囲気のポップスで、一般的な可愛らしいアイドルポップのイメージとは異なる渋い作風である。初期の音源ではインディーロックに近い空気感の曲もあり、若い荒削りな質感が魅力であったが、本作では現体制メンバーによる完成度の高いスタイリッシュなガールズポップが楽しめる。

冒頭①はメロウなグルーヴが雰囲気抜群で、ドープな女子ラップと切ないハーモニーが胸の奥にあるセンチメタルな感情を刺激する。孤独感や疎外感が伝わる叙情性が素晴らしい。
②は聴き心地の良さをとことんまで追求したクールなシティポップで、細部にまでこだわりを感じるサウンドや力強いハーモニーは、ポップミュージックとしての強度があるものだ。
③はキラキラしたサウンドや儚い歌声が甘酸っぱい気分にさせてくれる。淡くロマンティックな旋律は青春ポップスとして優れている。
④は夜にぴったりと合いそうなドライブ感あるロックナンバー。⑥はサウンドセンスが光るエモいラップで青さ全開の歌詞も印象に残る。
⑦は苦悩や葛藤をストレートに歌い上げており、やるせなさにグッとくる。サウンド面ではギターの音色が繊細で美しい響きで良い。
⑩は東京で生きることをテーマにした葛藤と成長の歌という感じで、すべてを受け入れて前に進もうとするポジティブなメッセージに元気が貰える。

『エモーショナルシティポップ』とはよく言ったもので、夜に車のドライブ中に聴けば更なる感傷に浸れる内容である。ある種ストイックな姿勢を感じるほどに生真面目な作風は珍しいもので、独特の雰囲気に大きな魅力がある。

kamiyado complete best 2018-2019|神宿

2020/1/15 日本クラウン

1. ボクハプラチナ
2. はじまりの合図
3. HAPPY PARTY NIGHT
4. CONVERSATION FANCY
5. 春風Ambitious
6. 全身全霊ラプソディ
7. 好きといわせてもらってもいいですか?
8. タフ□ラブ
9. ほめろ!
10. ないぞう サイコー
11. グリズリーに襲われたら□
12. お控えなすって神宿でござる
13. それから

2014年に結成された原宿発のアイドルグループ「神宿」。本作は2018年〜2019年に発表された楽曲で構成されたベスト盤である。
でんぱ組.incに通じる陽気でノリノリなアイドルポップから渋谷系のようなオシャレで洗練されたポップスまでこなすキュートなガールズポップは理屈抜きでハッピーな気持ちになれる。
既存曲は新メンバー塩見きら加入後の新録によるニューバージョンが多数収録されており、③④⑦⑧⑨⑩⑫がそれに当たる。

冒頭①はアイドルらしからぬ大人びたエレクトロポップで、エモーショナルなビートやメンバーの表情豊かなボーカルは躍動感に溢れている。③はご機嫌なダンスポップで、キャッチ―なリズムと歌声に胸躍る。
④はアイドルポップを数多く手掛けている玉屋2060%によるキラーチューン。オシャレでキュートな楽曲センスが冴えわたっており、タイトル通りファンシーでキラキラしたサウンドやボーカルに胸がキュンとなる。⑤も玉屋2060%お得意のはっちゃけた魅力が全開のアイドルソング。玉屋節と言える中毒性が高いメロディーラインは一度聴けばやみつきになる。
⑥はアイドルポップではお馴染みの浅野尚志による熱いロックナンバー。歌謡ロックやアニソン的なベタな盛り上がりが楽しい。
⑨は理屈抜きで元気が貰える王道アイドルポップで気分爽快。
⑪はシンガーソングライターの清竜人が提供した神宿の代表曲で、乙女チックな心情をユーモアたっぷりに表現している。極端に可愛らしい歌声や独自のクセがあるメロディーが脳髄の奥を侵食する。

アイドルのキャラクター性と音楽センスを随所に感じさせる楽曲が上手くマッチしている。
残念ながら2024年解散した神宿だが、その輝きがしっかりと収められている1枚だ。

nostalgia|Kolokol

2018/5/13   we-B studios

1. Theater
2. Mr.A
3. fairy tale
4. スコール
5. ToYBoX
6. Cheap Lens
7. Blight Setting Sun
8. Give it up

2018年に結成されたアイドルグループ「Kolokol」の1stアルバム。
『囚われることのない様々な世界観を叙情的かつ繊細に歌い上げること』をコンセプトにしており、ロックやEDMから王道アイドルポップまでバラエティに富んだ音楽性である。
関西のアイドルグループだが、いわゆる直情的なロック路線ではなく、ナイーブで美しい世界観が強く印象に残る。また楽曲はアニソンへの親和性の高さを随所に感じさせる。

冒頭①からシンフォニックなサウンドでメロウに疾走する。緩急ある展開やヴァイオリンの音色などが良い。②は爽快感あるギターが唸りを上げるアイドルロック。力強いメロディーラインは琴線に触れるもので、メンバーの歌声も清潔感がありアイドルボーカルの良さを上手く生かしている。③は絵に描いたようなエモーショナルなアイドルポップ。ここでもメロディーと歌声の良さが光る。④はドラマチックな展開に心が震えるKolokolの代表曲のひとつである力作。特にサビの前に鳴り響くEDMサウンドの音色が凄まじくカッコ良くて秀逸。
⑥はキラキラしたポップスで、センチメンタルなメロディーと綺麗なハーモニーにグッとくる名曲。文学的な歌詞や躍動感あるサウンドも素晴らしく、瞬間の煌めきを捉えた旋律は心に活力を与えてくれる。⑦はアニソンっぽいエネルギッシュでキャッチ―なロックナンバーで、気持ち良い高揚感が得られる。

コンセプト通り、物凄い熱量で勝負するタイプではないが、メロディーやボーカルの良さを大切にした丁寧な作風がとても良い。④や⑥など、しっかりと曲別に個性分けができており、良質なポップスが楽しめる傑作アルバムである。

PLASTIC|Aira Mitsuki

2009/07/22 D-topia Entertainment

1.ロボット・ハニー
2.Summeeeeeeeer set (feat.AYUSE KOZUE)
3.ニーハイガール
4.BAD trip (feat.Terukado)
5.CHANGE MY WILL
6.HiGH SD スニーカー
7.distant STARS
8.プラスティックドール
9.サプリ
10.夏飴 (feat.□□□)
11.Time is (feat.Shigeo(SBK/TheSAMOS))
12.サヨナラ TECHNOPOLiS
13.BARBiE BARBiE
14.Re:†

2007年にデビューしたテクノポップアイドル「Aira Mitsuki」の2枚目となるフルアルバム。
当時はPerfumeのブレイク以降に登場したフォロワーの1人と見られていたが、エレクトロポップとしては非常にハイレベルな楽曲や彼女のキッチュな可愛さは、Perfumeとは似て非なるもので、個性的な魅力がある。

その独自の魅力が炸裂するキュートな電子ポップ①は、Aira Mitsukiの中でも屈指の名曲のひとつ。良い意味でB級感があり、楽曲コンセプトも面白い。②はAYUSE KOZUEとのコラボで可愛らしくダンサブルに決めるサマーチューン。爽快感抜群のテクノサウンドが優秀な③は、煌びやかなシンセで疾走するキラーチューン。サウンド主体の音作りはアイドルとしてはかなり挑戦的なもの。④は大人びたハードなダンスポップで、少しダークな雰囲気とずっしりとした低音が堪らない。
ブリブリなエレクトロポップ⑥は、当時の王道的な路線でありながらも、サウンド構成はかなり凝っており聴きごたえがある。⑧は近未来感溢れるキュートなテクノポップを絵に描いたようなポップチューンで胸キュン必至。⑨は可愛らしい声を全面に出したセンチメンタルなポップで心地良い。⑫はストレートなタイトルからして期待が高まるが、テクノポップラブ全開な雰囲気に好感が持てる。

Perfumeに似ていると言われてしまいブレイクすることはできなかったが、Perfumeのクールな質感とは違い、楽曲自体はキッチュなキュートさを前面に出したテクノポップで、Aira Mitsukiにしか出せない確かな魅力がここにはある。

バニラビーンズ|バニラビーンズ

2009/2/25 
Tokuma Japan Communications

1. Opening (Instrumental)
2. サカサカサーカス
3. U□Me
4. happy merry-go-round
5. 気まぐれなパレットタイプ
6. Winter Has Gone
7. あしたはあしたの夏がくる (Album Ver.)
8. Afternoon a Go-Go (Album Ver.)
9. Shopping☆Kirari (Album Ver.)
10. ニコラ
11. バニラード
12. Ending (Instrumental)
13. Afternoon a Go-Go -We Love You Mix- (Remastering Ver.) (Encore)
14. Shopping☆Kirari -掟ポルシェ+Dr.USUI Waterfront Mix- (Remastering Ver.) (Encore)
15. あしたはあしたの夏がくる -掟ポルシェ+Dr.USUI Death Techno Mix (Remastering Ver.) (Encore)
16. (エンハンスド)サカサカサーカス (Promotion Video)

2007年デビューした2人組のアイドルユニット「バニラビーンズ」の1stアルバム。
『北欧の風にのってやってきた』というキャッチ―コピーで分かる通り、The Cardigansに代表されるスウェディッシュ・ポップ要素をふんだんに含むオシャレでキュートなポップスは清涼感に溢れており胸キュン必至。
新しいスタイルのアイドルポップであったこともあり、音楽シーンで大きな注目を集めた。
渋谷系ミュージックを標榜するアイドルとしては代表的な存在であり、音楽的にも「キュート」(可愛い)という部分では並ぶ物がいないほど強烈に可愛らしい魅力がある。

爽やかなインスト①に続く②は、おもちゃ箱をひっくり返したようなワクワクするサウンドと可愛らしい歌声に胸躍る。細部にまでこだわりを感じる優雅な音色や透き通ったメロディー&ボーカルなど、とにかく聴き心地の良さは特筆すべきものがあり、パーフェクトな出来のポップソングと言っていいだろう。
続く③も上質で爽やかなポップスで、自然と耳に馴染む柔らかさはさすがである。そしてとにかく2人の歌声が可愛くて癒される。
④はソフトな音と歌声でドリーミーな甘い気分を届けてくれる。⑤はゆったりとまろやかな雰囲気のファンシーなナンバー。バニラビーンズにはこういったまったりとした楽曲も声質的には相性ぴったりな印象だ。
⑦は口ずさみたくなる歌メロと前向きな気分になれる歌詞が良い。ネオアコ気分の夏という感じでほっこりする。
⑧はお天気のいい日に散歩しながら聴きたくなるウキウキするポップチューン。
⑩はイントロ~歌い出しから魔法に掛けられたように耳が惹きつけられる名曲。どこかノスタルジックな余韻を残すのも良い。数多くあるギターポップや渋谷系などの音楽要素があるアイドルソングの中でも屈指の出来である。まさにグッドミュージックという言葉を具現化した旋律であり、多くの人の心を捉える煌めきが感じられる。
ボーナストラックとしてリミックスが収録されており、大胆なアレンジバージョンを楽しむことができる。

衝撃的なほどに完成度が高いアルバムである。オシャレではあるが聴き手を限定しない柔らかい雰囲気がとにかく良い。ここまで心を癒してくれるアイドルポップも珍しい。

九伝|ばってん少女隊

2024/11/13 BATTEN Records

1. トライじん    
2.  My神楽       
3.  it’s 舞 calling
4.  ureshiino      
5. でんでらりゅーば!       
6. サニー・サイド・スリープオーバー        
7. あんたがたどこさ~甘口しょうゆ仕立て~
8. ヒナタベル    
9. BAIKA            
10. でんでらりゅーば!feat.Daoko Produced by GuruConnect

2015年に九州を拠点に活動を開始したアイドルグループ「ばってん少女隊」の5枚目となるアルバム。ももいろクローバーZなどが所属するスターダストプロモーションが手掛けるグループであり、初期の頃はスカコアやメロコアなどのパンキッシュな作風が特徴的であった。
2020年に発表したシングル『OiSa』が、地元福岡のお祭りである博多祇園山笠をモチーフにしたエレクトロポップで、有線で多くの人の耳を捉えて一躍注目される存在となった。
伝統音楽とEDMを融合させた個性的なダンスポップからシティポップまで幅広い要素を持った洗練されたポップスは、2020年代アイドルポップの新スタンダートとも言える。

冒頭①はケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)が手掛けた、フラメンコ+EDMという透明感のあるエレクトロポップで、軽やかに舞うように曲調が変化していくのが刺激的で面白い。容易にイメージが湧くアイドルの瞬発力を上手く音楽として昇華したキラーチューンである。②は可愛らしい電子サウンドとリズミカルなボーカルが、おもちゃ箱をひっくり返したようなドタバタ感を生み出しており楽しい気分になれる。PARKGOLFが作曲・編曲しており、かつての渋谷系フューチャーポップを思い出すサウンドである。③は前述した『OiSa』を手掛けた渡邊忍(ASPARAGUS)が提供した楽曲。ナチュラルな雰囲気が親しみやすいキュートポップスで、特に矢継ぎ早に歌うボーカルが巧みで耳を惹きつける。
⑤は長崎の手遊び歌『でんでらりゅうば』をフューチャーしたユニークなラップソング。作詞はDAOKOがしており、⑩は彼女をゲストに迎えた別ヴァージョンとなっている。伝統音楽を取り上げているが音楽センスが今風というか、音楽情報が溢れている現代社会ならでは曲だ。⑦も肥後手まり唄『あんたがたどこさ』をキュートなエレクトロポップに仕上げている。作詞がRachel(chelmico)、作曲・編曲がPARKGOLFという面白い組み合わせである。
⑧はアイドルらしいエネルギッシュに弾けるクリスマスソングで胸がキュンとなる。

とにかく圧倒的な完成度に驚く内容である。良い曲というだけではなく音楽的な面白さをとことん追求しており、アイドルポップの最先端というに相応しい1枚だ。

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