RISA SATOSAKI HISTORY BEST 2014 – 2017|里咲りさ

2018/1/19 フローエンタテイメント
1. オープニング
2. Game×3 恋のテレポート
3. だってね。
4. カタルカストロ
5. ボーンブレイクガール
6. シャイガール戦争
7. True
8. Little Bee
9. 窓辺に小鳥はいない
10. かわいいもの Feat. Wm (あ、ピンチ。)
11. 410
12. サイン
13. Hot!夏!さま〜
14. オリーブ
15. 信号
16. ディアティア
「里咲りさ」は幅広く活動を行うアイドル/シンガーソングライター。本作はオフィシャル通販サイトとライブ会場でのみ販売されたベスト盤CDである。
2012年にアイドルユニット「店ガール9:50」のメンバーとしてデビューし、その後シンガーソングライターとして本格的に活動を開始した。またソロ活動と並行してアイドルグループ「少女閣下のインターナショナル」のメンバーとしても活躍したことでよく知られている。
自身でレーベル・フローエンタテイメントを立ち上げるなど、精力的な活動を行っており愛称は【社長】。
ソロではアイドルならではのキュートなフィーリングとシンガーソングライターとしてのアーティスト性を融合させた独自のクセが光るポップソングを生み出しており、特徴的なロリボイスを生かした曲の数々は中毒性が高い。
大半のアレンジを手掛けている灘藍の巧みなサウンドセンスにも注目である。
アンビエント風味の導入曲①に続く②は、アイドルらしいキュートに弾ける軽快なポップナンバー。エレクトロ風味のアレンジと唸りを上げるアグレッシブなギターが良い。
③もアイドル度数が高い曲で、アイドルポップスキのど真ん中を突く良い出来だ。
④は相対性理論を彷彿とさせる可愛らしい曲調ながらも『好きな男に毒づくサブカル女子』みたいな世界観の歌詞が鋭いキラーチューン。メロディーはキャッチ―で、ウィスパーボイスで歌われているので聴き心地は良いが、恋愛における不満をストレートにぶちまけたリリックの響きが一風変わっており秀逸だ。灘藍が手掛けるサウンドも奥深い魅力がある。
⑤はふわふわとした歌声とラフなロックサウンドの組み合わせが不思議な魅力を生み出す。途中で情緒たっぷりに力強く歌い上げるパートがグッド。⑥は不安定なボーカルの響きが電波ソングみたいに聴こえて面白い。曲自体はパンキッシュに弾けるメロディックなロックなので爽快感抜群だ。
⑧は導入のエモーショナルなギターから始まる可愛らしい歌声が胸キュンもの。灘藍によるセンチメタリズムを刺激するサウンドも完成度が高い。これは感傷的な旋律とロリボイスが絶妙に調和している良いギターポップである。
⑨はピアノの伴奏に合わせた、呟くような生々しい歌が、いかにも本格派シンガーソングライター的な雰囲気を醸し出す。
⑩は里咲りさを含めた4人組音楽ユニット「あ、ピンチ。」のナンバー。オシャレなセンスが効いているエレクトロポップで、チャーミングな魅力に溢れている。⑪は軽快なロックビートと素直な歌声に胸躍る。この曲では自身初の編曲に挑戦している。
⑫はYUIなどの有名な女性アーティストのアレンジを手掛けている鈴木Daichi秀行がサウンドを手掛けている。里咲りさの天真爛漫な魅力を引き出すアレンジが良い。
⑬は爽やかに弾ける元気なサマーチューン。こちらも鈴⽊niDaichi秀行によるダイナミックな高揚感が得られるアレンジがナイス。
⑮はもろに相対性理論に影響を受けたと思われる曲だが、このタイプの作風が好きなら気に入るだろう。⑯は静から動へとドラマチックな盛り上がりを聴かせるエモロック。歌声含め切なさ全開の雰囲気にヤラれる。
里咲りさのアイドル/シンガーソングライターとしてのポテンシャルが存分に発揮された内容で、歌もサウンドアレンジも良い。ユニークな楽しい曲も多くあるので、ロリボイス愛好家(いるはずだ?)にはぜひ聴いてもらいたいところだ。
LETHE|101A

2008/1/16 FILM.4
1. 雪の世界
2. migration
3. heat
4. LETHE
5. Eugene
6. Miranda lethal weapon
7. 詩片
8. serpent
9. shellfish
10. lull
ダークなオルタナティブ・ロックを聴かせてくれるバンド「101A」の3枚目となるアルバム。
ポストロックやシューゲイザーというジャンルで語られることが多いが、他にもグランジやインダストリアルなどの幅広い音楽要素を含んでおり、トータルで独自の美意識を感じるゴシック・ロックを確立している。
切れ味が鋭い演奏と表情豊かなnoahのボーカルが生み出す透明感や呪術的な雰囲気、そして幽玄な浮遊感は堕天使のようでもあり、4AD系のバンドが好きな人にもオススメできるものだ。
暗黒系のギターロックとして強度をもつ一方で、アンビエントな空気感が中毒性を生み出しており、一度この幻想的な世界観に飲まれると抜け出せないほどの吸引力がある優れた内容の1枚だ。
冒頭①は闇を切り裂くヘヴィなギターリフからnoahの美しく幽玄な歌声が響き渡る。タイトル通り冬にぴったりの曲だ。緊迫感のあるバンドグルーヴが凄まじくカッコ良く、幻想の歌姫と呼んでしまいたくなる耽美な雰囲気も相まって一気に101Aの世界観に引き込まれるキラーチューンである。続く②は印象的なベースと透明感のある歌声が絡み合う前半パートから嵐のようなドラミングが炸裂する後半パートまで、まさに静から動へとドラマチックな盛り上がりを聴かせる1曲である。全体的にベースラインが耳を捉える音色で良い。
③はSwansを彷彿とさせる重量感のあるドラムの音色など、インダストリアル色が強いナンバーで、とにかく迫力満点である。
アルバムタイトル曲④は、アンビエント風味のサウンド+ポエトリーリーディングという作風でマニアックなツボを突く。
⑤はアグレッシブな轟音ギターロック・サウンドでぐいぐいと重戦車が迫りくるような1曲。
⑥は激烈なサウンドにのるnoahの呪詛を吐き出すようなボーカルに痺れる。暴力的な暗黒の旋律はかなり個性的でグッド。曲調に応じて変わる変幻自在な歌声は女性ボーカルバンドの紅一点として優れていると言えるだろう。
⑨は轟音ポストロックど真ん中をいく曲調にnoahの儚い歌声が同居して、暴力的な音塊の中を舞う妖精を見たという感じの不思議な感覚をもたらす。⑩は陰鬱なミドルテンポの曲で美しい歌声をじっくりと楽しめるが良い。終盤の展開はかなりぞくぞくとさせられる。
⑪にはCDのみのボーナストラック(シークレットトラック)も収録されており、貴重なライブ音源が楽しめるようになっている。
どの曲も個性が際立っており、1曲1曲が工夫されていると感じる意欲的な内容である。
インディーズロックの中でもニッチな音楽趣向を満たすという意味ではかなり貴重なバンドで、1980年代であればトランスレコードにいそうなタイプのバンドである。
暗黒系女性ボーカルのオルタナティブ・ロックとして文句なしにオススメできるアルバムだ。
Bloom 光の世界|シノワ

2001/11/25
Gyuune Cassette/Childish Soup
1. Still The Same
2. Silent Dawn
3. たしからしいということ
4. 手のひらの世界
5. 赤い花
6. Stream
7. トロン
8. In The Bathroom
9. Bloom
「シノワ」(shinowa)は1996年に大阪で結成されたロックバンド。本作は1stフルアルバムである。当時、ミュージックマガジン誌のインディーズ年間ベスト10にも選ばれたことでもよく知られている傑作アルバムだ。
音楽性はサイケデリック・ロックやネオアコを基調とした、ふわふわと浮遊感のあるサウンドに、ボーカル・かおりの可愛らしいウィスパーボイスの歌が同居するというもの。
平田ハジメのトリップ感覚を持つファズギターの音色が大きな魅力となっており、キュートな女性ボーカルのインディーポップかと思わせて、実は1960年代ロック色が強いサイケデリックな世界観の深淵に引き込むという意欲的な内容となっている。
冒頭①からプリミティブな魅力を放つガレージロック・サウンドにキュートなボーカルというインディーポップのど真ん中を突く作風で、一気に聴く物の心を鷲掴みにする。インディーズバンド好きであれば、再生した瞬間に『おお!』と妙に納得してしまう刺激的な音が鳴っているキラーチューンである。
続く②はうねるギターの音色と飾らない淡々とした歌声が何とも言えず不思議な感覚を伝えてくれる。③はNav Katzeを彷彿とさせるファンタジックなガレージポップ。透明感のある歌声や縦横無尽なドラミングなどが良い。
④は気怠い空気感の演奏と素直な歌声が上手くマッチしており、休日の昼下がりなど、のんびりとしたいときにぴったり1曲。
⑤は口ずさめそうな歌モノで、可愛らしいがどこか怖いというのがみんなのうた的である。
⑥は深く沈み込むようなドリーミーな雰囲気の曲で、効果的な要素となっているポストロックやシューゲイザーのエッセンスがグッド。
⑦は物語のようなドラマチックな盛り上がりが良い。幻想音楽好きにも受けそうな雰囲気であるが、インディーズバンドらしい尖った『毒』が含まれており、それがシノワ特有の大きな魅力となっている。
ラスト⑨はゆらゆらと揺らめくサウンドと可愛らしい歌声が、少女漫画っぽいというか乙女チックな感じ世界観を見事に作り出している。
生々しい演奏や自然体の歌声がオリジナリティのある世界観を構築しており素晴らしい。
箱庭的な雰囲気が大きな魅力のひとつとなっているのがポイントだが、マニアックなインディーズバンドによくある閉鎖的な空気はなく、外側へと発する良質なポップネスが感じられるので、多く人にオススメできる1枚だ。
創業|ぷにぷに電機

2022/6/29
Tsubame Production/PARK
1. 君はQueen
2. 透明人間・オン・ザ・ビーチ
3. Night Session
4. ラスト・サマー
5. NeonOcean
6. Deeper
7. a drop
8. 残照
9. empties
10. ずるくない?
「ぷにぷに電機」はインターネットを中心に活動するシンガーソングライター/音楽プロデューサー。本作は1stアルバムである。
アーティスト名は弐瓶勉の漫画『シドニアの騎士』に登場する架空の企業・東亜重工に由来するとのこと。そのエピソードからしていかにもサブカル女子という感じがするが、音楽性はジャズ、ボサノバ、エレクトロなどを取り込んだ割と正統派のシティポップ路線である。ヴェイパーウェイヴにも距離が近い音楽性と言えるだろう。
彼女はボーカルも含めて、大人っぽいオシャレでイケてる空気を醸し出すポップソングを作るのが非常に上手い。どの曲も歌い出しを聴いただけで、都会的な雰囲気に引きまれる優れた魅力があるので、すんなりとぷにぷに電機の世界観を楽しむことができるだろう。本作では楽曲ごとに様々なミュージシャンがサウンドのプロデュースを手掛けており、自身の世界観をサウンド面でも広げていこうとする意欲的な内容となっている。
冒頭①はMikeneko Homelessがサウンド・プロデュースを手掛けている。ピアノ伴奏での歌い出しから耳を強く捉える洒落たアーバンポップで、聴き手にイケてる音楽だと感じさせる、ぷにぷに電機の洗練された音楽センスが存分に発揮されたキラーチューンである。聴き心地の良さに全振りしたスタイルは完成度が高いもので、2020年代のシティポップを代表する曲のひとつと言ってもいいだろう。夜に車で1人聴いてハイテンションで飛ばしてもいいし、恋人とのムードを盛り上げる必殺ミュージックとしても使えそうなので色々な楽しみ方ができそうだ。続く②も勢いそのままのイケイケ女子ポップス。サウンドのプロデュースはPARKGOLFで、キレキレのエレクトロサウンドがダイナミックな魅力を放つ。音楽好きに受けそうなベタな歌詞の世界観も良い。
④は夏にぴったりな感じがする恋人同士のロマンティックな曲で、イメージ的にはかなりカッコいい男女が思い浮かぶ。こちらもサウンドを手掛けるのはMikeneko Homelessである。
⑥は英詩で歌われる透明感のあるエレクトロポップ。いわゆる洋楽っぽいJ-POPを体現しており、日本人離れした魅力がある。トラックメーカーのYohji Igarashiがサウンドをプロデュースしている。⑦はしっとりとしたR&B路線の曲で、色気のある歌声など、雰囲気は抜群だ。
⑧はエレクトロユニット80KIDZがサウンドを手掛けるジャジーな雰囲気が漂うバラード。ピアノやギターなどの各楽器が絶妙な音色を奏でており、情緒たっぷりのボーカルを含めてエモーショナルなグルーヴ感が良い。
⑨はギタリスト/音楽プロデューサーのShin Sakiuraがサウンドを手掛けている。ファンキーなビートがダイレクトに高揚感を与えてくれる。ラスト⑩はキーボーディストのKan Sanoがサウンドをプロデュースしている。アルバムの締めくくりに相応しい出来の良いクールポップスである。
サウンドは色々なミュージシャンとコラボして作り上げているが、常に自身の楽曲のカラーは貫かれており、ぷにぷに電機の音楽表現へのこだわりが感じられる。どの曲も似ているとも言えるが、シティポップをテーマに金太郎飴のような魅力があるので、この方向性が好きなら堪らない1枚となっている。
Under the Sun|Marica

2024/11/7 Funczion SOUNDS
1. CROSSING
2. せかいにさよなら
3. リメンバー・スカイ
4. 星屑シンフォニー
5. rebirthday eve
6. とっぴんぱらりのぷう
7. 蒼天の彼方
8. 彼方への道
9. 雨芳恋歌
10. この夜に降る星は
11. Hanging garden
12. ひまわり
13. Smile Again
14. Fairy Tale Ending
15. 灵魂之在処
16. Kha ille Sa ilia
美少女ゲームの音楽を多く手掛けるサウンドチームFunczion SOUNDSのボーカリスト「Marica」のベスト盤CD。本作はこれまでに発表されたゲーム主題歌を収録した待望のワークスベストである。基本的に美少女キャラクターを主役に世界観が構築されるゲームの音楽は、当然のことながら歌入り曲も女性ボーカルが中心であり、優れたポップセンスを持つ良質な曲も多くある。難点として、アーティストのフィジカル作品としてリリースされない曲が多数あるということ。そういう点を含めて、本作の注目は何と言っても、Maricaの代表曲であり、ファンやマニアから絶大な支持を集める『CROSSING』(CROSS†CHANNELのED曲)と『せかいにさよなら』(ユメミルクスリOP曲)が収録されていることである。この2曲の音源が手に入るだけでも有意義なベスト盤と言えるだろう。音楽作品としてもゲーム作品の世界観に合わせた様々な表情を見せるMaricaの歌声をたっぷりと楽しむことができるお得な1枚である。
冒頭①が前述のCROSS†CHANNELの主題歌。ゲームソフトが最初にPCで発売されたのが2003年だが、当初は中々CD音源などで聴くことができず、ゲームから抜き出して聴いていた猛者もいた(後のPSPやXbox360の移植版では同梱のサウンドトラックに収録された)。ではいったいこの曲が、なぜそれほどの支持を受けるのか。それを考察していこう。
この曲のサウンドや歌メロは、王道的な陰りのあるJ-POP/歌謡ロックバラードである。つまり曲調自体はオーソドックスなものだ。この曲を個性的なものにしているのは、ゲームの原作者である田中ロミオが手掛ける意味深な歌詞と、それを歌うのに絶妙にマッチしているMaricaの歌声である。ゲーム内容とリンクさせた哲学的な歌を、虚空を見つめながら独白するかのように歌うボーカルが生み出す詩的な響きはあまりにも重い。ゲーム内容を把握しているとより感傷に浸れるのも事実だが、これは日本語のリリックの強さに重きを置いた名曲と言っていいだろう。
続く②がユメミルクスリの主題歌。ゲームは2005年の作品で、こちらはゲームの初回限定版に付属したサウンドトラックCDや公式ダウンロードなどで音源を入手することが可能であった。ゲームの世界観と見事にリンクさせたMYU(音楽ユニットkukuiでよく知られる)が書いた文学的な歌詞の響きが印象的で、センチメタルなメロディーもフックがあり秀逸。切なくも躍動感のある旋律は聴き手の心を強く捉えるものだ。
他にもノスタルジーに気持ちよく浸れる③、チープなサウンドにシティポップ的なフィーリングがグッドな④、ワールドミュージック色が強い壮大な雰囲気の⑦⑧、メロディーが美しい⑩、クセのある歌い回しが中毒性を生む⑪、王道的なエロゲ/ギャルゲ・ソング⑭、昭和歌謡っぽい歌メロが良い⑮など、音楽的にはバラエティに富んでおり、聴いていて楽しさがある興味深い内容となっている。
乳の実+|CORNETS

2017/11/29
METROTRON RECORDS
1. 朝
2. 長い塀
3. 鍵
4. 恋人の犬を連れて
5. 何か心配ごとあるの
6. ベッドまでもうすぐ
7. 雨
8. 陽だまりの中の猫のように
9. のびる影
10. 誰か虹を見た
11. 電報配達人
12. 火山の下で
13. 鳩
14. 倉庫
15. フランネリア・フランネル
16. 終わらない物語
17. 4時35分
「CORNETS」(コルネッツ)は1986年に結成された4人組のガールズバンド。
本作は1992年に発表された1stアルバム『乳の実』に未発表曲や25年振りとなる新曲をプラスした編集盤である。
ムーンライダーズの鈴木博文が主催するインディーズレーベルであるメトロトロン・レコードから作品をリリースしており、レーベルメイトのカーネーションやグランドファーザーズのメンバーもサポートで参加している。
音楽的にはネオアコを主軸として、サックス、トランペット、マンドリンなどの様々な楽器を効果的に使用した映画的とも言える雰囲気のサウンドに、ボーカルを務める小熊純子の綺麗な歌声が同居するというもの。牧歌的かつ幻想的でもある癒しの空気感をもつ作風はこのタイプの女性ボーカル好きには堪らない魅力がある。
ZABADAK、NAV KATZE、遊佐未森、鈴木祥子、坂本真綾などを好む人にオススメできる内容となっている。
①~⑫がアルバム『乳の実』
①は導入のピアノが奏でる優しいメロディーラインからノスタルジー全開で、聴き手に語りかけるように歌われる美しい歌声に耳が惹きつけられる。続く②はファンタジックなシンセサウンドが不思議な浮遊感を生み出す。ここではないどこかへと連れていってくれるふわふわとした雰囲気が良い。③は心地良く流れるように響くサウンドに夢の世界に誘われる。
⑤はかなりプログレっぽい雰囲気をもつサウンド構成や儚い歌声が切ない余韻を残す。
⑥は少女漫画のようなロマンのある恋愛ソングという感じのナンバー。恋人と綴る愛の世界観をドラマチックに盛り上げるサウンド展開がグッド。男女関係における戸惑う気持ちが上手く表現されており、ざわざわとさせられるのもナイス。
⑧はアコーディオンの音色から始まる陽気なインストナンバー。コルネッツはインディーズバンドであるが、この曲を聴いても分かるように劇伴向きの音楽センスをもっている。
⑨はシンプルなアコースティックサウンドに美しい歌声&コーラスというワールドミュージックや幻想音楽度数の高い1曲。ひたすら上品なボーカルワークの魅力にたっぷりと浸ることができる。⑩はドタバタしたアグレッシブな演奏と独自の美意識に彩られた歌声の組み合わせが面白い。サビのメロディーの反復歌唱も良い。
⑪はムーンライダーズの鈴木慶一がボーカルでゲスト参加している。クラシカルで壮大なサウンドと天使のような歌声がもたらす絶品の美しさが圧巻である。
⑬と⑭は本作リリース時(2017)に25年振りとなる新曲。
美しい歌声や凝ったサウンドなどのコルネッツらしさは健在という印象で、長い歳月は関係なく楽しめる傑作となっている。
⑮と⑯は当時の未発表曲。
既存曲と同じく透明感のあるサウンド&歌声が楽しめる貴重な音源である。
⑰は1988年にリリースされた1stEP『CORNETS』に収録されている曲。
歌い出しを聴いた瞬間にハッとしてしまう瑞々しい魅力がある名曲。
遊佐未森やNAV KATZEと同時代性を感じる幻想的な叙情性が胸を打つ1曲である。
様々な楽器を駆使したサウンドは完成度が高く、とてもインディーズバンドとは思えない内容である。ネオアコから幻想音楽好きまで満足できること間違いなしの1枚だ。
Weather|B.O.L.T

2022/8/10 キングレコード
1. One Life
2. BY MY SIDE
3. New Day Rising
4. D.T.F.
5. 夜を抜け出して
6. 雨のち晴れ
「B.O.L.T」は2019年から2023年まで活動していたアイドルグループ。本作は2022年にリリースされたEP作品である。
ももいろクローバーZでお馴染みのスターダストプロモーションに所属するアイドルであり、前身の「ロッカジャポニカ」の後継グループとして活動していた。音楽性としては疾走感溢れるメロディックパンクを基調としたポップなロックで、楽曲もその界隈のアーティストが提供を行ったものが多い。
アイドルは年長者のファンが非常に多くいるジャンルなので、1990年代から2000年代にかけて起こったメロコアムーブメント体験者をメインターゲットにしていたとも言えるだろう。
冒頭①はPOTの織田が提供した爽快感あるメロディックハードコア。スピード感のあるパンクサウンドとアイドルボイスの組み合わせは、理屈抜きに気分を高揚させるもので、胸がキュンとする。
続く②はHold Out Hopeが手掛けた、力強いメロディーとカラフルな歌声が際立つキラーチューン。躍動感を感じるパンキッシュな旋律にメタリックな重厚感が同居しているのがHold Out Hopeらしさ全開で、聴いていて気持ちが良い。
③は どついたるねんが提供した曲で、疾走するエモーショナルなサウンドが心に沁みる。特にサビの力強い歌メロは印象的で、言葉を噛みしめるように歌うボーカルも良い。
④はメロディアスなギターを全面にだし、アグレッシブな演奏で前のめりに爆走する。提供したKNOCK OUT MONKEYの個性とキュートなアイドルフィーリングが上手く溶け合っている痛快なナンバーだ。
⑤はBACK LIFTが得意とする熱いメッセージが迸る熱いパンクチューン。バンド作品では男の渋いカッコ良さが光る作品を多く発表しているが、可愛らしい女子ボーカルだとかなり印象が違い面白い。ラスト⑥は開花俊介が提供した、ノスタルジックなサウンド&メロディーにじっくりと浸れる1曲。歌声も情景が浮かぶ叙情性がグッド。
アイドル+メロディックパンクというコンセプトとして出来の良い曲が収録されている傑作である。それぞれのパンクバンドが持ち味を発揮した楽曲を提供しているのがナイスで、それに上手くB.O.L.Tのメンバーが呼応していると感じる。
VEGA EP|Hold Out Hope

2016/11/26
1. ”OPENING CEREMONY”
2. Vega
3. too many sleepless night
4. Calling
5. twilight syndrome
「Hold Out Hope」は2015年に結成された秋田発のEasycore/Poppunkバンド。
本作は1st EP作品である。Easycoreとはポップパンクから派生した音楽ジャンルのことで、通常のメロディックなパンクとは違う点として、メタリックなギターリフやデスボイスを用いた作風が特徴的である。
そしてそんな日本のEasycore勢の中で女性ボーカルスタイルの良質な曲を聴かせてくれるのがこのHold Out Hopeだ。
ボーカルを務めるHarukaのキュートボイスで歌われるセンチメンタルなメロディーや情景が浮かぶ感傷的なサウンドには定評があり、バンド作品以外にもB.O.L.Tや ももいろクローバーZなどのアイドルグループにも楽曲提供を行っている。本作はEPなので曲数こそ少ないものの、このバンドのポップセンスの良さが随所に感じられる力作となっており必聴である。
降り注ぐ雨音と電子音からメタリックな轟音が鳴り響く導入のインスト曲①に続く②から、彼らの大きな魅力である力強くノスタルジックな旋律がこれでもかと展開される。これぞ青春という感じの大きなうねりを生み出すサウンドの叙情性は素晴らしいものがあり、さりげなく胸に引っ掛かりを残すメロディーを含めてとにかく出来が良い。
このバンドの持ち味であるメロディーセンスの良さは特筆すべきものがあり、それは③でも存分に味わうことができる。単純にかなり優秀なポップソング作っており、それをロックアレンジで聴かせてくれるとも言えるだろう。
④は美しい音色を奏でるピアノから始まり、緩急のある演奏で超エモーショナルに全力疾走。切なげな表情を見せながら走り抜ける様は瑞々しい魅力がある。
そしてラスト⑤はHold Out Hopeの良さをすべて詰め込んだ渾身の名曲。間違いなく多く人の心を捉えていると思われるこのメロディーラインはまさにポップミュージックの魔法というに相応しい。爽快感に溢れながらも同時に胸を締めつける切なさも内包しているのだ。
どの曲も感傷的な雰囲気抜群で切ない余韻を残しリピート必至である。次作のミニアルバムでは日本語詩の曲も聴くことができてそれも良いのだが、本作から感じられるイノセントは格別と言える。
OVER|SECONDWALL

2016/4/13 Iolite Records
1. 恋の終わりに、桜舞い散る
2. OVER
3. S.I.N
4. 何よりも透明で
5. 君の世界を (Re:Arrange)
「SECONDWALL」は2009年に結成されたロックバンド。本作は3枚目となるミニアルバムである。
プロデュースは幅広く様々なアーティストを手掛けているnishi-kenが担当している。
音楽性はエモコアやメロコアのエッセンスをたっぷりと取り込んだパンキッシュなJ-POPという感じで、切なげな表情を見せながらメロディックに疾走する曲を得意としている。
メロディーの良さを重視したストレートな作風にぴったりとハマっているYUKAの巧みな感情表現が光るボーカルの聴き心地が良く非常にグッド。こういったパンク寄りのメロディックな楽曲の良さを上手く引き出す映える歌声である。本作にはドラマ主題歌としてヒットしたことで知られる『恋の終わりに、桜舞い散る』など彼らの中でも人気が高い曲が収録されており、聴きごたえのある充実した内容となっている。
冒頭①が前述のドラマ主題歌でSECONDWALLの代表曲と言ってもいいだろう。この曲は単純にポップソングとして優れており、女性ボーカルのJ-POPとして秀逸な名曲である。フックのあるメロディーにシンプルで力強いサウンドはとにかくポップ。YUKAの歌声はエモーショナルな魅力があり、特にBメロの歌い回しが良い。続く②は、彼らの持ち味である疾走感溢れる叙情性のあるサウンド&メロディーがドラマチックに展開される。青春エモロックとして申し分のない切ない余韻を残してくれる。
③も青い衝動に突き動かされるエモいギターロックで高揚感が得られる。
④はやるせない感情を情緒たっぷりに歌う美しいバラード。メランコリックな雰囲気のパートからぐいぐいと盛り上げていき、感動的なフィナーレを迎える。歌声の良さがじっくりと楽しめるお得な曲である。
ラスト⑤はお得意のメロディックな旋律で真っ直ぐに走り抜ける。最後も熱さを感じるアグレッシブな曲で締めるのが良い。
どの曲もメロディックで爽快感のある女性ボーカルロックとして完成度が高い。
やはり大きなポイントはYUKAの声質や歌いっぷりで、可愛くも熱量のある女子力が高い歌唱が好きな人にはマストな1枚である。
THE BEST OF けちゃっぷmania|けちゃっぷmania

2009/4/8 Groovie Drunker Records
1. 200 MILES AWAY
2. MAKING EFFORT
3. IT’S IMPORTANT
4. 桜唄
5. PUNK POP FREAK
6. NUMBER.1
7. ALWAYS GREAT DAYS
8. The thing supporting me!!!
9. 姫の想い
10. LET’S HURRY
11. TOY BOX
12. ザ・スウィート☆ソング
13. LONG LONG RACE
14. WELCOME TO PARADISE
「けちゃっぷmania」(ketchup mania)は1999年に名古屋で結成されたポップパンク・バンド。本作はインディーズ時代の曲で構成されたベスト盤である。KOGA/GROOOVIE DRUNKER RECORDS からリリースしていた作品の美味しいところを収録しており、キュートに弾けるポップパンクが矢継ぎ早に繰り出される爽快感溢れる1枚である。
2000年代に雨あられのように登場したJUDY AND MARY(以下ジュディマリ)の系譜を受け継いだ女性ボーカルのメロコア/スカコア勢の中でもロリボイスを武器にした可愛らしい作風で人気があったバンドだ。この界隈で一番人気があったSHAKALABBITSは紅一点がカリスマギャルのような雰囲気をもっており、どちらかと言えば国民的人気獲得後のジュディマリに近いものがあった。対するけちゃっぷmaniaはロリータパンクと呼ばれていた頃の初期ジュディマリっぽい雰囲気をもっており、それが大きな魅力であったと言えるだろう。
冒頭①から疾走感溢れるメロディックパンク+キュートボイスというこのバンドお得意の軽快なビートに胸躍る。続く②はHIROのリズミカルなボーカルが可愛いスカパンク。けちゃっぷmaniaは英詩の曲だと更に可愛さが増すのが大きなポイントで、その真骨頂が本曲であり、キュートパンクのキラーチューンと言っていいだろう。③も英語の発音が可愛くて耳が惹きつけられる。これは少年ナイフに近い魅力があると感じられる。
④はジッタリン・ジンを彷彿とさせる歌謡曲っぽい歌メロが親しみやすいスカパンク。
⑦はメタリックな音に可愛い歌声というハードでキュートな1曲。
⑨⑪⑫⑬はチャーミングな魅力を振りまくメロディックハードコア。小気味よい疾走感と高速リズムで展開されるキャッチ―なメロディー&ロリ声が中毒性を生み出す。洪水のようなスピーディーなポップ感はこのバンドならではの面白さがある。また音楽センスは電波ソングに近いものも感じられる。いずれの曲も日本語詩の可愛い女子ポップパンクの傑作である.
⑭はGreen Dayの有名曲のカバーで、女性ボーカルを生かしたポップセンスが光る良いカバーとなっている。
当時の同系統のバンド勢の中でも最も歌声はキュートで楽曲もカラフルであった。
また2025年現在の耳で聴いても、現行のインディーズシーンにこういうバンドはあまりいないため、新鮮な魅力を感じることができる。
けちゃっぷmania は2005年のメジャーデビュー後は4枚のアルバムを残しており、2007年にはバンド名を「ketchup mania」に改名している。アニメのタイアップもあり売れそうな雰囲気も醸し出していたが、残念ながら2009年に解散している。
Love Eyes|Rocket or Chiritori

1997/12/15 Cardinal Records
1. Intro
2. Fifteen Love
3. Tv Game
4. Love Eyes
5. Betty
6. Trash Kids Hour
7. Star
8. Sad Song
9. Vacation(English Ver.)
「Rocket or Chiritori」(以下ロケチリ)は1990年代後半に渋谷系界隈で人気があった女性ソロユニット。本作は2枚目となるアルバムである。
当時現役女子高生であった「柴原聡子」によるローファイ系の宅録サウンドで、プリミティブな音や飾らない素直なボーカルなどイノセントを感じる瑞々しい作風が魅力である。音楽的に非常に興味深いものを作っているのはもちろんだが、やはり時代性を考えても女子高生というキーワードは重要であろう。
1990年代中盤から後半にかけて、女子高生ブームというものがあり、独自のファッションスタイルや文化は多大な影響力を誇った。10代の少女が社会のトレンドの中心となっていたのだ。この社会の動きは音楽とも無関係ではなく、例えば小室哲哉は明らかに女子高生をメインターゲットにしていた曲を作っていた。
そしてこの女子高生ムーブメントはどちらかというコギャルファッションやミニスカートを武器にした派手なイケイケ女子にスポットが当たる傾向にあった。そういったメディアで取り上げられる少女達とは一味違う存在感があったのが、このサブカル系女子高生という感じの立ち位置のロケチリである。本作は受験勉強の合間に制作したそうである。普通っぽいとか素朴とか言うと陳腐になるが、そういった佇まいの少女が日常生活の延長線上に生み出したリアルな空気感が漂う音楽が彼女の真骨頂である。
導入のインスト短曲①に続く②は、いかにも宅録という感じの生々しい音と10代特有のフィーリングが感じられる脱力的な歌声が良い。
③は通好みのロウな音質が心地良いインスト。不思議な浮遊感は中毒性があるもので、人間味が感じられる雰囲気も良い。アルバムタイトル曲である④と⑧は、アコースティックギター主体のサウンドにのる自然体の可愛らしい歌が心を和ませてくれてグッド。⑤は結構アヴァンギャルドに聴こえるのが面白い。商業的にポップソングとは違うねじれたサウンドは刺激的なものだ。⑦は心の赴くままにプレイした曲という感じで、身近に感じられる質感など等身大の美しさがある。
ラスト⑨は10代の輝きを詰め込んだ永遠のサマーポップチューン。手作り感たっぷりのプリミティブな音や清涼感溢れるメロディー&チャーミングな歌声が心地良く耳に響き、炭酸水が弾けたように胸に広がる名曲である。シングルでは日本語詩の別ヴァージョンとなっているが、この英詩ヴァージョンの方がローファイなサウンドとキュートなポップセンスが際立つ出来となっている。
10代でなければ作れない音楽があるとすればまさに本作がそれと言えるだろう。青い時代にしかない儚さや刹那感がたっぷりと感じられる傑作アルバムである。
2025年現在、柴原聡子はアートや建築の分野でウェブサイトや書籍などを手掛ける編集者として活動を行っている。
PL4E|Faint★Star

2015/7/7 Faint Star Tokyo
1. Hurly-Burly
2. メナイ
3. Boyfriend–A.S.A.P-
4. エレクトロニックフラッシュ
5. スライ
6. フィルム!フィルム!フィルム!
7. 今夜はRIDE ON TIME
8. Sleeping in your car
9. Lips!!
10. koboreteshimattamizunoyouni
11. Spilt Milk
12. レ・ミ・ラ
13. Tip Tap
14. スーパー・サマー・ワンダー
15. Boyfriend -A.S.A.P- Favourite Wild Summer Remix(好き好きサマーREMIX)
「Faint★Star」はHINA(元Tomato n’ Pine)とYURIAの2人組女性アイドルユニット。
本作は1stアルバムである。Tomato n’ Pineや9nineを手掛けたagehaspringsがトータルプロデュースを担当しており、それらのグループに通じるスタイリッシュなガールズポップがたっぷりと楽しめる内容となっている。いわゆる楽曲派アイドルの中でもルーズな部分がほとんどない完全無欠のポップスで、エレクトロポップやスウェディッシュポップなどのオシャレセンスの効いた洗練された曲の数々は完成度が高い。
冒頭①はTomato n’ Pineの『ジングルガール上位時代』と共に3枚目のシングル表題曲の候補になっていたお蔵入り曲。再生した瞬間からドキドキ感があり、トマパイを彷彿とさせるロマンティックな世界観や心地良いサウンドが爽快な気分を運ぶキラーチューン。特にサビのメロディーラインが記憶に残るものでグッド。
②と⑤は中田ヤスタカタイプのダイナミックな高揚感が得られるエレクトロポップ。少し陰りを帯びた歌声やメロディーが良い。
③はドライブ感たっぷりに疾走する力強く可愛らしいポップチューン。ご機嫌なグッドミュージックである。
⑥はまさに渋谷系アイドルポップという感じの胸キュンナンバー。Cymbalsを彷彿とさせるところもあり、甘いメロディーとアグレッシブなサウンドが良いバランスである。
⑧はキュートでソフトな質感のキャンディポップ。絶妙な小気味よさが耳を優しく捉える。
⑨は爽快なギターやキラキラしたメロディーなどカラフルで無敵感溢れるナンバー。この歌メロはかなり良い。
⑩はFaint★Starのデビュー曲で、王道的な感じのポップソングだが、最初にリリースする楽曲としては結構通好みの作風である。
⑪は本作では珍しい切ないバラード曲で、エモーショナルなサビの歌唱などが良い。
⑬はキャッチなリズムやフレーズに自然と体が揺れるグルーヴィンな躍動感が良い。
⑭は女性ボーカルと相性ばっちりのわくわくやときめきが上手く表現してあるハッピーポップス。
ポップス職人が作り出したような安定感のある曲の数々は安心して楽しめるもので完成度が非常に高い。バニラビーンズなどが好きな人にもオススメできる1枚だ。
DESTROSE|DESTROSE

2013/4/10 FLYINGCAT RECORDS
1. The Generations of Chaos
2. Headless Goddess
3. Sword of Avenger (Remix)
4. Skykiller
5. Destination (Album Version)
6. Romancer
7. Fenixx (Album Version)
8. Lifer
9. Nostphilia (Album Version)
10. 破壊の薔薇
「DESTROSE」は2005年にMina隊長(ギター)を中心に結成されたヘヴィメタル/ハードロック系ガールズバンド。本作は1stフルアルバムである。
結成当初はDESTROYAというバンド名であったが、2006年に改名してDESTROSEとなった。音楽性はかなり硬派な印象のメロディックメタルだ。幻想的な美しいメロディー、それを情緒たっぷりに歌い上げるMarinaのハイトーンボーカル、Mina隊長と成美によるアグレッシブなツインギター、mihoのエモーショナルなベース、 Harunaの重厚なドラミングと、確かな存在感を示す本格派女子メタルで、そのカリスマ性のある雰囲気は当時の評判通り女性版X JAPANという感じである。またボーカルを含めてメンバーの変遷が激しいバンドであった(初代ボーカルのEyeは脱退後に「Mary’s Blood」を結成)。
本作発表時の在籍メンバーが後に「FATE GEAR」(Mina隊長)「Disqualia」(成美)「LOVEBITES」(miho、haruna)など世界を股にかけるガールズバンドを結成したことからも分かるように、DESTROSEはガールズメタルシーンの発火点を生み出した偉大なバンドと位置付けることができるだろう。
クラシカルな導入曲である冒頭①に続く②は、重厚なヘヴィサウンドでメロディアスに疾走する名曲。ずっしりとした音壁を生み出すテクニカルなリズム隊と叙情性を持つメロディー、世界観をしっかりと聴き手に伝える巧みな歌い回しと文句なしの出来である。Marinaは歌唱力も高いが、元々の声質が良いので(ゴシックロックにも合いそう)、女性ボーカルものとして満足度が高い。
③は冒頭のいかにもメタルな叫び声から、手に汗握るDESTROSEワールドがフルスロットルで展開される。ダイナミックなビートや歌謡曲やアニソン好きにも受けそうな盛り上がる歌メロが熱い。④はこういうメタルが聴きたいと感じる人も多いのではないかと思われる王道的な渋い作風である。
⑥は彼女達ならではの音楽センスが冴えている曲で、歌モノロックとしてかなり秀逸である。緩急のある演奏、通好みのメロディーや絶妙な歌い回しなど、すべてに無駄がなく良い部分を集約して聴かせるのが素晴らしい。
⑦はMina隊長らしいメロディーが中毒性を生み出す。⑨は冒頭のカッコいいドラムから始まる哀愁のメロディーと力強い歌声でストレートに疾走するナンバー。
ラスト⑩は壮大な物語を奏でて感動のフィナーレを迎える。このバンドの魅力を集約した最後に相応しい疾走感と耽美な雰囲気をもつ1曲である。
ヘヴィメタルとしての完成度は非常に高く、エンタメ精神もあるがコマーシャルな作風に寄りすぎていないこだわりを感じさせるところが良い。後のメンバーの活躍を見ても、オールスターのようなメンツによる贅沢な内容で、ガールズメタルの中でも未だに人気が高いのも頷ける1枚となっている。また本作で圧倒的な歌唱を聴かせてくれるMarinaはDESTROSEを脱退後、「Mardelas」というバンドで人気を獲得している。
LABYRINTH IN MY HEART|aphasia

2003/3/5 キングレコード
1. a phases of the moon
2. Thief in the mirror
3. オンリー・ロンリー
4. Cryin’ in the dark
5. ガムシャラ
6. Too late
7. 光射す明日へ
8. Glass heart
9. イノセント・クライム
10. So long good-bye
11. Wasted time
1995年に結成されたハードロック・ガールズバンド「aphasia」のメジャーデビューアルバムで通算3枚目となる作品。
インディーズで着実に実力をつけて到達した完成度の高い硬派な女子ハードロックが楽しめる1枚である。一般的なガールズバンドの華やかなイメージとは異なるサムライのように研ぎ澄まされた鋭いハードロックは、音楽シーンの流行には左右されず、自分達の好きな音楽を追求する姿勢そのものだ。
本作がリリースされた頃は、ガールズバンドで本格派ハードロックをやるバンドなんてほとんどいなかったのである。その孤高の存在感はSHOW-YAからDESTROSE登場までの間を埋めるガールズバンドという見方もできるだろう。
本作は叙情的なサウンドに泣きのメロディーという王道的なハードロックが次々に繰り出される熱量を感じる内容である。全編に渡り叙情性を盛り上げるキーボードアレンジが秀逸で、ボーカルを務める 流風の切なさと力強さを兼ね備えた歌声も大きな魅力となっている。
SF物語が始まるような導入のインスト①に続く②は、シンフォニックなツボを突きまくりながら力強く疾走するaphasia渾身の名曲。キーボードの音色が効果的で、聴いてすぐに『来たな・・・!』と感じるあまりにも熱い旋律は強く耳を惹きつけるものでリピート必至。『よくこの曲を生み出してくれた!』とバンドメンバーにありがとうと伝えたくなるほど、すべてが堪らない1曲となっている。
③は歌謡曲やアニソンに親和性が高い歌メロとドライブ感のある演奏が良い。安心して聴ける安定感があり、このあたりは実力派ハードロックバンドならではだ。
④は凄まじい哀愁メロディー&サウンドに透明感ある切ない歌声。日本人が好む普遍的な叙情性があり、『堪らん・・・堪らんぜ!このクサメロ!!」となり何回も聴いてしまう魅力がある。そして⑥は更にエモーショナルなうねりを生み出すロックバラード。『孤独・・・絶望・・・もう終わりなのか?』という感じの悲しみが溢れ出す世界観にしんみりと浸ることができる。⑦はキャッチーなメロディーが冴える直球の力強いハードロックで気分が上がる。
⑧も伸びやかなボーカルが気持ちよく響く爽快感溢れるナンバー。
⑨はアカペラ歌い出しからドライブ感たっぷりのハードサウンドが走り出しアクセル全開。前のめりの疾走感は手に汗握るもので、エネルギッシュでカッコいい女性ボーカルロックのお手本のような力作。
ラスト⑪はスピード感溢れるメロディアスな旋律が熱い。最後に疾走感全開のアグレッシブな曲で締めるのがナイス。
一聴して耳に残るハード&ポップな哀愁の旋律はポップミュージックとして優秀なものである。時代が違えば売れてもおかしくない大衆性をもっていたので、ブレイクしなかったのは残念であった。Aphasiaはボーカルのメンバーチェンジを得て2025年現在も精力的に活動を行っている。
NANA|NANA

1990/02/21 J.A.P. Records
1. I Think We’re Alone Now
2. French Kissin’ In The USA
3. ガラスの涙 (Extended Version)
4. I Go To Pieces
5. Just Walkin’ That Road
6. 愛してる
7. Sweet Rainy Days
8. Blue
9. ひまわりの夢
「NANA 」は1980年代に活躍した博多のインディーズアイドル。
本作は1987年のEP『Féerique』と1988年のシングル『SWEET RAINY DAYS』をカップリングしたCDである。
音楽プロデュースはTHE ROOSTERSのプロデューサーであり、1984というバンド(本作でもバックで参加)で知られる柏木省三で、彼が主催したインディーズレーベル・PORTRAITより作品をリリースしていた。また同じ福岡のファミリーバンドDate of Birthも楽曲提供や演奏で参加している。音楽的には1980年代色が色濃いデジタルポップという感じで、NANAの透明感ある歌声によくマッチしている楽曲や洋楽のカバーなどが収録されており、アイドルとしての様々な表情が楽しめる内容となっている。
①②③④⑤⑥がEP『Féerique』収録曲。
①は当時大ヒットしていたアメリカの歌手Tiffanyのカバー曲(原曲はTommy James and the Shondellsが1967年に発表した楽曲)。日本語詩によるキュートなカバーとなっており、日本のアイドルならではの魅力が感じられる出来となっている。②はBlondie 解散後、ボーカルのDeborah Harryがソロで発表したヒット曲のカバー。こちらは原曲そのままに英詩で歌っており、大人の雰囲気溢れる渋い原曲とは一味違う、フレッシュなムードのアイドルらしいカバーとなっている。
③と⑥はDate of Birthの重藤功とNoricoが提供した楽曲。③は名作コンピレーション『SOME GIRLS – REBEL STREET IV』に収録されたものとは異なり長尺ヴァージョンとなっている。いかにも彼ららしい洗練された音楽センスが光るアイドルポップとなっている。アンニュイな歌声やドライブ感満点のギターなど聴きごたえあり。
⑤はTHE ROOSTERSの大江慎也がソロ発表した曲のカバー。原曲とは違うテクノポップアレンジとなっている。
⑥は力強いメロディー&サウンドのダイナミックな旋律の楽曲で、NANAの艶めかしい歌声が映えるナンバー。2025年現在聴いていると、通じるものがあるのか1990年代に登場するチエ・カジウラが思い浮かぶ。
⑦⑧⑨はシングル『SWEET RAINY DAYS』収録曲。
3曲共に作詞はNANA自身によるもので、作曲はDate Of Birthの重藤功によるものである。
⑦は清涼感ある歌声が普遍的なポップネスに満ちた曲調にばっちりとハマっており、キラキラした正統派アイドルポップの名曲である。サウンドの出来がかなり良くできており、バックを務める1984の演奏がかなりグルーヴィ―でカッコいい。⑧はいかにも歌謡曲からJ-POPへの移行期の時代に発表されたポップソングという感じの1曲。当時の邦楽シーンはこういう楽曲が多くあった。
⑨は1分程の短曲で、癒しを与えるふんわりとした歌声や曲調が印象に残る。
今となっては謎に包まれたインディーズアイドルであるNANAの魅力がふんだんに詰まった1枚である。メジャー系アイドルとは音楽性も立ち位置も違うので、Date of BirthやFLAT FACEと共に福岡の女性ボーカルものとして楽しむのがオススメである。
FACE|FLAT FACE

2013/10/16 ミディ
1. HONEYMOON IN PARIS
2. DADA
3. LOOK
4. シェリーに口づけ
5. 池を越えて
6. ガス燈の下で
7. 私もヒゲが欲しい
8. 新しいシャンソン
9. MBA
10. 日々の泡
「FLAT FACE」は日本のロック黎明期である1970年代に活動していたバンド「葡萄畑」のドラマーであった武末充敏と後にシンガーソングライターとして活動する高取淑子による福岡発の音楽ユニット。
本作は1986年にリリースした唯一のアルバムをリマスタリングして再発したものである。
夫婦による音楽ユニットということもあり、プライベートな空気を感じる作風で、エレポップやネオアコを基調としたヨーロピアンな雰囲気のオシャレなポップスを聴くことができる。
元祖渋谷系ユニットと呼ぶに相応しい内容で、今聴いても宝石のような輝きをもつポップソングの数々は色褪せてはいない。
また本作収録の『HONEYMOON IN PARIS』は福岡で1994年から2012年まで放送されていたKBC九州朝日放送の旅番組・るり色の砂時計のテーマ曲として使用されたことでもよく知られている。
冒頭①は前述の旅番組に使用された曲で、西洋的な雰囲気のエレクトロサウンドと牧歌的かつアンニュイでもある高取淑子のボーカルが心を和ませてくれる名曲。非常に聴き心地が良く上品な魅力がある。続く②はキュートな歌が印象的で、女性ボーカルのテクノポップとして優秀である。どこか懐かしさを覚える曲調はまさに1980年代エレポップど真ん中という感じだ。
③はフレンチポップ風のポップスで、喫茶店でかかってそうなオシャレで可愛らしい雰囲気に癒される。
④はフランスの歌手ミッシェル・ポルナレフの有名曲のカバー。ピコピコした電子音に可愛らしい歌声という元祖フューチャーポップとも呼べる早すぎたセンスが光る良い出来となっている。⑤はファンタジックなトリップ感が中毒性を生み出す。幻想音楽好きにオススメできる1曲である。
⑥は幻想的な雰囲気の耽美なポップス。親しみやすい歌メロと緻密なサウンドが絶妙に組み合わさり、独自の美意識ある世界観に引き込まれる。⑨は不思議なムードとふわふわした浮遊感をもつワールドミュージック色のあるナンバー。南国にぴったりで一音一音が気持ちよく耳に響く。ラスト⑩は透明感のある美しい歌声とサウンドが牧歌的に響く感動的なナンバー。
細部にまでこだわりを感じさせるサウンドや声質の良さが際立つ歌声など女性ボーカル・ポップスとしては文句なしの内容である。完全に後の渋谷系女性ボーカル勢を先取りしており、その先見性の高さは素晴らしいものがある。
Date of Birth|Date of Birth

1992/7/1 キティ
1. Do You Believe Yourself?
2. 1969
3. Time of Fire
4. Book of Dream
5. Because
6. You Are My Secret
7. Summer of Love
8. Time After Time
9. Lisa
10. Remember Eyes
福岡のファミリーバンド「Date of Birth」が1992年にリリースしたフルアルバム。
メンバーは藤重3兄弟に次男の妻Noricoという構成になっており、日本では珍しいファミリーグループである。フジテレビ異色の多重人格ドラマ『あなただけ見えない』の主題歌としてヒットした『You Are My Secret』が収録されているので、彼らのアルバムの中でも最も広く知られている1枚である。
前身バンド「MIND CONTROL」も含めて、この時点ですでに長いキャリアを誇るので、音楽としての安定感は抜群だ。オールドロックからニューウェーブまで消化した洗練されたポップソングの数々は日本人離れした音楽センスを感じさせるもので完成度が高い。ボーカルを務めるNoricoの大人の色気を放つクールな歌声も独自の雰囲気があり素晴らしい。
冒頭①はサイケデリックな雰囲気をもちながらもそこまで重くはなく、気怠さと爽快感が同時に味わえる秀逸なポップロック。続く②はオールドロック的な懐かしさを感じるサウンド&メロディーが小気味よく疾走し心地良く耳に響く。洋楽エッセンスを吸収しつつオリジナルなものとして仕上げるあたりはさすがである。
③は異国情緒溢れるワールドミュージック風のポップソング。幻想音楽好きにもオススメできるファンタジックなナンバーだ。⑤は壮大な雰囲気をもつ爽やかな曲で聴き心地が良い。特に間奏のギターの音色が素晴らしい。
⑥は前述のドラマ主題歌で、これ以上ないほどクールでスタイリッシュな名曲。ほとんど洋楽のように聴こえるが、こういったセンスのJ-POPはその後、たくさんでてきたのでその先駆けと言えそうだ。
⑦もドラマに使用された曲でこちらは挿入歌である。この曲もとにかく雰囲気が完全に洋楽のそれ。アコースティックを主体に展開される陰りのある旋律には奥深い魅力がある。
⑧は叙情性のある美しいメロディーや透明感ある歌声がアグレッシブなビートにのり気持ち良い。
ラスト⑩は日本テレビ系ドラマ『悪女(わる)』の主題歌として有名な1曲。この曲は1986年にもアニメ映画『扉を開けて』のエンディングテーマとして使用されている。この新録ヴァージョンもタイアップされているという珍しいパターンであるが、心がほっこりとする牧歌的なポップスとして優れた曲なのでそれも頷ける。
洋楽寄りのJ-POPとして完成された曲は聴きごたえたっぷり。家でじっくりと聴くのも良いし、ドライブなどのBGMとしても雰囲気を盛り上げてくれる。ポップミュージックとして色々な楽しみ方ができる1枚である。
REBEL STREET IV / SOME GIRLS|Various Artists

2021/11/20 SS RECORDINGS
1. ガラスの涙 / NANA
2. 赤いエナメル / MIND CONTROL
3. FALLEN ANGEL / CLAN
4. TOKINONE[時の音] / RITAN
5. RAVISHMENT / MENS
6. HEY!! / VIRGIN ROCKS
7. 桜の花は乱れ咲き / 蟻プロジェクト
8. CHINESE BOY / 日の丸ファクトリー
9. 彼女はアドバルーン / STILL
10. BABY FACE BOY / 麝香猫
11. ラーギーニー / BARBARA
12. ANNABEL LEE§ / 葛生千夏
本作は1987年にジャパン・レコードより発売された女性アーティストのコンピレーションアルバムの再発盤である。
本盤の帯では変更されているが、以前の盤では帯に『少年よ、はげみなさい。』と意味深なキャッチフレーズが記載されていた。その言葉通り当時のマニアックな女性ボーカルバンド/アーティストをディグる探求にはげめる1枚となっている。1980年代インディーズ系女性ボーカルのコンピレーションとしてはバルコニーレコードから発売された『くっついて安心』と並ぶ重要盤である。
アニソンで有名になった蟻プロジェクト(ALI PROJECT)など、後にブレイクしたアーティストも収録されているが、今となってはかなりマニア向けの内容である。とは言え当時の空気感をたっぷりと感じることができるので、若い世代が聴いてみると新鮮な魅力があるかもしれない。
冒頭①は博多のアイドル「NANA」の透明感あるキュートポップス。1980年代では非常に珍しい元祖インディーズアイドルである。
続く②は福岡のファミリーバンド「Date of Birth」の前身バンド「MIND CONTROL」によるスタイリッシュなデジタルポップ。
当時すでにDate of Birth名義で作品をリリースしていたが、ここで貴重な音源引っ張り出してくるところがマニアックである。
③は元ZELDAの鈴木洋子が率いる「CLAN」の音源。ネオアコ/ギターポップのエッセンスたっぷりのギターの音色や清涼感あるメロディーなど、キラキラした魅力を放つキラーチューンである。④は元GIRLSのRITAがボーカルを務める「RITAN」のワールドミュージック風味のスパイスが効いたサイケデリックな世界観が楽しめる。⑤はパンキッシュな疾走感が熱い「MENS」によるロックチューン。
⑥はハードコアパンク界隈で有名なTHE COMESのボーカルを務めたチトセのバンド「VIRGIN ROCKS」の音源。当時のパンクとメタルのクロスオーバームーブメントの影響かメタリックな音とハスキーボイスの叫びが熱いハードロック路線である。
⑦は当時の「蟻プロジェクト」の代表曲で、アルバム『幻想庭園』に収録されているものとはヴァージョンが異なる。こちらはよりプログレッシブなセンスが光るドラマチックな出来となっている。
⑧は福岡を拠点に活動していた女性2人組の音楽ユニット「日の丸ファクトリー」の音源。耽美な感覚をもつニューウェーブ系のシンセポップである。後に「Dimanche」と名前を改めてメジャーデビューしている。
⑨は山東トシエを擁するゴシックロック・バンド「STILL」の音源。名作ミニアルバム『Pale Face』とはまったく路線が異なるキュートなオシャレポップスで、新たな一面を垣間見ることができる。
⑩はマニアには人気が高いガールズバンド「麝香猫」(Jaco:neco)のワイルドなハードロックを聴くことができる。
⑪はフリーキーなロックを聴かせるガールズバンド「BARBARA」の音源。一風変わった女子ロックは刺激的な魅力があり、非常にユニークなバンドだ。
⑫は後にスーパーファミコン用ゲームソフト・ファイナルファンタジーVIのCM曲で知名度を獲得する「葛生千夏」による神秘的な雰囲気の短曲。
女性ボーカルをテーマに音楽ジャンルごった煮のサブカル系アーティストが収録されているバラエティに富んだ内容である。その方向性は当レビューサイト【Strange Girls Music】がやりたい路線と似たような感じであり共感を覚える。
The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji|3776

2024/12/11 Natural Make
1. Introduction
2. The Birth of the Universe
3. The Birth of the Atom
4. The Birth of Oxygen
5. The Birth of Earth
6. The Birth of Life on Earth
7. The Birth of the Japanese Islands
8. The Birth of Mount Fuji
9. The Death of Mount Fuji
10. The Death of the Japanese Islands
11. The Death of Life on Earth
12. The Death of Earth
13. The Death of Oxygen
14. The Death of the Atom
15. The Death of the Universe
16. Introduction (Reprise)
富士山ご当地アイドル「3776」の5年振りとなるフルアルバム。プロデューサーはもちろんこれまで通り石田彰。
2024年は多くの主力アイドルグループが解散すると同時に新しいグループも次々に登場するという激動の年であったが、そういったシーンの流れとまったく関係なく、ついに地球を飛び越えて宇宙を見つめ始めた「井出ちよの」のソロプロジェクトである。
過去にもBELLRING少女ハートの『asthma』など、アイドルが宇宙に飛び立つとき、神々しいオーラを纏い理屈をこえた存在感を示すことがあったが、本作もそういったアイドルの覚醒した瞬間を捉えたものと言えそうだ。
アルバムのコンセプトは宇宙の始まりから終わりという壮大な世界観と高校生の日常生活を重ねるというもので、いわゆるセカイ系よりもスケールがでかい前代未聞の領域に踏み込んでいる刺激的な内容である。とは言え曲自体は前作『歳時記』よりもポップになっており結構聴きやすいのでアイドルソングとして楽しむぶんには敷居はそう高くない。
基本として宇宙についてはナレーションで、高校生活は歌で表現している。またアルバム全編に渡り、時の経過を伝える表現として3776お得意の数字カウントが効果的に使われているのが印象的である。
①~⑧が宇宙と地球 誕生の物語から富士山が生まれるまでを表現したもので、ここにそれぞれ高校性の物語を重ねるという非常にユニークな内容となっている。
冒頭①は本作の導入にあたるトラックで、電子サウンドをバックにこのアルバムのテーマをナレーションするというもの。否応なしにこの先の期待が高まる良い語りだ。
続く②はビックバンによる宇宙の誕生を親切丁寧に説明してくれるナレーションと誕生日に高校に入学する少女の意気込みをリンクさせたパーティーソング。壮大な語りに割り込むキュートで元気いっぱいの歌が楽しい。④は酸素の誕生と気になる先輩の歌で、大人びた雰囲気の洗練されたポップソングを聴かせてくれる。巧みな言葉遊びも面白い。
⑤は惑星の軌道が離れていくことと転校生の登場で彼氏が奪われるという失恋が見事にリンク。しかし重苦しさはなく、わくわくさせる可愛らしい歌はアイドルポップとして秀逸である。
⑥は3776式シューゲイザーが炸裂するキラーチューン。生命誕生のナレーションと気怠い歌パートから突然ノイジーな轟音ギターが火を噴く展開になりカッコいい。
⑧は富士山が出来上がるまでの噴火の経過と不良歴のある17歳をリンクさせている。以前の黒歴史は気にせずキラキラライフに踏み出す17歳の躍動感を詰め込んだ青春ロックチューンは胸をキュンとさせる。懐かしさ溢れる歌メロなどノリノリの1曲である。
⑨~⑮が富士山の終わりから地球や宇宙の終わりを表現したもので、前編と同様にそこに高校生の日常を重ねている。
⑨は富士山の終焉のナレーションと消えた陸上部のエースの歌で、重くはないが独自の切ない雰囲気が良い。⑩は可愛い歌にオシャレサウンドが良い感じに耳に馴染む。
⑫は膨張した太陽に飲み込まれて死を迎える地球とモテ男に引き寄せられる女子の気持ちを重ねている。はっちゃけた雰囲気が楽しいキュートチューンである。
⑭は清涼感溢れる王道アイドルポップとして秀逸である。終わりに向かうこの壮大な世界観に盛り上げてくれる。
⑮は宇宙とこの青春物語の終わりを感動的に締めくくる。ここまで聴けば大団円という感じの清々しい満足感が得られることだろう。
⑯はアルバムを締めくくる最後のナレーション。実はマルチユニバースだったと3776らしく元気に終わる。
近年稀にみる超大作過ぎて、全部聴くのは気力、体力共に必要なので、時間があるときにじっくりと楽しむのがオススメである。アイドルポップとして親しみやすいものを作りながらも3776にしかできない独創的な世界観は聴きごたえがある。
DOLLS APARTMENT|DOLL$BOXX

2012/12/12 キングレコード
1. Loud Twin Stars
2. Merrily High Go Round
3. Take My Chance
4. monopoly
5. ロールプレイング・ライフ
6. fragrance
7. KARAKURI TOWN
8. おもちゃの兵隊
9. Doll’s Box
10. ヌーディリズム ($ヴァージョン)
ガールズバンド「Gacharic Spin」とパワーメタルバンド「LIGHT BRINGER」のボーカルFukiが合体したコラボレーションバンド「DOLL$BOXX」の1stアルバム。
2012年にボーカルが脱退しピンチに陥ったGacharic SpinのライブをFukiがサポートした縁で誕生したという夢の競演が実現したバンドだ。
音楽的には純度100%のメタルという分けではなく、ミクスチャー要素のあるラウドロック寄りの作風で、Fukiのパワフルなボーカルを主役として、演奏テクニックに裏打ちされた凄まじい熱量のロックが次々に展開される圧巻の内容である。Gacharic Spinは本作以後の活動の充実ぶりを考えてもバンドとしてここで一皮むけたと言うことができるだろう。
まさに眠れる獅子が目を覚ますその瞬間を捉えた【何かが始まる予感】にぞくぞくさせられる。
BAND-MAIDやNEMOPHILAなどの海外で人気が高いメタル系ガールズバンドの先駆けであり、メタル系の女性ボーカルものとしては国内最重要アルバムのひとつに数えられる1枚である。
冒頭①から尋常じゃない熱量のラウドなサウンド&ボーカルでメロディアスに疾走する。Gacharic Spinの超絶テクニカルな演奏、Fukiの自信満々の歌いっぷりなど、問答無用のカッコ良さを叩きつけて、すべての理屈を粉砕する。オレオレオナのキーボードの音色やベースを担当するF チョッパー KOGAのデスボイスもかなり効果的で、DOLL$BOXXならではのフィーリングが詰まったキラーチューンである。
続く②も勢いはそのままに更にエネルギッシュに爆走する。力強いメロディーラインは耳に残るものでTOMO-ZOがギターソロで魅せる。
③はラウド系女子メタルの完成形のひとつか?と思わせる絶妙なセンスが随所に感じられる。メーターを振り切ったFukiの伸びやかな歌声とドラムを担当する はなの激烈なデスボーカルに緩急のある演奏。サビのメロディーも秀逸で記憶に残るものである。
④は反骨精神を感じる歌詞が印象的で、陰りのあるクールな雰囲気が良い。歌メロはアニソンばりにキャッチーなので親しみやすい。
⑥は切なく美しい旋律を奏でおり、熱唱するロックバラードとして出来が良い。
⑧はJ―POPとしても良く出来ているアップテンポな歌モノ。ストレートな作風ながらもボーカルの良さを引き出す演奏の巧みさが光る。
⑨はFukiの美しい歌唱が聴ける絶品バラード。王道的な路線であるが、エモーショナルの波を起こすサウンド&メロディーは非常に完成度が高い。こういった曲で感動的に演出できることもこのバンドの強みであると言えよう。
⑩はGacharic Spinのカバー曲で、原曲とはまた違った魅力がある。
音楽メディアでは最強のガールズバンドという謳い文句で紹介されることが多かったが、確かにこのアルバムから感じられる『やってやるぜ!』という気合や熱量には痺れるものがあり、同時に音楽的な力量も優れている。Gacharic Spinという特殊な立ち位置で独自の存在感を示すバンドとメタル系女性ボーカルでは屈指の歌唱力を誇るFukiの運命の出会いから生まれた貴重な作品である。
Dawn Of The Rebellion|G∀LMET

2012/10/6 G∀LMET
1. Before The Beginning
2. Promised Dawn
3. Spirit Of Fire
4. Keep Your Faith
5. Road To The Legend
6. What’s Mine?
7. Dreamer
8. Eternal Rain
9. Bullet For Undead
10. Unchained Love
11. Last Words(Live)
2007年に大阪で結成されたガールズバンド「G∀LMET」(ギャルメット)はギャルがデスメタルをやるバンド。本作は1stフルアルバムである。
ギャルとデスメタルというと一見距離が遠い異文化に思えるが、デスメタルへの適正値が高いギャルがいることを証明する内容だ。
音楽好きにはギャルとデスメタルの両方を好む人もいると思われるので、そのようなマニアックな需要にピンポイントで答えているコンセプトがまず優秀だと言える。
一言でデスメタルといっても極端に過激なブルータルデスなどの様々な音楽スタイルがあるが、G∀LMETは哀愁の旋律を武器とするメロディックデスメタルである。
本作はメロディアスなメタルサウンドをバックにボーカル・みっき~の激烈なデスボイスで押しまくる迫力のある曲が次々と繰り出される。
クリーンボイスパートで女子の可愛さをアピールすることもなく、ひたすらギャルのデス声でアグレッシブに決めるのは清々しい魅力があると言えるだろう。
始まりを告げるシンフォニックなインスト①に続く②から、メロディアスに唸りを上げるギターを中心とした重厚なメタルサウンドと渋い魅力を放つギャル・デスボイスが炸裂する。演奏はヘヴィで切れ味も鋭く、音の壁が迫るような迫力がある。③も勢いはそのままに更に激しさが増すデス声とよりメロディアスな印象を受けるギターが熱い。みっき~の悶絶するかのようなグロウルが印象に残る。④は疾走感たっぷりの爽快感溢れるナンバー。
⑤はデス声の時点でテンションが高いのに、叫んでいるうちに更に興奮してくる様が伝わり面白い。⑥と⑨はずしっりとしたミドルテンポのパートとスラッシュメタルのような激速パートが交差する緩急のある展開が良い。テンポチェンジしてメタリックな音塊と吐き出されるギャル・デスボイスが加速していく様は気分を高揚させる。
⑩は叙情的な哀愁のメロディーをデスボイスで歌い上げるバラード要素も入ったドラマチックなナンバー。スケールのでかさを感じさせる1曲である。⑪は現場の熱気が伝わるライブヴァージョン。観客の声援含めてその臨場感を音源で味わうことができる。
最初から最後まで尋常ではないテンションのメロディアスなデスメタルを楽しむことができる。ギャルとデスメタルの両方を好む人はもちろんのこと、『ギャルは好きだけどデスメタルはちょっと・・・』という人(これは多そう)や『デスメタルは好きだけどギャルはあんまり・・・』という人までも惹きつけてしまう・・・そんな可能性に満ちた1枚だ。
THE NURSE 1983-1984

2025/4/25 SS RECORDINGS
1. ナース
2. 金持ち
3. 鏡
4. 気狂い病院
5. 欲望
6. ANGEL DUST
7. またたび
8. DEPRESSIO
9. またたび
10. 赤い月
11. リレキュラー
12. TIME LIMIT
13. ナース
14. ナース
15. 金持ち
16. 鏡
17. 気狂い病院
18. 欲望
19. DEPRESSIO
20. ANGEL DUST
21. またたび
22. 赤い月
23. 金持ち
24. TIME LIMIT
25. 気狂い病院
26. リレキュラー
27. 鏡
28. ANGEL DUST
29. またたび
30. ナース
ハードコアパンク黎明期に活躍した伝説のガールズバンド「THE NURSE」の音源をすべて収録した編集盤を再発したもの。
1982年に結成後に発表した2作品に加えて、未発表ライブ音源が大量に収録されている。今回の再発では改めてリマスタリングされているので良い音で楽しむことができる。
ハードコアパンクというと激烈なサウンドの簡潔な音楽スタイルであるが、メンバーが女子高生ということもあり、可愛らしい魅力が感じられるのが大きなポイント。ボーカル「NEKO」の初々しさのある勢いに任せた歌や生々しくプリミティブな演奏が伝えるものはまさに10代の若さ溢れる衝動である。
1stソノシートでは後にソロでインディーズの歌姫として名を馳せる「ななきさとえ」がドラムで参加しており、彼女の原点もここにあると言える。
本作が伝えてくれる1980年代インディーズのやり場のないエネルギーに満ちた空気感は今聴くと新鮮なものがあり、特に過去のバンドという意識でなくとも楽しめる内容となっている。また当然ながら歴史的な音楽資料として非常に価値が高い。
①②③④⑤⑥⑦⑧は1stソノシート『THE NURSE』に収録されたもの。
この音源はBAKI(THE EXECUTE、GASTUNK)がプロデュースしている。
冒頭①はイントロの印象的なベースから始まる怒涛のような荒々しい疾走感が熱い。
キャッチーなリズムやシンプルだが意味深な歌詞フレーズが秀逸な名曲である。ナースという病院、介護施設や訪問看護などで病人や高齢者をサポートする職業について歌ったというよりも、そのような気持ちの概念についての歌、もしくはラブソングという感じか。
②はいかにもハードコアパンクらしいこの世の本質を突いてしまった悲しい曲。
③はNEKOのパンクな歌回しが良い。可愛い声質だと色々と得なものである。
④はタイトルからして今は放送禁止のピーだが、当時はそんなことはないので健全な内容で問題はないだろう。⑤はダークな雰囲気の中で、ほとばしるメッセージに痺れる。
⑥は学校の先生に反抗するかのごとく尖った姿勢がナイス。⑦はカオスの中でドタバタとダンスするようにカッコいい。⑧は暗く重いサウンドと呪詛を吐き出すボーカルが凄まじい。
⑨⑩⑪⑫⑬は2nd EP『NURSE Ⅱ』に収録されたもの。
この音源はTAM(THE STALIN)がプロデュースしている。
音の分離が良くなり硬質感が増した印象だ。THE STALINを彷彿とさせるところが結構ある。前作の曲も新録で再収録されているが、質感はかなり違うので、新作として楽しむことができる。
⑨は⑦の再録であるが、録音が良くなりかなり聴きやすくなっている。ニャー、ニャンとキュートに叫ぶところを全面にだしているのが前ヴァージョンとの違いである。
⑩はミドルテンポのダークな雰囲気な曲で、ゴシック濃度が高くポジティブパンクのような感じである。THE NURSEの新たな一面が垣間見える意欲的な作風となっている。
⑪もスピード勝負のハードコアではなくギターの音色がカッコいい殺伐としたロックンロールである。⑫はなんかアイドルみたいな歌い方が新鮮なナンバー。⑬は①の再録で、わざと外して歌ったりと、同じ曲だがかなり違う印象があり面白い。
以上がフィジカル作品の音源で、後はライブ音源となっている。
音質は良くないものの臨場感たっぷりなので当時のアンダーグラウンドシーンの熱量が感じられる貴重な記録となっている。
女性ボーカルのハードコアパンクとしては若さゆえの狂気と可愛らしさが同居しており文句なし。サウンドは直情的ではあるが凝っている部分もあり聴きごたえがある。
NEKO(REIKA)はTHE NURSE解散後、大映ドラマ『青い瞳の聖ライフ』やCMに出演するなど芸能人としても活躍。その後はエジプトで舞踊を学び、現在はダンサーとしてエジプト・アラブ舞踊研究所を主催している。バンド活動も継続しており、あぶらだこのメンバーらと結成したD・O・Tで精力的に活動を行っている。
JON|JON(犬)

1995/1/31 OZ Disc
1. お水あるよ
2. ちっちゃいヤギから大きいヤギまで
3. ジョンがおフトンしくこともある
4. バクじいのおひっこし
5. おチョナン、ナーいってたよ
6. パーカパーカ
7. ジョンのすきなウシウシ
8. ゴハン
9. イゴイゴ
10. あ〜ジョンいっぱいくった
11. ホウソミルレエ
12. あくびナーン
13. ドタ犬ってなーに、ドラねこってなーに
14. ポキュ
15. お水のなかから〜
16. オイゴレ・・・
17. おねり
18. おさけのみました
19. ヤマハオルガン
「JON(犬)」とは1990年代のインディーズシーンに衝撃を与えたオルガンを弾きながら歌う犬である。本作はOZ Discよりリリースされたファーストアルバムだ。
オルガン弾きながら歌う犬・・・これは中の人である上原聖子のイメージの中から生まれた想像上の犬のこと。ライブパフォーマンスもユニークで、当初は牛の寝間着を着て歌っていたが、NHKの歌番組に出演したことがきっかけで、全身オオカミの着ぐるみをまとって歌うスタイルとなっている。
また彼女はタロット占い師としても活動しており、対面での鑑定以外にも雑誌『GINZA』のウェブサイトで毎日占いを星座別に公開しており人気を集めている。
音楽的には幼女が歌っているような無垢なボーカルと規則性を無視したように聴こえる不安定な演奏が未知の音楽体験をさせてくれる非常に面白い音楽表現である。
本作が発売された1995年と言えば小室ファミリーが全盛を誇り、ミスチルやスピッツなどが大人気であったJ-POP全盛期だ。そのような時期にすでにケモナー思想を先取りして独自路線を走っていたのは特異な個性であり、とんでもない独創性だと言えるだろう。
冒頭①からJON(犬)独自の不思議ワールドに引き込まれる。即興と見せかけて、実はすべて計算されているのかどうか、それを考え出すと夜も眠れなくなる。続く②は幼女の鼻歌みたいな可愛い歌とプリミティブな音の響きが異空間を生み出しており凄い。
③はユニークな歌詞が良い。犬がお布団を敷くことがあるというのは動物好きなら共感できるかもしれない。
④はこれぞアヴァンポップ!と叫びたくなる刺激的なサウンドと歌に痺れる。日常の中でいつもと違う風景に不安を抱く動物の内面を上手く描写している。
⑤も脱力しそうな歌と変態アヴァンギャルドサウンドの組み合わせに圧倒される。
⑥⑦はダウナーな空気感が良い。不穏でキュートというあまりない質感はまさにJON(犬)の真骨頂。⑧はご飯という動物にとっての最重要課題をテーマにしたアンセム。
⑨は「Einstürzende Neubauten」を彷彿とさせるパーカッションの金属音がカッコいいダンサブルなナンバー。これが犬の実験音楽だと海外に突きつけたくなるキラーチューンである。
⑩はご飯後の満足した満腹感をアコースティックギターに乗せて歌ったハッピーソング。
⑪は異国情緒溢れる感じの摩訶不思議な歌が楽しい。⑬はリズミカルなステップを踏んで一緒に歌いたくなる。⑭は小鳥が飛んでいる情景が思い浮かぶ可愛い曲。⑯はちょっと不穏な空気感がいい味わい。⑰は眠たい雰囲気を上手く表現しており、聴くと良眠できそうである。
超個性的な作風ながらも親しみやすく可愛いらしいアヴァンポップである。
犬や猫などを愛する者なら共感してしまうほど、気分屋なところや予測不能な感じが上手く伝わってくる。もはや人間の限界を超えた音楽表現と言ってもいいだろう。
このような一風変わった才能はインディーズだからこそものである。