女性ボーカルバンド/ユニット(1980年代~1990年代)

ファンファーレ|advantage Lucy 

1999/5/12 EMIミュージック・ジャパン

1. メトロ
2. Solaris
3. シトラス (album mix)
4. 真昼
5. カタクリの花
6. smile again
7. グッバイ (album mix)
8. 8月のボサ
9. so
10. Armond

本作は1995年に結成されたギターポップバンド「advantage Lucy」(バンド結成時はLucy Van Pelt)がメジャー移籍後にリリースした初のフルアルバムとなる。

イギリスのネオアコバンドやフリッパーズギターなどの渋谷系の流れを受け継いだサウンドが、耳に残るグッドメロディーと透明感ある真っ直ぐなアイコのボーカルと組み合わさり、良質なポップとして誰もが楽しめる魅力がある。

先行のシングルとしてリリースされた③と⑦は白眉の出来で、本作ではアルバムヴァージョンとして収録されている。③は切ないメロディーと瑞々しい歌声が胸に迫る素晴らしい曲で、ギターポップに限らずJ-POPとしても名曲のひとつだろう。このバンドの真骨頂といえる爽やかな⑦は日本の女性ボーカルのギターポップを代表するといっていい名曲。力強さと儚さを含んだメロディーとボーカルはいつまでも心に残る。⑥や⑩も上記2曲の流れを組む清涼感のある曲で、耳にすぐに馴染むメロディーはさすがか。また疾走感溢れる②やエモーショナルな轟音ギターロック⑨など曲調はバラエティに富んでおり、バンドの懐の深さが感じられる内容である。

良い意味でクセがないアイコのボーカルが楽曲の良さを最大限に引き出しており、J-pop的なギターポップとしてこれ以上ないほどの完成度を誇る名盤である。

HYS|ヤプーズ 

1995/6/21 日本コロムビア

1. ヒス
2. 本能の少女
3. ラブ・バズーカ
4. シャルロット・セクサロイドの憂鬱
5. 思春期病
6. 少年A
7. いじめ
8. それいけ!ロリータ危機一髪
9. あたしもうぢき駄目になる
10. 赤い花の満開の下

戸川純を中心としたバンド「ヤプーズ」の5枚目となるフルアルバム。様々な表情を見せる戸川純の変幻自在のボーカルは相変わらず強烈だが、楽曲はそれまでよりもポップになって聴きやすくなっている。また今作でも心の深いところまで抉ってくる戸川純による鋭い歌詞も冴えている。

メタ的な視点の批評性ある歌詞が良い①は、今聴いても痛烈な響きがある。②はテクノポップの名曲といえるだろう。これまでのヤプーズにはありそうでなかったオタク受けしそうな作風が楽しめる。④はヤプーズお得意のSF世界観のエレクトロポップで、いかにも近未来という感じのサウンドに胸躍る。曲名からして期待せずにはいられない⑧は、サックスと戸川純の可愛らしい歌声を生かしたスパイ映画のようなダンスポップ。⑨はメンタルの臨界点を表現した重いテーマの曲だが、シンプルな打ち込みサウンドにメロディアスな旋律と敷居の高さは感じさせない。ラスト⑩は大団円な心温まるナンバー。

戸川純による冴えまくる歌詞は大きなポイントで、それがキャッチーな作風と組み合わさり、聴き手に伝わりやすくなっているといえるだろう。それまでのヤプーズの名盤にも劣らない傑作アルバムである。

身体と歌だけの関係|Hi-Posi 

1995/8/25 キティ

1. 保存する方法
2. ママになっちゃダメ
3. 身体と歌だけの関係
4. あと何日?
5. 体重分の愛
6. バースディパーティ~いっぱいだ
7. あなたはなんでもいい
8. 愛の因数分解リミックス(BonusTracks)
9. 身体と歌だけの関係(プライベートスナップ)

「Hi-Posi」(ハイポジ)は1988年にボーカルのもりばやしみほを中心に結成された音楽ユニットである。

本作は1994年にインディーズでZABADAK主催のレーベルBIOSPHERE RECORDSからリリースされたミニアルバムにボーナストラックを加えて、メジャーのキティから再発したもの。作詞作曲も手掛けるもりばやしみほの色気ある可愛らしいウィスパーボイスが特徴的なエロティックな楽曲は一度聴いたら忘れられないインパクトがあり、質感は1980年代アイドル早瀬優香子にも通じるものがあり。

冒頭①からキュートでエロティックなボーカルに圧倒されるが、ドラムなど緻密なサウンドの完成度は非常に高い。タイトル曲③は9分50秒に及ぶアンニュイな雰囲気全開の楽曲で、エスニックテクノサウンドと官能的な歌詞を囁くウィスパーボイスが見事にハマった傑作。後に早川義夫もカバーしている。もりばやしみほの歌声はエロスだけではなく、アンビエント系の楽曲④では切なく癒しを与えるような表情も見せており、幅広い情感を表現できるボーカリストといえる。J-pop全盛時代の女性ボーカルポップの隠れた名盤である。

遠い音楽|ZABADAK 

1990/10/25 イーストウエスト・ジャパン

1. 満ち潮の夜
2. 夢を見る方法
3. 遠い音楽
4. 二月の丘
5. 愛は静かな場所へ降りてくる
6. 生まれた街へ
7. Sarah
8. Around The Secret
9. とぎれとぎれのSilent Night
10. harvest rain(豊穣の雨)

ZABADAK(ザバダック)は1985年に吉良知彦と上野洋子を中心に結成されたロックユニット。デビュー以来、様々な音楽要素を取り込んで思考錯誤していたZABADAKのイメージを決定づけたともいえる1枚。

イギリスの60~70年代のフォーク/トラッドやプログレッシブ・ロックからの影響を感じさせ、ケルト音楽等のワールドミュージック色の強いポップロックだが、上野洋子の澄んだ歌声を中心とした日本の伝統的な「歌」を大切している作風で、良質なポップミュージックとして聴ける名盤である。録音はピーター・ガブリエルのイギリスのリアル・ワールド・スタジオで行い、作曲はすべて吉良知彦と上野洋子が担当、作詞はKARAKの小峰公子が大半を手掛けている。また演奏陣にはヴァイオリニストの金子飛鳥、ベーシスト渡辺等、KARAKの保刈久明など豪華面子が参加している。

冒頭を飾る①は上野洋子ボーカルの美しい3拍子のワルツでこれぞZABADAKな幻想的な楽曲。②はアイリッシュ的なリズムの吉良智彦ボーカル曲で、間奏の金子飛鳥のフィドルがひたすらかっこいい。
③はZABADAKの代表曲となったアコースティック楽器主体の大名曲。吉良智彦の書く美しいメロディー、上野洋子の澄んだ瑞々しい歌声、「詩」としても優れている原マスミが手掛けた歌詞、奥行きのあるアレンジなど素晴らしい1曲。⑧はアコーディオンが印象的な民族音楽的な高揚感のあるダンス曲。⑩はジブリアニメ等にタイアップしてもハマりそうな壮大なフォーク/トラッドソング。

アルバム通して記憶に残る素晴らしい曲が多く、小難しい知識等は必要なく誰もが楽しめる内容なのでぜひ多くの人に聴いて欲しい1枚だ。

Goddess in the Morning|Goddess in the Morning 

1996/3/10 biosphere records

1. Reincarnation
2. Ucraine
3. Goddess in the Morning
4. Flower Crown
5. Tribute of Jungle
6. Saga
7. 14

アニメソング系女性シンガーソングライターとして独自の世界観で支持を集める新居昭乃とYAYOIによる音楽ユニット「Goddess in the Morning」が残した唯一のアルバム。Hi-Posi も作品を出しているZABADAK系列の音楽レーベルBIOSPHERE RECORDSから1996年にリリースされて、同レーベル最高のセールスを記録したとのことである。

アンビエント風味もあるヒーリング/ワールドミュージックという感じで、民族音楽色のあるボーカルやコーラスなど細部にもこだわりを感じる意欲的な作風である。新居昭乃お得意のナイーブで箱庭的なファンタジー色が強い歌モノも収録されている。

①は新居昭乃の王道と言える透明感のある幽玄なボーカル主体のメロウな曲で、癒しを与えてくれる。③と⑥はブルガリアンボイスのような民族音楽色が強いもので、二人の高度なボーカル技術を楽しむことができる。④はこのアルバムの中核をなす楽曲で、童話のような世界に引き込まれる名曲。メロディーラインが素晴らしくて、記憶に残る旋律である。

新居昭乃と柚楽弥衣のお互いの個性を上手く調和させており、日本産のヒーリング/ワールドミュージックの傑作アルバムである。

空色帽子の日|ZELDA 

1985/10/21 CBSソニー

1. DEAR NATURAL
2. 自転車輪の見た夢
3. FOOLISH GO・ER
4. FLOWER YEARS OLD
5. WATER LOVER
6. 湖のステップ
7. 小人の月光浴
8. 時折の色彩
9. 無人号地・357
10. ハベラス

1979年にベースの小嶋さちほを中心に結成されたガールズバンド「ZELDA」。日本のガールズバンドの草分け的存在として1996年に解散するまでロックシーンを引牽していたバンドである。本作は前作に続いてムーンライダーズの白井良明がプロデュースした3枚目となるフルアルバム。

1970年代後半のパンク/ニューウェーブムーブメントから登場したバンドであり、イギリスのSiouxsie & The Bansheesなどのニューウェーブバンドからの影響が感じられるガールズロックだ。

冒頭を飾る①は意表を突く三拍子のワルツ。タイトル通りナチュラルスタイルの高橋佐代子のボーカルが映える傑作。②はネオアコ風の可愛らしい曲。この女の子っぽい天然なキュートな質感は後の女性アーティストへ多大な影響を与えたと思われる。⑥は乙女チックなときめきが眩しいニューウェーブサウンドのガールポップの名曲。白井良明が作るサウンドが素晴らしい。
⑦はこのバンドお得意のぶっ飛んだ曲調と歌唱がインパクト大のポストパンク系の曲。⑧はZELDAの代表曲といえる名曲で、エキゾチックなメロディーと文学的な歌詞、クールなボーカルと一度聴いたら忘れられない魅力がある。

後のZELDAもそうだが、このアルバムでも曲によって表情が変わりまったく印象が変わるというのは、女性の不可思議さを表現しているようでもあり、いつまでも色褪せない女性の不可解さが味わえるアルバムである。

Switch Complete 1986~1987| Nav Katze  

2001/8/23 アゲント・コンシピオ

1. 御亡夜の夢
2. 夕なぎ
3. ゆりかご
4. 入浴
5. 愛し合う夜
6. 水のまねき
7. 銀の羽の戦士
8. 螺旋階段
9. 赤い真夏
10. 闇と遊ばないで
11. 黒い瞳
12. 病んでるオレンジ
13. 駆け落ち
14. パヴィリオン

Nav Katze(ナーヴェカッツェ)は1984年に結成されたスリーピースガールズバンド。本作は1986年の「Nav Katze」と1987年の「OyZaC」の2枚をまとめた初期のベスト的内容のアルバムである。

当時和製ポリスと言われた通りイギリスのニューウェイヴ系のバンドからの影響を受けており、クールな質感のロックサウンドとアンニュイな雰囲気を持つ飾らない歌声が特徴的なギターロックである。メロディーや歌詞には日本的な叙情性があり、それがこのバンドの大きな個性と魅力になっている。

冒頭①はこのバンド独自の冷めたような批評性が感じられるが、シンプルなロックサウンドはカッコよくて、歌ものとしても優秀である。
②はエモーショナルなギター、メロディーと文学的な歌詞が、独自の空気とひとつの物語を紡ぎ出す「自己」への鎮魂歌のような曲。この時代のインディーシーンだからこそ生まれた奇跡のような大名曲である。
心に安らぎを与えてくれる③はジャングリーなギターポップナンバー。⑥は軽快で爽快感ある曲で、一筋縄ではいかない文学的な歌詞も記憶に残る。ワールドミュージック調の⑦はファンタジー色が強い旋律が、別世界に連れていってくれる。⑩はネオアコサウンドと親しみやすい歌メロに可愛らしくも怖い意味深な歌詞が印象的な曲。疾走感ある⑬はギターリフが良くて、刹那的な情感が切ない。
⑭は作詞にサエキけんぞうを迎えた、SF世界観の退廃的で儚い名曲。サウンドやメロディーはシンプルだし、ボーカルもそっけないが、とにかく心揺さぶる。

アルバムとしてひとつの物語を奏でているような素晴らしい内容で、日本のガールズバンドの中でも屈指の内容の1枚である。

NON-FICTION|PSY・S 

1988/8/1 ソニー・ミュージックレコーズ

1. Parachute Limit
2. Spiral Lovers   
3. (Shooting Down) The Fiction     
4. Romeo            
5. EARTH〜木の上の方舟〜          
6. Angel Night〜天使のいる場所〜 (Album Version) 
7. Silver Rain      
8. Robot
9. 薔薇とノンフィクション           
10. HOURGLASS〜時の雫〜

PSY・S(サイズ)は1980年代から1990年代にかけて活動していた松浦雅也とCHAKAによる音楽ユニットである。本作は1988年にリリースした4枚目のフルアルバム。

フックのあるメロディーと透明感のある瑞々しいボーカルが印象的なニューウェーブ系の電子ポップで、1980年代のサブカル系女性ボーカルポップを代表するというに相応しい内容だ。特に冒頭を飾る①は青春のセンチメンタルな情感と真っ直ぐさが突き刺さる名曲で、美しいメロディーとエモーショナルなボーカルは最高である。アニメのタイアップで有名な代表曲⑥は、疾走感溢れる力強さと切なさが同居する傑作。⑨はまさに1980年代の女性ボーカルポップという感じで、王道の胸をキュンとさせるメロディーはさすが。また⑤のような自然・大地系の壮大なバラード曲もあり、収録曲はバラエティに富んでいる。

電子楽器を用いたニューウェーブポップとしては申し分ない出来である。特に松浦雅也の作るメロディーはセンス抜群で今聴いても楽しめる素晴らしいアルバムだ。

Silent Days|KARAK 

1991/6/21 キングレコード

1. 羽化 
2. ウィングス・オブ・アン・エンジェル    
3. 明日ヲ見ル丘 
4. 水の底の映画 
5. くじらの夢    
6. 雨の日のピアノ           
7. 傷つけぬよう 離れぬように      
8. スロウ・トゥ・ミー    
9. カデンツァの森           
10. 老人と船

KARAK(カラク)は小峰公子と保刈久明による音楽ユニットで、本作は1991年リリースの1stアルバムである。ケイトブッシュやコクトーツインズなどのイギリスの幻想的なプログレッシブロックやニューウェーブからの影響を感じさせるポップロックで、透明感ある小峰公子のボーカルと保刈久明による幻想的な楽曲が特徴的である。

冒頭①から遊佐未森と同時代性を感じるドリーミーでファンタジックな世界観に引き込まれ、続く②ではUKロックを思わせる繊細で耽美的な旋律を聴かせてくれる。⑦はPSY・Sにも通じるようなシンセとギターが唸りを上げるニューウェーブポップで、KARAKにしては珍しくストレートな盛り上がりで高揚感が得られる。⑧はネオアコ風の爽やかなサウンド&メロディーが懐かしい気持ちを運んでくれて、乙女チックなボーカルと歌詞に少し気恥ずかしさを覚える。⑨は壮大でエスニックなフォーク/トラッドソング。

派手さはないが楽曲の完成度は非常に高くて、じわじわと心に沁みるアルバムである。また小峰公子の歌声が独特の可愛らしさがありそれが大きな魅力となっている。

ハニー・チャパティ|メンボーズ 

1997/9/21 バッド・ニュース音楽出版

1. 電車にのって
2. はやくはやく
3. ななちゃん
4. たびたち
5. おばあちゃんが夏を待ってる
6. 窓
7. オロナイン
8. フラワー
9. 大正区
10. 水
11. 夢

1990年代のインディーシーンに少なからず衝撃を与えた2人組の音楽ユニットの1stアルバム。音楽性はアコースティック主体の歌モノで、ふわふわというかフニャフニャした無垢なボーカルが心をほっこりさせてくれる。歌声はプロの歌手やカラオケ的な上手さとはまったく違う素人女子という感じで、独自の世界観を持つフォーキーなポップソングである。

冒頭を飾る①はこのユニットの魅力が詰まった名曲で、未完成な響きの女性ボーカルものの金字塔と言えそうである。②は持ち前のゆるいキュートさが心地良い佳曲。③はみんなのうたにタイアップできそうな感じだが、歌詞のセンスが凄くて驚かされる。⑨はリアルな日常の生活感や風景を感じる、不思議っぽい女の子の歌。

特筆すべきはやはり真っ直ぐで無垢な印象のボーカルで、インパクト大だが、単純に曲として良いものが多く、良質なポップソング集として楽しめるアルバムだ。

猿の宝石+2Songs|ミン&クリナメン 

2002/8/21 インペリアルレコード

1. フラッシュ・ザ・ナイト
2. タコツボ
3. ササヤキ
4. ハゴロモ
5. 猿の宝石
6. フューチャー・ナウ!!
7. 夢見るシャンソン人形I
8. 夢見るシャンソン人形II

ミン&クリナメンは1980年代に活動していたバンドで、ボーカルの泯比沙子がライブ中にセミを食べるなどの過激なパフォーマンスで有名であり、後にハイロウズで活躍するベーシストの調先人が在籍していたことでも知られている。本作は1987年にリリースした唯一のメジャー作品にボーナストラック2曲を追加したものである。

泯比沙子のボーカルは戸川純からの影響が強いと思われるエキセントリックなロリータボイスで、サウンドはパンキッシュなニューウェーブ系のロックだ。冒頭を飾る①は1980年代的なニューウェーブ色の強いノスタルジックなポップロックで、今聴くとサウンドはやや古さを感じるが、爽やかなビートは懐かしい気持ちを運んでくれる傑作。原マスミが書いた感動的な④やタイトル曲⑤など楽曲はバラエティに富んだ内容で、全編に渡り泯比沙子の不思議ちゃんキャラといえそうな歌声が楽しめる1枚だ。

crossed fingers|D-DAY 

2009/10/20  Caraway Records

ディスク 1
1.Yacht Harbour
2.失した遊園地
3.Peaches
4.Night Shift
5.CITRON
6.わたしの昼と夜
7.NOSTALGIA
8.Sweet Sultan
9.Dead End
10.MEMORY
11.DUST
12.KI・RA・I
13.So Thst Night
14.Vale of promises
15.Hills Dream
16.Float a Boat
17.僕には特別なクリスマス
18.ジェリー・ビーン
19.In The Midnight Hour

ディスク2
1.Kiss Me At The Garden Gate
2.天使に似た君
3.Sunday Thinker
4.a slice of the night
5.Innocent Lover
6.Pho’be
7.Last Summer Wind
8.ひとりじめのx’mas
9.Here I Am
10.シェリーにくちづけ
11.Milky Way

本作は1982年に結成され、インディーズシーンで活躍したニューウェーブ系バンド「D-DAY」の1980年代の全音源を収録した編集盤である。ニューウェーブサウンドのガールポップであるが、ボーカルの川喜多美子の可愛らしいビジュアルや歌声は、当時の殺伐としたインディーズシーンでは異彩を放っており、一服の清涼剤のような存在であったといわれる。

ディスク1はベスト的な内容である。②は気怠げな雰囲気が堪らない、切ない幻想的なナンバーで名曲である。⑤はアイドルポップ風のキュートなポップチューン。⑥は後の渋谷系にも通じるようなオシャレポップ。⑨⑩はハードなロックサウンドに透明感あるボーカルが組み合わさり、気持ちの良い高揚感が得られる。⑬はキャッチーなメロディーのギターポップで聴きやすい曲、⑰はみんなうた的な可愛らしい歌声に心が和むポップナンバー。ディスク2は未発表曲などのレア音源を収めたもので、斉藤美和子とコラボしたガールポップの傑作⑬などバラエティに富んだ音楽性が楽しめる。

キュートな歌声を生かしたインディーポップは、サブカル系の女性ボーカルバンドの走りといえそうで、その儚い輝きが詰め込まれた曲は色褪せない魅力がある。

幻想庭園+1|蟻プロジェクト 

1996/11/11  PROP-FIZZ RECORDS

1. 靑蛾月
2. マリーゴールド・ガーデン
3. 鏡面界 im Juni
4. アンジェ・ノワールの祭戯
5. 紅い睡蓮の午後
6. 桜の花は狂い咲き
7. 少女忌恋歌
8. パラソルのある風景
9. 硝子天井のうちゅう
10. 幻想庭園
11. Puppé Frou Frou
12. フラワーチャイルド

現在ではアニソンアーティストとして有名な音楽ユニット「蟻プロジェクト(現ALI PROJECT)」が1988年にインディーズからリリースした1stアルバムにボーナストラック⑫を加え再発したものである。

ゲルニカやザバダックからの影響もありそうなプログレからエレポップまで取り込んだゴシックロックで、片倉三起也のクラシックや西洋音楽からの影響が強いサウンド構成や作曲センスは様式美を感じさせる。

冒頭を飾る①は蟻プロジェクトの魅力が分かりやすく表現されている楽曲で、チープな打ち込みサウンドと幻想的な世界観、宝野アリカのゴシック/ロリータ的な魅力がある可愛らしい歌声が印象的である。本作のリードトラックといえる⑥はキャッチーな和風のメロディーラインに、チープなエレポップサウンドと粗削りなギターが組み合わさったダンサブルな楽曲である。③のようなクラシカルなバラードもあり、アルバムの良いアクセントとなっている。

全体的にサウンドはチープで軽いがそれが幻想的なゴシックロックと上手く調和している傑作アルバムだ。

銀の翼|STARLESS 

2001/3/7 キングレコード

1. プロローグ
2. 銀の翼
3. 瞳の奥に…アイ・ルック・イン・ユア・アイズ
4. アフロディジアック
5. 章末
6. ブレス
7. ダジリング・ディザイア
8. 予感
9. 明日の影

本作は元Scheherazadeの大久保寿太郎が1984年に結成したプログレッシブ・ハードロックバンド「STARLESS」のデビューアルバムがCDで復刻されたもの。バンド名はKing Crimsonの『STARLESS AND BIBLE BLACK』から。

音質はやや硬い質感だが、シンフォニックな様式美を基調としたハードロックサウンドと、歌謡曲やアニメソングのようなキャッチーさを持つ楽曲をボーカルの宮本 “JULLA” 佳子がパワフルに歌い上げている。

アルバムタイトル曲である②は高揚感得られる文句なしの名曲で、日本産プログレハードとして先駆的な旋律は今も色褪せてはいない。③などもいかにも1980年代の日本的なハードロックという感じで、聴き手の期待を裏切らないシンフォニックな盛り上がりを見せる。プログレ度数が高い⑥は本作の目玉トラックといえ、ドラマチックな目まぐるしい演奏に引き込まれる。

メロディーラインは一緒に歌えるほどキャッチーなので、敷居は高くなく気軽に楽しめる1枚である。

LET’S KNIFE|少年ナイフ 

1992/8/26  MCAビクター

1. RIDINDG ON THE ROCKET/ロケットにのって
2. GET THE WOW
3. TWIST BARBIE
4. TORTOISE BRAND POT CLEANER`S THEME(SEA TURTLE)
5. ANTONIO BAKA GUY(アントニオバカ貝)
6. AH SINGAPORE/嗚呼、新嘉坡
7. FLYING JELLY ATTACK
8. BLACK BASS
9. CYCLING IS FUN/サイクリングは楽し
10. WATCHIN` GIRL
11. I AM A CAT
12. TORTOISE BRAND POT CLEANER`S THEME(GREEN TORTOISE)
13. DEVIL HOUSE/悪魔の館
14. INSECT COLLECTOR
15. BURNING FARM/焼畑農業のうた

ニルヴァーナと全英ツアーを行うなど海外で非常に評価が高いガールズロックバンド「少年ナイフ」の1992年リリースのフルアルバム。それまで発表してきた代表曲の数々を再録し、収録したベスト盤的内容である。ラモーンズなどの海外パンクバンドからの影響を感じるヘタウマで可愛らしいポップパンクで、のんびりとした雰囲気があり親しみやすさがある。

冒頭を飾る①は少年ナイフを代表する曲のひとつで、これを聴けばこのバンド独自のゆるさと可愛らしさが伝わることだろう。ヘビーなギターがうなりを上げる⑤はやさぐれロック。センスの良いフィーリングが光る軽快な⑨はガールズポップとしても良い曲だ。⑪は味のあるつたない英語詩の歌唱とノスタルジックなメロディーが印象的で、胸に何とも言えない切なさが迫る名曲である。⑮はニューウェーブ色が強いキャッチーで凄まじくかっこいい曲。

全体的にはストレートなロックアルバムであるが、サウンドは凝っているものも多くあり一筋縄ではいかない内容となっている。洋楽的なセンスを感じるものが多くあり、少年ナイフが海外で受け入れられたことも頷ける傑作アルバムだ。

Wee Wee Pop!!|TEENY FRAHOOP 

1998/2/1  K.O.G.A Records

1. eat candy
2. Flower Goes On
3. SHE IS BABY PANDA
4. VOMIT
5. GRUDGE
6. A Bird in the Narrow Cage
7. THE LUCKY★STAR
8. BANANA JUICE
9. Happy Vanilla Pop
10. Soy bean sprouts
11. to lay
12. Kitchen
13. Heavy Smoked,Salmon Sand(wich)
14. Elephant mummy

ヴィーナス・ペーターの古閑裕が主催するインディーレーベルK.O.G.A Recordsからデビューした3ピースのガールズギターバンド「TEENY FRAHOOP」の1stフルアルバム。K.O.G.A Recordsは良質な女性ボーカルバンドの作品を多数リリースしており、このTEENY FRAHOOPもパンク、パワーポップ、ギターポップなどを取り込んだキュートなガールズロックが楽しめる。

基本的には②、③、⑩などの勢い一発といった感じのラフな疾走感溢れるパンクポップが多く収録されている。目玉はダイナソーJr.のようなエモーショナルなオルタナギターロックの名曲①で、切ない轟音とメロディーの洪水は◎。アルバム内では冒頭のこの曲だけ他とは毛色が違う作風となっており、このバンドの渾身の1曲といっていいだろう。

インディーバンドらしい粗削りなロックサウンドと可愛らしいボーカルが楽しめる当時のインディーシーンの熱さが感じられる1枚だ。

最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶|黒百合姉妹 

1990/12/25 SSE COMMUNICATIONS

1. 最後は天使と聴く沈む世界の羽根の記憶
2. Little Star
3. 深
4. 花
5. 地中海の夢
6. Under The Moon
7. Le Chant De L’etoile
8. 黒猫ティヴの子守歌
9. Marble Angel

1980年代後半から長年に渡りインディーズシーンで活動しているJURI(妹)とLISA(姉)による姉妹音楽ユニット「黒百合姉妹」。本作は1990年にリリースされた1stアルバムである。作詞/作曲は姉妹で行い、メインボーカルはJURIが担当し、LISAは主にピアノ/キーボード演奏を行う。宗教音楽や教会音楽のような荘厳な楽曲は尊さがあり、イギリスのゴシック系音楽グループのデッドカンダンスに通じるような独特の美意識と耽美感も魅力である。

①は黙示録的な世界観の中で天から救い光が降り注ぐような美しい讃美歌が心を癒してくれる。まだ熟練していない初々しい無垢な歌声が印象的である。③は美しいピアノ伴奏と悲哀を感じるメロディー&ボーカルがダークな世界にいざなってくれる。④はオルガン伴奏と終末的な世界観の歌詞が強烈なインパクトを残す、切なくも力強さを感じる曲。⑥は悲劇的なピアノがリードするドラマチックな曲構成に引き込まれる。ラスト⑨は天使のような旋律を聴かせてくれて、ひたすら美しいピアノと歌声にうっとりとしてしまう。

デビュー作ということもあってか歌声はまだ成熟していない部分が感じられるが、インディーズっぽい可愛らしい魅力があると言える。こういった音楽性をDIY精神で作り上げているのは凄いことだと思うし、当時のインディーシーンの中でも異色と言える傑作アルバムである。

Kokushoku Elegy|黒色エレジー

2020/12/30 SUPER FUJI

ディスク1

1. 訪れざる宴
2. 満月の夜
3. Warrior
4. Goddess
5. 花粉犯罪
6. 夢の成る頃
7. 安息日
8. □鵺の想い
9. 邪宗門
10. 太陽眼
11. サンストローク
12. 揺籃の刻
13. 神々のレース
14. 虹と蛇のブルース

ディスク2

1. Crepuscular Rays
2. Seiren
3. 虹と蛇のブルース
4. Dear Sheba
5. 青いダリア
6. □鵺の想い
7. Cosmictrigger
8. 訪れざる宴
9. 日々の泡
10. Goddess
11. 神々のレース
12. 夢の成る頃

1980年代に活躍した伝説のゴシック/ポジティブパンク「黒色エレジー」。本作は1985~1989年のスタジオ録音の14曲と初出6曲を含む未発表ライブの2枚組からなる27年ぶりとなるリリースの編集盤である。スージー・アンド・ザ・バンシーズに影響を受けたと思われるニューウェーヴ系のゴシックロックだが、ヒリヒリするような緊張感あるサウンドに和楽っぽいメロディーが組み合わさったスタイルは日本独自の個性がある。ボーカルkyokoのカリスマチックなダークで艶やかな歌声は存在感があり、1980年代日本の女性ボーカルゴシックロックでは「G-シュミット」と並んで代表的なバンドと言えるだろう。

スタジオ音源のディスク1は黒色エレジーの魅力が存分に味わえる濃い内容である。③はアンダーグラウンドな雰囲気全開のラフなバンドサウンドが堪らなく良い。ポストパンクとしても優秀な楽曲で、メロディアスなギターなど暗黒のエモーショナルさは特筆すべきものがある。代表曲⑤はキャッチーでこのバンドの魅力が分かりやすく聴き手に伝わる秀逸な曲。ざらついたギターの張り詰めた緊張感と和風なメロディーを歌う幽玄な世界に誘うような妖しいボーカルは必聴である。⑥は異様にカッコいいうねるベースなどクールなロックサウンドをポップに味付けしており、幻想的な雰囲気も素敵な曲。⑨はプログレッシブな展開を見せるドラマチックな楽曲で、ダークでパンキッシュな迫力とカオティックな旋律に圧倒される。
他にも狂気のゴシックロックという感じの①や透明感ある美しいボーカルと激烈なサウンドが上手く調和されている⑪など個性的な佳曲が揃っている。ディスク2のライブ音源は録音状態があまり良くないものの当時の熱さは伝わるもので貴重な記録と言えるだろう。

あまり似たような音楽性が浮かばないほど独自性があるバンドである。ニューウェーヴらしいパンキッシュさだけでなくプログレやハードロック的な部分が要所に感じられ、アンダーグラウンドなバンドらしい混沌渦巻く内容で聴きごたえ十分の1枚だ。

螺鈿幻想|ページェント 

2006/5/25 キングレコード

1. 螺鈿幻想
2. ヴェクサシオン
3. 木霊
4. 人形地獄
5. 夜笑う
6. セルロイドの空
7. エピローグ

1980年代に活動していたプログレバンド「ページェント」が1986年にリリースした1stアルバムを紙ジャケ再発したもの。ジェネシスなどのプログレバンドからの影響を受けたシンフォニックなロックサウンドを基調とし、歌謡曲っぽい日本的なメロディーをボーカルの永井博子(現在は大木理紗)が圧倒的歌唱力で表情豊かに歌い上げるという内容である。永井博子は同時期にミスターシリウスにも在籍した日本のプログレッシブロックを代表する女性ボーカルである。

タイトル曲①はシンフォニックな演奏と和を感じるメロディーと歌詞が見事に同居する秀逸なナンバー。永井博子の歌唱力の高さは特筆すべきものがあり、1人のシンガーとしても素晴らしいと言えるだろう。オルゴールのイントロとセリフが印象的な②は前半のアコースティックなパートから後半のドラマチックな演奏までひたすら美しい楽曲である。前半と後半で歌い方がまったく違うボーカルの表現力にも注目である。③はストレートなハードロック歌謡で、ベタとも言える臭いメロディーを情緒たっぷりに歌い上げるボーカルが力強い。④はメロディアスなギターがとても良い、日本的なホラー感がある曲。ラスト⑦は壮大なロックバラードで、タイトル通りエピローグという感じの感動がある。

演奏のドラマチックさは素晴らしいものがあり、親しみやすいメロディーも含めて聴きやすい内容である。永井博子の歌声にはこの幻想的な世界観に引き込んでくれる存在感があり、期待を裏切らない傑作アルバムだ。

クレヨン社の展覧会 BEST SELECTION 1988-1991|クレヨン社

1992/3/21 NECアベニュー

1. 夕映えのグラウンド
2. 痛み
3. いつも心に太陽を
4. さよならボーイフレンド
5. 手の中の魔法
6. 辻ヶ花浪漫
7. Broken Heart
8. 少年の時間
9. 口笛とビー玉とヒコーキ雲と
10. 風の時代
11. 地球のうた

柳沼由紀枝と加藤秀樹による音楽ユニット「クレヨン社」のベストアルバム。代表曲が多数収録されており、クレヨン社の魅力を知るにはうってつけの1枚。本作にも収録されている1988年デビューシングル『痛み』は愚直なまでにシリアスな歌詞が凄まじいインパクトであったが、音楽性はPSY・SやZABADAKなどに通じるようなワールドミュージックやファンタジックなものも多い。

前述した通りデビューシングル②は、サウンドはシンプルなチェロのみで、メッセージ性が強い歌詞を核にした楽曲である。尾崎豊やブルーハーツと同時代性を感じるものではあるが、柳沼由紀枝の優しい歌声で切々と訴えられるメッセージは青春時代に誰もが抱く葛藤であり、いつまでも色褪せることはないだろう。③は心を優しく包み込んでくれる温かい歌声とメロディーが良い。⑤は躍動感あるリズムのシンセポップで、わくわくする旋律に元気を貰える。⑥は古代の日本の情景が浮かぶような民族音楽色が強いポップソング。和を感じるサウンドや美しいメロディーは絶品で、透明感あるボーカルも良い。⑪は地球をテーマにした壮大な曲で、大地や生命の息吹に触れるような感動的な1曲。

楽曲はポップミュージックとして普遍的な魅力がありながらも個性的でもある。特に②のような曲はJ-POPシーンではほとんど聴くことができない、ある意味挑戦的なものであり、創作意欲に満ちた音楽性が楽しめる1枚である。

改造への躍動|ゲルニカ

2006/2/22  ‎ Sony Music Direct

1. ブレヘメン
2. カフェ・ド・サヰコ
3. 工場見學
4. 夢の山獄地帯
5. 動力の姫
6. 落日
7. 復興の唄
8. 潜水艦
9. 大油田交響楽
10. スケエテヰング・リンク
11. 曙
12. 銀輪は唄う
13. マロニエ読本

戸川純、上野耕路、太田螢一による音楽ユニット「ゲルニカ」。本作は1982年にリリースされた1stアルバムに1stシングルを追加収録した紙ジャケ再発盤である。プロデュースは細野晴臣で、上野耕路のチープなシンセサウンドと戦前の大陸歌謡を思わせる楽曲を戸川純が演劇的に歌い上げるという超個性的な内容の1枚。

②はうねるようなシンセと透明感ある歌声が非現実空間に引き込む、アンダーグラウンド感が堪らない曲。⑤は歌い出しからオペラチックな戸川純独自の歌唱に耳を奪われ、怪奇映画のようなホラーな雰囲気のサウンドに圧倒される。⑥は現代音楽のような実験的なピアノ伴奏と暗く生々しいボーカルが印象的。⑦は本作の中核をなすナンバーで、シンプルなシンセにタイトル通リ戦後の復興をテーマにした歌をミュージカルのように歌うというもの。歌メロがキャッチーで親しみやすく、歌詞の内容も興味深い。⑪ドラマチックな組曲調の曲で、アルバムの最後を飾るに相応しい感動がある。ボーナストラックとして収録された⑫と⑬は本作リリース後に1stシングルとして発売された音源。青春と自転車をテーマにした⑫は当時としてもインパクトがあったと思われるオーケストラサウンドの大陸歌謡。⑬は戸川純の熱唱が胸に迫る西洋的な世界観の壮大なバラード。

独自の個性が光る内容で、今聴いても異質とも言える濃い世界観に圧倒される。その後の音楽シーンにも多大な影響を与えていると思われるが、このアルバムと同じ質感を再現できたものはなく、まさに唯一無二の名盤である。

フリー(アット・ラスト)|PLATINUM 900

2021/8/4 Sony Music Direct

1. 天国と地獄-Heaven or Hell
2. 眩しいフォトグラフ
3. フリー(アット・ラスト)
4. 夜明け前
5. ハリーは毛むくじゃら
6. 月灯りの下で
7. セイ・ホワット?
8. クライ・ベイビー・クライ
9. レッツ・ブギ・ザ・ナイト
10. カミーニョ・ド・マー

1990年代に活動していた3人組のバンド「PLATINUM 900」。本作は1999年にリリースした1stフルアルバムをリマスターした再発盤である。近年、名盤として紹介されることが多くあり待望の再発であった。キュートな坂田直子のボーカルやジャズ、ファンクを基調とした洗練された楽曲はポップネスに満ちており、聴き心地の良い上質な女性ボーカルポップが楽しめる1枚。

冒頭①からサックスをフューチャーしたファンキーなグルーヴと爽快なボーカルが気分を高揚させてくれる。続く②は感傷的なメロディーや情景が浮かぶ歌詞などノスタルジックな旋律に心が癒される秀逸な曲。③はジャズ/フュージョンからディスコまで感じさせるクールな極上のポップナンバー。⑤は懐かしい雰囲気の曲で歌詞も面白い。⑥は吸血鬼をテーマにしたユニークな曲で、ゆったりとしたお洒落なムードと美しいメロディーが味わい深い。⑨はジャジーでファンキーなダンスポップで、軽やかなリズムでスタイリッシュに決める名曲。

全編に渡って洗練されたグルーヴ感溢れる曲が楽しむことができ、耳にすんなりと馴染む坂田直子の歌声など、まさに魅力のある音楽がここにあるという感じだ。1990年代後半の隠れた名盤と言えるだろう。

重力泥棒|noodles

1995/5/26  BENTEN

1. Mellow Metallica
2. Brain Child
3. Blessed Someday
4. Lemon Tree
5. A Gravity Thief
6. Control
7. New Thrills
8. 6 Colors
9. My Cynic -Lovel

1991年に結成されたガールズバンド「noodles」(ヌードルス)の1stアルバム。ボーカルYOKOのガーリーでキュートな歌声を生かしたガレージロックで、インディーズバンドらしい粗削りで生々しいロックサウンドと甘く極上のメロディーは聴く物を虜にしてしまう中毒性がある。

冒頭①からラフな演奏の中でもメロディーと色気あるボーカルの良さが光っており、日本人離れしたポップセンスを感じることができる。
④はグランジっぽいサウンドでメロディアスに疾走する。⑤と⑧はヌードルスお得意のセンチメンタルで切ない旋律をこれでもかと聴かせてくれるロックバラード。可愛さの塊のようなキュートかつセクシーなボーカルの魅力がじっくりと味わえる。⑨はギターポップ感あるキャッチ―なナンバーで、乙女チックな雰囲気や歌声のカッコ良さが印象的。

楽曲の空気感は海外のバンドに近いものがあるが、YOKOの歌声の可憐さは日本ならではと言えるものである。このボーカルを聴くだけでも価値があるが、楽曲センスも良いので、音質などのインディーっぽさに抵抗がなければ文句なくおすすめできる1枚である。

manamoon(まなもぉん)|セラニポージ

1999/10/30 ヒートウェーヴ

1. spiral da-hi!
2. ふたごの恋
3. もじもじ
4. まなもぉん
5. 128号の謎
6. Octopus Daughter
7. 宇宙船はどこへいった?
8. 15秒
9. 僕のマシュ…
10. 勇気のでる歌

セガのドリームキャスト用ゲームソフト『ROOMMANIA#203』の音楽を手掛けるユニットとして結成された「セラニポージ」の1stアルバム。アルバムによってボーカルが違うメンバーとなっているが、本作では翌年から活動を開始する「CECIL」のボーカルを務める【ゆきち】が担当している。プロデュースは福富幸宏、メインソングライターはササキトモコ。ハウス色が強いエレクトロサウンドにゆきちの繊細で可愛らしいボーカルという都会的なポップスで、渋谷系の流れにあるオシャレな女性ボーカルポップが楽しめる。

②は爽やかな打ち込みサウンドと透き通ったボーカルが清涼感を与えてくれる。ゲーム音楽ということもあってかBGMとしても優秀である。③は王道渋谷系ポップという感じで、胸躍る洒落たリズム、センスの良いアレンジや爽快なメロディーにゆきちのキュートなボーカルがジャストフィット。⑦は印象としては不思議系ポップスというか、SFな歌詞のねじれ具合などちょっとズレた感じが堪らない1曲。⑧は恋をしているもどかしさを陽気なサウンドで表現した良質なポップソング。⑨は非常にユニークな歌詞とそれを違和感なく表現する洒落た雰囲気の楽曲が上手くマッチしている。⑩はのら犬の気持ちを歌った曲で、過酷な環境に置かれても生きることに前向きさを持てるようなメッセージが感動的である。

サウンド、ボーカル共に透明感が印象的で、通好みのメロディーラインも良い。聴けばさりげなく耳に馴染む曲が多いので、多くの人が楽しめそうな1枚である。

グラス・チューブ+シングル|After Dinner

2005/4/22 Arcangelo

ディスク1

1. セピア・チュール1
2. 加速度のエチュード
3. ソニャドール
4. おじょうさんとシャベル
5. 砂漠
6. グラス・チューブ
7. デザート
8. セピア・チュール2
9. 髪モビールの部屋(ボーナス・トラック)

ディスク2

1. アフター・ディナー
2. 夜明けのシンバル

1981年にHACOを中心に結成された音楽ユニット「After Dinner」。本作は1984年の1stアルバムとデビューシングルをリマスタリング音源で復刻したものである。ニューウェイヴ、電子音楽、民族音楽など様々な要素を組み合わせてプログレッシブに展開されるアヴァンポップはガラス細工のような繊細さと美しさを持つ唯一無二の音響芸術だ。

ディスク1は1stアルバム『グラス・チューブ』が収録されている。①は音楽楽団のような演奏で絵本のような幻想的な世界観をHACOが可愛らしく歌い上げる。みんなのうたのような親しみやすさもある一方で、奇妙な違和感というか異世界に連れていかれるような怖さがある。
⑧は①のパート2で、同じ旋律だがこちらはアヴァンギャルドなサウンドが牙を剥いており、狂気を感じるねじれ具合が圧巻である。②は早すぎたエレクトロニカと言ってしまいたくなるような先悦性がある。美しい歌声と実験的でアンビエントなサウンドの組み合わせは知的で刺激的なものだ。③は童謡のような可愛らしい歌と現代音楽のようなサウンドのミスマッチ感が楽しい。④はバイノーラル録音による実験的な立体音響が前衛的で面白い。アルバムタイトル曲⑥は本作の中でも特にドラマチックな曲展開や叙情的なメロディーが光る名曲。繊細なボーカルや細部にまで拘ったサウンドも凄いが、これだけ実験的な方向性であるのにシンフォニックな曲として優れているのが素晴らしい。

ディスク2はデビューシングルが収録されており、異国情緒溢れる前衛ポップ①は即興的な演奏の音響と荘厳なメロディー&ボーカルがひたすら美しい。②はミュージカルや演劇風の歌モノで、After Dinnerの中でも聴きやすい曲だがやはり個性的である。

挑戦的なサウンド構築は圧巻の出来で、一言で表せばまさに音の万華鏡。実験的でありながらもキャッチ―さも忘れないポップセンスやHACOの儚い歌声など、まさにアヴァンポップの最高峰と言える内容である。1980年代のアンダーグラウンドが生んだ奇跡のようなアルバムだ。

うたかたの日々|Mariah

2017/7/19 日本コロムビア

1. そこから……
2. 視線
3. 花が咲いたら
4. 不自由な鼠
5. 空に舞うまぼろし
6. 心臓の扉
7. 少年

サクソフォーン奏者の清水靖晃を中心に1979年に結成されたロックバンド「Mariah」(マライア)。本作は1983年にリリースされたラストアルバムである。ジャズ/フュージョン、ワールドミュージック、ニューウェイヴなど様々な音楽要素が刺激的に絡み合う実験的な作風で、エスニックかつメロディアスな旋律がプログレッシブに展開される。女性ボーカルはアルメニア人のジュリー・フォーウェルが担当。近年、海外でもレアな和モノとして高く評価されており、無国籍感漂う女性ボーカル音楽として非常に優れた内容の1枚である。

冒頭①は力強いパーカションの音色とエスニックなメロディーが壮大に鳴り響く。民族音楽的なリズムと語りのようなボイスが、ここではないどこかへと連れていってくれる。②はスティーヴライヒを思わせる現代音楽的な美しいサウンドと即興のように聴こえるポエトリーなボーカルが独創的な空間を生み出す。④は反復するリズムとスペーシーなサウンドがトリップ感を与えてくれる。ジャーマンプログレやニューウェイヴを取り込み、幾何学的にも聴こえるリズムなどとにかく個性的。⑥はオリエンタルな雰囲気と独自の浮遊感が堪らない名曲。エスニックなファンクという感じだが、無国籍感溢れるボーカルの独自の歌い回しなど中毒性がある。⑦は④同様にミニマルなビートとスペーシーなサウンドに引き込まれ、まるで呪文のようなボーカルが別次元に誘うようである。

多種多様な音楽ジャンルを複合させているが、それを上手く消化しマライア独自の個性として表現できている類まれな内容である。日本人離れしたセンスがありながらも、同時に強く『和』を感じさせる部分もある。1980年代邦楽の中でも必聴の名盤である。

第一歌曲集|招き猫カゲキ団

2010/8/25 SUPER FUJI DISCS

1. 人形
2. 砂漠のマリアンヌ
3. 森のおくりもの
4. 幻夜

日本を代表するガールズバンドであった「ZELDA」のボーカル高橋佐代子とベース小嶋さちほの音楽ユニット「招き猫カゲキ団」。本作は1984年にインディーズレーベルのテレグラフからリリースされた唯一となる音源作品の再発盤である。当時なんと1万枚のセールスを達成したというインディーシーンの大ヒット作品で、本家ZELDAとは一味違う箱庭的で演劇チックな幻想音楽が楽しめる。

①は音数の少ないシンプルな演奏で、虚空に響くような透明感ある歌声が美しい。演劇のようでもあり、ねじれたファンタジック歌謡という感じの独特の世界観に引き込まれる。②は民族音楽的なパーカションと天真爛漫なボーカルに無国籍感があり、歌詞のセンスも面白い。③はみんなのうたや童謡のような可愛らしい歌モノだが、得体の知れない怖さを感じさせるところは、まさにアンダーグラウンドミュージックである。④は叙情的なメロディーと美しい歌唱にうっとりするバラードで、夜に響く孤高の歌というに相応しい。

音楽性自体にはさほど難解さはなく美しいメロディー&透明感あるボーカルがたっぷり堪能できるが、少しズレている感覚というか異質な個性が随所に感じられ、1980年代のインディーズならではの独創的な内容となっている。 

スリーアウトチェンジ 10th Anniversary Edition|スーパーカー

2007/4/4 キューンミュージック

ディスク1

1. cream soda
2. (Am I)confusing you?
3. smart
4. DRIVE
5. Greenage
6. u
7. Autmatic wing
8. Lucky
9. 333
10. Top 10
11. My Way
12. Sea Girl
13. Happy talking
14. Trash&Lemmon
15. PLANET
16. Yes,
17. I need the sun
18. Hello
19. TRIP SKY

ディスク2

1. cream soda PREVIOUSLY UNRELEASED VERSION
2. (Am I) confusing you? PREVIOUSLY UNRELEASED VERSION
3. DRIVE PREVIOUSLY UNRELEASED VERSION
4. PLANET ~the end of childhood~ PREVIOUSLY UNRELEASED VERSION
5. Lucky LIVE AT GIGANTIC
6. RIGHT NOW LIVE AT GIGANTIC
7. Trash & Lemmon LIVE AT GIGANTIC

1995年に結成されて2005年まで活動していたロックバンド「スーパーカー」。本作は1998年にリリースされた1stアルバム『スリーアウトチェンジ』をリマスターし、ライブ音源等のレアトラックを追加収録した2枚組CDである。邦楽ロックを代表するバンドで、その後の音楽シーンに多大な影響を与えており、チャットモンチーのプロデュースを手掛けたいしわたり淳治もメンバーであった。この1stアルバムは1990年代を代表する邦楽ギターロックの名盤。基本的には作曲を手掛ける中村弘二がボーカルを務めることが多いのだが、フルカワミキが煌びやかな声で歌う楽曲もあり、これが実に魅力的で一聴で虜にしてしまう力がある。

ディスク1は『スリーアウトチェンジ』のリマスター盤。フルカワミキのボーカルが楽しめるのは④⑧⑨⑫⑬⑯⑱。可愛らしさとイノセンスを感じる歌声は、心に清涼感を与えてくれるもので、粗削りなギターサウンドとポップセンス溢れるメロディーとの相性も良い。④はアコースティックギターのキラキラした音色にぴったりのキュートで煌びやかな歌声とメロディーが心地良く響く。歌詞も印象に残るもので、語りかけるようなボーカルが心に届けてくれるものはまさに【元気】。
⑧は男女ツインボーカルの金字塔と言えるスーパーカーを代表する名曲。フルカワミキが歌い出した瞬間に胸に去来するものは初恋にも似た情感。眩しいほどの輝きを持つ旋律はまるで魔法のようだ。⑨は中性的な魅力も感じさせる歌声とラフなサウンドが織りなすセンチメンタルな青春ロック。⑫は力強いブリブリしたベースラインと轟音ギターで押しまくるアグレッシブな演奏に爽やかな透明感溢れるボーカルというまさにシューゲイズな1曲。⑬はインディーロックっぽいシンプルな曲調で、のんびりとした空気感に心が和む。⑯は⑫と同じく轟音ギターと透明感あるボーカルが浮遊感を生み出すシューゲイザーなギターロック。⑱はフレッシュな雰囲気の男女ツインボーカル青春ロック。
もちろん中村弘二ボーカル曲①⑮などキラーチューンも必聴で楽曲の出来は文句なし。

ディスク2は未発表のレア音源が収録されている。『DRIVE』の別ヴァージョン③は原曲よりも生々しい空気感にじっくりと浸ることができてこちらも良い出来となっている。ライブ音源はあまり音質が良くないが、熱い雰囲気は十分に伝わるだろう。

若さと勢いがこれでもかと溢れだすロックの初期衝動に満ちた名盤である。フルカワミキの歌声が良いアクセントとなっている部分が大きいので、女性ボーカルのバンドとしても優れている内容だ。

New Machinegun Etiquette|’else

1998/12/3 テイチクミュージックコーポレーション

1. New machinegun etiquette
2. Angel Talk
3. Love Eggman
4. Sweet Star,Jetset
5. The Sun Only Knows
6. Weasel
7. Comanche
8. POP 45
9. Melody Fair
10. High Time For Less Low Life
11. Swallow
12. “666”
13. Born to Sleep

1992年に結成されて2003年まで活動していたポップロックバンド「’else」のメジャー1stアルバム。UKロックに影響を受けたと思われる分厚いギターサウンドとフックのあるメロディーの女性ボーカルパワーポップで、理屈抜きに気分を上げてくれるご機嫌な1枚。1990年代の女性ボーカルバンドの中でも随一のストレートな作風で、小難しさは一切ないグッドミュージックである。

冒頭①からボーカルを務める河村裕子のキュートな掛け声を合図に疾走し、メロディックなガレージロックを決めてくれる。ウルトラキャッチーな楽曲に可愛い歌声という無敵感溢れるカッコ良さに痺れる。②は湿ったようなサウンドの空気感が印象的だが、ここでも無論ポップに疾走する。③はボーカルのギターポップ的な切なさがじんわりくる。⑧はこれでもかとキャッチ―なメロディーとエッジの効いたパワフルなギターで畳みかけてくれるので、憂鬱も吹き飛び爽快な気分になれる。⑪はエモーショナルな盛り上がりを聴かせるロックバラードで、情緒たっぷりに歌い上げるボーカルに聴き惚れる。⑫は轟音ギターと煌びやかなメロディーの嵐で押しまくり、センチメンタルな情感を伝える歌詞のナイーブさも良い。

ハードなギターサウンド、グッドメロディー、キュートな歌声と三拍子揃った女性ボーカルロックとして申し分のない出来。ここまで直球で勝負したバンドも珍しいので、今聴くと新鮮な魅力があると感じる人も多いかもしれない。

私を赤痢に連れてって|赤痢

2022/8/3 P-VINE

1. デスマッチ
2. 4649
3. ヨーレイヒ
4. どろどろ大江戸
5. かつかつROCK
6. だーらだら
7. 青春
8. 仏滅ラプソディー
9. カメレオン
10. FUCKしよう
11. ちった
12. ENDLESS
13. ナンバー (BONUS TRACKS)
14. ニャンニャンで行こう (BONUS TRACKS)
15. 赤痢作用(セキリプロセス) (BONUS TRACKS)
16. 夢見るオマンコ (BONUS TRACKS)

1980年代のインディーズシーンを代表する京都発のガールズバンド「赤痢」。本作は1988年にアルケミーレコードからリリースした1stアルバム『私を赤痢に連れてって』にボーナストラックを追加した再発盤。後のガールズバンドに多大な影響を与えており、ソニック・ユースのサーストンムーアもファンであることを公言している。荒々しいガレージロックサウンドは初期衝動を感じるカッコ良さがあり、身も蓋もないことをストレートにぶちまける歌詞やぶっきらぼうな歌い方のボーカルなど、強烈なパンクロックを聴くことができる。

冒頭①から今では考えられないような、過激な歌詞のインパクトに驚かされるが、切れ味鋭いギターやポップなリズムで疾走するさまは王道のロックンロールと呼べるもの。
②はどんよりとした空気の中で、ボーカル「みゆ」の日常の鬱憤をぶちまける感情豊かな歌声の表現力が光る。投げやりに歌っているかと思えば、カリスマ性ある力強い歌声を聴かせたりと不良っぽいラフな雰囲気のボーカルは個性的で魅力がある。③はソリッドなサウンドと生活の不満を淡々と歌うくぐもったボーカルがカッコいい。④はタイトル通りどろどろした感情をヘビィなロックで発散する。
⑦は苛立ちを軽快なビートで昇華した青春ロック。⑧はドラムのカッコ良さが際立つミドルテンポの渋いナンバー。⑩はあまりにも直球な歌詞が痛快な赤痢らしい1曲。この曲もそうだがパンクを基調にブルースっぽいセンスが随所に感じられる。⑫はこの頃の赤痢にしては長尺のナンバーで、やさぐれたガールズロックがたっぷり堪能できる。ボーナストラックでは代表曲⑯などのレアトラックが楽しめる。

フラストレーションが渦巻くような荒々しい演奏はインディーロックならではの熱さがある。好き勝手に歌っている印象のボーカル含め、ルーズというより飾らない自然体の魅力があると言えるだろう。生々しいガールズパンクが楽しめる1枚だ。

SUPERSTUPID! |SUPERSNAZZ

1999/1/25 ダブリューイーエー・ジャパン

1. Breakout
2. Johnny
3. Black Cat
4. Sometimes
5. Middle of the Way
6. Playing With My Guitar
7. Uncle Wiggly
8. Hardcore
9. Comanche
10. Creeps
11. First Time Is the Best Time
12. Papa Oom Mow Mow

ガールズバンド「SUPERSNAZZ」が1993年にリリースした1stアルバム。Nirvanaを輩出したシアトルの名門インディーズレーベルSub Popからいきなりデビューしたというちょっとビックリな1枚。このバンドは後にキュートなパワーポップ路線で胸キュンパンクポップを聴かせてくれたイメージも強いが、このデビュー盤ではグランジ色の強いギターが特徴的な勢いのあるガレージパンクを楽しむことができる。

冒頭①からノイジーなロックンロール炸裂という感じで、ボーカル務めるスパイクのワイルドな歌いっぷりに痺れる。続く②も疾走するキャッチ―なガレージパンクで、ロック以外の何者でもないボーカルが良い。④は本作の中でも白眉のポップセンスが光るキラーチューン。エッジの効いたギターとポップなメロディーがバンドの初々しい雰囲気と上手くマッチしており躍動感溢れる1曲だ。⑦はロック魂を感じる渋いボーカルとヘビィなサウンドが気分を高揚させてくれる。⑧はガールズロックのカッコ良さを詰め込んだようなクールでスタイリッシュな魅力が溢れている。
⑫は1960年代のアメリカ西海岸のボーカルグループThe Rivingtonsのカバー曲。SUPERSNAZZ流のオリジナリティあるカバーとなっており、ガールズバンドのカッコ良さや楽しさを感じることができる。

いきなり海外レーベルからデビューするという当時のインディーシーンの混沌や熱さを象徴する1枚である。曲には日本人離れした空気感があり、アメリカのバンドと並べても違和感がないセンスが光る1枚だ。

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