超時空コロダスタン旅行記|アポジー&ペリジー

2006/2/22 Sony Music Direct
1. プロローグ
2. 月世界旅行
3. プロフェッサー・パーセク
4. アニマロイド・MVII
5. 逆さ賢人・イーガス
6. アポジーのテーマ~スペース・フォークロア~
7. クイーン・グレイシャー
8. ペリジーのテーマ
9. 真空キッス
10. ホープ
本作は1984年にリリースされたニッカCMのキャラクター・ロボットが主人公の企画アルバムが、2006年にCD化されたものである。細野晴臣プロデュースでYENレーベルオールスターズが参加した作品であり、アポジー(三宅裕司)、ペリジー(戸川純)、越美晴、テストパターンなどが参加している。
松本隆&細野晴臣の黄金コンビによるテクノ歌謡の名曲②は、通好みの曲調と戸川純のわくわく感をそのまま歌唱に変換したような独自のボーカルに胸躍る。越美晴による④は個性的な超キュートなボイスが炸裂するピコピコしたテクノポップの名曲。橋本ミユキの⑦は1980年代ハードロック歌謡で意表を突かれるが、楽曲自体の出来は良い。戸川純が歌う⑨は細野晴臣による可愛らしいアレンジと中毒性がある個性的なメロディーが素晴らしい1曲。ラストを飾るテストパターンによる⑩は、春の始まりを告げるような清涼感あるテクノで気持ちよく聴ける。
細野晴臣をはじめとした参加ミュージシャンの個性が存分に発揮された内容で、企画アルバムとは思えないほどの完成度を誇る名盤である。
REBEL STREET IV / SOME GIRLS|Various Artists

2021/11/20 SS RECORDINGS
1. ガラスの涙 / NANA
2. 赤いエナメル / MIND CONTROL
3. FALLEN ANGEL / CLAN
4. TOKINONE[時の音] / RITAN
5. RAVISHMENT / MENS
6. HEY!! / VIRGIN ROCKS
7. 桜の花は乱れ咲き / 蟻プロジェクト
8. CHINESE BOY / 日の丸ファクトリー
9. 彼女はアドバルーン / STILL
10. BABY FACE BOY / 麝香猫
11. ラーギーニー / BARBARA
12. ANNABEL LEE§ / 葛生千夏
本作は1987年にジャパン・レコードより発売された女性アーティストのコンピレーションアルバムの再発盤である。
本盤の帯では変更されているが、以前の盤では帯に『少年よ、はげみなさい。』と意味深なキャッチフレーズが記載されていた。その言葉通り当時のマニアックな女性ボーカルバンド/アーティストをディグる探求にはげめる1枚となっている。1980年代インディーズ系女性ボーカルのコンピレーションとしてはバルコニーレコードから発売された『くっついて安心』と並ぶ重要盤である。
アニソンで有名になった蟻プロジェクト(ALI PROJECT)など、後にブレイクしたアーティストも収録されているが、今となってはかなりマニア向けの内容である。とは言え当時の空気感をたっぷりと感じることができるので、若い世代が聴いてみると新鮮な魅力があるかもしれない。
冒頭①は博多のアイドル「NANA」の透明感あるキュートポップス。1980年代では非常に珍しい元祖インディーズアイドルである。
続く②は福岡のファミリーバンド「Date of Birth」の前身バンド「MIND CONTROL」によるスタイリッシュなデジタルポップ。
当時すでにDate of Birth名義で作品をリリースしていたが、ここで貴重な音源引っ張り出してくるところがマニアックである。
③は元ZELDAの鈴木洋子が率いる「CLAN」の音源。ネオアコ/ギターポップのエッセンスたっぷりのギターの音色や清涼感あるメロディーなど、キラキラした魅力を放つキラーチューンである。④は元GIRLSのRITAがボーカルを務める「RITAN」のワールドミュージック風味のスパイスが効いたサイケデリックな世界観が楽しめる。⑤はパンキッシュな疾走感が熱い「MENS」によるロックチューン。
⑥はハードコアパンク界隈で有名なTHE COMESのボーカルを務めたチトセのバンド「VIRGIN ROCKS」の音源。当時のパンクとメタルのクロスオーバームーブメントの影響かメタリックな音とハスキーボイスの叫びが熱いハードロック路線である。
⑦は当時の「蟻プロジェクト」の代表曲で、アルバム『幻想庭園』に収録されているものとはヴァージョンが異なる。こちらはよりプログレッシブなセンスが光るドラマチックな出来となっている。
⑧は福岡を拠点に活動していた女性2人組の音楽ユニット「日の丸ファクトリー」の音源。耽美な感覚をもつニューウェーブ系のシンセポップである。後に「Dimanche」と名前を改めてメジャーデビューしている。
⑨は山東トシエを擁するゴシックロック・バンド「STILL」の音源。名作ミニアルバム『Pale Face』とはまったく路線が異なるキュートなオシャレポップスで、新たな一面を垣間見ることができる。
⑩はマニアには人気が高いガールズバンド「麝香猫」(Jaco:neco)のワイルドなハードロックを聴くことができる。
⑪はフリーキーなロックを聴かせるガールズバンド「BARBARA」の音源。一風変わった女子ロックは刺激的な魅力があり、非常にユニークなバンドだ。
⑫は後にスーパーファミコン用ゲームソフト・ファイナルファンタジーVIのCM曲で知名度を獲得する「葛生千夏」による神秘的な雰囲気の短曲。
女性ボーカルをテーマに音楽ジャンルごった煮のサブカル系アーティストが収録されているバラエティに富んだ内容である。その方向性は当レビューサイト【Strange Girls Music】がやりたい路線と似たような感じであり共感を覚える。
リングの女神達~女子プロスーパースター列伝~

2013/6/5
徳間ジャパンコミュニケーションズ
1. かけめぐる青春/ビューティー・ペア
2. 燃える青春/マッハ文朱
3. インベーダーWALK/マキ上田
4. アマゾネス女王/ナンシー久美
5. 燃えつきるまで/デビル雅美
6. ポ・ケ・パ・イ・ブ・ギ/ little Army Rockers
7. ジャガーのテーマ/ジャガー横田
8. セクシーパンサー/ミミ萩原
9. 愛のジャガー/ジャガー横田
10. セクシーIN THE NIGHT/ミミ萩原
11. 炎の聖書/クラッシュギャルズ
12. MAJI/ダンプ松本
13. (CHANCE)3/ J.B.エンジェルス
14. 颱風前夜(The Eve of Fight)/ 海狼組
『リングの女神達~女子プロスーパースター列伝~』は、吉田豪が選曲、監修した昭和女子プロレスラーの楽曲を収録したコンピレーション・アルバムである。全日本女子プロレスの全盛期を彩ったレスラー達の歌が時代を超えて蘇る!という感じの熱い1枚だ。
社会現象を巻き起こした「ビューティー・ペア」、元祖アイドルレスラーとして女子プロレスラーの活動の場を広げた「マッハ文朱」、アントニオ猪木の目を持つ女と称され、ストイックなオーラを纏っていた「ジャガー横田」、アイドル性が優れており、大ブームを巻き起こした「クラッシュギャルズ」、極悪同盟を率いてクラッシュギャルズと激戦を繰り広げたヒールレスラーとして一時代を築いた「ダンプ松本」など1970年代~1980年代の女子プロレスラーの華やかな歌がふんだんに詰まった楽しめる内容だ。
歌謡曲、テクノ歌謡といった王道的な路線からマニアックな方向性のアンビエントなものまで、幅広い音楽性が女子プロレスラーの歌手としての魅力を引き出しており聴きごたえがある。
①はジャッキー佐藤とマキ上田のタッグチーム「ビューティー・ペア」が1976年にリリースしたデビュー曲にして大ヒットしたことでよく知られている。古き良き歌謡曲という感じで、サウンドの生々しさや歌声の真っ直ぐさはまさに1970年代の日本という時代のカラーがよくでている。②はアイドルレスラーの源流を生み出した「マッハ文朱」の1978年の作品。元々歌手志望であったそうだが、それも頷けるパワフルな歌声である。
③はビューティー・ペアの「マキ上田」が1979年にリリースした当時大流行したスペースインベーダーをテーマにしたテクノ歌謡シングルのA面曲。爽やかに疾走するチャーミングな魅力を振りまくポップスで、電子音と生楽器の絶妙な組み合わせが気分を高揚させてくれる。
④は「ナンシー久美」が1981年に発表したシングル曲。やや不安定なボーカルが中毒性を生み出すダイナミックなディスコ歌謡だ。
⑤は「デビル雅美」が1982年にリリースした演歌要素もある歌謡曲。おそらく女子プロレスラーの中でも屈指の歌唱力と言っていいだろう。こぶしの効かせ方などプロの歌手も顔負けのテクニカルなボーカルを聴かせる。
⑥は全日本女子プロレスの前座として開催されていたミゼットプロレス(小人プロレス)のレスラー達が歌っている。本作では唯一の男性ボーカルで、オールディーズ路線のノリノリのブギである。
⑦は「ジャガー横田」がミミ萩原、デビル雅美と共にリリースしたアルバムに入っている曲だ。今ではおしどり夫婦ぶりでお茶の間でも愛される芸能人となったジャガーだが、レスラーとしての全盛期は、視線だけで相手をビビらせる殺気と自己を律して修練に励む者だけが纏えるストイックなオーラが特徴的であった。この曲ではそんなジャガーの殺伐とした雰囲気をポップソングとして音楽エンターテインメントに昇華できており秀逸だ。
⑧はアイドルから女子プロレスラーに転向した「ミミ萩原」が1983年に発表した曲。色気たっぷりの歌い回しが破壊力抜群のラテン風ディスコ歌謡のキラーチューンだ。馬飼野康二によるアレンジも良い。
⑨は再び登場する「ジャガー横田」の1983年シングル曲。スピード感のある勇ましい雰囲気のディスコ歌謡でカッコいい。
⑩は再びセクシーボイスが光るミミ萩原が登場。1982年発表のシングルで、こちらも色気のある歌い回しにノックアウトされる。
⑪は空前の大ブームを巻き起こした長与千種とライオネス飛鳥によるタッグチーム「クラッシュギャルズ」の1984年リリースの有名曲。作詞/作曲の森雪之丞と後藤次利が良い仕事をしている。止められない青い衝動が今走り出す・・・凄まじい情熱がほとばしる問答無用の青春アイドル歌謡のキラーチューンである。
⑫は「ダンプ松本」が1985年に発表した曲。ダンプと言うと極悪で暴力的なイメージが強いが、この曲ではそういった世間的なイメージとは異なる内面の孤独や葛藤などの繊細な一面にスポットを当てている。独白するかのようなボーカルが印象的なメロウでナイーブな作風である。作曲は坂本龍一が手掛けており、藤井丈司のアレンジも素晴らしい名曲だ。
⑬は立野記代、山崎五紀によるタッグチーム「J.B.エンジェルス」の1986年のデビューシングル。青空の下を駆け抜けるようなアイドルポップは爽快感抜群で伸びやかなボーカルも良い。⑭は北斗晶とみなみ鈴香によるタッグチーム「海狼組」の1989年発表のデビューシングル。ヘヴィメタルバンドEARTHSHAKERの石原慎一郎(SHARA)が作曲しており、ドライブ感溢れる熱いサウンドと2人のアイドルボイスが上手く同居している。
女子プロレスラーのアイドル性や歌手として魅力がふんだんに詰まっている。
2025年現在も大人気の女子プロレス・・・その礎を築いた偉大な女子レスラー達の歌は今聴いても説得力をもって心に響くだろう。
