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魔法少女取扱説明書(Type-B)|meluQ

2024/1/9 ロックフィールド

1. パルフェシュクレムプレジール
2. 魔法少女は亡命中
3. ぐりもあ!
4. Brings Back The Memories
5. Magic Qute Girls
6. 3センチのパラドクス
7. 微熱まじっく

『ありのままの姿で世界を救う魔法少女』をコンセプトとして2023年に結成されたアイドルグループ「meluQ」(メルク)の1stアルバム。
サブスクでは全10曲が聴くことができるが、CDでは2種類リリースされており、Type-AとType-Bで5曲目以降が異なる仕様となっている。音楽性はkawaii future bassを主体としたキュートでマジカルなエレクトロポップである。サウンド的に同じ方向性であるCUBΣLICと比べると、ピコピコした電子音や魔法少女へのこだわりを感じる可愛らしい世界観がmeluQオリジナルの個性として印象に残る。
楽曲提供にはKOTONOHOUSE、nyamura、piccoなどの豪華メンツが参加しており、洗練された完成度の高い可愛いアイドルポップを楽しむことができる。

冒頭①はさすがKOTONOHOUSEという感じのピコピコしたキュートな電子ポップで、リピート必至のキラーチューンである。ふわふわした歌声やキラキラした世界観も可愛らしい魅力に溢れており、まさに魔法少女アイドルと呼ぶに相応しい。他にも④も彼が提供した楽曲で、ドリーミーな音の広がりや乙女チックな雰囲気が良い。②はpiccoが提供した透明感と清涼感のあるエレクトロポップで清々しい。中田ヤスタカ系が好きなら気に入るだろう。
③は可愛い曲を得意としているRay_Ohが作曲しているファンシーでカラフルなナンバー。
⑤はSnail’s Houseを彷彿とさせる間奏が印象に残る元気な王道的なアイドルソング。チャーミングな表情が垣間見える素直なボーカルも良い。⑦は注目の女子アーティストnyamuraが手掛けたキュートな語感や印象に残るリズムなどの巧み音楽センスが光る1曲。

魔法少女×エレクトロという音楽的なコンセプトは新鮮な魅力があり、中毒性もあるキュートポップスが多く収録されている。耳にすんなりと馴染む柔らかさがあり、聴いて楽しい気持ちになれるアルバムとなっている。

遮断|lloy

2008/3/5 
GROOOVIE DRUNKER RECORDS

1. 消えたサブリナ
2. VALENTINE
3. DIRTY
4. メスメリズム
5. 針とツギハギ
6. 吸血鬼
7. elephant
8. Blind

東京のゴシックロック/ポジティブパンク・バンド「lloy」の1stアルバム。
当時のアンダーグラウンドシーンにおいて唯一無二の存在感で話題になった退廃的な雰囲気が特徴的な漆黒の女性ボーカルロックである。
ベースの八田敦はX JAPANのYOSHIKIが主催するExtasy Records内のUg,GARAGEというレーベルからリリースしていた「DEEP」や「THE HATE HONEY」といったバンドに在籍していたことでよく知られている。
ボーカルを務めるYUKOはこのバンド以前にRAVEN(照井利幸)のアルバムに参加。2020年からは「Anna Evans golden folks」という音楽ユニットでも活動している。
音楽的にはBauhausやCocteau Twinsなどの4AD系からの影響は色濃いが、トリップホップやジャズっぽい要素もあり、音楽性の振り幅は広い印象で一筋縄ではいかない。YUKOの妖艶な歌声と美しいメロディー、そして幻想的・耽美的な世界観を盛り上げる切れ味の鋭いタイトな演奏が独創的な暗黒の旋律を生み出している。インディーズバンドでもあまりない作風なのでそれだけでも貴重だが、ぐいぐいと暗い沼に引き込むダークなカリスマ性やアート的なセンスにやられる1枚である。

冒頭①から凄まじくカッコいい漆黒のロックンロールが炸裂する。YUKOのカリスマ的な存在感を発揮するゴスボーカルを主役に、存在感ありまくりのベースの音色や切れ味抜群のギター、タイトなドラムなどが火花を散らしアグレッシブなバンドアンサンブルを奏でるキラーチューンである。続く②は印象的なイントロのギターと美しい歌声から始まるただならぬ雰囲気に圧倒されるナンバー。特に陰鬱なベースラインが素晴らしい音色で、すべての光が潰えそうな耽美な暗黒幻想に引き込まれる。
③はシンプルな音のバラードで、天使と悪魔・その両方併せ持つような孤高の歌声が作り出す暗黒の叙情性が凄い。
④は1分程度の短曲だが、ホラーな迫力に圧倒されるアンビエント風の1曲。
⑥はメロディアスなギターや歌メロなど、割と聴きやすい作風。幻想的な雰囲気を盛り上げる感情を揺さぶるギターの音色が良い。
⑦は一音一音の響きにこだわりを感じるサウンドが素晴らしく、まさに幻想音楽呼ぶに相応しいトリップ感が良い。ラスト⑧は静かに絶品の美しさを奏でるサウンド&ボーカルが心に響く。

ワイルドなロックンロールから始まり、徐々に暗黒の深淵に引き込む構成はアルバムとして優れている。またロックとは元々、過激で危険な音楽であったことを思い起こしてくれるのも良い。ポジティブパンクやポストパンクが好きなら必聴の名作だ。

コボレオチルモノ|BUFFERINS

2001/11/21 
REALLIFE RECORDINGS

1. ショドウ
2. ショルダー
3. 白線
4. キボウノカケラ
5. 薄日
6. ロウコク
7. ニグレクト
8. オーバーフロウ
9. オールアバウト

1995年頃に活動を開始した札幌のエモロック・バンド「BUFFERINS」の2枚目となるアルバム。日本語詩のエモロックとしては、前年の「COWPERS」の『揺ラシツヅケル』と並んで金字塔と言っていい内容である。
超エモーショナルなギターを主軸としたソリッドなサウンドと儚く切ないメロディー、そして等身大のイノセントを感じる透き通った歌声は瑞々しい魅力がある。ボーカルを務めるヌマザワの澄んだ声質はアイドルボイスに距離が近いものがあり、素直な歌唱スタイルと相まって清々しい。本作は日本語詩ということもあり、Rainer MariaやJejuneといったUS女性ボーカルエモロックの代表バンドとは一味違う和的な叙情性が光る1枚である。

冒頭①は絶妙なテンポチェンジを繰り返しながら切なくも力強く疾走する。焦燥や悲哀など様々な感情が渦巻きながらも突き抜けようとする爽快感があり、エモロックとしては大正義なメロディックなビートが熱い。
続く②は憂鬱を抱えた内面と向かい合う内省的な歌が良い。葛藤に耐えるような雰囲気があるミドルテンポの演奏が渋い魅力を放つ。
③はエモいイントロのギターリフの反復から、ドラマチックに展開させる鮮やかな旋律が良い。感情が溢れ出す轟音と透明感ある歌声が生み出す繊細で文学的な世界観に引き込まれる。
④は切なげな表情を見せながら疾走するエモロックのひとつの完成形を示す名曲。等身大の感情を乗せた歌と叙情性の極みのようなダイナミックなサウンドが心を揺れ動かす。
⑤はもどかしい感情に突き動かされる、歌モノのギターロックとして秀逸。
⑦は思春期にありそうな葛藤をストレートに表現した歌詞が良い。一語一語嚙みしめるように歌うボーカルにグッとくる。
ラスト⑨はゆったりと儚く揺らぎながら徐々に感情を高めていく。最後に相応しい刹那感が心にぶっ刺さる1曲だ。

切なく唸りを上げるギターを中心に、感情表現に優れた演奏は文句なし。歌声は声質の良さで勝負しているので、淡々としている印象があるが、こういったエモーションの塊のようなサウンドには逆にこのタイプのボーカルが合うと思われる(テクニカルに歌い上げるボーカルではくどくなるため)。国内の女性ボーカルエモロックとしては屈指の名盤と言っていいだろう。

mnemeoid|揺れるは幽霊

2025/3/5   yureruwayurei

1. 亡霊のきみへ
2. hollow
3. 鯨骨群衆
4. 追憶
5. ポイント・ネモ

2024年に結成された岡山発のシューゲイザーバンド「揺れるは幽霊」の1st EP作品。
Kurayamisakaの影響を受けているという2025年現在のインディーズシーン最新世代のバンドである。フィジカル盤はタワーレコード以外にも、インディーズ音楽の販売&情報発信でお馴染みのHOLIDAY! RECORDSでも売れまくっているという注目のバンドである。
様々な感情が渦巻く葛藤や切ない情景などイメージを掻き立てる儚い曲が印象的で、静から動へ鮮やかなコントラストを描くメリハリのある演奏や懐かしさを覚えるメロディー、透明感ある美しい歌声が耳を強烈に捉える。轟音ギターやボーカルの響きを含めて綺麗な旋律を作り出すことへのこだわりを感じさせる1枚となっている。

冒頭①はしっとりとしたアコースティックギターの弾き語りから轟音が鳴り響くエモーショナルな展開が良い。美しいサウンドや伸びやかなメロディーは切なくも力強さがある。終盤のポエトリーパートが良いアクセントになっており、ドラマチックに儚い世界観を盛り上げてくれる。続く②は王道的なギターロックで、叙情的なサウンドに透明感ある歌声という女性ボーカル好きのど真ん中を突くもので期待を裏切らない。歌メロがJ-POP的な親しみやすさがあるので、すんなりと耳に馴染む魅力がある。
③は美しい歌い出しから耳が惹きつけられる、海の底を漂うような幽玄なナンバー。孤独感や寂寥感を含んだ切ない揺らぎが心地良く響き、同時に爽快感にも溢れているキラーチューンである。
⑤は煌びやかなギターの音色を始めとした躍動感あるサウンドと透き通った歌声が絶妙に調和する。光が差し込むような雰囲気とセンチメタルな歌が疲れた心を癒してくれる。

インディーズシューゲイザーの中でもノイジーな音というよりも美しい響きの作風が良い。良い意味でクセのないボーカルの声質を含めて、純粋にポップなロックとして優れている内容である。

Angel’in Heavy Syrup|Angel’in Heavy Syrup

2022/7/6 P-VINE

1. S.G.E (Space Giant Eye)
2. きっと逢えるよ
3. ぼくと観光バスに乗ってみませんか
4. Underground Railroad
5. My Dream
6. Crazy Blues (BONUS TRACK)

1990年代の関西アンダーグラウンドシーン伝説のガールズバンド「Angel’in Heavy Syrup」。
本作は1991年にAlchemy Recordsからリリースされた1stアルバムにボーナストラックを追加して再発したものである。
サイケデリックロックとプログレッシブロックを組み合わせた幻想的な浮遊感をもつ女性ボーカルロックで、その個性的な世界観は海外でも高い評価を受けている。予測不能の変幻自在な演奏が凄いのはもちろんのこと、叙情的な美しいメロディーも魅力で、それを歌い上げる板倉峰子の繊細で儚い魅力を放つエンジェルボイスにも注目である。発表された4枚のアルバムはすべて傑作であるが、この1stアルバムの時点ではまだ完全には完成されてはいないプリミティブな魅力が感じられるのが良い。

冒頭①からヘヴィなサイケデリックサウンドが火を噴く。歪んだギターやベースの音色がカッコいい。アルバムの始まりということもあってか構成は複雑ではなく簡潔にまとめてある分かりやすい曲である。
続く②は10分以上に渡る大作で、さっそくプログレッシブなエンジェリンワールドが姿を現す。ドラマチックな構成、叙情性と混沌 その両方を併せ持つ演奏、やるせなさを噛みしめるように歌うボーカルが一体となった唯一無二の世界観に圧倒される。火花を散らすアグレッシブなバンドアンブルがとにかくスリリングである。③はこのバンドの重要なルーツとなっている森田童子の曲をカバーしたもの。原曲とは少し異なり、バンドサウンドの利点を生かしたダウナーな雰囲気のカバーとなっており、可憐な歌声やうねるギターの音色などが良い。
④はただならぬ空気感を作り出すトリップ感のあるギターと儚い美声が映える歌から徐々に轟音を鳴らす展開になり、一筋縄ではいかない演奏のカオスが脳髄に直撃する。
⑤はドリーミーなサウンドと幻想的な歌声に引き込まれる名曲。ガラス細工のように淡く切ない旋律は強く心に残るもので素晴らしい。

ボーナストラック⑥はセカンドアルバムに収録された曲の別バージョン。これも10分を超える大作で、別世界に誘われる幽玄な歌声と一音一音の響きが耳を捉える凄まじいテンションの演奏に身も心も開放される1曲となっている。

ガールズバンドの中でも独創性や儚い雰囲気では国内最高峰のバンドと言って良いだろう。
各楽器が競い合う刺激的なバンドアンサンブルと天使のような歌声が融合した奇跡のような1枚だ。

NEW KAWAII|FRUITS ZIPPER

2024/4/10  アソビミュージック

1. Overture ~NEW KAWAII~
2. うぇるかむとぅ~ざ♡ふるっぱー!
3. 君の明るい未来を追いかけて
4. ハピチョコ
5. わたしの一番かわいいところ
6. RADIO GALAXY
7. Going!
8. ハートのローラーコースター
9. CO-個性
10. NEW KAWAII
11. ぴゅあいんざわーるど
12. ふれふるサマー!
13. ずっと、ずっと、ずっと!
14. キミコイ
15. BABY I LOVED
16. 超めでたいソング ~こんなに幸せでいいのかな?~

「FRUITS ZIPPER」は2022年に結成されたアイドルグループ。本作は1stアルバムである。
アソビシステム手掛けるプロジェクトである「KAWAII LAB.」から誕生したグループで、原宿から世界へ【NEW KAWAII】を発信することをコンセプトにしている。
この【NEW KAWAII】は人それぞれが持つ個性や価値観を肯定していくというもので、最近のメジャーアイドルシーンの重要な要素となっている自己肯定感を上げまくる路線である。
本作にも収録されている、2022年に発表した『わたしの一番かわいいところ』がTikTokなどで大人気になり、すでに国民的な人気を獲得しているのはご存知の通り。
ヤマモトショウや玉屋2060%などのいわゆる【かわいい】楽曲を作るのが得意な作家陣が提供した曲はカラフルでキラキラした魅力があり、渋谷系ポップス等のオシャレセンスも吸収したキュートチューンの数々は理屈抜きに元気になれる楽しさがある。

良質な曲揃いの本作であるが、まず注目はやはり前述のブレイク曲⑤で、アイドル楽曲では定評のあるヤマモトショウが手掛けた渾身のキラーチューンである。ふぇのたすの頃からオシャレで可愛い楽曲を作るセンスはピカイチであったが、本曲ではFRUITS ZIPPERのイメージにぴったりとハマるキュートで前向きになれる世界観を見事に作り出している。チャーミングな歌詞も含めて中毒性のある曲構成は頭の中をぐるぐる回るもので、聴き手を虜にする魅力がある。特に【かわいい】というフレーズのリフレインは天才的な技と言えるだろう。
他にも④⑨⑩は彼の提供曲。④はファンシーなチョコソングで、スウィートな気分になれる。⑨はユニークなセンスが光る歌にはインパクトがあり、キャッチーリズムがクセになる。
⑩は歌詞の響きも重視した可愛らしい歌が良い。メンバーのボーカルも聴き心地がいいし、メロディーやリズムにしっかりと言葉が張り付いているので、耳にすんなりと馴染むのが素晴らしい。また⑯では作詞で参加しており、宮野弦士と共作した笑顔を運ぶハッピーソングとなっている。
②はノリノリのビートに乗った自己紹介ソングとなっており、気合の入ったマイクリレーが楽しい。③はアニソン風の畳みかけるキャッチーな歌メロが印象的。
⑥はYUC’eが手掛けたカラフルな電子サウンドの曲。純度120%のYUC’e節が炸裂しており、FRUITS ZIPPERの世界観との調和が楽しい。
⑪はイケイケのアイドルポップを作らせたら天下無双の玉屋2060%提供楽曲。矢継ぎ早に繰り出されるキャッチーリズム&キュートなボーカルの嵐は問答無用に高揚感が得られるものだ。⑫は王道的な胸キュンアイドルソングで、真っ直ぐな歌声など清涼感に溢れており良い。

FRUITS ZIPPERのコンセプトを分かりやすく表現したポップソングが多く収録されている。特にヤマモトショウ楽曲はさすがの出来で必聴。正統派アイドルポップとして文句なしの傑作アルバムだ。

Punk|CHAI

2019/2/13 OTEMOYAN record

1. CHOOSE GO!
2. GREAT JOB
3. アイム・ミー
4. ウィンタイム
5. THIS IS CHAI
6. ファッショニスタ
7. FAMILY MEMBER
8. カーリー・アドベンチャー
9. Feel the BEAT
10. フューチャー

2012年に結成されて、惜しまれながら2024年に解散したガールズバンド「CHAI」の2枚目となるアルバム。
【NEOかわいい】【コンプレックスはアートなり】をコンセプトにしており、人間社会に蔓延するルッキズムやエイジズムといったものに対して、『ありのままの君が美しい!』と熱いメッセージを掲げて活動していた。
こういったアティチュードに関してはThe Slitsなどのポストパンク精神を受け継ぐものであったと言えるだろう。
そして彼女達の登場で最も衝撃的だったのが、近年の日本のガールズバンドとはまったく系統が違う【かわいい】に拘ったポップミュージックを作り出していたことである。
ダンサブルなグルーヴが特徴的で、ディスコパンクというのが最もしっくりきそうだが、様々な要素が混在している音楽性は一筋縄ではいかない。ちょっとビックリするほどのイケてる音楽センスがあり、本作はPitchforkでも8.3点と高評価を獲得している。

冒頭①は印象的なベースのイントロからCHAI独自のキュートな浮遊感が全開である。パンキッシュに弾けているのがとても爽快で聴いていて気持ちが良い。続く②はパナソニックとのコラボで『家事がはかどる音楽』として制作されたとのこと。どこか懐かしさを感じる歌メロやスペーシーな感覚が中毒性を生み出すキラーチューンである。
③はストレートな作風で、可愛らしい歌声やハートフルなメロディーに心が洗われる。人に元気を与えるポップスとして申し分ない優しさのある曲だ。⑤は結構アヴァンギャルドな感じで、ポストパンク系のダンスナンバーとして秀逸。これはかなりクールな雰囲気でカッコいいので必聴である。⑥はメジャー感あるダイナミックな高揚感が得られるポップソング。有無を言わせない無敵感ある感じが良い。
⑧はシューゲイザー風の轟音ギターや透明感ある浮遊感など、CHAIの懐の深さが感じられる。⑨はカッコいいガールズロックを体現したメリハリのある曲調が良い。
ラスト⑩は壮大なポップ感と切々と歌い上げるボーカルが胸に迫る感動的ナンバー。

日本人離れした音楽センスを感じるキュートチューンの数々は完成度が非常に高い。
洒落ているというか「これイケてるね」と思ってしまうサウンドの音色や雰囲気は特筆すべきものがある。
音楽的に冴えていたからこそ【NEOかわいい】にも説得力があったのだろう。

i’m here|uyuni

2025/2/24 u-MODE

1. intro
2. balloon
3. ETERNAL
4. us(Skit)
5. Daisy Rule
6. schoOl
7. breathe In
8. normal(Skit)
9. clover
10. full of secrets

東京を中心に活動しているラッパー/シンガーソングライター「uyuni」の2枚目となるフルアルバム。2018年にニコニコ動画に楽曲を投稿して音楽活動を開始し、新世代女子ラッパーとして4s4ki(アサキ)と共に注目された才気溢れる彼女の待望の新作である。
自己を俯瞰したリリックは相変わらずの鋭さで、バンド的なグルーヴも感じられる洗練されたサウンドはより音楽的な完成度が増した印象だ。キュートな低音ボイスに個性的な魅力があり、エモーショナルなトラックに乗る『声』自体が圧倒的な存在感で耳を惹きつける。淡々と歌っているだけでも心に沁みてきて、とにかくエモいのである。本作では新曲の他にも屈指の名曲『schoOl』が新録で収録されており、聴きどころが多い内容となっている。

短曲だがめちゃくちゃ雰囲気が良い①に続く②は、切なくも力強いuyuni節が炸裂するキラーチューン。メロウなトラックと等身大のスタイルで矢継ぎ早に歌われるリリック。飾らないメッセージは心に響くもので、音楽を通じて自身のカラーを全面に出すオリジナリティは凄い。
③はドラマチックに展開する透明感のあるサウンドに静かな熱を秘めた真っ直ぐな歌声がばっちりとハマっており非常に鮮やかな印象を残す。⑤はメランコリックな雰囲気の中、ラップされる繊細で内省的なリリックにグッとくる。徐々に感情が高まってくる展開など、今ここにしかないと思わせる熱量が最高である。
⑥は前述したuyuniの代表曲を新録したもの。動画サイトにアップされた最初の音源から1st EPに収録されたアコースティックバージョンを経て、今ここに最新型として完成した名曲である。剝き出しの魅力があった最初のバージョンに比べるとトラックと歌声が上手く調和しており良い出来だ。この曲は成人式を終えて改めて思ったことを表現したそうで、10代を振り返った文学的な感性が冴えているリリックが、目が覚めるような鋭さで胸を打ち抜いてくるのが素晴らしい。
⑦は声の魅力が映えているポップに弾けている曲で、ダイナミックな高揚感が得られる。
⑨は実にuyuniらしい都会的なリアルな空気感が良い。夜を車で走り抜けるような切なさと爽快感がある。
ラスト⑩はやさぐれた感じと淡い感傷が同時に押し寄せてきてエモい感傷にどっぷりと浸れる。

耳を捉える力を持つリリックなど、uyuniオンリーの個性が光る曲の数々は瑞々しい魅力があり、緩急のあるサウンドも良く出来ている。
進化した彼女の魅力が存分に楽しめるアルバムである。

薔薇色の吸血鬼|GILLE’ LOVES

1993/10/30 
GOTHIC ROMANCE INVITATION

1. 鎮魂曲 -Requiem-       
2. 告白の城 贖罪の館    
3. 熾天使 -Séraphita-      
4. 血と薔薇        
5. 薔薇よ、君は忌まわしき天使    
6. 真紅のデカダンス -Décadence Of Rose- 
7. Burning World -崩壊の序曲-

ゴシックロックバンド「GILLE’ LOVES」が1993年にリリースした1stアルバム。
ボーカルのLucifer Luscious Violenoué(ルシファー・ラセス・ヴィオルヌ)は、1986年頃に活動を始めた【男装の麗人】という異名を持つゴシック系女性ボーカリストである。
音楽シーンの立ち位置としてはヴィジュアル系にも距離が近いところがあり、清春などにも多大な影響を与えている。黒夢のアルバム『亡骸を…』の中ジャケ写真のモデルでも知られる伝説の人物である。彼女は吸血鬼に対する異様なほどの愛と知識があり、それをテーマにした曲が多い。自主制作の宅録なので、サウンドはチープで音質も良くないが、日本のゴシックロックでは他に類を見ないほど繊細で生々しい倒錯と狂気が渦巻く圧巻の内容である。ボーカルは可愛らしい声質なのでそこが救いだが、自身の内面から止め処無く溢れ出す、耽美・退廃的な暗黒世界をそのままパッケージしたような作風がとにかく凄い。

冒頭①から不穏な空気が渦巻いており、静かに始まりを告げるダークで叙情的なサウンドと呻くような歌声が印象的だ。未知の感覚をもつ独自のデカダンス。それは聴く物の内側を侵食する得体の知れない【何か】である。
続く②はそのおどろおどろしい世界観が更に具現化した姿を見せる。ただならぬ雰囲気を持つサウンドと堕天使のような歌声が突きつけるものはまさに救いのない暗黒幻想である。
③は神秘的なオーラに満ちた曲で、結構メロディアスで聴きやすい。まさに【天使光臨!】という感じの神々しい雰囲気の中で、降り注ぐ光のシャワーを浴びるような感覚に包まれる。
④は幻想的な音の質感と淡々と歌われるフレーズには中毒性があり、永遠に聴いていられそうである。ゴシック系や幻想音楽というのは、素の自分をさらさずに上手く世界観を構築することが重要だと思うが、彼女の歌からは極めて個人的というか内省的なものを感じるのが面白い。⑤はスローでダウナーな空気感全開のサウンドとそれにしがみつくような途切れそうな可憐な歌声が良い。終盤には意味深な響きのポエトリーパートがあり、これがまたいい味をだしている。
ラスト⑦はタイトル通りまさにすべてが崩壊する予兆を告げる。終焉に向かい始めるその儚い美しさに心が洗われる。ここでも途中のポエトリーパートが世界観を盛り上げてくれる。

まるで禁断の果実を口にしてしまったかのようなインパクトがある音楽である。
こだわりを持って自らの美学を追い求めた末に到達した圧倒的な独創性。
Lucifer Luscious Violenouéの類まれなカリスマ性にやられる1枚だ。

赤色人形館|ななきさとえ

2020/9/16 
MANIC  PANIC  RECORDS

1. 月灯遊楽園
2. 赤色人形館
3. ブリキのオモチャ
4. シャンデリア
5. 開かずの扉
6. 道化師達の幻想
7. 黄金伝説
8. 飛行ランプ遊楽園
9. 赤色人形館(Remix)
10. 黄金伝説(Remix)
11. 飛行ランプ遊楽園、赤色人形館、ブリキのオモチャ(Live)
12. 道化師達の幻想、シャンデリア、黄色い魔法使い(Live)
13. 開かずの扉(Live)
14. 黄金伝説(Live)

女性シンガー「ななきさとえ」が1986年に宝島社のインディーズレーベル・キャプテンレコードからリリースした1stアルバムをCD化したもの。伝説のガールズハードコアパンクバンド「THE NURSE」にドラマーとして参加した後、ソロ活動を始めた彼女がリリースした初のアルバムとなる。まず目を引くのは参加している超豪華なミュージシャン陣である。
佐々木貴(有頂天)、鈴木ヨーコ(元ZELDA)、杉山シンタロウ (THE STALIN)、三柴理(筋肉少女帯)、中村ていゆう(じゃがたら)などの1980年代インディーズ&サブカル好きを唸らせる面子がここに集結。江戸川乱歩の怪奇幻想小説に親和性があるミステリアスな雰囲気全開のニューウェーブ系のポップスを楽しむことができる。

和風の幻想世界に誘われる短曲①に続くアルバムタイトル曲②は、じわじわと妖しげな世界観に引き込むキラーチューン。特に予備知識がなくとも聴けば、和的な幻想音楽だと伝わる分かりやすさが良い。ななきさとえの可愛い歌声とプログレっぽいぞくぞくする雰囲気のサウンドはまさに怪奇少女幻想という感じだ。
③は印象的な音色を奏でるサックスなどの軽快な演奏に合わせて歌われる昭和歌謡みたいな歌メロが親しみやすい。
⑤はメランコリックな空気感の幻想的なワルツで、ホラーな雰囲気の世界観を感情豊かな歌声が盛り上げてくれる。
⑥は懐かしさを感じる歌謡ロックバラード。哀愁のギターソロがいい感じに感情を高めてくれる。⑦はただならぬ雰囲気を醸し出すプログレッシブな演奏と別世界の扉が開かれそうなコーラスに圧倒されるが、歌メロはポップ感があるので聴きやすい。フランスのプログレバンド「Magma」に通じるものがある痺れる1曲である。ラスト⑧はピアノの伴奏に合わせた美しい歌声が切なさを運ぶ短曲。

CD化に伴いボーナストラックとしてリミックスの⑨⑩、1986年のライブ音源⑪⑫⑬⑭が追加収録されている。リミックスでは友森昭一 (レベッカ)がギターで参加しており、原曲よりサウンドが重厚になり、ダイナミックな高揚感が得られるものとなっている。これは原曲の良さを殺さず、グレードアップした感じでかなり良いアレンジだ。ライブ音源は当時のインディーズシーンの熱さを感じられるエネルギーに満ちたものでこちらも良い出来となっている。

1980年代インディーズシーンの歌姫とそこに集まった実力派ミュージシャン達が作り上げた力作である。ななきさとえの歌声にはチャーミングな魅力があり、サウンド面では篠田昌已(じゃがたら)のサックスがかなり活躍している。
後にTV番組でも活躍するミステリーハンター・ななきさとえの輝きが詰まった1枚である。

耳と目そしてエコー|MariMari

1997/11/21 
フォーライフミュージック

1. Night Birdy
2. Indian Summer
3. FEEL LIKE A GRASS,TOUCH OF GRASS
4. IN THE FLASH
5. WORDLESS
6. sunrise sunset(naked version)
7. tonight I m yours
8. Everyday,Under the Blue Blue Sky

1990年代後半にサブカル界隈で人気があった女性シンガーソングライター「MariMari」の1stアルバム。フィッシュマンズの佐藤伸治、柏原譲が楽曲プロデュースを手掛けており、更に茂木欣一も参加しているので、フィッシュマンズのメンバーと共同で制作したアルバムと言っていいだろう。
音楽的にはMariMariのアンニュイな雰囲気の透明感ある美しい歌声と、ダブやエレクトロを基調とした、少ない音数の中で一音一音の響きを重視したアンビエントな空気感のサウンドが組み合わさり、癒しを与える個性的な女性ボーカルポップを聴くことができる。

冒頭①はダウナーな雰囲気のサウンドと淡々と語りかけるように歌うMariMariのボーカルが独自の浮遊感を生み出す。丁寧に作り込んである印象の音響は細部にまでこだわりを感じるもので、彼女の可愛らしい歌声の魅力を上手く引き出している。続く②は当時のJ-POPシーンとも親和性があるフックのある歌メロが耳に残る。サウンドだけでなく、歌声自体がアンビエントな雰囲気で聴き心地が良い。じっくりと聴いて感傷に浸るのも良いし、BGMとしてかけてもエモくなれるのが秀逸。
④はアコースティックギターを主体としたしっとりとした音と幽玄なウィスパーボイスが絶品の美しさを響かせる。美しい女性ボーカル好きのツボを突く作風は溜まらない魅力がある。
⑤は静寂の中に響くような音と囁く歌声がトリップする感覚をもたらす。
⑥はピアノを主体としたしっとりとした演奏や大人びた雰囲気の歌が、非常に上質な聴き心地だ。洗練された都会的なオシャレポップスとして出来が良い。⑦はロマンティックなムードのエレクトロポップで、チャーミングな歌声と気持ち良いリズムは柔らかく耳に馴染む。
ラスト⑧はMariMariの魅力を集約したようなエモーショナルな力作。じわじわと感情が高まっていく歌声や後半に炸裂するHONZIが弾くヴァイオリンの音色の美しさなど文句なしの名曲。

J-POPによくある歌声と音が分離している感じではなく、しっかりとトータルでの音楽表現となっている。MariMariの歌声とサウンドが完全に調和しているのが素晴らしい。当時、TVなどのメディアにもでていたが、あまりにも通好みの作風のためか、残念ながらブレイクとはいかなかった。しかし女性ボーカル好きには永遠に愛されていきそうな輝きがある1枚である。

クスコー氏の宇宙船|AJA

1996/04/25 
PROP-FIZZ  RECORDS

1. クスコー氏の宇宙船
2. YELLOW DREAM
3. 私の心臓をあげる
4. ジョニーとメアリー
5. なまりの雨
6. 神秘の丘 静かの夜
7. 夢から覚めずに
8. 刃の様に炎の様に
9. ミルク色の森
10. 砂時計

女性シンガーソングライター「AJA」(アヤ)が、1996年にインディーズでリリースした1stアルバム。セックスについて文学的なセンスで歌にしており、色気のある歌声やその声の魅力を引き出す一風変わったサウンドも含めてエロティックな世界観が特徴的である。
エロスをテーマにしているといってもわざとらしい軽薄な感じではなく、性愛を通して自己の内なる宇宙の深淵をのぞき込むような、ある意味真摯な姿勢が感じられる。
『性』と真正面から向き合うことによって人間本来の生々しい姿をあらわにすることを目指したと思われる歌は等身大の表現と言えるものである。本作は中野テルヲやPANTAなどの豪華ミュージシャンが参加しており、サウンド面で美しい歌姫に花を添える。

冒頭を飾るアルバムタイトル曲①は、まず中野テルヲが手掛けるスペーシーなテクノサウンドが妖しい雰囲気全開でインパクト絶大である。不協和音を奏でるピアノも怖い。AJAの声が官能的に響き、脳裏に浮かぶ情景は男女が交わることによってひとつに溶け合う姿。続く②はしっとりとしたバラードで、ドリーミーなサウンドと可愛らしい歌い方のボーカルが伝えるものは、性的関係の多幸感という喜びである。
④はほっと一息つけそうなソフトロックでまったりと癒される。
⑤はじわじわと盛り上がる不穏な空気のサウンドとそれにぴったりの幽玄な歌声が凄まじい迫力で、現世を離れあの世ともリンクしてしまいそうだ。⑥はタイトル通り神秘な雰囲気の中で祈りを捧げる巫女のような歌が美しい。
⑦は割とストレートなロックだが、後半の意味深なポエトリーなどやはり普通の音楽ではない。⑧は本作の中では聴きやすい作風で、王道的なハードロックサウンドと昭和歌謡っぽい歌メロが親しみやすい。
⑨はアンビエントな雰囲気の中、危険なトリップ感があるシンセサイザーの音色やふわふわと可愛らしく歌うボーカルで、童話のようなメルヘンチックな世界に引き込まれる。桃源郷のような安らぎを感じる一方で、徐々に精神を侵食されるような不安な気持ちになる。これも中野テルヲ編曲である。

己のすべてをさらけ出すAJAの歌とそれに呼応するような尖ったサウンドが一体となり、凄まじく個性的な世界観を形成している驚異的な内容である。本作を始まりとして音楽や官能小説などの様々なかたちで『性』を表現することを生業とした「AJA」改め「うかみ綾乃」の原点がここにある。

最後の猫工場|いずこねこ

2012/9/4 silencio sounds

1. white clock
2. fake town
3. nostalgie el
4. rainy irony
5. jupiter girl
6. hair cat dance
7. last cat factory
8. jupiter girl (DJ USYN D&B REMIX)
9. nostalgie el (akinyan electro DS remix)
10. rainy irony (DJ SEVEN House Remix)
11. nostalgie el (69mix)
12. nostalgie el (DJ AMAYA REMIX)
13. rainy irony (皮茶パパ&PsycheSayBoom!!! remix)

「いずこねこ」は茉里(まり)によるソロプロジェクト。本作は1stアルバムである。
音楽プロデュースをしているサクライケンタと茉里が出会ったことにより始まったアイドルプロジェクトであった。彼のスティーヴライヒに影響を受けたと思われる現代音楽サウンドとポップスを融合させた独自の楽曲スタイルは斬新なものであり、一般的なアイドルポップとは一線を画す、一風変わった魅力がある。
後に彼が手掛けた「Maison book girl」も基本的には同じ路線であったが、いずこねこ特有の魅力としては素直な歌声と尖ったサウンドの組み合わせが生み出す違和感というか【不安定な揺らぎ】を感じるところが印象的である。またアイドルソングではあまりない内省的な世界に引き込む繊細な感情表現も優れている。

冒頭①からアイドル的な可愛らしさと淡く儚い情感が同居しており耳を強く捉える。メランコリックではあるがポップミュージックとして弾けているところが何とも言えない切ない余韻を残す。②は透明感ある切なくノスタルジックな旋律で力強く疾走する。儚くやるせない空気感が心に刺さる。
③は印象的なイントロから始まるリズミカルな現代音楽サウンドとそこに力技で乗せたような歌が、日常と非日常の狭間に立っているような不思議な感覚をもたらし最高。萌えという感じのキュートな掛け声もあり、類を見ないほどの個性的である。
④はテクノポップとしても優秀な曲で、ユニークなラップなどのかなり凝っている歌構成が凄い。⑤も良いデジタルポップで、いずこねこのキュートな魅力をSF世界観で包んだ1曲。細部にまでこだわりを感じるサウンドは素晴らしいもので、わくわくさせる雰囲気も良い。
⑦はこのアルバムのテーマをここで結実させた最後を飾るに相応しい曲。

⑧~⑬は収録曲のリミックスとなっている。原曲とは随分違う大胆なアレンジもあり、色々な楽しみ方できる仕様となっている。

とにかくオリジナリティがある内容である。また聴くたびに初めて再生したような新鮮な感動があるのが凄い。いずこねこは本作以降数作発表した後、2014年に活動終了。クラウドファンディンの映画『世界の終わりのいずこねこ』とエンディングテーマである名曲『i.s.f.b』を最後に残している。

The 100 Things|The Otals

2025/02/12 Blue Moon Garage

1. ムテキノユウエンチ
2. ドラゴンなんだって
3. ウチは泣きそーです
4. このまま、海まで
5. 秋を急かす100のこと
6. リズのきもち
7. 電気軌道よ春を行け
8. アリスとイヴ

2021年に始動した『世界一とっつきやすいシューゲイザー』をコンセプトに掲げる2人組音楽ユニット「The Otals」のEP作品。
カートゥーンキャラクターのJune FAXxxxxx とMarina Timerからなる男女ツインボーカルのシューゲイザーデュオで、エンターテイメント精神ある親しみやすい雰囲気が特徴的である。
シューゲイザーはある意味では聴く人を選ぶ要素を含むニッチな音楽ジャンルだ。彼らはそれを誰もが楽しめるような可愛らしい世界観とギターポップやパワーポップのエッセンスをまぶしたキラキラわくわくの旋律で表現しており、ポップミュージックとして優れた作品を多く発表している。本作では更にポップセンスに磨きがかかり、パスピエなどの女性ボーカルバンドや渋谷系ポップスが好きな人にもお勧めできる内容となっている。

冒頭①はメロディックなビートに乗った男女ツインボーカルの掛け合いが良い。ノイジーなサウンドであるが、The Otals独自のポップフィーリングとチャーミングな魅力が弾けており、気分をアゲアゲにしてくれる。
②は爽快なビートが気持ち良いドライブ感満点のキラーチューン。キュートな歌声や煌びやかなギターの音色はカラフルな魅力があり、渋谷系ポップス好きにもおすすめできる良い出来である。③はじっくりと聴かせるミドルテンポの曲で、センチメンタルなサウンドと歌が切なく胸を締めつける。ノスタルジックな歌詞も心に引っ掛かりを残すもので、J-POP寄りのエモロックとして秀逸である。
⑤はゆったりとしたパートから力強いサビへとエモーショナルに展開させる王道的な曲調で、彼らの持ち味であるメロディーの良さが光っている。⑥はどこか懐かしさを感じる強力な歌メロを男女ツインボーカルで熱唱する熱い1曲。
⑧はドリーミーでロマンティックな絶品の透明感にやられる会心の傑作。ダイナミックな高揚感が得られるサウンドやハートフルなメロディー&ボーカルが美しい響きを奏でており素晴らしい。

シューゲイザーというキーワードのもとにインディーポップ、渋谷系ポップス、アニソンなど様々な要素が混在する良質なポップソングの数々は聴いてハッピーな気持ちになれるもので、まさにグッドミュージックと呼ぶに相応しい。

おんそくメリーゴーランド|カラスは真っ白

2014/6/4 Cultivate

1. サーカスミラー
2. そまって
3. アセトアルデッドヒート
4. fake!fake!
5. スカート・スカート・スリープ
6. 雨傘パレット

2010年から2017年まで活動していたファンクポップバンド「カラスは真っ白」の2枚目となるミニアルバム。
音楽性は目まぐるしく展開するグルーヴィな演奏とキャッチ―なリズムに、やぎぬまかなのキュートなウィスパーボイスが同居するというものである。ドタバタしたアグレッシブなサウンドと可愛らしい歌声の組み合わせは、新鮮な魅力がありポップミュージックとして優れている。ボーカルの声質が相対性理論のやくしまるえつこに似ているところはあるが、音の方向性はまったく違うという面白いバンドである。

冒頭①から力強いファンキーなグルーヴとキュートボイスの組み合わせに胸躍る。矢継ぎ早に歌われるポップなメロディーは耳を捉えるもので気分が上がる。続く②は印象的なイントロのベースから始まるテンポの良いラップっぽい可愛い歌声に引き込まれる。一言で表せばオシャレでファンシーである。③はダイナミックなサウンドとフックのあるメロディーをキュートに歌い上げるボーカルなど、ポップソングとして良い出来だ。
④はカラスは真っ白を代表する曲で、このバンドの個性的な魅力が全開となっているキラーチューン。早口ボーカルとウルトラキャッチ―なリズム、荒削りなファンキーな演奏と文句なしに楽しい1曲。⑤は渋谷系っぽい王道オシャレポップス。サウンドは凝っている部分もあるが、曲自体はストレートな胸キュン路線なので耳にスッと馴染む魅力がある。
ラスト⑥はまったりとした雰囲気と透明感ある歌声が疲れた心を癒してくれる。

熱量あふれる勢いのある演奏とお花畑が似合いそうな可愛い歌声が上手く調和しており、不思議な魅力がある。聴けば理屈抜きに元気になれるのが良い。

脳みそあらおう|385

2010/8/4 ‎ HAKAI MUSIC

1. 行動
2. 鼓膜クレイジー
3. 脳みそあらおう
4. みんな同じ顔
5. お正月
6. マサカリ

2008年に沖縄で結成されたハードコアファンクバンド「385」の1st ミニアルバム。
ミドリの後藤まりこが主催する音楽レーベル・‎ HAKAI MUSICからのリリース第1号となった作品で、期待を裏切らず激烈な内容である。
後にZAZEN BOYSのメンバーとしても活躍するベーシストMIYA(元BLEACH)の凄まじいデスボイスと超絶的なスラップ奏法を駆使したバキバキのベース音などの厚みのある演奏が混然一体となり怒涛のように押し寄せる。過激な音楽性だが、ファンクバンドを名乗っていることもあり、リズム自体はかなりダンサブルでノリやすい。嵐のようなカオティックな音の中で身も心も解放される1枚。

冒頭①はカッコいいスラップベースを合図に過激なサウンドが火を噴き、野性的な男女ツインボーカルでリズミカルに展開する。ピアノの音色が良いアクセントになっており、曲自体は結構キャッチ―な印象である。
続く②は更に歪んだベースの音色と野獣のごとく迫るボーカルが圧力をかける。ノイジーなロックだが、プログレッシブなセンスとダンスミュージックとして優れているリズムに血が騒ぐキラーチューンである。
アルバムタイトル曲③は、ロックの初期衝動を感じるカッコ良さが光る。385独自のグルーヴ感と意味深な歌詞を絶叫して歌うボーカルなど、強烈な個性はイカれた魅力がある。
④は途中にある意表を突く初期エレファントカシマシ風の歌パートからエクストリームミュージックと呼ぶしかない激烈パートへの展開が痛快である。⑥は硬質なサウンドで畳みかけるほぼハードコアと言っていい強烈なナンバー。

MIYAのスラップベースは凄い一言で、サウンドは暴力的なロックとして文句なしの強度を誇っている。またボーカルスタイルは聴く人を選ぶとは思うが、これもまた女性ボーカルの表現方法のひとつであると言えよう。

卒業制作|日本マドンナ

2010/7/7  JACKMAN RECORDS

1. ラップ
2. 幸せカップルファッキンシット
3. クツガエス
4. 村上春樹つまらない
5. 東京病気女子高生
6. 田舎に暮らしたい

2009年に結成された3人組のガールズロックバンド「日本マドンナ」の1stミニアルバム。
音楽的には「赤痢」や「戸川純」、「KING BROTHERS」などにも通じる強烈さがあり、当時10代のメンバーによる荒々しいガレージロックサウンドと身も蓋もないことをぶちまける歌は、まさにパンクの初期衝動を感じるもので日常にある様々な鬱憤を晴らしてくれる。

冒頭①はラップで自己紹介する短曲で、最初から意外性があり面白い。しかもラップとして普通に良いのが、この先の期待を膨らませてくれる。続く②はラフなガレージロックに乗せて幸せなカップル達への憎悪をぶちまける。いわゆる『リア充爆発しろ!』的なシンプルな不満である。パートナーがおらず、クリスマスなどのイベント時期に街中のカップルを見て心が騒めくときは、この曲を聴きながら心の中で一緒に叫べば、少しは気が晴れるかもしれない。
③は不穏な空気を醸し出すヘヴィなベースのイントロからやさぐれたリアルなロックンロールが炸裂しカッコいい。投げやりな感じと根性の両方を兼ね備えた歌いっぷりは味があり、これも魅力である。
④は大物作家へ個人の痛烈な感想をぶちまける。『ひどい!国民的作家になんてことを!』という意見もありそうだが、権威あるものに反抗の意を示すこと、これもまたロックの一面である。読書メーターのレビューでは満足できない人はぜひ聴くことをお勧めする。
⑤は10代であったメンバーが完成させた、媚びを売らない真の女子高生ソングと言えるだろう。東京のリアルな10代女子の叫びが熱く響き渡るキラーチューンである。
⑥はやるせない雰囲気の歌が心にぶっ刺さる。『ここではないどこかに逃げたい』という願望は、多くの人の共感を得そうだ。葛藤した最後には『今ここで踏みとどまる』と決意を固めるところが日本マドンナの力強さである。

色々な葛藤が渦巻く内容は10代の生々しいロックと言えるものである。そしてそれをオブラートに包まずぶちまける様はまさに若さゆえだが、とりあえず行動してみて、突きぬけようとする姿勢は人に勇気を与えるもであった。

NEO GLAMOROUS|NEO JAPONISM

2018/6/30 リーディ

1. NEO START(SE)
2. ワールドエンドスターリーナイト
3. Please Please Me!!!!!
4. PARTY☆MONSTER
5. ジャンピンポ!!!!!
6. MOON CHILD
7. ゆるゆらオヤシロガール
8. 夢際のパラレル
9. STAND BY ME
10. 聞こえない歌
11. Wander Wonder World
12. トゥ・ザ・フューチャー

2017年に結成されたアイドルグループ「NEO JAPONISM」の1stアルバム。
音楽プロデュースを手掛けるSayaは元々ビジュアル系バンド「SRASH NOTES GARDEN」のギタリストであったが、WACK系のアイドル楽曲でお馴染みの松隈ケンタの元でアイドル楽曲の制作を行い始め、その後はアイドル音楽クリエイターとして様々なグループの音楽プロデュースを行っている。本作は短い活動期間で終わってしまったNEO JAPONISM第1期メンバーによるアルバムで、後に第2期メンバーにより再録された楽曲も多い。
メジャー感溢れる第2期の音源に比べると荒々しくアグレッシブに弾けるサウンドや勢いに任せたボーカルなど、通好みの作風と音質が堪らないインディーズアイドルポップの神髄が味わえる内容となっている。

Kawaii Future Bass系のインスト①に続く②は、キラキラした重厚なロックサウンドで前のめりに疾走する。セカイ系ボーイミーツガールな世界観をセンチメンタルに駆け抜けており、その若さ溢れる躍動感はまさにアイドルである。楽曲を手掛けるSayaのロマンティックな美学が感じられるのが良い。
③は王道アイドルポップとロックンロールの融合という感じで、可愛さとラフな感じが同居しておりカッコいい。⑤はキャッチ―なリズムがアイドル楽曲として優れた魅力があり、シンガロングできそうでライブ向きのナンバー。
⑦と⑪はNEO JAPONISMの前身となるアイドルグループ「うりゃおい!JAPAN」の楽曲をリニューアルしたものである。
⑦はSaya の他にYunomiが作曲・編曲で参加しており、いつになくアグレッシブに展開するYunomi節が炸裂するインパクトあるキラーチューン。⑪は正統派青春アイドルポップで、爽やかなメロディー&ハーモニーは胸キュンもの。⑧もYunomiとSayaの共作曲で、Yunomiの疾走感溢れる必殺のエレクトロサウンドが熱い。こちらもYunomiにしては珍しいダイナミックな熱量が感じられる。
⑨と⑩はWACK系のアイドルロック直系のストレートな熱さで勝負するメロコア風のナンバー。ロックと出会い覚醒したアイドルみたいな思い切りの良い歌と爽快感あるメロディックなビートが心を震わせる。

ロックからエレクトロまでサウンドはバラエティに富んでいるが、とにかく全編通して手に汗握る凄まじいエネルギーが渦巻いており素晴らしい。これぞアイドルパンクと呼びたくなる熱い1枚だ。

Alethea|「Story of Hope」

2016/1/6 garimpeiro records

1. Lost
2. Forever
3. Vices(MEMPHIS MAY FIRE COVER)
4. Memory
5. Alethea
6. Historia(Acoustic)

2013年から2017年まで活動していた宮城県仙台市出身のスクリーモ/ポストハードコアバンド「Story of Hope」のEP作品。
【幸福模索Screamo】をコンセプトに掲げており、音楽を聴くことで得られる幸福感を追求している。音楽的には、ボーカルm!saの美しい歌声と強烈なスクリームの使い分けなど、巧みな感情表現が光るボーカルを主役に、超メロディックかつエモーショナルな旋律がこれでもかと展開される熱い内容である。ラウドロック系なのでヘヴィなギターリフの音色や凝っている曲構成が特徴的であるが、とにかく楽曲や歌声のポップ感が優れている。スクリーモに限らず、メロディックな女性ボーカルロック好きは必聴と言えるだろう。

冒頭①から始まりを告げるイントロのエモいギターを合図にギア全開で疾走する。激しいハードコアサウンドと叙情的なメロディーが上手く同居しており、ドラマチックに感情を伝えるm!saの透明感ある歌声と全身全霊の叫びが心を震わしてくれる。続く②も勢いそのままにメロディックに疾走し、激しいサウンドの中から浮かび上がる美しさが耳を捉える。持ち前のメロディーの良さが十二分に発揮されており、繊細な感情と激情が交差するキラーチューンである。③はアメリカのメタルコアバンド「MEMPHIS MAY FIRE」の楽曲のカバー。原曲の良さは殺さず、男女ツインボーカルなどの自身のバンドのカラーも全面に出した良い出来となっている。⑤は英詩の曲が多い本作の中では珍しい日本語詩の歌モノである。ミドルテンポでじっくりと聴かせるセンチメンタルな歌と荒々しくもメロウな演奏は胸に響くもので、飛び道具のようなインパクトがあるRyuto(ギター)の激烈なスクリームも良い味を出している。
⑥は前作収録の『Historia』のアコースティック・ヴァージョン。温かいアコースティックギターの音色と歌姫としての存在感を発揮するm!saの美しい歌声が絶品の味わい。

m!saのボーカルスタイル自体が女性ボーカルとしては貴重なもので、声質や歌唱も良いので文句なし。メロディックな楽曲によく合う魅力があるし、激しくスクリームする場面でも聴き心地が良いのがポイント。女性ボーカルのポップな利点を上手く生かしている1枚だ。

FINAL ATTACK|Dazzle Vision

2014/3/7 HUMAN NOISE record

1. FINAL ATTACK
2. エボリューション
3. CIRCLE
4. ALL OUT
5. TO THE END
6. A BRAND NEW WORLD
7. セカンド
8. HEARTLESS
9. BE FREE
10. スフィア
11. BLACK STAR
12. OPEN THE GATE

2003年に結成されたロックバンド「Dazzle Vision」のラストアルバム。
ボーカルを務めるMaikoの正統派ロックボーカルと強烈なデスボイスを主役に、スクリーモ、メタルコア、エレクトロニコアなど様々な音楽要素を含む多彩な曲が魅力である。メロディアスな楽曲は完成度の高いものが多いが、はやり注目は個性的なボーカルである。Maikoのスクリームやデスボイスの迫力は凄まじいものがあり、このタイプの女性ボーカルでは代表的な存在であったと言っていいだろう。王道系ロックボーカルとデス系の叫びを使い分けるのも見事で、非常にテクニカルなボーカルテクニックを楽しむことができる。また本作ではロックとエレクトロポップの融合がテーマとなっており、他作品とは一味違った魅力がある。

冒頭①はぞくぞくするイントロから期待を裏切らず、ロック+エレクトロなサウンドで力強く疾走する。デスボイスとクリーンボイスの場面転換も鮮やかで、メロディアスな旋律と相まって気分が上がる。アルバムの幕開けを飾るに相応しいキラーチューンである。
続く②はヘヴィなギターリフなどの重厚なバンドサウンドとそれに花を添えるエレクトロサウンドが違和感なく同居しており素晴らしい。キャッチ―な歌メロも良いし、思わずこぶしを握り締めてしまう熱量のあるナンバーだ。
③は正統派メロディックハードコア曲で、彼らのパンキッシュな一面が楽しめる。
④はじっくりと聴かせるヘヴィロックで、地に足の着いたラウドなサウンド&ボーカルが熱い。⑥は美しく荘厳な雰囲気が不思議なトリップ感をもたらしてくれて秀逸。
⑦は企画盤『SHOCKING LOUD VOICE』に収録されていた超激烈なデスボイスにやられる1曲。曲自体はキャッチ―だが、とにかくボーカルの迫力が凄い。⑧はポップな疾走感が気持ち良い曲で、アニソンのような高揚感が得られる。⑩はほぼエレクトロ路線だが、ヘビィなロック演奏も同時に展開されている。
⑪は意表を突く完全なエレクトロポップに驚かされるが、作風を広げようとする意欲的な意思が感じられる。

曲調はバラエティに富んでおり、一本調子ではなくよく考えて作られている印象である。
エレクトロ系のサウンドは女性ボーカルと相性がいいが、その辺を踏まえて上手くロックサウンドに取り込んでると感じる。

toumei na sekitan|sidenerds

2024/9/5

1. ☆。.:*・゜
2. 混ざる
3. 透明な石炭
4. フィルムカメラ
5. わたし

2023年の夏に東京で結成されたサイバーポップ・ロックバンド「sidenerds」1st EP作品。
数多くいる2020年代インディーズ女性ボーカルバンドの中でもコアなファンを獲得しており、マニアックな人気があるバンドだ。ソロでユニークなロックを作っていた「ねぎしのはん」がギターを担当しているのも興味深い。
音楽的にはシューゲイザー、マスロック、エモなどの要素を感じるドラマチックなサウンドに、ボーカルを務める「みにあまる雅」のハイトーンボーカルの可愛い歌が同居するポップロックである。曲の世界観はかなり繊細で内省的なもので、儚く切ない感情を見事に表現した美しさが心に刺さる。またシリアスな空気感の中で、女性ボーカルものとしてオタクに受けるツボをピンポイントで突きまくる巧みな音楽センスにも注目である。

冒頭①はミドルテンポのエモロックサウンドとふんわりとした可愛くも切ない歌でじわじわと感情を高めていく。そして後半にはノイジーな轟音ギターが炸裂してシューゲイズな浮遊感で舞う。静から動への鮮やかな展開がダイナミックな高揚感を与えてくれる力作である。
続く②はエモーショナルなギターの音色やキュートでセンチな歌に加えて、不安定な感情を上手く表現している絶妙なテンポチェンジが光るキラーチューン。とにかく曲の構成がよく出来ておりどのパートも印象に残る。
アルバムタイトル曲③は、相対性理論に通じるようなポストロックとキュートな女性ボーカルの融合として優れている1曲。
④は軽快な青春ギターロックという感じの短曲で、葛藤しながらも走り出す青さが清々しい。
⑤は割とストレートな作風の曲で、キャッチ―な歌メロや意味深な歌詞が耳に引っ掛かりを残す。大衆性も獲得できそうな質感は、ポップソングとしての強度を感じさせる。

それぞれの曲がしっかりと個性分けができており、聴き手を飽きさせない工夫を感じるところはさすが。内省的な世界観ではあるが、ポップセンスがあり、音楽として外側に発する熱量を強く感じるので、今後更にブレイクしていく可能性が高いバンドと言えるだろう。

WRAPPED! best of RAP|RAP

2024/3/3 JPDOLL

1. ロックマガジン
2. アクシデント
3. 飾り窓
4. 空間のあなた
5. 迷宮
6. 直情径行
7. Not For Sale
8. Rapout!
9. レジェンド
10. 輪廻(リーインカーネーション)
11. ランドスケイプ
12. ヒステリア
13. マタニティブルー
14. 麻酔/魔睡
15. 輪廻 (Instrumental)
16. Love Song
17. Da・Ta・I
18. Machine

1980年代のインディーズシーンで活躍した伝説のガールズパンクバンド「RAP」の音源をすべてコンプリートした全曲集。LIZARDのモモヨプロデュースで3枚のEPと1枚のLPをリリースしており、それらの作品に加えてファンクラブのみに配布されたビデオに収録された曲も収録した決定盤と言える1枚である。音楽的にはSiouxsie And The Bansheesからの影響を感じさせるニューウェーブ色あるパンクで、当時のインディーズシーンの空気を伝えるアグレッシブな演奏(音質が1980年代ど真ん中な感じ)とパンキッシュな魅力がある自由奔放なROUGEのボーカルが心の奥のパンクスピリットを刺激してくれる。

①②③は1stEP『Wrap』収録曲。疾走感溢れる初期パンク路線の曲から幻想・耽美的な美しい曲も聴ける。①はフラストレーションをぶちまけるかの如く前のめりに爆走するキラーチューン。荒削りな演奏や縦横無尽に歌いまくるボーカルなど、気迫を感じる凄まじい勢いに圧倒される。②は初期パンク直系の王道ロックビートが熱い。当時は正統派パンクロックバンドがたくさんいたが、女性ボーカルでこのタイプの曲が聴けるのが貴重である。③は一転してミドルテンポでじっくりと聴かせるナンバー。ただならぬ緊張感高まる演奏と繊細で内省的な歌が作り出す不穏な空気に飲み込まれる。

④⑤⑥は2nd EP『Trap』収録曲。③の延長線上にあるようなゴシックロック路線のダークなパンクが楽しめる。④は内面の苦悩と葛藤や破壊衝動が渦巻く孤高の雰囲気にやられる。サウンドもカッコいいが、異様な迫力を持つ歌自体の存在感が凄い。⑥は性急なサウンドの緊張感がエキサイティング。

⑦⑧⑨は3rd EP『Rapout』収録曲。原点に立ち返り初期パンク的な初期衝動に満ちた熱い曲が聴ける。⑦は印象的なイントロのギターの音色からフルスロットルで疾走する。メロディックなギターがいい感じである。続く⑧も流れはそのままに熱量全開のパンクロックで気分爽快。

⑩⑪⑫⑬⑭⑮はラスト作となったLP『Hysteria』収録曲。以前よりキャッチーになった歌が伝えるメッセージ性が光るRAPの音楽的な集大成と言える。⑩はドラマチックに盛り上げる前奏から幻想的な透明感全開で駆け抜ける。⑬は軽快なビートで疾走するが、意味深な歌詞の重さが印象的。⑭は熱を帯びた力強い歌声と心を震わせるメッセージに耳が惹きつけられる、バンドとしての到達点を感じる力作である。

⑯⑰⑱はファンクラブのビデオにのみ収録されたもの。チャーミングな魅力と怖さが同居する⑯など聴きごたえあり。

パンクバンドらしい初期衝動に満ちたストレートな作風のものから退廃的な空気のゴシックロックまで、それぞれの曲の個性が光っている。
RAPならではの【カリスマ性のある求心力】が随所に感じられる素晴らしい内容の1枚だ。

パンクチュアル|MAHALIK HALILI

1991/10/21 
ビクターエンタテインメント

1. マニックパニック
2. 浮気なピーチガール
3. BLUE PEAL
4. リアルワールド
5. Fifteen
6. アオザイ
7. Day after day
8. BIG BANG!
9. WEGEN KRIEG
10. コッペリア
11. そしてバラ色

1989年に結成された、ななきさとえと津秦一郎による音楽ユニット「MAHALIK HALILI」(マハリックハリーリ)のメジャーデビュー後、2枚目となるアルバム。
ボーカルを担当している「ななきさとえ」は1980年代前半に活動していた伝説のガールズハードコアパンクバンド「THE NURSE」にドラマーとして参加。その後はソロシンガーとして精力的に活動し、『赤色人形館』『パンドラの呪文』といったニューウェーブ系女性ボーカルの傑作アルバムをリリースしている。
このMAHALIK HALILIとして活動していた時期にはTBSの人気テレビ番組・世界ふしぎ発見!のミステリーハンターとしても活躍し、お茶の間でも人気があった女性である。そのことも関連しているのか本作では一風変わった不思議ワールドが全開で、独自の摩訶不思議な世界観のポップミュージックを聴くことができる。

冒頭①はワールドミュージック色のあるパーカションの音色や民族音楽っぽいリズムが刺激的に響き、異国の謎や不思議が渦巻く雰囲気にわくわくさせられる。歴史の謎に真正面から挑む知的探求心を感じる曲はまさにミステリーハンター。続く②はうってかわって懐かしさを感じる1980年代のシティポップ/アイドルポップ風の爽やかな作風で、ボーカル含め可愛いらしいセンスが良い感じだ。④はじっくりと聴かせるミドルテンポのロックナンバーで、歌詞のSF小説/映画のような世界観にインパクトがあり面白い。⑤は感傷的なサウンド&メロディーに優しく歌うボーカルが温かく心に響くロックバラード。⑥は和風のサウンドと歌メロが親しみやすい。幻想音楽系ではよくある日本の風土を感じさせるハートフルな1曲である。
⑧は歌詞がユニークで、宇宙物理学用語がたくさん飛び出す楽しい1曲。ホーキング博士と未来世界でのデートの約束をするなど、ぶっ飛んだ発想の歌詞が面白い。
⑩はヨーロッパ風の荘厳なオルガンのイントロから始まる幻想的なバラードナンバー。格調高い雰囲気のサウンドと透明感ある美声など、耽美的な雰囲気が非常に美しい。

ななきさとえのサブカルアイドルっぽい不思議系女子という感じのキャラクター性にあった音楽性はポップかつユニークで楽しい気分になれるものである。彼女のアングラハードコアパンクバンドからTV番組のミステリーハンターまでこなしたマルチな才能を生かした刺激的な内容の1枚だ。

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