セクシー☆甲子園|セクシー☆オールシスターズ

2010/7/21 ポニーキャニオン
1. 爆乳戦隊パイレンジャー/爆乳戦隊パイレンジャー
2. ピンクのソーダ/爆乳戦隊パイレンジャー
3. 爆乳音頭/爆乳三国志
4. 爆乳マンイーター/爆乳三国志
5. スピードクイーン/D-Rive
6. Escape/D-Rive
7. パンテイーストッキング~!/美脚戦隊スレンダー
8. 美脚戦隊スレンダー/美脚戦隊スレンダー
9. スケベ!/胸の谷間にうもれたい
10. 生殺し/胸の谷間にうもれたい
11. 夜露死苦おっぱい!/爆乳ヤンキー
12. ブラを探して…/爆乳ヤンキー
13. 爆乳甲子園/爆乳甲子園
14. 爆乳応援歌/ 爆乳甲子園
「セクシー☆オールシスターズ」は芸能プロダクション ジョリー・ロジャーがプロデュースしたグラビアアイドル達による複数の音楽ユニットの総称である。本作は2010年までの様々なアイドルユニットの音源をまとめたコレクションアルバムである。
元々は2008年にDVDで発売されたVシネマの「爆乳戦隊パイレンジャー」という戦隊モノのパロディ作品があり、そこに出演していた手島優を中心とした5人のグラビアアイドルの音楽作品がプロジェクトの始まりとなった。それ以降様々なアイドルユニットを展開しマニアックな支持を集めたのがこのセクシー☆オールシスターズである。
音楽の前にまずはグラビアアイドルという存在について少し考えてみよう。今ではインターネットでお手軽に刺激的な画像や動画を入手できる為、グラビアアイドルの有難みが分かりにくくなっているが、1990年代頃までは青少年にとって女神のような存在であったと言えるであろう。今の若い世代は信じられないかもしれないが、その昔は10代がセクシーなものにたどり着くのはとてつもなく困難な道のりがあったのである。よく公園や土手に捨てられていたエロ本を読んだという若い頃のエピソードを語る人がいるが、あれはラッキーな本当の話である。これにはエロ本を捨てる側も次の飢えた者へ受け渡すという意思がこもっている場合もあり、かつて全国で多発していた出来事だ。そのような時代性もあり、誰でも気軽に見ることができるグラビアアイドルへの関心度は高いものがあった。グラビアアイドル自体は水着などの健全なお色気が中心ではあったが、漫画雑誌に登場するグラビアは青少年にとってはまさに心のオアシスと呼べるものであったのだ。またそういったグラビアから国民的な女優や芸能人となっていた女性も多くいた。今では時代も変わり、グラビアアイドルはかつてのような多くの男性が関心を寄せる存在ではなくなってきてはいるが、それでも未だに根強い人気があるのはこうしたミームが脈々と人間の脳に組み込まれているのかもしれない。
さてようやく音楽的な話を始めると、このセクシー☆オールシスターズは爆乳といったグラビアアイドルのセクシーという部分を極端に強調した音楽性になっている。しかし不思議なのはあまり下品には感じないことだ。むしろアスリートのような清々しさが漂うのは面白いところで、馬鹿正直に男性の願望や欲望に答えるコンセプトは逆に潔いとも言える。この中学生の性衝動を具現化したような方向性は単純にエンターテインメントとしては面白いのかもしれない。むしろ健全なコンテンツを装いながらもその実は・・・といった小細工を弄する方が問題と言えるであろう。本作はそんなストレートなセクシー路線のもと、ユーロビートなど電波ソングと呼んでも良さそうな中毒性の高い曲が連発して炸裂する夜眠れなくなっちゃう刺激的な内容となっている。
①②がセクシー☆オールシスターズの始まりとなった「爆乳戦隊パイレンジャー」(手島優、愛川ゆず季、鈴木じゅん、石垣香織、助川まりえ)の曲である。
①は歌詞がインパクトあるが、曲調自体は特撮ソングの王道を走る熱いナンバーだ。Koma2 Kaz(小松一也)によるキャッチ―な歌メロは一度聴けば口ずさみたくなる魅力がある。
②は①とはうって変わり露骨にPerfume路線のエレクトロポップ。数多くあるPerfumeに似ているアイドルの中でもトップにきそうなほどそっくりなパロディソングだ。当時の流行りを考えればこれをやるのは当然と言えば当然ではあるが。
③④は「爆乳三国志」(手島 優、助川まりえ、MAO)の曲である。
これはセクシー☆オールシスターズの楽曲を多く手掛けている奇才Stinky ‘Oが提供している。この人物は某アイドルグループの良曲を多く生み出した○○○○○○ではないか説があるが真偽のほどは不明である。ただ曲の感じでStinky ‘Oは男性の音楽家だと思われる。
③は爆乳アンセムとして有名なドラッギーな魅力を放つナンバー。中華風のメロディーにのせて無意味におっぱいと歌いまくる過激な曲である。これは「ねえ・・・いっぱいの い を お に変えて言ってみて」「おっぱい!?」といった小中学生的なただおっぱいと言ってみて喜ぶ概念を音楽として過剰に表現したと捉えていいだろう。この曲は2024年にホロライブの超人気VtuberであるAirani iofifteen (イオフィ)がカバーしているので、すでにJ-POPのクラシックとして定着していると思われる。
④はパラパラが踊れるノリノリのユーロビートに男を捕食する爆乳マンイーターというテーマの歌が融合したぶっ飛んだ曲だ。それにしてもStinky ‘Oの歌詞は凄まじい。世間一般ではマンイーターという言葉自体使わないものである。
⑤⑥は「D-Rive」(林弓束、黒沢美怜)のナンバー。
⑤はm.o.v.eなどを彷彿とさせるエイベックス系サウンドのアゲアゲ女子ソング。このユニットは他のセクシー☆オールシスターズの面々とは違い、古き良き真面目なクラブポップ路線である。
⑥も畳みかけるボーカルやエレクトロビートが爽快な良い曲であるが、このアルバムの中では普通っぽく聴こえるので、埋もれてしまった感は否めない。
⑦⑧は「美脚戦隊スレンダー」(緑川静香、黒沢美怜、三島ゆかり、美浜紗来、神咲みゆ)の曲だ。爆乳戦隊に対抗した美脚戦隊というコンセプトのアイデアが冴えているユニットである。楽曲を手掛けるのは美脚をテーマとして更に過激な路線を強めるStinky ‘Oだ。
⑦は懐かしのエロゲ電波ソングを彷彿とさせるストレート過ぎる歌詞に破壊力があり、さすがに恥ずかしさを覚える。歌うメンバーの心情も察するが一人でこれを聴くのも精神的にヘヴィである。下ネタとして爆乳よりパンストの方が変態っぽい感じもするのがその原因のひとつと言える。
⑧はロシア民謡の『コロブチカ』のメロディーを組み込んだ美脚アンセムとしてよく知られている曲である。大地を躍動させる力強いリズム、メロディーに張り付いたとんでもない歌詞の切れ味とすべてが圧巻のキラーチューンだ。⑦と共に歌詞を聴いて理性を捨てたのか!Stinky ‘O!と思わせるが、実はこれは知性に裏打ちされた理にかなった内容の歌となっている。美脚が爆乳に勝る点について丁寧に説明しているが納得できるものである。
⑨⑩は「胸の谷間にうもれたい」(助川まりえ、橘オリーブ、與坂 唯)による曲だ。
とにかく、何かに取りつかれたような勢いのStinky ‘Oのソングライティングが凄い。
⑨は1980年代アイドルポップ風の清涼感のある曲調だが、そこにスケベ一直線な歌詞をのせるという挑戦的な作風である。途中のセリフパートも強力であり、いったいStinky ‘Oがどんな気持ちでこの曲を作ったのか気になってしまうところだ。
⑩はおニャン子クラブ の『セーラー服を脱がさないで』を彷彿とさせるレトロ感覚のちょっぴりエッチなアイドルポップである。1980年代には『毎度おさわがせします』や『夏・体験物語』といったエロ騒動に巻き込まれるドラマがあったことを思い出させるいい感じのちょいエロセンスである。
⑪⑫は爆乳三国志の進化系とも言える「爆乳ヤンキー」(手島 優、MAO、北條まみ)のナンバーである。当時、ヤンキー系ユニットも来そうだなと思った人も多そうだが、期待を裏切らない爆乳ヤンキーの登場である。もはや音楽だけに留まらず、男としても覚醒したStinky’Oの勢いは誰にも止められない・・・神風すら吹いているようなソングライティングである。
⑪は爆乳とヤンキーという実は相性が良さそうな独自の世界観を爆走する、これまた人気の爆乳アンセムだ。邦楽の長い歴史の中でも聴いたこともない刺激に満ちたフレーズの嵐に開いた口が塞がらない。メンバーのボーカルもテーマに沿ってヤンキーという感じのラフな歌い回しでグッド。
⑫は最初の語りから爆乳の感謝イベントということが分かるが、内容はまったく意味不明である。Stinky’Oはプロの音楽家であるので、仕事で依頼されたから楽曲を制作したと思われるが、もはやそういったことを超越した誰も見ることができなかった最果ての高みに到達していると言えるだろう。
⑬⑭は爆乳甲子園(手島 優、助川まりえ、MAO、北條まみ、春野 恵、長岡美和、黒田万結花、すのうちあすか、NAON、毛利有希)という大人数のユニットによるナンバーだ。
⑬は甲子園球児のように勇ましく突き進む逞しい爆乳行進曲。爆乳甲子園というのが何であるのか本曲を聴いてもまったく分からないが、このとんでもなさは伝わるであろう。
⑭はヘルマン・ネッケの『クシコス・ポスト』のメロディーを取り込んだ爆乳応援ソング。もはや爆乳レッドゾーンを振り切った感のあるStinky’Oであるが、今改めて聴くとさすがにやり過ぎだったのではないかと思わなくもない。
アイドルポップならぬセクシーポップの到達点が味わえる聴きごたえありすぎの1枚である。
ほとんどの楽曲を提供したStinky’Oの存在感はもはや日本の音楽という枠には留まらず、ホモサピエンスのmale(男)を代表するレベルに到達している。何者か正体は不明だが、これほどのユーモアと度胸があるのだから2026年現在もどこかで精力的に楽曲制作を行っているに違いない。
ハリガネムシ|金属恵比須

2015/2/11 Ryouki-World Records
1. 蟷螂の黄昏
2. ハリガネムシ
3. 光の雪
4. 嵐が丘のむこうに
5. 紅葉狩(第三部・第四部)
6. イタコ
7. 川
「金属恵比須」は1996年に結成されたプログレバンド。本作は3枚目となるアルバムである。
あのスターレス高嶋も絶賛したという長いキャリアを誇る実力派インディーズバンドが、女性ボーカリスト稲益宏美を迎えて新たな境地を見せた力作だ。
音楽的にはプログレを基調としたシンフォニックなものからハードロック/ヘヴィメタルの要素もふんだんに含んでいる熱さが迸るナンバーまで、テクニカルな演奏や和的なフィーリングが光る独自のロックを作り上げている。
江戸川乱歩や横溝正史といった作家の小説や映画を彷彿とさせる幻想/怪奇的な世界観も特筆すべき個性で、人間椅子などのバンドと同じく国内でしか生まれようがない刺激的な日本語ロックを確立している聴きごたえたっぷりの内容である。
導入のインスト①はタイトル通り黄昏のイメージが浮かぶ幻想的なもので、これから先への期待感を高めてくれる。
アルバムタイトル曲②は、ざらついたヘヴィなギターリフを合図にアグレッシブなキーボートやドラムが混然一体となり暴れ狂うイカした激ロック。怒涛の迫力で迫る演奏がクソカッコいいのはもちろんのこと、古き良きロックを思い起こさせる稲益宏美の歌い回しに不思議な魅力がありグッド。
続く③はうって変わってプログレ度数の高い叙情性が胸にグッとくるクリスマスソング。10分以上に渡るドラマチックな展開はよく練ってある印象で、和的な歌モノとしての良さもありつつ後半に展開される火花を散らすスリリングな演奏がいかにもプログレッシブな感じで熱い。1970年代プログレ好きの年長者にも刺さるキラーチューンと言っていいだろう。
④は牧歌的な空気に包まれるインスト。大曲を聴いた後だけに一度癒しの旋律で心がリフレッシュされる。
⑤はKing Crimsonを彷彿とさせる悲劇的なメロディーを奏でるメロントロンが炸裂する壮大なサウンドの洪水に飲み込まれる。美しい歌声も叙情的な世界観を盛り上げてくれて良い。厚みのあるシンフォニックなサウンドがこれでもかとぐいぐい迫る様は圧巻で普遍的な魅力がある旋律だ。後半は③と同じくアグレッシブなバンド演奏が火を噴き手に汗握る。
⑥はノイジーなギターが唸りをあげるサウンドにコミカルな男女ツインボーカルが同居して異様な雰囲気の曲に仕上がっている。ユーモアセンスたっぷりの作風は金属恵比須の真骨頂だ。
ラスト⑦はシンガーソングライター入江陽をフィーチャーした曲で、金属恵比須のアレンジセンスが光る。不穏な空気が漂いながらも同時にこの世のものとは思えない美しさを感じる良いサウンドとなっている。
③⑤といったプログレ大曲を筆頭にどれも面白く聴けるいい曲揃いである。アルバムとしてのトータルバランスもよく練られており、曲ごとに個性分けができているところが良い。とにかくインパクトのある記憶に残る意欲作と言えるだろう。
Drifting Devil|石橋英子

2008/12/3
Rhythm Tracks /PERFECT MUSIC
1. Dizzy Dance
2. Fearless 【STOP】
3. Fanfare
4. 橋の下にて
5. 橋の上にて
6. KOkKA
7. Last Sky
8. drifting devil
9. Postcard from Ghost
10. 嘆きの砂
11. 帰郷
12. アーケイドのクリスマス
「石橋英子」はロックバンドPANICSMILEにドラムとして参加していたことでよく知られているシンガーソングライター。本作はソロとしては2枚目のアルバムとなる。
ドラムのみならずフルートやキーボードなど様々な楽器を演奏するスキルを持っている才女で、AxSxE(本作にも参加)率いるBOATの後継バンドであるNATSUMENのメンバーとしても活躍した。ソロとしての個性を確立してきた本作でも一人でボーカルやドラムを含めて複数の役割をこなしている。音楽性は即興演奏などのアヴァンギャルドな要素も含むが、あくまで歌モノとして透明感のある声質を生かしたメロウな旋律を奏でているので、良質な女性ボーカルアルバムとして理屈抜きに楽しめる内容となっている。
アルバムの導入曲である①はピアノとドラムを主体としたジャジーな雰囲気のインスト。各楽器がアグレッシブに絡み合う目まぐるしい演奏はいかにも石橋英子らしさ全開のサウンドである。続く②は神秘的な感じもする不思議な浮遊感をもつナンバー。石橋英子の囁くようなボーカルとトランス感覚もあるサウンドの洪水がここではないどこかへと誘ってくれる。
③はしっとりとした雰囲気の曲で、序盤は優しく耳を包み込む感じだが、徐々に不穏な空気になっていくという面白い作風だ。ピアノの弾き語りに近いが、アンビエント風味の音も飛び交い一筋縄ではいかない。
④は虚空に響く歌という感じで、石橋英子の儚く美しい歌声が映えている。シンプルな音響系のサウンドをバックに響き渡る個人の独白のような詩的な響きの歌が切なく胸を貫く。
⑥は7分を超える長尺のナンバー。山本精一によるギターの歪んだ音色が印象的で、すべてを祝福してくれる光が差し込むような優しい雰囲気が良い。
⑦は一聴してぞくぞくとさせられる濃厚なサウンドなど、石橋英子マジックが炸裂するキラーチューン。ボーカルの孤独の風に吹かれているかのような雰囲気も抜群で、メロディアスな歌モノとして出来が良い。本作の中でも心の奥の方を刺激する感傷を届けてくれるグッとくる曲である。
アルバムタイトル曲⑧は、トリップ感覚というか幽玄な浮遊感に引き込まれる。サウンドは挑戦的な部分もあるが、しっかりとポップに仕上げているところはさすがと言える。
⑨はエレクトロニカ風のサウンドに同居するウィスパーボイスの語りが不思議ちゃんみたいな電波を飛ばす。ロリボイスで歌う石橋英子というのも中々良い。
⑩は悲しみや葛藤といった様々な感情をすべて飲み込んだかのようなエモーショナルなバラード。不安定でありながらも希望も感じさせる作風が良い。
⑫はいかにも冬に合いそうなしっとりとしたバラード。アルバムの最後を飾るに相応しい絶品の美しさである。
ソロではPANICSMILEと違いボーカル主体のポップな方向性にしたのはまさに正解と言える。元々、石橋英子の音楽センスは誰もが認めるところではあったが、分かりやすい作風となっている本作を聴けば多くの人がその才能に感嘆するであろう。これほどのアルバムを作れる国内ミュージシャンはとても貴重な存在である。
Clear ボーカルミニアルバム

2007/9/26 ランティス
1. 硝子のLoneliness/Riryka
2. Bitter sweet pain/霜月はるか
3. エターナル/片霧烈火
4. One-way Shining/茶太
5. Crystal Love/ KAZCO
6. Brilliant Days/ Riryka
「Clear ボーカルミニアルバム」は美少女ゲームブランドMOONSTONEが2007年に発売したPCゲーム「Clear」に使用されたボーカル曲を集めたミニアルバムである。
全体的にゲームの世界観とシンクロしている作風が印象的であるが、やはり注目は2000年代のエロゲソングを代表する曲である『硝子のLoneliness』が収録されていることであろう。エロゲソングをフィジカル音源で収集する場合、Symphony SoundsやGWAVEといったシリーズのコンピレーションアルバムは基本となるところだが、こういった人気曲でも収録されていないことも多い。
このRirykaが歌う『硝子のLoneliness』も今のところ彼女のアルバム「Brilliant sign」と本作にしか入っていない。エロゲソングはゲームに使用された曲というある意味ポピュラーな音楽でありながらも音源収集も全体像の把握もそう簡単なものではない。更にキャラクターソングなども含めれば深い沼にハマっていくのである(これはアニソンも同じ)。歌モノ以外にゲームやアニメのサントラもそうだが、音楽メディアがそこまで大々的に取り上げるものではないので、音源を掘っていき自分だけのツリーを作っていくのも音楽の多種多様な楽しみ方のひとつと言えるだろう。
さて本作は「Clear」を盛り上げた女性ボーカルナンバーがふんだんに収録されている。『硝子のLoneliness』と共に人気があるイメージソングで、同じくRirykaが歌う『Perfect tears』が入っていないのが残念だが、霜月はるか、片霧烈火、茶太などPCゲームの歌ではお馴染みの実力派シンガーがゲームに花を添える。
冒頭①が未だに人気が高い「Clear」のOPテーマ。作曲は「けいおん!」の『Don’t say “lazy”』のヒットでよく知られている前澤寛之。アレンジはElements Gardenの藤田淳平が手掛けている。イントロを聴いただけで「始まるのだな・・・青春の葛藤が渦巻くエロゲーが!」となるいかにも美少女ゲーム的な旋律が炸裂するキラーチューンである。陰りを帯びたトランスサウンドや一聴して耳に残る強力なメロディーなど、楽曲の出来も良いが、切なさと力強さの両方を含んだRirykaのエモーショナルな歌唱も素晴らしい。
②は挿入歌として使用されている曲で、霜月はるかの歌声の真価が発揮されている感動的なバラードだ。藤井亮太が手掛けた美しいメロディーを儚く歌い上げておりストレートに胸に刺さる。これは心に残るかなりの力作である。
③も挿入歌としてゲーム内で流れる悲しみを含んだバラード。これでもかと切なく盛り上げる楽曲を片霧烈火が情緒たっぷりに歌う。
④も同じく挿入歌であるが、②③とは方向性がずいぶん違う。KEYのゲーム音楽にも通じるファンタジックな浮遊感をもった旋律である。茶太の真っ直ぐなボーカルが曲調にばっちりとハマっている。
⑤は綺麗なメロディーラインが印象的なエンディングテーマ。KAZCOのボーカルも作風に合っているもので、聴いていて気持ち良い。
⑥もエンディングテーマで、Rirykaの感情豊かなボーカルが映えるバラード。アニソンを多く手掛けている俊龍の別名義 植木瑞基による感傷的なメロディーも印象的だ。
『硝子のLoneliness』はもちろん必聴であるが、それ以外もかなりハイクオリティな曲が揃っている。この「Clear」という美少女ゲームが歌モノに力を入れていたのは間違いないと言える内容で、ゲームソングとして完成度が高い。
KMNVERSE|KMNZ

2019/11/22 KMNLABEL
1. OPENING
2. R U GAME?
3. melty girl
4. sTarZ
5. retouch
6. DEF/RAG
7. VR
8. GALAXY
「KMNZ」(ケモノズ)は2018年に結成されたバーチャルガールズユニット。
本作は1stアルバムである。
LIZとLITAの2人組音楽ユニットとして始動し、YouTubeにアップしたオリジナル楽曲や様々なカバー曲が話題となり人気に火がついた。
キズナアイのブレイクが始点となり、雨あられのように大量に登場した音楽系VTuberの中でも個性的な存在感を発揮しているのがこのKMNZである。
ヒップホップを主軸として、そこにアニソン/ゲーソンやボカロといったオタク文化の感覚をミックスしたエレクトロポップは、時代性を反映した刺激的なもので、ガールズミュージックのニュースタイルとして大きな注目を集めた。
本作は自分達で作詞を手掛けており、作曲/編曲にはkawaii future baseを代表するSnail’s Houseや可愛い女性ボーカル曲を作らせたら天下無双のNeko Hackerといった強力な作家陣を迎えて、KMNZの音楽の方向性を示した意欲的な内容となっている。
冒頭①はnyankobrq & yacaなどの音楽ユニットで知られるYACA IN DA HOUSEが手掛けたアルバムの始まりを告げる導入曲だ。早めのテンポで矢継ぎ早に繰り出されるLIZとLITAのツインボーカルラップが切れ味抜群で爽快である。歌声は可愛いLIZとカッコいいLITAとで個性分けがはっきりしているのが良い。
続く②はこの時期のKMNZ のテーマソングと言っても良さそうなキュート&ポップなキラーチューン。Neko Hackerが作曲/編曲しており、いかにも彼ららしい煌びやかなメロディー&サウンドが気持ち良い。KMNZの物語の始まりを告げる歌詞も飾らない魅力があり、ストレートに胸に響くもので秀逸である。
③は音楽ユニットnyankobrq & yaca のnyankobrqが楽曲を手掛けている。スローテンポの気怠い空気感が漂う曲調であるが、オシャレでキュートに聴かせるのがグッド。
④は彼女らのツインボーカルの真骨頂が発揮されたエモいラップチューン。2人のヒップホップフィーリングとYACA IN DA HOUSEの楽曲センスの良さが光っている。
⑤もYACA IN DA HOUSEのサウンドが冴えているエレクトロニカっぽいラップチューン。LITAのフロウが心地良く、何とも言えない不思議な感覚を残すミステリアスな雰囲気が良い。⑥はamauriによる大人っぽい洒落たクラブサウンドが印象的だ。KMNZによるリリックも耳に引っ掛かりを残す。
⑦は作曲/編曲を世界的にも有名なSnail’s Houseが手掛けている。VR(仮想現実)をテーマにした近未来感溢れるエレクトロポップとストリート感覚のヒップホップの融合というユニークな楽曲センスが秀逸である。VRと言えばメタバースだが、Oculus Quest (現Meta Quest )シリーズなど、スタンドアローン型のVRゴーグルの普及によって誰もがお手軽にインターネット上にある3次元の仮想空間に飛び込めるようになった。現実とは異なる美少女アバターだらけの世界(中身は男性が多い)、VRChatは新しい価値観をもたらした仮想世界として多くの人を虜にしている。また自身の身体能力が試される『Beat Saber』やビジュアルノベルの新境地『ALTDEUS: Beyond Chronos』などのゲームは新たな時代の幕開けを予感させるものであった。リリースのタイミング的にもこの曲はそのような時代の流れを捉えた重要曲と言えそうである。
ラスト⑧もSnail’s Houseが手掛けた電子サウンドとキラキラボイスの洪水に飲み込まれる圧巻のナンバー。まさに未来的な音像がここにあると言えるだろう。
KMNZのその後の快進撃を予感させるような何かが始まりそうな雰囲気にヤラれる1枚である。音楽的な完成度も申し分ないもので、VTuberの音楽作品では屈指の名盤と言ってもいいアルバムだ。KMNZはLIZが2023年もって活動終了し、2024年にはTINAとNEROが新メンバーとして加入し新体制3人組の音楽ユニットとして活動している。
紫盤2017

2017/12/28 Purple software
ディスク1
1. 友恋
2. True your heart
3. 夢の無限回廊
4. 夢の無限回廊 [Rio ver]
5. 愛奴の小径
6. 幻想楼閣
7. 幻想楼閣 [Rio ver]
8. 後ろ髪の証跡
09. 永続的恋愛理論
10. 5分前の恋心
11. 5分前の恋心 [Rio ver]
12. 二人のクロニクル
ディスク2
1. こころに響く恋ほたる
2. こころに響く恋ほたる [Rio ver]
3. コトダマ紬ぐ未来
4. 繋がるココロ
5. アオイトリ
6. 二人だけのカーテンコール
7. タビダチノトリ
8. 未来ノスタルジア [Rio ver]
Purple softwareは「ハピメア」「アマツツミ」「アオイトリ」などのヒット作品でよく知られている美少女ゲームブランド。
本作は「幸せ家庭部」(2012年)から「アオイトリ」(2017年)まで主題歌を集めた2枚組ボーカルコレクションCDである。OPテーマの浅葉リオヴァージョンなどのレア音源も収録されている充実した内容だ。
Purple softwareのゲーム主題歌と言えばやはり本作にも多数ある橋本みゆきがボーカルを務める曲であろう。曲調は様々であるが、独自のゲーム世界観を見事にポップソングとして表現している幻想的な旋律を聴かせる曲は中毒性の高いものだ。例えば『未来ノスタルジア』(本作には浅葉リオのカバーが収録)のAメロを一度聴いただけで、Purple software×橋本みゆきの曲をすべて聴かねばならないという使命感に駆られてしまうほどの破壊力があるのである。橋本みゆきはランティスの歌姫として名を馳せる優れたアニメ/ゲーム系のシンガーであるが、特にPurple softwareのPCゲーム主題歌ではその真価を発揮していると言ってもいいだろう。
本作はそんな橋本みゆきが歌う曲を筆頭として、エロゲソング史上に残る名バラードである浅葉リオの『二人だけのカーテンコール』など、ゲームの世界観によく合っている強力なナンバーが目白押しである。
ディスク1
Purple softwareのPCゲーム主題歌の顔と言える橋本みゆきが歌うナンバーが①③⑥⑩である。
①は「しあわせ家族部」のOPテーマ。王道的なエロゲ/ギャルゲソングという感じで、ゲームタイトル通りの温かい雰囲気にほっこりする。
③は「ハピメア」のOPテーマで、ゴシック風の耽美な美意識を感じる美しい曲である。特にサビの陰鬱な重いメロディーが印象的だ。
⑥は「ハピメア-Fragmentation Dream-」のOPテーマで、絶大な支持を集める人気曲である。ラテン調のサウンドと軽快なリズムが本能的な衝動を伝えるキラーチューンだ。橋本みゆきのアグレッシブな歌い回しがグッドで、ダンサブルなグルーヴ感に自然と体が揺れる。
⑩は「クロノクロック」のOPテーマ。青春のキラキラした躍動感を伝える可愛い曲だ。ダークな雰囲気の③や⑥とはまったく路線が違うが、幅広い曲調を自然に歌うことができる橋本みゆきのシンガーとしての力量は本物である。
②④⑤⑦⑨⑪⑫はもう一人のPurple softwareの歌姫である浅葉リオのボーカルを務めるナンバーである。
②は「しあわせ家族部」のEDテーマ。浅葉リオは声質に魅力があるシンガーで、この曲でも実に良い歌声を聴かせてくれる。曲調は王道J-POPバラードという感じであるが、切ない歌い回しに耳が惹きつけられる。
④は③の浅葉リオヴァージョン。橋本みゆきとは一味違う感動的な雰囲気が押し寄せる出来となっている。
⑤は「ハピメア」 のEDテーマで、一風変わった女性ボーカルのポップソングとして秀逸である。幻想的なワルツと形容するのが一番しっくりときそうだが、意表を突くドラマチックな転調など、凝っている展開は非常に聴きごたえがある。エロゲ/ギャルゲソングの音楽的な面白さが感じられる点において本作の中でも重要曲と言えそうだ。
⑦は⑥の浅葉リオヴァージョン。原曲に比べてサラッと聴ける軽やかな出来となっている。
⑨は「ハピメア -Fragmentation Dream-」のEDテーマ。ave;newを彷彿とさせる胸がキュンキュンしそうな明るい曲だ。
⑪は⑩の浅葉リオヴァージョン。橋本みゆきが歌うものと同じく元気な曲調と可愛い歌声が良い。
ディスク2
①⑤は橋本みゆきがボーカルを務めているナンバー。
①は「アマツツミ」のOPテーマ。いかにもPCゲーム主題歌という感じの曲調であるが、さりげなく和的な雰囲気があるのが良い。
⑤は「アオイトリ」のOPテーマ。力強い伸びやかなサビなど、メロディーラインの美しさが印象に残る。暗闇の中から浮かび上がる切なさと愛が胸に刺さる曲だ。
②④⑥⑧は浅葉リオのボーカル曲である。
②は①の浅葉リオヴァージョン。こちらは原曲よりも爽快感のある出来となっており、歌声がこの楽曲によく合っていると感じられる。
④は「アマツツミ」のEDテーマ。全力でポップに弾けるサビの歌メロが良い。
⑥は「アオイトリ」の挿入歌で、多くの人から熱い支持を集める人気曲。まずロマンを感じるタイトルのベタな王道感が良い。曲名通りの劇的な感動を呼ぶエモショーナルなバラードである。
⑧は橋本みゆきが歌った『未来ノスタルジア』のOPテーマの浅葉リオヴァージョン。橋本みゆきヴァージョンのゾクゾクとして引き込まれる感じはないものの曲自体の良さは十分に伝わるものとなっている。楽曲はPurple softwareの中でもトップクラスの出来である。
③⑦は山崎もえがボーカルを担当している。
③は「アマツツミ」の挿入歌。叙情的なメロディーや切々と歌い上げるボーカルが耳に残るバラードだ。
⑦は「アオイトリ」のEDテーマ。明日への希望を感じさせる曲となっており、タイトル通り旅立ちの日にぴったりだ。
Purple softwareのPCゲームのイメージを音楽として上手く表現した曲が多く収録されている。特にキャラクターデザインによく合うものが多いので、ゲーム未プレイでも絵を見ながら曲を聴くだけで、結構楽しめるものとなっている。
すきまから|フリーボ

2022/3/18 円盤
1. すきまから
2. 通り雨
3. ほんの少しの冷たさを
4. 花のかけら
5. 月ノ影
6. 猫
7. 陽だまりの中へ
8. 星の夜
「フリーボ」は1995年(前身バンドは1993年)に結成されたフォークロック・バンド。
本作は1996年にインディーズ・レーベルOZ Discからリリースされた1stアルバムをリマスタリング再発したものである。
はっぴいえんどからの流れを受け継ぐフォーキーな歌心があるバンドとして強力な存在感を示したのがこの名盤『すきまから』である。1990年代のフォークロック系ではサニーデイ・サービスと並ぶ最重要バンドと言っていいだろう。
吉田奈邦子の真っ直ぐな声で歌われる和的な叙情性をもつ曲の数々は、真っ直ぐと心に響くもので、人が生きる日々の生活にそっと寄り添ってくれるものである。本作は彼女のソングライティングが冴えわたる力作で、金延幸子などを好む人にもオススメできる1枚である。
冒頭①は和的な歌心を大切にした作風が胸に刺さる名曲。温かいアコースティックサウンドをバックに、吉田奈邦子の瑞々しい声で歌われる情景が浮かぶ曲は美しさや芯の強さを感じさせる。続く②は聴いていると風景が思い浮かぶような旋律が良い。メロディーやサウンドも良いが、日本語の詩として優れている言葉の響きも素晴らしい。
③は少しやさぐれて外をぶらぶらと歩いているような空気感が疲れた心を癒してくれる。叙情的なギターがとても良い味をだしている。
④はミドルテンポでじっくりと聴かせるナンバー。切なくも力強さを感じる歌声が良い。
⑤はハードなギターが唸りを上げるアグレッシブなナンバー。古き良きアメリカンロックを彷彿とさせるイカしたカッコ良さが光る。
⑥はアコースティックギターの弾き語りに近い凛とした歌が良い。素直に感情を吐き出す生々しさがありながらも優しく耳に残る曲である。⑦は8分を超える大曲で、じわじわと盛り上がるエモーショナルな展開を聴かせる。ドラマチックな余韻も残る力作だ。
ラスト⑧はノスタルジーに浸りながらも前向きな気持ちなれる良い曲だ。タイトル通りのイメージが浮かび上がるのが秀逸で、日本語ロックとしての説得力がある。
情緒たっぷりの歌が多く収録されているが、吉田奈邦子の歌声には柔らかさもあり耳にスッと馴染むので聴きやすい。サウンドもプリミティブな衝動を伝えるラフな質感を持ちながらも同時に洗練された感じもあり良く出来ている。
無駄がないほぼパーフェクトなアルバムと言っていいだろう。
turbulence|SYOKO

2025/4/25 SS RECORDINGS
1. BRIDE LUNAIRE
2. BLUE
3. DANCE ON THE BRINK
4. HEAVEN
5. 1/f
6. ASHANTI
7. MILLEDI
8. HOWLING WIND
元G-SCHMITTのボーカルであった「SYOKO」。本作は1992年に発表したソロアルバムをW紙ジャケット仕様で再発したCDである。G-SCHMITTと言えばAUTO-MODのジュネが主宰したインディーズレーベル【ヴェクセルバルグ】において、カリスマ性のあるゴシック・ロックを展開した1980年代伝説の女性ボーカルバンドだ。
G-SCHMITTの活動と並行してソロ作品も制作しており、1986年の『SOIL 未来の記憶』ではまさかの久石譲が全面プロデュースを手掛けていた。SYOKOの歌姫としての存在感はインディーズだけにはとどまらないものがあったと言えよう。
本作はバンド解散後にリリースされた唯一のソロ作品にして実質的にはラストアルバムである。音楽的には打ち込み主体のデジタルポップとなっているが、独自の耽美な美意識に彩られた歌声には聴く者を虜にする強力な吸引力がある。孤高の歌姫SYOKO最後の儚い歌声が記録されている貴重な1枚と言えるだろう。
冒頭①は儀式的でもある躍動するリズムとサウンドがカッコいい。美しい透明感と本能的な衝動が交差するSYOKOの巧みな歌声が凄い。
続く②はドライブ感のある近未来的な世界観のポップスで、自信に満ちた歌い回しが爽快である。
③は力強いダンサブルなナンバー。ウィスパー気味の可愛い歌唱とワイルドな歌い回しを変幻自在に操り圧巻だ。
④は淡々とした曲調であるが、幻想的な浮遊感をもつ旋律が聴いているうちにハマってくる。
⑤はただならぬ緊迫感を醸し出すアンビエント風のサウンドに意味深なポエトリーリーディングが同居するというもの。JOJO広重のノイジーなギターが絶妙に効果的で、日常から異世界に迷い込んだようなねじれた感覚が堪らないキラーチューンである。
⑥は無国籍感ある神秘的なサウンドと妖艶な歌声がひたすらに美しい。まさにゴシックという感じの世界観は聴く者を暗黒の深淵へと引きずり込む。馬場高望のパーカッションも個性的で印象に残る。
⑦はベースラインや透き通った歌声の美しさが耳を捉える。天使が舞うような現実離れした雰囲気は癒しの効果もある。
ラスト⑧はいかにもニューウェーブな幻想的サウンドをバックに悲しみや虚無を含む切々とした歌声が胸に刺さる。ZELDAの『時計仕掛けのせつな』に通じるものがあるので、そういった曲調が好きならおすすめである。
SYOKOならではゴシック的な美意識ある世界観をポップミュージックとして昇華している意欲的な内容である。本作を聴けばSYOKOという永遠の歌姫が確かに存在したことを改めて嚙み締めることができるだろう。
Archive|zanka

2023 QOOLONG
1. アスター
2. アカネ
3. フラッシュバック
4. 名前のない君へ
5. Diamond
「zanka」は2023年に結成されたアイドルユニット。本作はウェブストアの受注生産でリリースされた初CD作品である。
我儘ラキア、NightOwlに続きQOOLONGが送りだしたアイドルユニットだ。新人で作られたアイドルプロジェクトではなく、メンバーは過去にそれぞれがアイドルとして活動していた経歴を持つ。その経験を生かした安定感のあるボーカルワークを武器としたアグレッシブなのダンスロックは理屈抜きに高揚感が得られるものである。
本作は5曲と収録曲は少ないが、人気曲である『アスター』を筆頭にそれぞれの曲がzankaの音楽的な方向性を示したものとなっており、聴きごたえのある内容だ。
冒頭①は前述したzankaの代表曲となったキラーチューン。メンバー4人のボーカルパートがしっかりと個性分けできているのが良い。このあたりはやはりスキルの高いメンバーが揃っていることが分かるが、特にMiinaの声がワイルドでカッコいい。楽曲も頭からつま先までウルトラキャッチーなので、ノリノリのダンスポップとして秀逸である。
続く②は歌メロで切なげな表情を見せながらもその中から力強いボーカル&サウンドにノックアウトされるデジタルロックだ。
③はメロディックに疾走するアニソンっぽい熱さが迸る豪快なナンバー。
④は高く飛翔するかのごとく高揚感を与えてくれるサビが良い。ギターの音もオルタナ色があるラフな質感があり。
ラスト⑤は切なくも力強いシンプルなギターロックで、特にボーカルの掛け合いとサビの歌メロが熱い。これは普通に売れそうな感じである。
サウンドはいい感じのハードさで、メロディーやリズムがとにかくキャッチーなので、リピートしたくなる曲が多い。一番の魅力はやはりメンバーのボーカルに魅力があることで、楽曲の良さをよく引き出している。
まだ雨はやまない|しぐれうい

2022/5/25 Umbrella Records
1. シンカケイスケッチ (Original)
2. もうそう♡えくすぷれす
3. 放課後マーメイド (Original)
4. 寝・逃・げでリセット!
5. インドア系ならトラックメイカー
6. 粛清!!ロリ神レクイエム☆ (Original)
7. ルル
8. 夕立のりぼん
9. 花ざかりWeekend✿
10. プラチナジェット
11. rainy lady (Original)
12. Pris-Magic! (Original)
13. シンカケイスケッチ (Instrumental)
14. 放課後マーメイド (Instrumental)
15. 粛清!!ロリ神レクイエム☆ (Instrumental)
16. rainy lady (Instrumental)
17. Pris-Magic! (Instrumental)
「しぐれうい」は2019年からVTuberとして活動しているイラストレーター/漫画家。
本作は1stアルバムである。
元々はイラストレーターとしてライトノベルの挿絵やキャラクターデザインを手掛けており、過去には雑誌で漫画連載もしていた。
2019年にホロライブのVTuber大空スバルのキャラクターデザインを担当したことがきっかけとなり、自身もVTuberとしてデビュー。
ゲーム実況や雑談配信以外にも音楽活動も積極的に行っており、YouTubeで1億回以上再生されている『粛聖!! ロリ神レクイエム☆』などのオリジナル楽曲やカバー楽曲を公開している。
2020年代の日本ではアイドルや配信者など、何かしらの活動や発信をしている女性が多くいるが、すでに供給過多で飽和状態になっているとも言えるだろう。
このような状況が続く場合、人気者になるには事務所の力といったもの以外に、やはり純粋に本人の力量が必要である。なので、しぐれういのように人気絵師であるうえに音楽でもヒットを飛ばし、配信も面白い・・・といったマルチな才能を持つ者が、この先の未来には若者から絶大な支持を集めると予測できる。特に絵が描けるイラストレーターとしての要素はこれからかなり重要になってくると思われる。
この傾向はメジャーな音楽だけではなく、すでにインディーズバンドでもBlurred City LightsやTrooper Saluteなど、イラストが得意な女子が登場していることからも分かるだろう。
もしかしたら将来、声優でありながらバンドのボーカルも務め、アイドルとしても活動し、更に絵師としてもモデルとしても人気のあるとんでもない女子が登場するかもしれない。
さて本作はそんな多彩な才能の持ち主であるしぐれういを音楽面からじっくりと楽しむことができる。個性的なオリジナル楽曲から本人が気に入っている曲をカバーしたものなど、興味深い曲が多く収録されている。
①③⑥⑪⑫がオリジナル楽曲となる。
①はアニメやゲームの音楽では有名な田中秀和が作曲/編曲したキュートチューン。渋谷系好きにも刺さりそうなオシャレなサウンドにしぐれういのチャーミングなふんわりボイスがばっちりとハマっている。キラキラしたメロディーも耳に残るもので、聴けばウキウキ気分になれる。
③はアニメ関連の音楽を多く手掛けている やしきん提供曲。kawaiiという概念を音楽化するとこうなるのではないか!と言いたくなるほど可愛い作風である。歌詞の言葉選びも冴えており、すべておいてキュートなフックがあるのが印象的だ。
⑥は前述のVTuberとして初めてYouTube再生回数1億回を超えた超人気曲。楽曲は東方アレンジでお馴染みのIOSYSが手掛けている。しぐれういとIOSYS、そして僕らが紡ぐもの・・・それがロリ神。しぐれうい(9さい)から放たれる光のビームを全身に浴びて特殊性癖も浄化されて許されるのである。この曲が市民権を得た今ならあの悲しき【さくらんぼ小学校事件】(2010年)も起こらなかったかもしれない。
⑪はちょっぴりとセンチな雰囲気と優しい歌声が心地良い。ボカロPのJunkyが提供した楽曲なので、彼が鏡音リンをフィーチャーした作品などが好きなら気に入るであろう。温かいメロディーから間奏のギターまでJunky節が炸裂するまったりできる名曲である。
⑫はアニメやゲームの音楽を多く手掛けている烏屋茶房と篠崎あやとコンビが提供したアキシブ系タイプの小洒落たナンバー。ステップできる躍動感のある曲調と元気いっぱいのボーカルが爽快感抜群だ。
②④⑤⑦⑧⑨⑩は本人が選曲したカバー曲だ。
②は千石撫子(花澤香菜)が歌うTVアニメ物語シリーズの囮物語のオープニングテーマ。声質的にもしぐれういによく合う楽曲なので違和感なく聴くことができる。
④はらき☆すたの柊つかさ(福原香織)のキャラクターソング。これも相性が良い選曲だと感じる。原曲と同じくふわふわした感じがグッド。⑤はトラックメーカーのYunomiがnicamoqをフィーチャーした有名曲。原曲に比べるとふにゃーんとした柔らかい歌声がいい味を出している。⑦はTVアニメ電波女と青春男のEDテーマとして使用されたやくしまるえつこの楽曲。みんなのうたっぽい雰囲気はしぐれういにぴったりだ。
⑧はボカロPである みきとPがMAYUをフィーチャーしたナンバー。原曲通り爽快な出来となっており、アグレッシブに決める。
⑨はスマホゲーム アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズに登場するユニット4 Luxuryの楽曲。原曲と異なりしぐれうい単独の歌唱なので、新鮮な魅力がある良いカバーとなっている。
⑩は声優ユニット どーなつ◎くいんてっとの曲で、TVアニメSHIROBAKOのEDテーマ。しぐれういのキャラクター性自体が優れていることもあり、自身のカラーに染めた独自の可愛いカバーとなっている。
⑬⑭⑮⑯⑰はオリジナル楽曲のインストも収録されており、歌ってみるのも良いし、サウンドだけよく聴いてみるなど色々な楽しみ方ができるので親切である。
オリジナル楽曲の良さにもびっくりするが、カバー楽曲の選曲センスも絶妙である。よく自分のカラーに合いそうなものを選んでいる。
しぐれういの魅力がふんだんに詰まった1枚である。
目覚めるまで|VELVET PΛW

1992/10/21 Sony Records
1. 目覚めるまで
2. ハレルヤ
3. Glass Love
4. 眠れない
5. その瞳のポラロイド
6. Another World
7. Surrender
8. こんな悲しいしあわせを
9. 見つめなさい
10. 坂道
「VELVET PΛW」(ベルベット・パウ)は1981年に桐生千弘(ドラム、ボーカル)を中心に結成された女性プログレッシブ・ロック・バンド。本作は4枚目となるアルバムである。
デビューアルバムは1989年なのでバンドブーム全盛期のバンドのひとつと言っていいだろう。バリバリの変拍子が炸裂するテクニカルな演奏を武器にしたプログレ風味のガールズロックは、当時のガールズバンドの中でも異色の魅力を放っており大きな注目を集めた。
女性ボーカルものとしても須賀直美のパンチのある歌いっぷりが爽快だ。
バンドブームと並行してJ-POP女性ボーカルのガールポップ・ムーブメントもあったので、それに合わせるように作品を重ねるごとにポップな作風に音楽性は変化していった。
特にこのラストアルバム(バンドは1995年解散)ではプログレッシブなサウンドとキャッチーな歌メロがJ-POPとして理想的なバランスで成立しており聴きごたえのある内容である。
アルバムタイトル曲である冒頭①は、朝に目覚めて太陽の光を全身に浴びたような活力が全身からみなぎってくるキラーチューン。そこまで大袈裟ではない良い感じにシンフォニックなサウンド&メロディーに透明感ある歌声がばっちりとハマっている。
続く②は切れ味鋭いギターリフが印象的なハードロック色が強いナンバー。
③も卓越した演奏テクニックに裏打ちされたバンドグルーヴが唸りを上げる。絵に描いたようなカッコいいガールズロックだ。
④は一転して都会的な雰囲気のデジタルポップ。ギターの鳴らし方など緻密な構成のサウンドが良い。
⑤は煌びやかに疾走する爽快感のある曲だ。いかにも1990年代前半のJ-POPという作風であるが、やはり演奏の上手さとパワフルなボーカルが楽曲の魅力を上手く表現できていると感じる。⑥はワイルドなボーカルが光るロックンロール。リズムもノリやすくロックの女王的な雰囲気に痺れる。
⑦はシティポップっぽい爽やかなガールポップ。耳に馴染みやすく何度もリピートしたくなる。⑧は前のめりに突っ走るストレートなハードポップ。1990年代中盤ぐらいまでのJ-POP好きにはどストライクなナンバーである。
⑨は妖艶な歌声とヘヴィなサウンドが織りなす陰りのある雰囲気が良い。伸びやかなギターの音色もクールでカッコいい。
⑩はアルバムの最後を飾るに相応しい美しい旋律を奏でており、優しいメロディー&ボーカルに疲れた心が癒される。
VELVET PΛW流ポップミュージックの完成形と言える貫禄ある曲の数々は今聴いても色褪せてはいない。
ラストアルバムではあるが、その後もバンドが継続していればある程度ブレイクしたのではないかと思わせるポップセンスが冴えている1枚だ。
ClariS ~SINGLE BEST 1st~|ClariS

2015/4/15 SME Records
1. irony
2. コネクト
3. nexus
4. ナイショの話
5. Wake Up
6. ルミナス
7. reunion
8. カラフル
9. CLICK
10. STEP
11. border
12. DROP
13. 君の夢を見よう
14. Clear Sky
ClariSは2010年にメジャーデビューしたアニメ/ゲームソングを中心に活動する女性ボーカル音楽ユニット。本作は2015年までのシングル曲を収録したベスト盤である。
元々は2009年にニコニコ動画でアリス☆クララとして活動を開始。それが音楽雑誌リスアニ!の目に留まり、あっという間にメジャーデビューして有名になったシンデレラガールズである。当初は顔出しなしで活動しており、中学生ということとも連動しミステリアスな存在として注目を集めた。
2011年のTVアニメ「 魔法少女まどか☆マギカ」(以下まどマギ)のOPテーマ『コネクト』で人気が爆発し、それ以降も同シリーズのタイアップ曲を含めて多くのアニメやゲームの主題歌を発表している。
まどマギはニトロプラスの虚淵玄が脚本を手掛けた、思春期の少女達が残酷な運命に立ち向かう重いストーリー展開が印象的だが、キャラクターの少女達と同じ中学生であったClariSを主題歌に抜擢したのは商業的な音楽戦略として優秀であった。
梶浦由記がプロデュースしたKalafinaも同シリーズにタイアップしていたが、まどマギと言えばClariSというイメージが強いのはやはりアニメの少女達と同世代であったことが大きな要因と言えるだろう。まどマギと連動してClariSもまた神聖な尊い存在に昇華されたのである。そしてこれはその後の活動にも大きな影響を及ぼした。
ClariSは2014年にはアリスが卒業し、新メンバーのカレンが加入。2017年には初の武道館公演を実現した。この公演ではラストに初めて仮面を外し、客席を振り返る衝撃的なひとコマがあった。顔出ししていないとはいえ女性歌手の素顔が一瞬見えただけでこれだけ盛り上がるのは日本広しといえどもClariSだけであろう。
例えば相対性理論のやくしまるえつこが初めてメディアに顔出ししたときやDaokoの素顔が明らかになった際も注目はされたが、これほどの興奮はなかったと言える。これは可愛いとか可愛くないとかそういった下世話な話ではない。神秘のベールは剥がれることへの驚きと感動である。ClariSはこのライブ以降は顔出しでの活動を行っている。
さて本作はそんな邦楽史に名前を残したClariS初期のアニメ/ゲームの主題歌がたっぷりと収録されている充実した内容である。
渡辺翔やkz(livetune)などの優れた作家陣が2人の魅力を引き出す楽曲を提供しており、彼女らの美しいボーカルを生かしたものからダンスポップまで多彩な音楽性が楽しめるものとなっている。
①③⑦⑨⑩⑫⑬は初音ミクの『Packaged』『Tell Your World』といった名曲でよく知られているlivetune のkzが提供した楽曲。彼は自身の作風として中田ヤスタカにも通じる躍動感のあるエレクトロサウンドを得意としている。
①はTVアニメ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」のOPテーマ。現役女子中学生音楽ユニットのデビュー曲が、いきなりアニソンにタイアップされたのは当時驚きを与えた。曲調はいかにもlivetuneという感じの気持ちよく聴けるエレクトロポップだ。歌声が大人びた印象で本当に中学生なのか?とネットで様々な憶測を呼んだ。
③は原作ライトノベル「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」のテーマソング。一言で表せばカラフルでキュート。キラキラしたメロディー&サウンドはオシャレな雰囲気があり、渋谷系好きにも刺さりそうだ。
⑦はTVアニメ第2期「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」のオープニングテーマ。こちらも③同様に煌びやかなメロディーを透き通った綺麗な声で歌っており良い。それにしても曲全体の問答無用にキャッチ―な感じは凄い。おそらく多くの人が一聴して気に入り、リピートしてしまうことだろう。
⑨はTVアニメ「ニセコイ」の前期オープニングテーマ。これも頭からつま先までウルトラキャッチーで、一回聴いたらほぼ覚えられるのはまさにポップ職人の巧みの技である。
⑩は「ニセコイ」の後期オープニングテーマ。こちらは⑨とは異なり、緩急のある展開がグッド。もちろん最高にメロディックである。
⑫はリスアニ!創刊号付録音源。初期のまだ洗練されてはいない初々しい魅力が楽しめるものとなっている。
⑬はリスアニ!vol.2付録音源。ClariSのボーカルの瑞々しさが感じられるしっとりとしたナンバーだ。
②⑥⑧は渡辺翔が作詞/作曲している楽曲である。
②はTVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」のオープニングテーマ。これをアニメで初めて耳にしたときは驚いたものだ。曲調は1980年代を彷彿とさせる懐かしのアイドルポップという感じであったが、それが当時の音楽シーンにおいては逆に新鮮さを感じられるものであった。まどマギとClariS好きにとって特別な曲であるのは間違いなく、やはりこのイノセントは格別と言える名曲である。またこの曲はインディーズアイドルがよくカバーする楽曲でもある。
⑥は「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ」総集編の方の主題歌。美しいメロディーと綺麗なハーモニーが柔らかな風のように優しく耳に響く。この作風はアイドルグループCYNHNでも良質な楽曲を生み出す渡辺翔の美学が感じられて良い。
⑧は「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ」新編の方の主題歌。こちらも⑥の延長線上にある心が洗われる旋律である。この胸に迫る真っ直ぐさはClariSの真骨頂だ。
⑤⑭は丸山真由子が提供した楽曲だ。
⑤はTVアニメ「もやしもんリターンズ」のオープニングテーマ。王道路線の胸キュン青春アイドルポップだ。可愛らしい歌い回しとピコピコした感じもあるエレクトロサウンドが良い。
⑭はリスアニ! Vol.19付録音源。カレン加入後の初音源だ。こちらも清涼感のあるアイドルポップど真ん中な作風で、胸がときめくような歌詞と温かいメロディーを歌う透明感のあるボーカルが良い。
④はTVアニメ「偽物語」のエンディングテーマ。supercellのryoが提供した楽曲で、編曲には元JUDY AND MARYの TAKUYAも参加している。ガールズロックっぽいキュートなポップロックは爽快感がある。
⑪はTVアニメ「憑物語」のエンディングテーマ。サビの伸びやかなメロディーと歌詞の響きが良い。結構中毒性も高い曲だ。作詞がmeg rock、作曲/編曲を重永亮介が手掛けている。
ClariSの代表曲が多く収録されており、2024年に発売されたClariS 〜SINGLE BEST 2nd〜と合わせて聴けば美味しいところを抑えられる優秀なベスト盤である。
音楽的な良さはもちろんであるが、それだけではなく・・・【運命に選ばれた少女達】という感じの存在感がある。
ClariS は2020年代にも人気曲を多く発表していたが、2024年には長年メンバーであったカレンが卒業。2025年からは新メンバーのエリーとアンナが加入し、3人組音楽ユニットとして新たなスタートを切っている。
倍倍FIGHT!|CANDY TUNE

2025/10/1 KAWAII LAB.
1. Overture -first tune-
2. 倍倍FIGHT!
3. 絶対きゃんちゅー宣言っ!
4. 必殺あざとポーズ
5. 夏しかサマーー!♡
6. 君もゾンビですか ゾンビですね
7. Twilight Dilemma
8. 永遠Twilight
9. 推し♡好き♡しんどい
10. アイしちゃってます♡
11. エトセトLOVE YOU
12. レベチかわいい!
13. キス・ミー・パティシエ
14. LASTING TUNE
「CANDY TUNE」は2023年に結成されたアイドルグループ。本作は1stアルバムである。
アソビシステムのアイドルプロジェクトKAWAII LAB.のアイドルグループだ。
『キス・ミー・パティシエ』などで、すでにかなり人気があったが、アルバムタイトル曲でもある2025年に発表した『倍倍FIGHT!』がTikTokを中心にSNSで話題となり更に人気が爆発した。
『倍倍FIGHT!』はFRUITS ZIPPER『わたしの一番かわいいところ』、CUTIE STREET『かわいいだけじゃだめですか?』といった曲と同じく自己肯定感を上げまくるノリノリのアイドルソングとして時代を代表する曲となったと言っていいだろう。
KAWAII LAB.やHoneyWorksが得意とする可愛い自己肯定ソング路線は、TikTokに自身の動画をアップしたり、視聴している Z世代の若者に確実に刺さるもので、非常に練られた優れた音楽コンセプトである。
先駆者であるHoneyWorksが『可愛くてごめん』で展開した表現方法はコロンブスの発見に等しい目から鱗が落ちるものだ。
今後もこの自己肯定感というキーワードは音楽シーン全般に多大な影響を及ぼしていくと思われる。身も蓋もないことを言えば、聴いてポジティブな気持ちになれることはポップミュージックとして大正義なのである。
さて本作はCANDY TUNEがKAWAII LAB.のエース格として成長を遂げた存在感を感じさせる意欲作となっており、豪華作家陣が提供した楽曲はどれも出来が良く、それを全力で歌い上げるメンバーの元気いっぱいのボーカルに明るい気持ちになれる1枚である。
導入のテーマパークが開幕するようなキラキラしたインスト①に続く②は、2025年に大ブームを巻き起こした人気曲。長年の信頼感がある玉屋2060%が手掛ける中毒性の高いウルトラキャッチーな作風は、自己肯定感を上げまくる2020年代型のアイドルポップど真ん中をいく躍動感に満ちたものだ。ポップな掛け声や勢いのあるラップ、終盤の転調などが耳を惹きつけるキラーチューンである。この曲はレコード大賞の優秀作品賞に選出されている。アイドル楽曲には定評がありながらもずっとマニアックな存在でもあった玉屋2060%が、このように多くの人が知っている楽曲を生み出したことは喜ぶべきことである。
続く③ははアイドルソングを多く手掛けているNOBEが作詞、michitomoが作曲という安定感のあるキラキラしたキュートチューン。キャッチーでありながらも飽きさせない工夫が感じられてグッド。
④はいかにもアイドルっぽい曲のタイトルが良い。胸をキュンとさせる可愛らしい曲だ。
⑤はアイドルには欠かせない夏がテーマのテンション爆上げソング。こちらもmichitomoが作曲したいかにもアイドルな歌メロが良い。また分かりやすく夏という季節の高揚感が伝わる有馬えみりの歌詞にフックがある。
⑥はボーカロイド作品でも知られる作曲家さつき が てんこもりが提供した楽曲。CANDY TUNEの中でも異色の作風で、クールな雰囲気のハロウィンソングとなっている。
⑦はアニソンっぽいところもある曲で、陰りを帯びた雰囲気が良い。
⑧はこのアルバムでは珍しいロマンティックなバラード。SHOGOと早川博隆による美しいメロディーとメンバーの乙女チックな綺麗な歌声が良い。
⑨はヒャダインが提供した電波ソング風のはっちゃけソング。ギアチェンジするごとくスピードアップしていく勢いのある展開が良い。
⑩⑪⑫⑬はガールズバンド「SILENT SIREN」の吉田菫(すぅ)とクボナオキというサイサイゴールデンコンビが作詞/作曲したもの。この2人はアイドルソングを多く手掛けており、CANDY TUNE楽曲でも存在感を発揮する。
⑩はオシャレな作風のアグレッシブなアイドルポップだ。特にサビのメロディーが耳に残るもので良い。
⑪はイントロのギターリフからガールズロック一直線という感じで疾走する。
⑫は女子力の高いサイサイ節が炸裂するギャル・ポップロックが熱い。
⑬はTikTok で話題となりCANDY TUNEの名前を世間に知らしめた代表曲。可愛く爽快に疾走するメロディックな旋律が良い。
ラスト⑭はWACKっぽいアイドルロック。松隈ケンタ楽曲でアルバムの締めを飾る。
メジャーアイドルグループの強みでもある、大物作家陣を集結させた完成度の高い楽曲が、やはり注目ポイントである。
これからのCANDY TUNEが更に飛躍する予感がする傑作アルバムだ。
SAGA PLANETS 四季ボーカルコレクション

2013/12/29 SAGA PLANETS
1. Coming×Humming!/ monet
2. Cherry Jewelry Flower/月子
3. bumpy-Jumpy! /KOTOKO
4. 夏風の一秒/月子
5. go!go! Summer drive!/月子
6. Rolling Star☆彡/Larval Stage Planning
7. 狼男が恋をした/結衣菜
8. as always/ WHITE-LIPS
9. Like a star/茶太
10. HesitationSnow/ FripSide
11. Presto/ KOTOKO
12. メリーゴーランドをぶっ壊せ/結衣菜
13. 風花/月子
14. GHOST×GRADUATION/ monet
SAGA PLANETSは1990年代から大阪を拠点にPCゲームを制作している美少女ゲームブランド。本作は四季シリーズ4作品のボーカル曲を集めたコレクションアルバムである。
「Coming×Humming!!」「ナツユメナギサ」「キサラギGOLD★STAR」「はつゆきさくら」と2008年から2012年までに発売されたいずれも人気が高い作品の主題歌や挿入歌が聴けるというお得な内容である。これらの作品はそれぞれが春、夏、秋、冬の季節を舞台にした物語で情景描写が優れているのが印象的だ。
エロゲソング好きの間では未だに厚い支持を集めるKOTOKOとFripSideの有名な2大必殺ナンバーを筆頭に、結衣菜が歌う声優×ロックンロール『メリーゴーランドをぶっ壊せ』など、完成度が高いものから刺激的なものまで、バラエティに富んだ曲がふんだんに収録されている。さすがに元々はビジュアルアーツ傘下のゲームブランドということもあってか、情景が分かりやすく伝わる曲が多くあり、物語をイメージしやすい雰囲気は抜群と言える。特に予備知識なく聴いても良い曲揃いなので、ゲーム本編をプレイしていなくとも女性ボーカルものとして誰もが楽しめるものとなっている。
①②は「Coming×Humming!!」(2008年)のOP/EDテーマ。
①はケロQ作品などでよく知られる音楽ユニット ピクセルビーが手掛けたナンバー。
小気味良いサウンドと清涼感のあるメロディーを歌うmonetの素直で柔らかいボーカルがグッド。耳に優しく響き、爽やかな気分になれる。
②は月子が甘いボイスで歌うしっとりとしたバラード。王道感溢れるセンチメンタルなメロディーが印象に残る。
③④⑤は「ナツユメナギサ」(2009年)のOP/EDテーマ。
③はI’ve が手掛けるKOTOKOの必殺サマーチューン。様々な曲調を得意とする彼女であるが、青春×夏をテーマにした曲は特に持ち前のフィーリングが冴えている。爽やかな旋律の中にどこか胸に引っ掛かりを残す儚さを感じるのが良い。『Allegretto~そらときみ~』と並ぶ記憶に残るサマーアンセムと言っていいだろう。
④は月子が切々と歌う夏の瞬間の刹那を切り取ったような淡いナンバー。作詞を手掛けたKOTOKOの言葉選びのセンスが素晴らしく、切ないメロディーや歌声と相まって胸にグッとくる。
⑤は夏の日差しを浴びながら突っ走る躍動感に溢れた曲だ。月子の元気いっぱいの歌声がいい感じだ。
⑥⑦⑧⑨は「キサラギGOLD★STAR」(2010年)のOP/EDテーマと挿入歌。
⑥はI’veの女性ボーカルユニットLarval Stage Planningによる胸をキュンとさせるエレクトロポップ。耳に馴染みやすいキュートでポップな作風はさすがI’veという感じで、何度もリピートしてしまう魅力がある。
⑦はスカっぽいリズムでテコテコ進行するコミカルで可愛いナンバー。いかにも声優なロリボイスを聴かせる結衣菜のボーカルも良い。この曲は後に2020年代を代表するエロゲソングとなった『新世界のα』を生み出す竹下智博とシナリオライター新島夕のコンビが手掛けている。
⑧は音楽ユニットTynwald musicが手掛けている。青空の下でまったり寛げそうな爽やかな作風だ。WHITE-LIPSの歌声も軽やかでそよ風のように耳に響く。
⑨は元ZUNTATAの渡部恭久(Yack.)が提供した楽曲。茶太のふわふわしたボーカルを生かした透明感のあるエレクトロポップだ。彼が手掛けた「旋光の輪舞」の音楽と同様に透き通ったサウンドが心地良い。渡部恭久はかつて伝説のシューティングゲーム「メタルブラック」(1991年)の『Born to be free』というゲーム音楽史上に残る究極の名曲を生み出した才能ある作曲家である。
⑩⑪⑫⑬⑭は「はつゆきさくら」のOP/EDテーマと挿入歌。
⑩は純度100%混じりっけなしのFripSide節が炸裂するキラーチューン。エイベックス系などに親しんだ1990年代J-POP好きであれば聴いた瞬間に体に沁み込んだものが反応してしまうだろう。最初から切ないキラーフレーズで聴く者の心を掴むあたりはさすがFripSideだ。
⑪はKOTOKOがボーカルを務めるI’ve楽曲。卒業をテーマにした曲で、これから先への希望も感じさせる温かいナンバーだ。
⑫は結衣菜が歌うプリミティブなロック衝動が迸るキラーチューン。焦燥や葛藤を振り切るように走る力強いビートは熱量を感じるものでグッド。結衣菜のラフなキュートボーカルの威力も凄い。こちらも⑦と同じく竹下智博×藤島夕が楽曲を提供している。
⑬はこちらも卒業がテーマのバラード。美しいメロディーを歌う月子の切ない歌声や温かいサウンドが印象的だ。
⑭も卒業がテーマの感傷的なバラード。ピクセルビー×藤島夕による楽曲で、monetの感情を込めた歌唱など、一般的なJ-POP好きにも聴きやすい作風である。
さすがにSAGA PLANETSを代表する四季シリーズなので音楽も力を入れて制作している印象だ。女性ボーカルのコンピレーションとして文句なしに良い。
ピクセルビー、I’ve、KOTOKO、竹下智博、藤島夕、Tynwald music、渡部恭久、FripSideと楽曲提供陣を並べてみるだけでも豪華メンツである。このアルバムを切り口としてアニメ/ゲーム/同人音楽の優れたアーティストを知るきっかけにもなるであろう1枚だ。
World Hitchhiker!2|竹下智博

2017/1/27 VisualArt’s
1. 新世界のα/水谷瑠奈(NanosizeMir)
2. 夢、駆ける翼 /mei
3. 銀色、遥か(Album ver.)/ Ceui
4. Word of Dawn(Album ver.)/多田葵
5. ベラドンナ /AiRI
6. Worlds Pain (Album ver.)/Ceui
7. Tears (Album ver.)/AiRI
8. おきらく☆きゅうさい /多田葵
9. 夕暮れ小径 /北沢綾香
10. Dreamy Dreamy /Kicco
11. ヒマワリ /Kicco
12. Summer Sunshine (Album ver.)/nao
竹下智博は美少女ゲームやアニメの音楽を手掛ける作曲/編曲家である。
本作はゲームやアニメに提供した作品に加えて新規書き下ろし曲も収録した2枚目のベスト盤だ。2019年まではビジュアルアーツに所属しており、KEYの作品を始めとして美少女ゲームやアニメの音楽を多く手掛けている。
本作冒頭を飾る水谷瑠奈が歌う『新世界のα』はこのアルバムのリードトラックとなる新曲であったが、後に2020年突如登場した新鋭美少女ゲームブランドGLOVETYの「アインシュタインより愛を込めて」のOPテーマとして使用されて大きな話題を呼んだ。
竹下智博が手掛ける楽曲は一聴して耳を捉える瑞々しいメロディーが際立つものが多くあり、代表曲『星織ユメミライ』のような疾走する美しい旋律は心に潤いをもたらしてくれる。
本作は前作のベスト盤に引き続き充実した内容で、KEYのアニメ「Rewrite」やtone work’sの美少女ゲーム「銀色、遙か」に使用された曲が一気に楽しめるお得な1枚である。
冒頭①は前述の「アインシュタインより愛を込めて」のOPテーマ。ゲーム本編のシナリオを手掛けた新島夕が作詞をしている。水谷瑠奈の躍動感に満ち溢れた歌声、小気味良いロックサウンド、未来の扉を開く疾走感、ひたすらに美しいメロディーと文句なしの出来。元からあった曲だが2020年代のエロゲ/ビジュアルノベル界隈の開幕を告げた名曲である。終盤の意表を突く転調もグッド。これは音の厚さに頼ることないメロディーの力そのもので勝負している曲の良い例のひとつだ。
②は美少女ゲーム「ゆめいろアルエット!」の朝霧深羽のテーマソング。疾走するハードなロックビートにmeiのロリボイスがのる爽やかな曲だ。
③⑩⑪は「銀色、遙か」のOPテーマとそのキャラクターである蒼井雛多のイメージ&エンディングソング。
③はCeuiの澄んだ歌声とセンチメンタルなサウンドがドラマチックに響く。冬を舞台とした切ない情景が分かりやすく伝わるのが良い。作曲/編曲はどんまるとの共作となっている。
⑩はKiccoが元気いっぱいのボーカルを聴かせる古き良きガールポップ風のナンバー。
⑪もKiccoがボーカルを務める曲で、美しいメロディーを切々と歌う感動的なバラード。サウンドも劇的に盛り上がり、まさにエンディング曲にぴったりだ。
④はアニメ「Rewrite」のEDテーマ。王道的なバラード曲であるが、とにかくメロディーが耳に残る。長年の信頼感がある多田葵がボーカルを務めており、透き通った声質と歌い回しどちらも良い。この曲のシングル盤に収録された⑧は、多田葵がキュートに歌うワクワク感に満ちた楽しい作風だ。
⑥は再びCeuiがボーカルを務めるアニメ「planetarian」のイメージソング。Eufoniusを彷彿とさせるファンタジックな旋律が心地良い。
⑦⑫は美少女ゲーム「ましろサマー」の美崎澪テーマソングとEDテーマ。
⑦はAiRI(旧UR@N)の歌唱力が映える切ないロックバラード。AiRIの情緒たっぷりの歌い回しが楽曲の世界観を盛り上げてくれる。AiRIは書き下ろし曲⑤でもダンサブルなリズムの歌謡ロックでパンチの効いたボーカルを聴かせてくれる。
⑫はnaoが歌う夏にぴったりな清涼感のある気持ち良いナンバー。
竹下智博の突出したメロディーセンスがたっぷりと堪能できる内容である。歌メロに常に印象的なフックがあるのは大衆性を兼ね備えていると言える。また女性ボーカル陣も基本的に声質良し、更に歌唱力も高いので安心して聴くことができる。
イリヤ-ilya-|夢中夢

2008/9/25 ギューンカセット
1. intro -イリヤ-
2. 火焔鳥
3. 眼は神
4. 僕達の距離感
5. 反復する夢の果てで白夜は散る
6. ドクサの海の悪樓
7. 塵に過ぎない僕は塵に返る
8. いく度も繰り返されて、言葉は少しずつ意味を失い、言葉のもたらす痛みも和らぐ
9. サッフォー
10. 祈り
11. 灰の日
「夢中夢」は2002年に大阪で結成されたポストロック・バンド。
本作は2枚目となるアルバムである。
アヴァンギャルドで過激な音楽性のバンドも多かった関西ゼロ世代の中でも、激しいだけではなく、美しいメロディー&サウンドが特徴的なので、比較的聴きやすいバンドと言える。
【ブラックメタル meets 久石譲】と形容された音楽性は激烈なロックサウンドとヒーリングミュージックやクラシックなどを思わせる壮大な美しい旋律の融合という独創的なもの。
ゴシック・ロックのような暗黒音楽というに相応しい陰鬱さをもつ一方で、クラシカルでメロディアスなので、シンフォニック系のプログレやメタル、アニメ/ゲーム音楽好きにもおすすめできるバンドだ。曲のタイトルからして中二病心をくすぐられるカッコ良さ全開で第三の目が開眼しそうである。
本作ではWorld’s End Girlfriend、ハジメ(ミドリ)、ロビン(赤犬)という豪華メンツをゲストに迎えて制作された前作よりメロディアスになった曲の数々が心を突き動かす。女性ボーカルものとしても出来が良く、ハチスノイトの天使のような美しい歌声がたっぷりと楽しめる1枚となっている。
冒頭①はアルバムの始まりを告げるインストで、絶品の美しさを奏でるストリングスが壮大に響き渡る。
②はハートフルなメロディーを奏でるアグレッシブなピアノを軸とした疾走するバンドグルーヴに胸が高鳴る。ハチスノイトの歌声は神秘的であり、祈りを感じるものだ。
③はピアノ、ヴァイオリンの美しさに激烈なロックサウンドが組み合わさり、ドラマチックな盛り上がりを聴かせる。複数の音が重なっていく後半は鳥肌もので、カオティックだがこの世のものとは思えない美しさも同居する。ブラストビートまで叩き込む激烈さだが、ボーカル含め最高にメロディアスなキラーチューンである。④は変幻自在なプログレッシブな演奏が圧巻。息もつかせず次々と展開される神々しいサウンドから浮かび上がる劇的な歌パートなどのシンフォニックな旋律の良さも特筆すべきものがある。
⑤はしっとりとした幻想的な女性ボーカルパートから嵐のようなブラストビートが降り注ぐパートへの場面転換が見事で、まるで映画のような劇的な展開が光る。
⑥は神話の世界を具現化したごとく、シンフォニックな旋律と激烈なブラストビートが美しく融合しており秀逸。
⑦はゆったりとした癒しを与えるパートから後半の加速する分厚いサウンドへの展開が良い。
⑧はこの世の最果てのような孤高の美しさが光るバラード。切なく揺らぎながら後半はエモーショナルに疾走する。
⑨は儚さや切なさを感じさせる美しく叙情的なバラード。水晶のように透き通ったサウンドと悲しみを含んだ歌声が胸に刺さる。
⑩は本作の目玉トラックと言える10分を超える大曲。アカペラの祈りを捧げるような歌声から始まり、次第にストリングス洪水に飲み込まれる。後半はこの感動的な雰囲気のまま複数の音が重なり合い混沌を生み出し疾走する。強引に一言で表せばまさにプログレという感じだが、様々な音楽要素が芸術的に絡み合う名曲である。⑪は最後に耳を癒してくれるインスト曲。本作のラストを飾るに相応しいクラシカルな曲だ。
とにかく夢中夢ならではのオリジナリティが感じられる内容である。ポストロックとして語られることが多かったバンドであるが、これは様々な音楽要素を取り込んだ2000年代型のプログレと言ってもいいだろう。恐るべき完成度を誇る傑作アルバムだ。
aware|taika

2014/11/19 strange sun record
1. Alive
2. Gate of Abyss
3. 白き光芒
4. Red Ground
5. 風の標
6. Color to Remind ~ 水底の世界II ~
7. eclipse
8. Immortal Fate
9. Deep into the drowse
10. 渡り鳥
「taika」は元ASHADAの妙(ボーカル/アコーディオン)を中心として2008年に結成されたプログレバンド。
本作は3枚目となるフルアルバムである。
ZABADAK系の女性ボーカルユニットであったASHADAの流れを受け継ぎながら、更にプログレッシブな進化を遂げたファンタジックな世界観が特徴的である。
飾らない魅力がある妙の歌を主役とした繊細な感情が揺れるような詩的な曲は非常に聴き心地が良い。陰りのある箱庭的な雰囲気も女性ボーカルの幻想音楽好きであればツボにはまりそうだ。ベースではKBBのDaniが参加しており、実力派ミュージシャン達が生み出すテクニカルなバンドアンサンブルは、まさにプログレと呼べるものである。
本作ではそれまでの作品に比べてもtaika独自の叙情的な物語性を含んだ曲が、よりダイレクトに耳に響くものとなっており、予備知識がなくとも単純にメランコリーな歌モノとしても楽しめる力作となっている。
冒頭①はいかにも幻想物語の始まりを告げるという感じのピアノのイントロやアコーディオンの音色に耳が惹きつけられ、壮大に展開されるファンタジックな揺らぎをもつ旋律に引き込まれる。続く②はイントロの不穏なベースから美しいメロディーを妙が淡々と切なく歌いあげる。透き通った歌声と絶妙に調和するピアノ、ベース、ドラムが火花を散らすアグレッシブなバンドサウンドがカッコいい。
③は割と牧歌的な雰囲気の明るい歌モノで、耳に引っ掛かりを残す歌詞の言葉選びが良い。テクニカルな間奏パートが聴きごたえ満点だ。
④はピアノをバックに歌われる陰鬱な重いパートからじわじわと盛り上げていき、後半は幻想的な揺らぎと浮遊感をもつエモーショナルなサウンドが全開に。儚く刹那的な感情を伝える重い詩の響きとそれをドラマチックに演出する演奏が見事に絡み合う。
⑥はしっとりとした雰囲気の切ないバラード。妙の詩的な言葉を噛みしめる歌い回しに心が揺らされる。
⑦は暗く重いパートから切なくも躍動感のあるパートへと自然に移行する鮮やかな展開が光る。静から動へと・・・プログレ好きなら満足できる壮大な大作である。
⑧はジャズロックっぽい変則的な演奏と透明感のあるボーカルの組み合わせが不思議な魅力を放つキラーチューンである。メロウな歌モノでありながらも主張しまくる刺激的な演奏がグッドで、一風変わった女性ボーカル曲として秀逸である。
⑩はストレートな作風のファンタジック・プログレで、アップテンポな曲で今作の締めを飾る。
ファンタジーな世界観を詩的な歌で表現しているところが素晴らしい。そしてそれを盛り上げる隙のないハイレベルな演奏はプログレならではと言えるものだ。女性ボーカルものでサウンドのクオリティも求める人には是非とも聴いてほしいアルバムだ。
A Girl on the Ship|U-full

2016/1/31 SENS ROOM
1. 記憶の森
2. Logleb~西の果て~
3. 夜明けの詩
4. ネメアの森から見た北斗七星
5. 運命の輪
6. a girl on the ship~船の上の少女~
7. 月夜のウエディング
「U-full」は2013年に始動したボーカル/アコーディオンの yukaを中心とした音楽ユニット。本作は4枚目となるアルバムである。
本作まではyukaのソロプロジェクトであったが、2018年からは本作にも参加しているフナハシダイチ(ギター)との2人組音楽ユニットとして活動している。
世界中の民族音楽に影響を受けているそうで、それらに加えてフォーク/トラッドやプログレの要素も含んだ大陸系の幻想音楽である。
本作を今は亡きZABADAKの吉良智彦が絶賛しており、彼との「キラウルフ」という音楽ユニットでのライブも実現している。
yuka の透明感のあるボーカルやワールドミュージックを基調としたサウンドはZABADAK系統のど真ん中であるが、U-fullは世界中の情景が浮かぶ凝っている音作りや独自の物語性が印象的である。
歌モノだけでなくプログレ好きに受けそうなインスト曲もあり、2000年以降の女性ボーカル幻想音楽系の中でも特にアーティスティックな個性が光る存在と言えるだろう。本作はそんなU-fullの世界観が花開いた力作であり聴きごたえ抜群である。
冒頭①からアカペラの美しい歌唱から始まる不思議な浮遊感をもつ旋律に引き込まれる。民族音楽や癒しの要素を含んだ女性ボーカルものが好きならどストライクであろう。
続く②は本作のリードトラックとなる重要曲。大陸系の歌とファンタジックなサウンド・・・まさに期待通りの女性ボーカル系幻想音楽のキラーチューンだ。壮大なメロディーを一言一言嚙みしめるように歌うyukaのボーカルが心に響く。
③はアコースティック・サウンドの温かみとここではないどこかへと誘われる幻想的な歌声がひたすらに美しい。そのままアニメやゲームといった映像作品にも使用できそうなほどの神秘的な雰囲気が良い。
④はもの寂しげなピアノ伴奏をバックに感情を込めて歌いあげるボーカルが非常にエモーショナルだ。
⑤は静から動へと劇的に表現されるプログレッシブなセンスが光る力作。ジャパニーズ・プログレの至宝ASTURIAS(大山曜)を彷彿とさせるサウンド展開は儚くも美しいもので必聴である。
アルバムタイトル曲⑥も演奏パートを主役としたプログレ寄りの作風で、こちらもASTURIASが好きなら気に入るであろう。ファンタジー色が強い異国情緒溢れる世界観にどっぷりと浸ることができる。
ラスト⑦は躍動感のあるアコーディオンと恋人同士の甘い時間といった感じの歌がロマンティックである。情景が浮かぶ旋律が秀逸だ。
ファンタジー音楽としてボーカル、サウンド共にかなりハイレベルな内容である。歌モノでは壮大で綺麗な歌声を響かせ、演奏パートに主軸を置いたナンバーでは本格派のプログレと言ってもいいアグレッシブなサウンド展開が熱い。曲ごとの個性分けも上手くできているので、各曲をじっくりと楽しみたい1枚だ。
IOSYS ALL TIME TOHO BEST COLLECTION|IOSYS

2023/04/30 IOSYS
ディスク1
1. Phantasmagoria mystical expectation
2. 惑いて来たれ、遊惰な神隠し ~ Border of Death
3. 魔理沙は大変なものを盗んでいきました
4. 患部で止まってすぐ溶ける ~ 狂気の優曇華院
5. 変身解除!キモけーね
6. ひれ伏せ愚民どもっ!
7. ねこ巫女れいむ
8. お嫁にしなさいっ!
9. 株式会社ボーダー商事・社歌
10. アーティフィシャル・チルドレン
11. きゅうり味のビールを飲めばいいよ!
12. 行列のできるえーりん診療所
13. 博麗神社町内会音頭
14. B・E・E・R
15. タイヨウノハナ
16. Miracle∞Hinacle
17. チルノのパーフェクトさんすう教室
ディスク2
1. 有頂天マゾヒスティック
2. あたしまりさ
3. 大江山ジャイアントスイング
4. 究極焼肉レストラン!お燐の地獄亭!
5. Club Ibuki in Break All
6. お空のニュークリアフュージョン道場
7. ジンゴー!ジンゴー!
8. star river
9. midnight lightning bolt
10. はたてのバッコイ殺人事件
11. 信撃リザレクション
12. why I wanna know
13. be in love with you
14. 恋の氷結おてんば湯けむりチルノ温泉
15. Dirty Fullmoon
16. たったひとつの残酷な希望
17. 超人ひじりのエアマッソー
ディスク3
1. きのこが好きで好きでたまらない魔理沙が歌う歌
2. ハクレイデイリー
3. スカーレット警察のゲットーパトロール24時
4. むしみこうにゃーのハッピッピー
5. 明日なき暴走!クラウンピースを追い詰めろ
6. キャプテン・ムラサのケツアンカー
7. 断罪ヤマザナドゥ!
8. メイドやめますか?人間やめますか?
9. あげぽよTONIGHT
10. げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんマスタースパーク
11. マスパでシュッ☆メイドウィッチまりさちゃん
12. 死 #とは
13.チルノのパーフェクトさんすう教室 ⑨周年バージョン
14. 元祖!天才チルノちゃん☆
15. 向日葵サンセット
16. わんつー参拝!!
17. 【東方ニコカラ】秘神マターラ feat.魂音泉【IOSYS】
「IOSYS」は1998年に活動を開始した北海道札幌市の音楽制作チーム。本作は東方アレンジ曲を選りすぐって収録した25周年記念のベスト盤である。
元々は同人サークルで、東方アレンジ参入前にもゲーム音楽のアレンジやオリジナル曲などを発表しており、マニアックな人気を得ていた。
2000年代半ばに発表した『魔理沙は大変なものを盗んでいきました』が、ネットを中心に大きな話題となり、東方アレンジの代表的な存在として同人音楽シーンを席巻した。
ユニークかつ鋭いセンスを感じさせる作品や様々な音楽のパロディ曲などもあり、エンターテインメントとして優れた音楽を多数生み出している。
また東方アレンジと並行してオリジナル曲もたくさん制作しており、特に2022年にイラストレーター/Vtuberの「しぐれうい」に提供した『粛聖!! ロリ神レクイエム☆』のMVはYouTube視聴回数1億回を突破している。これは再生回数だけで見れば2020年代の日本を代表する曲のひとつである。この曲では紳士向け罵倒パートが登場するなど、オタク文化全般に造詣が深いこともIOSYSの強みである。
さて本作はそんなIOSYSの東方アレンジの歴史を振り返ることができる贅沢な内容だ。
一度聴けば24時間聴き続けた末に倒れてしまう危険性をもつ『チルノのパーフェクトさんすう教室』などの中毒性の高い東方アレンジ曲をたっぷりと楽しむことができる。
本作の内容はすべてZUN(上海アリス幻樂団)が手掛けた東方Projectの弾幕シューティングゲームのBGMをボーカル入りアレンジしたものである。原曲が流れるゲームを詳しく知りたい方は東方アレンジのデータベースサイトなどを参照して欲しい。
ディスク1
①は『風神少女』のアレンジで、ボーカルは悠杏李。原曲の哀愁漂うメロディーの良さを生かすゴシックテイストの耽美な歌声と疾走感溢れるバンドテイストのサウンドが良い。
②は東方人気曲『ネクロファンタジア』のアレンジで、3Lがボーカルを務めている。情緒たっぷりにシンフォニックなメロディーを歌い上げる。途中で挿入される男性ボーカルによる謎の本格派英詩ラップが面白い。
③は前述のIOSYSがブレイクした曲で、原曲は『Romantic Children人形裁判~人の形弄びし少女』と『ブクレシュティの人形師』。サビでは『春色小径~ Colorful Path』のメロディーも登場する。テクノサウンドのアレンジに藤咲かりん(miko)の可愛らしいボーカルをミックスしたもので、電波ソングのクラシックとしても有名だ。意表を突く終盤の神経爆撃ノイズは挑戦的でグッド。
④は『狂気の瞳~ Invisible Full Moon』のアレンジで、ボイスはmiko、quim、しゃちょう。歌モノではなく、様々なボイスを電子サウンドとミックスしたものである。
⑥は『竹取飛翔 ~ LunaticPrincess』のアレンジで、mikoがボーカルを担当している。上から見下してくるドS電波ソングとしてよく知られている。個性的なmikoの歌声やお姫様な歌詞が印象に残る。
⑦は『少女綺想曲~Dream Battle』をアレンジしたものでボーカルはmiko。歌声がボーカロイドっぽい質感である。
⑧は『オリエンタルダークフライト』『赤より紅い夢』『恋色マスタースパーク』『ブクレシュティの人形師』を組み合わせてアレンジしたもので、ボーカルはmiko、ゆか、まり。子供っぽい可愛らしいボーカルの掛け合いが楽しい。初めてでもどこかで聴いたことがあるような懐かしい気持ちになる。
⑨はmiko、あゆ、咲希が歌う『ネクロファンタジア』のアレンジで、クスッと笑えるユーモラスな世界観がグッド。
⑩は『Romantic Children』『不思議の国のアリス』のアレンジで、mikoが歌うブリブリなエレクトロポップとなっている。
⑪は『神々が恋した幻想郷』『芥川龍之介の河童~ Candid Friend』のアレンジで、神波千尋がボーカルを務めている。これも歌モノというよりも女子ボイスを素材として使用したエレクトロポップである。
⑫は『千年幻想郷~History of the Moon』『竹取飛翔~Lunatic Princess』を元にした曲でボーカルは3L。和風のメロディーを生かしたピコピコしたテクノポップだ。
⑬は『二色蓮花蝶 ~ Ancients』のアレンジで、ゲーム音楽っぽいサウンドのお祭りソングをmikoが歌う。
⑯は『厄神様の通り道 ~ Dark Road』を元にした曲で3Lがボーカルを務める。渋谷系やアイドルポップのようなオシャレでキュートなアレンジが良い。歌い回しも絶妙で胸キュンものだ。
⑰は東方好きのみならず一般層にも広く浸透している電波ソングのクラシック。チルノのテーマ曲『おてんば恋娘』のアレンジで、ボーカルはmiko。凄まじく中毒性のある高速リズムのボーカルとサウンドにやられるキラーチューンだ。世界観を含めて非常によく作り込んであり圧巻の完成度を誇る。
ディスク2
①は『有頂天変~ Wonderful Heaven』のアレンジで、miko とquimボーカルを務める。東方二次創作とベタなダンスポップの融合で、フロア向けぶち上げソングだ。
②は魔理沙のテーマ『恋色マスタースパーク』を元に大人っぽいクールな魔理沙を表現している。ボーカルはイザベル。これはギャグとしても面白い。
④は『死体旅行~Be good of cheer!』『廃獄ララバイ』が原曲で、ボーカルは藤枝あかね。歌い出しからしてフィンガー5の『恋のダイヤル6700』で、パロディソングと言って良さそうだ。
⑤は藤原鞠菜が歌う『Demystify Feast』『御伽の国の鬼が島 ~ Missing Power』のアレンジ。高速ボーカルが凄い迫力で、サクセス!という決め台詞がグッド。
⑥は『業火マントル』『霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion』のアレンジ。藤枝あかねの矢継ぎ早のぶっ飛んだ歌唱が印象的だが、実家のような安心感があるゆっくりボイスも登場して楽しい。
⑩は原曲『妖怪の山~ Mysterious Mountain』で、ボーカルはmiko。異様にハイテンションな曲調の中で2ch用語【自演乙】という決め台詞を決める。
⑪は『御柱の墓場~ Grave of Being』『神さびた古戦場~ Suwa Foughten Field』のアレンジでボーカルは3Lが務めている。曲調からして完全に某アニメの主題歌(fripSide)のパロディ曲だ。ここで浮き彫りになるのはこの旋律を一瞬聴いただけで、それが分かるほどfripSideは自身のカラーがあるということ。
⑭は人気のあるチルノの曲で『おてんば恋娘』『春の氷精』が原曲。激速テンポのエレクトロサウンドと超リズミカルなmikoのボーカルが中毒性を生み出す。
⑰は『感情の摩天楼~ Cosmic Mind』のアレンジで、ビートまりおが熱く歌い上げる。意味がよく分からなくともとにかく迫力が凄い。
ディスク3
①は『恋色マスタースパーク』のアレンジで、スカパンク要素もある曲をちよこがキュートに歌い上げる。
②は『少女綺想曲~ Dream Battle』をメロコアなアレンジにしている。疾走感あるパンクサウンドをバックに山本椛とARMが勢いのあるボーカルを聴かせる。
③は『おてんば恋娘』『亡き王女の為のセプテット』をダンサブルにアレンジしている。miko 、ココ 、96、岩杉夏によるリズミカルなラップはファンキーでユニークなもので楽しい。MVの再生回数も多い人気曲だ。
④は『幻視の夜~ Ghostly Eyes』『蠢々秋月~ Mooned Insect』『少女綺想曲~ Dream Battle』『春色小径~ Colorful Path』をアレンジしたチャーミングなアイドル系電波ソング。mikoと山本椛が力強いリズムに合わせてロリボイスで元気に歌う。
⑥は『キャプテン・ムラサ』をアレンジしたもので、山本椛がコミカルに歌い上げる。アニソン好きなら気に入るだろう。
⑦は岩杉夏が歌う『六十年目の東方裁判~ Fate of Sixty Years』のアレンジ。コミカルな曲調とワイルドなボーカルな組み合わせが良い。
⑧は『月時計~ ルナ・ダイアル』『フラワリングナイト』のアレンジで、山本椛がボーカルを務めるホラーな雰囲気の電子ハードポップ。Nukillizoが手掛けたMVの出来も良い。
⑨は『狂気の瞳~ Invisible Full Moon』のアレンジで、mikoが歌うノリノリのユーロビート歌謡となっている。
⑪は『恋色マスタースパーク』『メイガスナイト』のアレンジで、桃井はるこがボーカルを担当している。レジェンドが歌うということもあってか往年の電波ソング・クラシックを思わせる直球の作風でテンションが上がる。
⑬は『チルノのパーフェクトさんすう教室』の9周年記念バージョン。IOSYSと愉快な9周年フレンズ(IOSYS+幽閉サテライト+A-One+豚乙女+COOL&CREATE+TaNaBaTa+Alternative ending)という東方同人サークルオールスターズンによるエンタメとして秀逸な底抜けに明るい出来となっている。
⑰は抹&ytr&らっぷびと (魂音泉)が歌う『秘神マターラ~ Hidden Star in All Seasons.』のアレンジ。高速リズムにのるメッセージ性が強い切れ味鋭いラップが痛快だ。
東方アレンジというマニアックな音楽ジャンルを一般層にも広げたIOSYSのユニークな音楽センスをたっぷりと堪能できる刺激的な内容だ。
娯楽作品として優れているので、イベントで使ったり、友達と一緒に楽しむも良し、一家にひとつ置いておき、家族みんなで聴いてハッピーな気分になるなど、様々な用途が考えられるベストアルバムである。