PLASTIC|Aira Mitsuki
2009/07/22 D-topia Entertainment
1.ロボット・ハニー
2.Summeeeeeeeer set (feat.AYUSE KOZUE)
3.ニーハイガール
4.BAD trip (feat.Terukado)
5.CHANGE MY WILL
6.HiGH SD スニーカー
7.distant STARS
8.プラスティックドール
9.サプリ
10.夏飴 (feat.□□□)
11.Time is (feat.Shigeo(SBK/TheSAMOS))
12.サヨナラ TECHNOPOLiS
13.BARBiE BARBiE
14.Re:†
2007年にデビューしたテクノポップアイドル「Aira Mitsuki」の2枚目となるフルアルバム。
当時はPerfumeのブレイク以降に登場したフォロワーの1人と見られていたが、エレクトロポップとしては非常にハイレベルな楽曲や彼女のキッチュな可愛さは、Perfumeとは似て非なるもので、個性的な魅力がある。
その独自の魅力が炸裂するキュートな電子ポップ①は、Aira Mitsukiの中でも屈指の名曲のひとつ。良い意味でB級感があり、楽曲コンセプトも面白い。②はAYUSE KOZUEとのコラボで可愛らしくダンサブルに決めるサマーチューン。爽快感抜群のテクノサウンドが優秀な③は、煌びやかなシンセで疾走するキラーチューン。サウンド主体の音作りはアイドルとしてはかなり挑戦的なもの。④は大人びたハードなダンスポップで、少しダークな雰囲気とずっしりとした低音が堪らない。
ブリブリなエレクトロポップ⑥は、当時の王道的な路線でありながらも、サウンド構成はかなり凝っており聴きごたえがある。⑧は近未来感溢れるキュートなテクノポップを絵に描いたようなポップチューンで胸キュン必至。⑨は可愛らしい声を全面に出したセンチメンタルなポップで心地良い。⑫はストレートなタイトルからして期待が高まるが、テクノポップラブ全開な雰囲気に好感が持てる。
Perfumeに似ていると言われてしまいブレイクすることはできなかったが、Perfumeのクールな質感とは違い、楽曲自体はキッチュなキュートさを前面に出したテクノポップで、Aira Mitsukiにしか出せない確かな魅力がここにはある。
white hot|simsiis
2022/3/25 PAPER MADE SHELL RECORDS
1. yodachi
2. cycling
3. chouchou
4. pageant
2019年に仙台で結成されたロックバンド「simsiis」の2枚目となるEP作品。
ミッドウェスト・エモやポストロックに影響受けたというエモーショナルなギターサウンドと文学的な世界観を繊細に歌い上げるボーカルkokoronoの美しい歌声が印象的である。
飾らない雰囲気は好感が持てるもので、その真っ直ぐさは聴き手の日常にも寄り添ってくれるものである。
①はノイジーな轟音ギターサウンドと和的な叙情性を持つ歌の切なさが胸を締め付ける。透明感あるボーカルは淡々と歌いながらも憂いを含んだ感情をしっかりと伝えてくれる。
②はより感傷的な歌を全面に出した作風で、儚い世界観にどっぷりと浸ることができる。終盤の激情パートも意外性があり良い。
③は躍動感あるメロディックな旋律が心地良い。繊細な響きのサウンドやセンチメンタルなメロディーを歌うボーカルは清涼感に満ちている。
④は揺らぐ轟音ギターとしっとりしたメロディーが大きなうねりを生み出していて秀逸。このバンドの魅力が詰まったキラーチューンである。
4曲すべてがしっかりと個性分けされており、ひとつひとつがまるで小説を読むように楽しめる。特にメロディーセンスは素晴らしいものがあり、いつまでも聴いていたくなるそんな1枚だ。
結束バンド|結束バンド
2022/12/28 アニプレックス
1. 青春コンプレックス
2. ひとりぼっち東京
3. Distortion!!
4. ひみつ基地
5. ギターと孤独と蒼い惑星
6. ラブソングが歌えない
7. あのバンド
8. カラカラ
9. 小さな海
10. なにが悪い
11. 忘れてやらない
12. 星座になれたら
13. フラッシュバッカー
14. 転がる岩、君に朝が降る
TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場するロックバンド「結束バンド」の1stアルバム。
過去にも「放課後ティータイム」(けいおん)や「Girls Dead Monster」(Angel Beats!)といったアニメ内に登場するガールズバンドは爆発的な人気があったが、この結束バンドも社会現象に近いレベルのブームを巻き起こしており、各方面で話題となった。
音楽的には本作でもカバーしている「ASIAN KUNG-FU GENERATION」等の流れを汲むメジャー感ある邦ロックで、声優ボーカルの強みであるカラフルな歌声を武器にした洗練されたガールズロックを楽しむことができる。また楽曲提供を行ったガールズバンドや女性シンガーソングライターなどの豪華作家陣にも注目の1枚である。
冒頭①はアニメ本編のOPテーマ曲で、メロディックなビートやカッコいい女子ロックの雰囲気を見事に作り出す喜多郁代(長谷川育美)の歌声が良い。演奏自体はメジャーロックの王道という感じだが、楽曲の良さを上手く引き出しているボーカルの声質と歌唱テクニックが結束バンドの肝である。作曲は音羽-otoha-で、他にも⑤⑨⑬を手掛けている。
②はアニメのイメージにぴったりなエモいメッセージほとばしる傑作。切ない感情を表情豊かに歌い上げるボーカルや叙情的なメロディー&サウンドが胸を突き刺す。
③は谷口鮪(KANA-BOON)の提供曲。KANA-BOONらしいフレッシュなキュートポップで気分爽快。
⑤は実にロックな熱唱や尖った歌詞が印象的で、やり場のない衝動をぶちまける熱量を全身で感じられるキラーチューン。前のめりの疾走感やラフなサウンドも気持ち良い。⑦も勢いのある演奏とメロディックな疾走感が熱い。
⑧は中嶋イッキュウ(tricot)の提供曲で、山田リョウ(水野朔)がボーカルを担当している。クールな歌声にぴったりなちょっぴりセンチなメロディーに胸がキュンとなる。
⑩は伊地知虹夏(鈴代紗弓)のボーカル曲で、北澤ゆうほ(the peggies)が作詞・作曲している。元気な歌声にベストマッチする清涼感あるポップチューンで清々しい気持ちになれる。
⑫は胸の奥にあるノスタルジック気持ちを刺激する青春ロック。聴き手それぞれが自分にとっての大切なものを思い起こすことができそうな優れた1曲。⑬はエモーショナルなギターロックを絵に描いたような切なさ爆発の旋律が波のように押し寄せる。感情の揺らぎを上手く表現しており秀逸。
才能あるミュージシャン達が提供した楽曲とメリハリのあるサウンドは、ダイレクトに快感が得られるもので良く出来ている。またメインボーカルを務める喜多郁代(長谷川育美)の声質や歌い方がこのバンドの作風に合っていると感じる。
ONOMIMONO|パスピエ
2012/6/27 ワーナーミュージック・ジャパン
1. トロイメライ
2. デモクラシークレット
3. プラスティックガール
4. 脳内戦争
5. 気象予報士の憂鬱
6. トリップ
7. 最終電車
8. ただいま
2009年に結成されたロックバンド「パスピエ」の2枚目となるアルバム。
クラシックの印象派音楽とニューウエーブ系サウンドを融合させるというユニークな音楽性を標榜しており、バンド名もドビュッシーの曲からつけている。キーボートの成田ハネダが作る玄人好みのサウンドは音楽好きのハートをがっちりと捉えるもの。基本的にはボーカルを務める大胡田なつきの可愛らしい歌声を全面にフューチャーしたキャッチ―なポップロックなので、小難しいこと抜きに誰もが楽しめる内容である。
冒頭①は疾走感溢れるキュートポップチューン。ノスタルジーを呼び起こすキーボートの音色やメロディーが素晴らしい出来で、大胡田なつきのパワフルな歌唱も良い。続く②も前のめりに突っ走るポップロックで、プログレっぽい重厚なサウンドと表情豊かに歌うボーカルなど、その切れ味の鋭さに痺れる。
③はしっとりしたミドルテンポのナンバーで、感傷的なメロディーや存在感ありまくりのギターの音色が印象的。
④は頭のネジが飛んだようなはっちゃけた曲で、いかにもサブカル系の一風変わった女性ボーカルポップスは、好きな人にはどストライクな感じである。⑥はタイトル通りドリーミーなトリップ感が気持ち良いファンタジックな曲。
⑦はよりストレートな作風により逆に持ち前のポップセンスが光り輝く名曲。印象的なイントロからセンチメンタルなメロディー、情景が浮かぶ歌詞とすべてが心に残る。本作には未収録だが、ラッパーの泉まくらをフューチャーしたヴァージョンもあり、そちらも名アレンジで必聴である。
初期の作品ゆえに後のアルバムに比べると荒削りな部分もあるが、ポップミュージックとしてすでに貫禄ある完成度である。①や⑦などの一音で耳を惹きつけるセンスはさすがの一言で、メロディーやボーカルも含めて良いポップネスが感じられる1枚だ。
少女隊 Complete Singles Forever 1984-1999|少女隊
2016/8/24 ユニバーサル ミュージック
ディスク1
1. Forever -ギンガム・チェックStory-
2. ピンクのタオル
3. お元気ですか?マイフレンド
4. MAGOKORO ダイナマイト
5. 素直になってダーリン -Darlin’ with my love-
6. ホールドアップ!
7. 渚のダンスパーティー
8. 恋人気分のホリデイ
9. Bye-Bye ガール
10. 流星クラクション
11. ハレーロマンス
12. Smile Again -微笑の中へ-
13. もっとチャールストン
14. Misty Morning Stranger
15. バランスシート
16. RUBBER SOLE
ディスク2
1. 君の瞳に恋してる
2. ENDLESS DREAMIN’
3. ナポレオンのくしゃみ
4. 月のうさぎが泣いた
5. SAKASAMA
6. KISS THE PARADICE
7. チェリームーンで踊らせて
8. 星のオルゴール
9.Korea (Japanese Version)
10. Korea (English Extended Version)
11. ANNIVERSARY
12. BE A POP!!
13. Forever
14. Future
15. Forever (Disco Version)
16. ELECTRIC CITY (Disco Version)
17. KU・RO・O・BI MAGIC (Disco Version)
ディスク3
1. FOREVER 2001
2. Flamingo Island
3. Space Magic
4. FROM SANTA CLAUS VILLAGE
5. CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU
6. Korea (12inch Single Version)
7. Korea (Remix Maxi Version)
8. Korea (Vocal+Rhythm)
9. Darlin’ with my love
10. Forever (カラオケ)
11. お元気ですか?マイフレンド (カラオケ)
12. 素直になってダーリン (カラオケ)
13. 渚のダンスパーティー (カラオケ)
14. Bye-Bye ガール (カラオケ)
15. ハレーロマンス (カラオケ)
1984年にデビューした3人組のアイドルグループ「少女隊」の3枚組ベストコレクションアルバム。複数のレコード会社をまたぐ活動期間すべてのシングルや初CD化音源を収録した決定版と言えるベスト盤である。
少女隊はソロアイドルの黄金時代であった1980年代に本格的なアイドルグループを作るプロジェクトとして始動し、プロモーションに多額の資金をかけたことでも有名であった。総合プロデュースにピンクレディーを手掛けた都倉俊一を迎えて、ワールドワイドなアイドルを目指した初期から、秋元康と組んだ王道アイドルポップ路線の中期、ユーロビート系のダンスポップの後期まで、音楽性はバラエティに富んでおり、今聴いてもその輝きは色褪せてはいない。メンバーレイコ(安原麗子)のウィスパーボイスも楽曲の良さを引き出す大きな魅力となっている。
ディスク1は代表曲がたっぷりと収録されており、完成度の高いアイドルポップが楽しめる。
①は都倉俊一が作曲した少女隊のデビュー曲にしてアイドル史上に残る名曲。夢に向かって一歩踏み出す決意に満ちた力強い曲で、少女隊の始動と見事に物語がリンクしている。アメリカ西海岸のLAで制作されており、飛び上がるような躍動感溢れるサビを最大限に生かす全体の曲構成が素晴らしい。本作にはこの曲の他のヴァージョンもすべて収録されているので違いを楽しむことができるだろう。
②はしっとりした切ないバラードで、センチメンタルな可愛らしさが印象に残る。
④と⑦は女隊の元気な魅力が全開のサマーチューン。オールディーズ歌謡という感じの曲調は少女隊のイメージにもぴったりだ。⑨は爽快なモータウンビートのキュートなナンバー。メロディー、歌詞ともにフックがあり記憶に残る。⑪は1986年に76年ぶりに地球に接近したハレー彗星がテーマの曲で、瞬間の煌めきを切り取るアイドルにぴったりな曲となっている。
⑬はタイトル通りチャールストンダンスを踊るために作られたダンスポップ。ジャジーな雰囲気も良い。⑮は待望の初CD化となったテクノ歌謡の必殺曲。懐かしさを感じる曲調は当時の空気を感じられるもの。
ディスク2では見逃しがちな後期少女隊の完成度の高い曲が楽しめる。
①はFrankie Valliが1967年に発表し、1980年代にはBoys Town Gangがカバーしてリバイバルヒットした有名曲のカバー。アイドルポップ解釈の可愛らしい出来となっており、日本語詩も新鮮で良い。後に有名DJがクラブでよくかけたことでも知られている。
③は秋元康&後藤次利による爽やかなドライブ感とキュートボイスという正統派アイドルポップ。胸キュン必至のキラキラ感が堪らない1曲となっている。⑤は中原めいこが作曲しており、彼女らしい都会的なメロディーが印象的である。⑨⑩はソウルオリンピックのテーマ曲で有名なLeslie Mandoki & Eva Sunの曲をカバーしたもの。韓国の放送で戦後初めて日本語の曲が歌われたのが本曲であった。⑪は大人びな雰囲気が少女隊の成長を感じさせるクールなポップス。
ディスク3は12インチシングルやカラオケなどのレアトラックが収録されている。
佐藤準が手掛けた②のアイドルとは思えない本格的なダンストラックや外国人のコーラスが印象的なエレクトロポップは今聴いても刺激的である。⑤は『君の瞳に恋してる』のディスク2の①とは別アレンジ&英詩のカバーで、こちらも良い出来である。
1980年代最高のアイドルグループと言ってもいい少女隊の良いとこ取りの内容で文句なし。完成度高い楽曲、巧みなボーカルワークなどハイクオリティなアイドルポップがふんだんに楽しめるベスト盤としては究極1枚である。
nostalgia|Kolokol
2018/5/13 we-B studios
1. Theater
2. Mr.A
3. fairy tale
4. スコール
5. ToYBoX
6. Cheap Lens
7. Blight Setting Sun
8. Give it up
2018年に結成されたアイドルグループ「Kolokol」の1stアルバム。
『囚われることのない様々な世界観を叙情的かつ繊細に歌い上げること』をコンセプトにしており、ロックやEDMから王道アイドルポップまでバラエティに富んだ音楽性である。
関西のアイドルグループだが、いわゆる直情的なロック路線ではなく、ナイーブで美しい世界観が強く印象に残る。また楽曲はアニソンへの親和性の高さを随所に感じさせる。
冒頭①からシンフォニックなサウンドでメロウに疾走する。緩急ある展開やヴァイオリンの音色などが良い。②は爽快感あるギターが唸りを上げるアイドルロック。力強いメロディーラインは琴線に触れるもので、メンバーの歌声も清潔感がありアイドルボーカルの良さを上手く生かしている。③は絵に描いたようなエモーショナルなアイドルポップ。ここでもメロディーと歌声の良さが光る。④はドラマチックな展開に心が震えるKolokolの代表曲のひとつである力作。特にサビの前に鳴り響くEDMサウンドの音色が凄まじくカッコ良くて秀逸。
⑥はキラキラしたポップスで、センチメンタルなメロディーと綺麗なハーモニーにグッとくる名曲。文学的な歌詞や躍動感あるサウンドも素晴らしく、瞬間の煌めきを捉えた旋律は心に活力を与えてくれる。⑦はアニソンっぽいエネルギッシュでキャッチ―なロックナンバーで、気持ち良い高揚感が得られる。
コンセプト通り、物凄い熱量で勝負するタイプではないが、メロディーやボーカルの良さを大切にした丁寧な作風がとても良い。④や⑥など、しっかりと曲別に個性分けができており、良質なポップスが楽しめる傑作アルバムである。
SALE OF BROKEN DREAMS|Homecomings
2016/5/11 felicity
1. THEME FROM SALE OF BROKEN DREAMS
2. ALPHABET FLOATING IN THE BED
3. HURTS
4. DON’T WORRY BOYS
5. BLINDFOLD RIDE
6. MAYBE SOME OTHER TIME
7. ANOTHER NEW YEAR
8. MORE SONGS OF PAIN
9. PERFECT SOUNDS FOREVER
10. BUTTERSAND
11. CENTRAL PARK AUDIO TOUR
12. LIGHTS
13. BASEBALL SUNSET
本作は2012年に結成されたロックバンド「Homecomings」の2枚目となるフルアルバムである。
ギターポップなどのインディーポップのエッセンスがこれでもかと詰め込まれた楽曲は、心の奥にあるセンチメンタルな感情を刺激するもの。全曲英詩で歌われており、情景が浮かぶような雰囲気抜群のサウンド&メロディーや畳野彩加の飾らない歌声の美しさは特筆すべきものがある。派手さはないシンプルな作風にも関わらず、聴けば非常にドラマチックな余韻が残るのが素晴らしい。
良質な曲揃いの本作であるが、やはり代表曲のひとつである③は、特別な感傷を呼び起こす名曲である。青春時代に誰もが抱く葛藤や痛みをプリミティブなロックビートに昇華した切ない旋律は聴き手の心を強烈に捉える。好感が持てる等身大の雰囲気を保ちながらもポップミュージックとしての完成度も高い。⑫もこのバンドの真っ直ぐな姿勢が清々しく響くナンバーで、瑞々しい躍動感に胸が突き動かされる。
④は本作のリードトラックとなる重要ナンバー。ダンサブルな感じで、特徴的なギターの音色やクセになるリズムが良い。
他にもセンチメンタルな叙情性が心に沁みてくる切ないパワーポップの②、フォークロック調の優しい歌声とメロディーに癒される⑦、気だるい雰囲気とギターリフが良い⑧、青春の儚さをノスタルジックに表現した⑨、弾き語りに近いので歌声とメロディーの美しさが堪能できる⑬など、バンドのポンテンシャルを十二分に発揮した内容となっている。
荒削りなギターの音色や飾らない歌声など、素直な印象の作風が心に優しく響いてくる。その後の作品がアニメ映画にタイアップされたことからも分かるように、映像作品にも合う作風である。次作から日本語詩の楽曲も多くなったHomecomingsだが、感傷的な雰囲気が良いという点に置いてはこのアルバムは格別の魅力があると言える。
腐っても私|Su凸ko D凹koi
2018/9/19 BUDDY RECORDS
1. ゆうと
2. サラバ、男達よ(選手宣誓)
3. ミステリーサークル
4. 店長、私バイト辞めます。
5. 満身創痍
6. 元カノ地獄
7. 神様のいない日(一人芝居)
8. 陰気者
9. くず息子
10. メンヘラ
11. セックスレスピストルズ
12. ブス
13. MOMANAIDE
14. すっぱだカーニバル(サンバ)
15. 全力裸ブリー
16. 筋肉道場 (ボーナストラック)
2010年に結成されたガールズバンド「Su凸ko D凹koi」(すっとこどっこい)の1stフルアルバム。まず曲のタイトルがとてもユニークで、曲名を見ただけで聴いてみたくなる日本語センスである。音楽性はガールズバンドらしいキュートな歌声のストレートなパンクで、身も蓋もない本音をぶちまける曲が痛々しくも爽快に胸に刺さる。「大森靖子」+「Theピーズ」という感じの鋭い歌詞が印象的な日本語ロックは自虐で泣き笑いしながらも前向きな気持ちになれるものだ。
冒頭①は直球のパンクサウンドで疾走し、失恋した未練を切ないメロディーに乗せて歌う。荒削りではあるが、青春時代の喪失感をノスタルジックに表現しており、このバンドの魅力がつまっているキラーチューンである。
④はバイト先への不満をストレートにぶちまける。スピード感あるサウンドにキャッチ―な歌メロを乗せて日常のフラストレーションを爆発させるいかにもパンクな1曲。
⑥は現在でも運動会等では定番のBGMであるオッフェンバックの『天国と地獄』に、恋愛における嫉妬をテーマにした歌詞を乗せるという実にパンクバンドらしい過激なセンスが光る。
古くは「Sid Vicious」の『My Way』や「LAUGHIN’ NOSE」の『聖者が街にやってくる』に連なる権威のある楽曲をパンクアレンジするというものである。
⑨は劣等感やダメ人間ぶりをオブラートに包まずに歌っているが、可愛らしいのでなぜか笑顔になれるという女性ボーカルバンドの利点が効いているナンバー。⑩は切なさ溢れるバラードで、そのものずばりメンヘラソングである。
⑪は皮肉が効いたタイトルだが、普通にやるせない曲である。こういった生々しい感情表現がこのバンドの真骨頂。⑫は歌詞の強烈なインパクトにびっくりするが、やりきれない感情をポップに昇華しており秀逸。⑬はあまりにもストレートな歌詞に笑ってしまうが、メロディックなハードコアパンクとしてよく出来ている傑作。
あまりにもストレートな暴力的な日本語が印象的であるが、随所にメロディーの良さを感じるところがあり、ポップパンクとして優秀。切なさと笑いが同居しており、悲哀とユモーアのバランスが良い。
10th Anniversary Bad Apple!! feat.nomico PHASE 3|Alstroemeria Records
2018/8/10 Alstroemeria Records
ディスク1
1 Bad Apple!! feat.nomico / nomico
2 Bad Apple!! feat.nomico (Animelo Summer Live 2010 Edit) / nomico
3 Bad Apple!! feat.nomico (2014 REFIX) (from FLASHLIGHT) / nomico
4 Bad Apple!! feat.nomico (博麗神社うた祭 2016 Edit) / nomico
5 Bad Apple!! feat.nomico (TOS Remix) feat. 抹, ytr / nomico, 抹, ytr
6 Bad Apple!! feat.nomico (HYPER RAVE Remix) / nomico
7 Bad Apple!! feat.nomico (ELEMENTAS Remix) / nomico
8 Bad Apple!! feat.nomico (豚乙女 Ver.) / ランコ
9 Bad Apple!! feat.nomico (COOL&CREATE Ver.) / ビートまりおxあまね
10 Bad Apple!! feat.nomico (ARMx狐夢想 Remix) / nomico, ayame, Masayoshi Minoshima
11 Bad Apple!! feat.nomico (Marasy Ver.)
12 Bad Apple!! feat.nomico (Instrumental)
ディスク2
1. Bad Apple!! feat.nomico (Nhato Remix) / nomico
2. Bad Apple!! feat.nomico (Camellia’s “Bad Psy” Remix) / nomico
3. Bad Apple!! feat.nomico (Nardis Remix) / nomico
4. Bad Apple!! feat.nomico (ALR Remix) / nomico
5. Bad Apple!! feat.nomico (Tracy + Astronomical Remix) / nomico
6. Bad Apple!! feat.nomico (REDALiCE Remix) / nomico
7. Bad Apple!! feat.nomico (ZYTOKINE Remix) / nomico
8. Bad Apple!! feat.nomico (MK Remix) / nomico
9. Bad Apple!! feat.nomico (SIMIAN NOISE Remix) / nomico
10. Bad Apple!! feat.nomico (Graphtech Remix) / nomico
11. Bad Apple!! feat.nomico (Marasy + Masayoshi Minoshima)
東方アレンジを代表する曲として有名な『Bad Apple!! feat.nomico』のアレンジやカバーも含めてすべて網羅した2枚組の編集盤。
東方アレンジとはZUNが制作している同人弾幕シューティングゲーム東方ProjectシリーズのBGMを同人サークルがアレンジするという音楽ジャンル。
元曲の『Bad Apple!!』は1998年発売の『東方幻想郷 ~ Lotus Land Story.』の3面テーマ曲で、同人サークル「Alstroemeria Records」によってnomico(のみこ)のボーカル入りとしてアレンジしたものが2007年発表の『Bad Apple!! feat.nomico』となる。曲に合わせた影絵PVは動画サイトで驚異的な再生回数を記録しており、東方アレンジ女性ボーカル曲としては最も知名度が高い。
ディスク1の①が基本形となる原曲であり、オーソドックスなスタイルとして記憶しておくとよりその後のアレンジが楽しめるだろう。
当時全盛を誇っていた「Perfume」や「CAPSULE」などの中田ヤスタカ系に通じるブリブリした太いベースが特徴的なエレクトロポップで、ずっしりとしたサウンドに哀愁帯びた切ないメロディーを可愛い声で淡々と歌うnomicoのボーカルがばっちりとハマっており中毒性が高い。
ディスク1では原曲やリミックス以外にも他の同人サークルによるカバーが収録されている。
③は音の広がりを感じる立体感あるサウンドが光る良いアレンジ。⑤は抹、ytrのラップをフューチャーした大胆なリミックスでユニークな魅力がある。⑥はフロア仕様の爆走するテクノアレンジでアゲアゲな気分になれる。⑧は音楽ユニット豚乙女によるカバーで、ランコのワイルドなボーカルがカッコいい。
⑨は【えーりん!えーりん!】でお馴染みのビートまりお率いるCOOL&CREATEによるカバーで、男女ツインボーカルのダイナミックな熱量を感じる出来となっている。⑩はARMx狐夢想によるリミックスで、自分達の個性を全面に出したぶっ飛んだアレンジがインパクト絶大。
ディスク2は更に深く踏み込んだような面白いアレンジが多数聴ける。
①はブリブリでバキバキなダンスビートがパワフルで気持ち良い。②はノイジーな電子サウンドの個性的なアレンジでセンスが光る。
④は美しいスペーシー感が心地良いリミックス。⑥はハイテンションになれる高速リズムが気持ち良い。
⑨はノイジーに歪ませたアレンジであるが、一風変わった音ゆえにメロディーが普遍的な魅力を持っていることがよく分かる。⑩は原曲とはまったく違う歪みやねじれた電子音のアレンジかと思いきや、しっかりと原曲の良さを殺さない出来となっており秀逸。
元々がアレンジ曲であるにも関わらず、更にそれをアレンジしまくる興味深い内容となっている。アバンギャルドな作風のものもあるが、根底にあるのはこの曲への愛情である。愛される名曲を各自のアレンジで愛情表現しているように聴こえる楽しい1枚だ。
GOLCONDA|Adi
1993/10/21 ビクターエンタテインメント
1. Pi-ta-rit
2. ジンババヤ
3. Co-Cu-u
4. ARICA
5. Snobに抱かれて
6. チープな日々
7. 開店休日
8. ペーパーバビロンの庭で
9. 水の贈りもの(Adiバージョン)
10. スティルネス
11. 水の贈りもの(ASKAストリングス・バージョン)
ヴァイオリニスト金子飛鳥を中心に結成されたバンド「Adi」の1993年リリースのフルアルバム。金子飛鳥はエレキヴァイオリンを駆使した刺激的なロックを展開するなど、様々なジャンルとクロスオーバーしたプログレッシブな作風が持ち味である。自身のバンドとしての代表作である本作では、TECHIE(本間哲子)や金子飛鳥自身のボーカルを全面にだした、ワールドミュージック色が強い超絶技巧サウンドのポップスを聴かせてくれる。金子飛鳥、渡辺等(ベース)、塩谷哲(ピアノ)のバンドメンバーに加えてゲストの仙波清彦(パーカション)も含めた豪華メンツが作り出す緻密な音は聴きごたえがある。
冒頭①は透明感ある美しいサウンドと可愛い歌声が生み出す不思議な浮遊感が心地良い。ポップソングとして出来が良いのはもちろんのこと、細部にまでこだわりを感じる隙のない演奏は当時の一般的なJ-POPとはまったく違うもので、ベースやヴァイオリンの印象的な響きなどはさすがといったところ。②は南国の風に吹かれるような爽やかな曲で、野性的なパーカションとキャッチ―なリズムに気分が高揚する。金子飛鳥のヴァイオリンの個性的な音色を始めとして各楽器が競い合うアグレッシブなバンドアンサンブルが素晴らしい。③はアンビエントな雰囲気の歌モノで、美しい歌声と奥行きのあるサウンドが幽玄な世界へと誘ってくれる。
⑤はキュートな歌モノで、ふわふわしたボーカルや温かいアコースティックサウンドが疲れた心を癒してくれる。⑦はプログレとガールポップが融合したようなワクワクするポップナンバー。歌モノなのに存在感を発揮しまくるにヴァイオリンのカッコ良さに痺れる。
⑩はこれ以上ないほど美しさを持つバラードで、特に『絶対の美』を体現するような優雅なヴァイオリンの響きは記憶に残る。
女性ボーカルのポップスが聴きたいけど演奏のクオリティーも妥協できない人におすすめの1枚である。とにかく金子飛鳥の感情豊かに舞うヴァイオリンが良い。歌モノでありながらここまで刺激的なバンドアンサンブルを奏でている作品はあまりないので貴重な傑作アルバムだ。
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ノクターナル|東京女子流
2022/8/3 avex trax
1. Intro
2. Viva La 恋心
3. ストロベリーフロート
4. この雨が上がっても
5. コーナーカット・メモリーズ
6. 夢の中に連れてって
7. Hello, Goodbye
8. Dear mama
9. ガールズトーク
10. フライデーナイト
11. 僕は嘘つき
12. days ~キミだけがいない街~
13. ワ.ガ.マ.マ. – MURO’s KG Remix album ver.
ディスコやファンクなどの都会的なダンスポップを聴かせるガールズグループ「東京女子流」の6枚目となるアルバム。なんと7年ぶりのオリジナルアルバムということであった。
シティポップ要素があるダンサブルな楽曲と成熟したボーカルワークは洗練された魅力があり、文句なしの貫禄ある内容である。ロック系の縦ノリが多い2010年代以降のアイドルポップの中では横ノリのダンスビートへのこだわりと愛を感じさせる。
②は実に東京女子流らしいエモーショナルな熱が伝わるダンスポップ。ラテン調のリズムが印象的なダイナミックなビートや聴き心地が良いハーモニーなど、ポップミュージックの快楽原則に沿った高揚感が得られるキラーチューンである。③はスタイリッシュなダンスビートと懐かしさもあるキャッチ―な歌が甘い気分を届けてくれる。オシャレかつスィートな極上のポップチューンはこのグループの真骨頂。
④は歌声や歌詞など、可愛らしい魅力が全開のセンチメタルな1曲。とにかくメロディーやボーカルの聴き心地が良くて、切ない余韻を残すのも良い。⑤は1980年代感覚のレトロなポップスで、清涼感溢れるフュージョン系サウンドとポップなメロディー&疾走感という王道的な爽快感をもつナンバー。⑦はメロディーと歌声の良さが光る美しいバラードで、J-POPとしてクオリティが高い。
⑨は都会の女子のイメージが浮かぶクール&キュートな必殺ナンバー。複雑な女心を捉えた歌詞や楽曲の良さを上手く引き出しているイケてる雰囲気のボーカルなど聴きどころは多い。
⑫は失恋の喪失感に切なくなると同時に前向きなメッセージに元気が貰える。サビのメロディーや上質なハーモニーが耳を捉えて離さないパーフェクトなポップソング。⑬はテンポ良く聴かせるメロウなビートとキャッチ―なリズムが心地良い。
サウンドは低音の録音が良いので、ずっしりとした安定感があり聴いていて気持ちが良い。都会的なポップスとして非の打ち所がない傑作アルバムである。すでに長いキャリアを誇る東京女子流であるが、フレッシュな空気を保ちながら、ガールズグループとしての成長が感じられる刺激的な内容で素晴らしい。2020年代のアイドルポップの中でも屈指の1枚だ。
Drop You Vivid Colours|LUMINOUS ORANGE
2002/11/25 Tone Vendor
1. Drop You Vivid Colours
2. How High
3. the Sky
4. Turbo R
5. Give a Hint
6. Utatane no Hibi (I’ecume des jours)
7. Starred Leaf
8. Sun Ray
9. Mother Pearl
10. Rusty Wheel
1992年に結成されたロックバンド「LUMINOUS ORANGE」の4枚目となるアルバム。2002年以降は竹内里恵のソロプロジェクトとして活動しており、本作ではゲストとしてNUMBER GIRLのアヒト・イナザワと中尾憲太郎が参加している。
ノイジーな轟音ギターを中心としたハードなサウンドとメロウな旋律を歌い上げる上品で透明感あるボーカルが特徴的なギターロックである。基本的にはUKシューゲイザー路線であるがSonic Youthなどに代表されるUSオルタナティブロック色も強い作風だ。
冒頭①からこれぞシューゲイザーという感じの歪んだ轟音ギターが鳴り響き、暴力的な音が揺らめきながらメロディックに疾走する。エモーショナルなビートに対して淡々とした歌声という組み合わせが絶妙なコントラストを生み出している。続く②も力強く疾走し、唸るギターの音色とキュートなボーカルが爽快感を与えてくれる。この独自のポップ感はクセになる魅力がある。③はスペーシーな感覚の浮遊感が不思議な心地良さを与えてくれる。かなり凝っているサウンドの音色や鮮やかな曲展開などが記憶に残るもので素晴らしい出来である。④は爆走するノイジーなサイケデリックロックで、メーターを振り切った感じが凄まじくカッコいい。
⑦はMy Bloody Valentine直系のトリップ感の強い轟音ギターとポップな歌が上手くブレンドされており聴き心地が良い。女性ボーカルの耳当たりの良さを生かした必殺のギターロックである。⑧もハードな音響とメロディーのバランスが良いので聴きやすい。⑨はハードな作風の本作の中でもしっとりとした雰囲気のメロウな1曲。温かいメロディーを歌う竹内里恵のボーカルがじっくりと楽しめる。
日本で女性ボーカルのシューゲイザーやオルタナティブロックを標榜するバンドがほとんどいなかった時代から活動している先駆者であり、密度の濃いサウンドの完成度は凄いの一言。メロウで和的な部分はあるがJ-POP的な歌モノではないというところが、海外のシーンへの意識の高さを感じさせる、このバンドならではの独創性である。
FAREWELL YOUR TOWN|Laura day romance
2020/6/10 lforl
1. 季刊フィルム
2. 憧れの街
3. girl friend
4. worrying things
5. lookback&kicks
6. PM4
7. slumbers
8. float
9. radio
10. FAREWELL FAREWELL
11. good night
12. rendez-vous
2017年に早稲田大学の音楽サークルのメンバーで結成されたロックバンド「Laura day romance」の1stフルアルバム。
渋谷系からシティポップまで取り込んだスタイリッシュな音楽性は懐かしくも新しさを感じるもので、ボーカル井上花月の上品で可憐な歌声が心の奥のセンチメタルな感情を刺激する上質なポップロックである。
シングル『sad number』に代表されるインディーポップやサブカル系女性ボーカルポップ好きのツボを突きまくる楽曲センスは突出しており、近年の音楽シーンではかつてのadvantage Lucyのような間違いなく良い曲を発表してくれる安定感と存在感がある。
アコースティックな短曲①に続く②は、ストレートなポップスながらも緻密なサウンドや温かいメロディーを生き生きと歌う井上花月のボーカルが耳を捉える。のんびりとした雰囲気の中で楽しさや切なさといった感情を表情豊かに伝えてくれる。③はレトロな空気のサウンドが心地良くて、爽やかなセンチメンタリズムが心に沁みる。④は軽快に疾走するポップロックで、ギターポップやソフトロックエッセンスたっぷりのアグレッシブなサウンドは素晴らしいの一言。キュートな歌声、グッドメロディー、ご機嫌なロックサウンドと三拍子揃ったキラーチューンである。
⑤はウキウキするサウンドやハートフルなメロディーなどすべてが可愛らしい魅力を放つ1曲。⑦はアコースティックギター弾き語りに近い優しい歌で、シンプルな作風ゆえに井上花月の美しい歌声の魅力が際立っている。
⑩はノスタルジックな気持ちさせてくれる感傷的なセンスが光るポップチューン。
⑫は渋谷系やインディーポップなどの過去の女性ボーカルポップスの最良の部分が結晶化したような【音楽の魔法】と呼びたくなる旋律が胸に響く名曲である。
職人芸のような完成度が高いポップミュージックを作っているが、インディーズバンドならではの自然体の雰囲気や素直な歌声は好感が持てるもの。荒削りな部分が抜群のポップセンスと上手く結びついており、リアルな感情とポップスとしての強度を兼ね備えたグッドミュージックである。
Retinae|dip in the pool
1989/4/10 MOON RECORDS
1. On Retinae (West Version)
2. A Green Spangled Deer
3. マルイ月トゥスヰート
4. Over The Rainbow
5. Land
6. A Quasi Quadrate
7. Kesalan
8. Six – Lovesixy
9. Gladiolus (Breath Mix)
10. On Retinae (East Version)
ボーカルの甲田益也子とキーボードの木村達司による音楽ユニット「dip in the pool」の3枚目となるアルバム。本作にはMARIAHの清水靖晃や佐久間正英などが参加している。
芸術的な雰囲気が漂うニューウェーブ系ポップで、アンビエントやニューエイジに親和性が高いサウンドや甲田益也子の美しい歌声が生み出す独自の浮遊感が心に安らぎを与えてくれる。
冒頭①からメロウで柔らかく、不思議な揺らぎをもった旋律に引き込まれる。現代音楽的でもある緻密なサウンドと上品な歌声はいつ聴いても新鮮な感動をもたらしてくれる。
②はダンサブルで煌びやかな音と幻想的なメロディーやボーカルが心地良いトリップ感をもたらす。サウンドはかなり凝っているが、ポップスとしても優れた曲である。③はファンタジックな雰囲気の曲で、カラフルなサウンドと可愛らしい歌声は中毒性が高い。⑤はワールドミュージック色が強い壮大なバラードで、透明感ある歌声が極上の癒しを与えてくれる。
⑥は細部にまでこだわりを感じるサウンドが凄いが、フレンチポップのような甘い聴き心地の良さも同居する。⑧はジャジーでスペーシーなサウンドがスリリングでカッコいい。⑩は①の別バージョンで違いを楽しむことができる。
サウンドはとにかく良く出来ており、細かい音にも耳を向けると次々に新しい発見がある興味深いものである。洗練されたサウンドと気品ある歌声がここではないどこかへ連れて行ってくれる傑作アルバムだ。
Pleiades|Kirche
1999/6/20 桜詩舎
1. Pleiades
2. 千の夜の睛 ~celestine
3. セイリオス
4. 五月はベリルの風をつれて
5. Breeze
6. Mirage of sands
7. Swim ~水夢~
8. 三日月の舟
9. ティル・ナ・ノグ
10. 星によせて
11. 空の青 水の青
みとせのりこと井上俊彦による音楽ユニット「Kirche」の2枚目となるアルバム。
1993年に結成されてから、『風景の見える音楽』をコンセプトにインディーズで幻想的な音楽作品を発表している。ZABADAKからの影響が色濃い1stアルバムから大きな進化を遂げており、Kircheの魅力であるファンタジックな叙情性がプログレッシブなサウンドで展開される力作となっている。同年にPlayStation用ゲームソフト『クロノ・クロス』のED曲【Radical Dreamers ~盗めない宝石~】での美しい歌声が話題となったみとせのりこボーカルにも注目である。
②はワールドミュージック色が強いシンフォニックなサウンドと透明感ある歌声が幻想的な世界に誘ってくれる。壮大な世界観を盛り上げるプログレ度数の高い演奏はスリリングで、繊細な歌声と上手く調和している印象だ。
③は9分を超える大作で、美しい揺らぎを感じるサウンドや叙情的なメロディーを情緒たっぷりに歌い上げるドラマチックな歌唱など、まさに幻想音楽と呼べる箱庭的な淡い感傷に気持ち良く浸れる。④は遊佐未森にも通じるカラフルなファンタジックサウンドと優しさに満ちた歌という癒されるナンバー。
⑥はエキゾチックな雰囲気にゾクゾクするメロウなプログレという感じの大曲。異国情緒溢れる幻想的な世界観にぴったりと合うヴァイオリンやパーカションの生々しい音響やメロディーや歌声の美しさなどすべてが素晴らしい名曲。特にサビでのノスタルジーを感じる繊細なメロディーはいつまでも記憶に残る。⑨はアイリッシュトラッドサウンドに土着的な歌メロが親しみやすい雰囲気で、小難しさ抜きに楽しい気持ちになれる。ラスト⑪は流水のように美しい旋律を奏でており、ボーカル含めてまさに透き通った魅力がある。
基本的には歌メロを大切にした幻想的なポップソングではあるが、⑥に代表される様々な楽器が刺激的に絡み合う緻密なサウンド構築はプログレと言っても良いものである。壮大かつ箱庭的でもある一風変わった世界観にどっぷりと浸ることができる傑作アルバムだ。
海とあなたの物語たち|未来玲可
1999/3/17 ポニーキャニオン
1. 海とあなたの物語
2. DOWN TO EARTH
3. ONE MORE CHANCE
4. Please tell me…
5. cherish way
6. 裸のココロ
7, ONE SIDED LOVE
8. all my love
9. 夢をつかまえた人
10. 19 NINETEEN
1998年に小室哲哉と久保こーじの共同プロデュースによりシングル『海とあなたの物語たち』でデビューした歌手「未来玲可」。14歳でデビューして引退までわずか4ヶ月という短い活動期間であり、本作は唯一のアルバムである。ハイトーンボーカルなどの高い歌唱スキルを持つ歌手が多かった1990年代小室プロデュースの女性シンガーの中では珍しいアイドルボイスを武器にした初々しい魅力溢れるポップスが楽しめる。
前述のデビューシングル①は、小室哲哉楽曲の中でも珍しいワールドミュージック風味ある作風で、Coccoの『強く儚い者たち』に通じる曲調が印象的。未来玲可の透明感ある真っ直ぐな歌声が壮大な曲世界に見事にハマっており、記憶に残る名曲である。②は彼女のアイドルっぽい可愛らしい歌声にぴったりとマッチした正統派ガールポップ。③は幻想的な曲調のバラードで、サビのメロディーの力強さが印象的。癒される透明感と切ない感傷に浸れる傑作である。⑦はシンプルな美しさが光るサウンド&メロディーが、彼女のキュートな声質と相性が良い。⑨は前向きなパワーみなぎる元気いっぱいな雰囲気が気分を上げてくれる。⑩は内田有紀のカバーで、素直な歌唱で10代の葛藤を切なく歌い上げており、原曲とは違った魅力がある。
実質、小室哲哉が作曲・編曲しているのは①⑩のみで、他は久保こーじや木根尚登など様々な作家が手掛けた楽曲で構成されている。歌唱テクニックよりも声質の可愛らしさで勝負するボーカルなので、ほぼアイドルポップと言っても良い内容である。4ヶ月で引退したことも含めて瞬間の煌めきが感じられる1枚だ。
クリシュナ|村田有美
2019/11/27 Bridge
1. Let It Blow
2. Red High Heel
3. Morning Telephone
4. Midnight Communication
5. Mischief
6. Glenn Miller Medley
7. クリシュナ
8. 街角で
9. Love Survival
1979年にデビューしたシンガー「村田有美」が1980年にリリースしたセカンドアルバム。
サウンド・プロデューサーが清水靖晃で、コ・プロデューサーが笹路正徳、演奏陣も含めてロックバンド「Mariah」(マライア)のメンバーが全面的に参加している力作である。
ジャズ/フュージョン、ファンク、ディスコなど様々な音楽要素をスタイリッシュに昇華したグルーヴィーな楽曲、デビューしたばかりとは思えない村田有美の表情豊かな熱い歌唱と非常に聴きごたえがある内容だ。
冒頭①から村田有美の圧倒的な歌唱力に驚かされるが、よくあるただ上手いだけの歌ではなく、歌声から伝わる凄まじい熱量が最高。海外でも違和感なく聴かれそうな壮大なサウンド&メロディーも良い。②はうってかわって、クールなトーンの歌声でイカしたグルーヴを決めておりカッコいい。③ではキュートなウィスパーボイスで歌っており、ちょっと気恥ずかしくなるセリフパートがあったりして、とんでもなく幅が広い『声』の表現力が光る。アンニュイな朝にぴったりな洒落た曲である。
④は自信満々に歌いあげるワイルドなボーカルにマッチした熱いロックナンバー。⑥はジャズミュージシャンGlenn Millerの楽曲にボーカルを入れたメドレー。陽気な気分になれる元気な歌声に胸が弾む。アルバムタイトル曲⑦は、じっくり腰を据えて聴きたいファンキーなダンスポップで、濃厚なグルーヴ感など、軽いノリではなく渋い作風なのが味わい深い。⑨は美しいロックバラードで、シンフォニックな盛り上がりが王道的な感動をもたらす。
実力派ミュージシャンによるセンスの塊のような楽曲は完成度が高い。そして何よりも歌手として村田有美の魅力が最大限に発揮されており、その歌の表現力は凄いの一言だ。
夢のはじまり|須山公美子
2016/2/3 SUPER FUJI DISCS
1. 月夜の真空管
2. 新しい大陸
3. 空中ブランコの唄
4. しゃべらないわ
5. 船唄
6. 花まつり
7. 東京一の軽業師
8. 星のかけら
9. 乙女のワルツ
10. マラソンランナー
11. すたあまいん
日本のパンク/ニューウェーブシーン伝説のバンド「変身キリン」のメンバーであった「須山公美子」の1986年リリースのソロ2枚目となるアルバム。After Dinnerを輩出した京都の音楽レーベル『zero records』が当時のインディーズとしては破格の予算をかけて制作した力作である。プロデュースは「すきすきスウィッチ」の佐藤幸雄。
戦前の昭和歌謡をモチーフにしたアヴァンポップの意欲作で、豪華演奏陣による独創的なサウンドと須山公美子の躍動感に溢れた美しい歌声が織りなすレトロなポップスを楽しむことができる1枚。
冒頭①から須山公美子の個性的な歌い回しと優雅な弦楽器のアンサンブルで不思議な世界に引き込まれる。芸術性と衝動が結びついた旋律は異様な存在感を放つ。②はダンスしたくなる大陸歌謡で、エネルギッシュな演奏と可愛らしい歌声が気分をあげてくれる。④はリズミカルな歌とドタバタした陽気な演奏が強烈に耳を捉える。ポップだが迫力が凄い。⑥はみんなのうたでもいけそうな優しい曲調と子供のような無垢な歌声に心が和む。⑦はちんどん太鼓の愉快なリズムと生々しい歌声には実際に軽業師の芸を観ているような臨場感がある。⑧は彼女の美声がこれでもかと堪能できる【絶対の美】を感じるバラード。⑩はアンビエントな歌モノで、緻密なサウンドとダイレクトに感情が伝わる歌声は味わい深い魅力がある。
サウンドはアバンギャルドな要素も含むが、基本的には様々な表情を見せる須山久美子の歌声が主役となっている。その強烈な個性や美しさは【アンダーグラウンドの歌姫】と呼べるもので、1980年代の女性アーティストの名盤のひとつと言えるだろう。
kamiyado complete best 2018-2019|神宿
2020/1/15 日本クラウン
1. ボクハプラチナ
2. はじまりの合図
3. HAPPY PARTY NIGHT
4. CONVERSATION FANCY
5. 春風Ambitious
6. 全身全霊ラプソディ
7. 好きといわせてもらってもいいですか?
8. タフ□ラブ
9. ほめろ!
10. ないぞう サイコー
11. グリズリーに襲われたら□
12. お控えなすって神宿でござる
13. それから
2014年に結成された原宿発のアイドルグループ「神宿」。本作は2018年〜2019年に発表された楽曲で構成されたベスト盤である。
でんぱ組.incに通じる陽気でノリノリなアイドルポップから渋谷系のようなオシャレで洗練されたポップスまでこなすキュートなガールズポップは理屈抜きでハッピーな気持ちになれる。
既存曲は新メンバー塩見きら加入後の新録によるニューバージョンが多数収録されており、③④⑦⑧⑨⑩⑫がそれに当たる。
冒頭①はアイドルらしからぬ大人びたエレクトロポップで、エモーショナルなビートやメンバーの表情豊かなボーカルは躍動感に溢れている。③はご機嫌なダンスポップで、キャッチ―なリズムと歌声に胸躍る。
④はアイドルポップを数多く手掛けている玉屋2060%によるキラーチューン。オシャレでキュートな楽曲センスが冴えわたっており、タイトル通りファンシーでキラキラしたサウンドやボーカルに胸がキュンとなる。⑤も玉屋2060%お得意のはっちゃけた魅力が全開のアイドルソング。玉屋節と言える中毒性が高いメロディーラインは一度聴けばやみつきになる。
⑥はアイドルポップではお馴染みの浅野尚志による熱いロックナンバー。歌謡ロックやアニソン的なベタな盛り上がりが楽しい。
⑨は理屈抜きで元気が貰える王道アイドルポップで気分爽快。
⑪はシンガーソングライターの清竜人が提供した神宿の代表曲で、乙女チックな心情をユーモアたっぷりに表現している。極端に可愛らしい歌声や独自のクセがあるメロディーが脳髄の奥を侵食する。
アイドルのキャラクター性と音楽センスを随所に感じさせる楽曲が上手くマッチしている。
残念ながら2024年解散した神宿だが、その輝きがしっかりと収められている1枚だ。
ORANGE JUICE|YUM!YUM!ORANGE
2004/8/25 DONA DONA RECORDINGS
1. SUNNY SUNDAY
2. 星のカケラ
3. CARTOON HEROES
4. MY JOURNEY
5. 葛飾ラプソディ→(ヤムヤムversion)
6. ★SMILE★
7. DON’T WORRY!
8. NOTHING SPECIAL
9. CHANGE MY LIFE
10. DON’T WORRY BE HAPPY
1999年に愛知県名古屋市で結成されたスカバンド「YUM!YUM!ORANGE」のセカンドアルバム。メロコア/スカコアシーン全盛のインディーズシーンで人気があったバンドで、本作収録のTVアニメ【こちら葛飾区亀有公園前派出所】のテーマ曲『葛飾ラプソディー~ヤムヤムVersion~』(堂島孝平のカバー曲)で一躍お茶の間にも名前が知れ渡った。キュートな歌声がばっちりとハマったパンキッシュに弾ける陽気なスカポップは爽快感に溢れており元気になれる魅力がある。
冒頭①からハッピーでご機嫌なスカビートで気分爽快。ボーカルKUMIの気風が良さそうな歌声がエネルギッシュで憂鬱な気分も吹き飛ぶ。続く②も陽気なリズムとチャーミングな歌で元気100倍。小難しさ抜きのロックサウンドとグッドメロディーはポップスとして良質である。③はデンマーク出身のダンスポップバンドAqua のカバー曲で、非常に可愛らしい出来となっており心が和む。
⑤は前述した堂島孝平のカバー曲で、しっとりとした原曲とはまったく違う大胆なアレンジに驚かされるが、陽気でハチャメチャな感じはこのバンドならではの名アレンジであり、ポップセンスの良さが光るカバーである。⑥は前向きな気持ちになれるメッセージに自然と笑顔になれるパワフルなポップチューン。⑨もポジティブなパワーがみなぎる歌声とサウンドがとにかく良い。⑩はスカの魅力を最大限に表現したキレのある演奏が楽しい。
当時の音楽シーンではスカコアという若者が好む音楽性にも関わらず、老若男女問わず楽しめるポップソングを作っているのが良い。オリジナル曲の良さはもちろん、カバー曲を完全に自分達のカラーにしてしまうセンスなど、そのポップネスがたっぷりと楽しめる1枚だ。
八紘一宇|SOFTBALL
2003/1/16 cutting edge
1. SHEENA IS THE MISSLE
2. PROSTRATE
3. HISTORY
4. NO FALL BACK
5. POLITICS
6. MOMENT
7. IGNITE
8. 故郷の空
9. VANITY GROUND
10. LEAPER
11. 童部-WARAWABE-
12. WHERE IS THE CRIME (Res Heads)
13. TOKOSHIENI (FRENZAL RHOMB)
1998年から2003年まで活動していたガールズパンクバンド「SOFTBALL」のラストアルバム。
当時インディーズシーンで盛り上がっていたメロコアバンドのひとつである。10代のガールズバンドであることや、当時あまりいなかった女性ボーカルのメロディックパンクということもあり大きな注目を集めたバンドだ。初期は王道の英詩メロコア路線であったが、徐々に日本語詩も増えて、楽曲のテーマが戦争などの社会的なメッセージ性が強いものに変化していった。とは言え音楽性自体は女性ボーカルの魅力を生かしたポップなパンクなので敷居は高くない。
②はお得意の英詩メロディックパンクで、初期の頃に比べて重厚になったサウンドは地に足のついた力強さを感じることができる。ボーカルMOEの歌声も自信に満ち溢れておりカッコいい。③は切ない歌い出しから疾走し、パンキッシュに弾けながらも真っ直ぐと歌われるメッセージに耳を奪われる。日本語詩を上手くビートに乗せている印象だ。⑥はオイ!という掛け声が熱い直球のパンクナンバー。⑦は美しいピアノ伴奏からパワフルに走りだすエモーショナルな曲で熱い。⑧はスコットランド民謡のメロディーに大和田建樹の詩を乗せた古典唱歌のカバー曲。若さと勢いあるロックの衝動性が土着的な歌と結びついて新鮮な感動がある。
⑪はこのバンドの真摯な姿勢が感じられる渾身の1曲。ただの軽快なパンクではなく、クセのあるメロディーや文学的な歌詞など独特のアクの強さがポイントで一風変わった魅力がある。
SOFTBALLの個性的なカラーを打ち出したパンクはこのラストアルバムでほぼ完成している。バンドは軽快なメロコアから始まり、本作のようなストイックなこだわりを感じるパンクに到達したのだ。ボーカルのMOEは解散後に「秋茜」を結成し、本作のような路線を更に突き詰めていくこととなる。
Underlight & Aftertime|downt
2024/3/6 P-VINE
1. underdrive
2. Whale
3. AM4:50
4. prank
5. Yda027
6. 煉獄ex
7. mizu ni naru
8. 8/31(Yda011)
9. 紆余
10. 111511
11. 13月
2021年に結成された3人組のロックバンド「downt」の1stフルアルバム。
ポストハードコアと呼べそうなヒリヒリとした緊張感のある尖った演奏とボーカル富樫ユイのドライな歌声が織りなすメランコリックな世界観はひたすら美しい。焦燥感を感じるざらついた音には渋い魅力がある。
冒頭①からギター、ベース、ドラムと各楽器の音響が絶妙に絡み合って凄まじい緊迫感を生み出しており、硬質な音と独白するようなボーカルに耳が釘付けになる。③はスロウテンポのメロウな雰囲気と儚い歌声がエモーショナルに響く。ドラマチックな盛り上がりを聴かせる演奏など完成度が高い。⑤はポエトリーする醒めたボーカルとアグレッシブな演奏の対比が面白い。静かに青い炎が燃えるような熱さがある。⑥はキャッチ―なリズムとダイナミックな演奏がカッコいい。⑦はポストロック/マスロック的な質感のサウンドに淡々した歌声が上手く溶け込んでいて良い。⑩は本作の中でもポップセンスを感じさせる軽快な曲で、downtの魅力が非常に分かりやすく伝わる。
⑪は8分を超える大曲で、リアルな感情が伝わる歌声とノイジーな轟音ギターが見事なコントラストを描くキラーチューン。J-POPバンドではないが、和的な音楽センスを感じる1曲である。
ギリギリのところで成立しているようなシリアスな雰囲気のサウンドがとにかくカッコいい。ボーカルも必要以上の自己主張はせずに、しっかりとサウンドにあったスタイルの歌唱をしているが良い。
Marble Town|Beachside talks
2023/2/15 Dead Funny Records
1. Boring Train
2. Always
3. ダイヤモンド
4. Take me Down/Freedom
5. 時間の欠片
6. 海辺の話
2017年に大学のサークルで結成されたロックバンド「Beachside talks」の1stミニアルバム。結成当初は相対性理論のコピーバンドだったそうで、以後はシューゲイザー/ドリームポップ路線のオリジナルバンドとして活動している。
煌びやかなギターの音色、センチメンタルなメロディー、キュートなボーカルと三拍子揃ったギターポップ/ロックである。初々しい歌声と幻想的なサウンドが上手くマッチしており、瞬間の輝きをとらえた儚さとイノセンスが走る美しい旋律に心が洗われる1枚。
冒頭①から透明感あるギターサウンドと瑞々しい歌声に耳を奪われる。派手さはなく淡々とした印象だが、上品な聴き心地の良さがある。
②はギターポップエッセンスたっぷりのジャングリーなギターと可愛らしい歌声が青春の煌めきを見事に伝えてくれる。キラキラ眩い光に包まれる感覚がある一方で、どこか切なさを感じる儚さが良い。③も光が差し込むような煌びやかなギターと真っ直ぐなボーカルが絶妙に調和し、エバーグリーンな魅力にあふれている。④はミドルテンポのノスタルジックなナンバーで、美しいサウンドと感情の揺れを捉えた生々しい歌声が心に突き刺さる。
⑥は本作の中でもキャッチ―な歌メロが親しみやすく、Beachside talksのポップな魅力がふんだんに詰まった1曲。青い季節の葛藤や迷いが切なく響き、忘れられない感傷の波に打たれる。
綺麗なサウンドの音色にキュートな歌声が上手く溶け込んでいる印象で非常に耳当たりが良い。一度聴けば自然にリピートしてしまう、まさにグッドミュージックと呼ぶにふさわしい内容である。
MILKICKING|CRAWL
1995/12/10 K.O.G.A Records
1. Slow Burn
2. High and Dry
3. Quick Freeze
4. Gabage Truck
5. Frantic
6. Super Turn
7. Feeder
8. Power Dive
9. Across the Line
10. A Hit
1990年代半ばのインディーズシーンで人気のあったロックバンド「CRAWL」の1stアルバム。聴いていると心が安らぐ透明感あるボーカルに、ギターポップやオルタナティブロックを基調としたサウンドという、聴き心地の良さを追求したようなインディーロックである。多くの女性ボーカルバンドを輩出した『K.O.G.A Records』リリース作品の中でも傑作アルバムのひとつに数えられる。
冒頭①からインディーバンドらしい生々しいギターサウンドとネオアコ系のキュートボイスが胸キュンもので耳を強く捉える。
②は男女ツインボーカルの掛け合いとスリリングなギターの音色が鮮やかに響くキラーチューン。サウンドの質感もボーカルの声質もネオアコ/ギターポップ好きのツボを突きまくりでセンスがある。③はチャーミングな歌声と轟音ギターが良い味を出しておりファニーなギターロックという感じの傑作。⑤は轟音ギターを入れるタイミングや音色が非常に良くて痺れる。
⑧は清涼感と疾走感ある男女ツインボーカルパワーポップで気分爽快。⑨はシンプルながらもエモーショナルなビートが胸を熱くする。まさにオルタナティブロック+ギターポップという質感で、ラフなサウンドと可愛らしい歌声の組み合わせは日本ならではものである。
全編に渡りギターの音色が素晴らしく、やや荒削りなサウンドに清涼感ある女性ボーカルが乗るのがたまらなく良い。